Spring Sky StarS!   作:笹ピー

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 タイトルでネタバレしてるって?
 そうだね^^


Ex.001:からおけ ぢごく

1-1

 

 

 

 ヴァルキューレ警察学校―――という学園がある。

 

 数千の学園を有するキヴォトスの中でも、その存在はやや特殊。

 大半の学園が各々自治区を所有している一方、ヴァルキューレは特定の自治区を持たず、代わりに各地に拠点を置き、様々な治安問題の対処を担っている。

 

 簡単に言えば、キヴォトスにおける警察機関、という認識でほぼ間違いない。

 

 

 

 某日。ヴァルキューレ警察学校・取調室。

 

 狭く、薄暗い室内に小ぢんまりとした机と、それを挟む形で向かい合う椅子2つだけが置かれた殺風景な部屋。後は隣の部屋から覗けるマジックミラーが壁に備え付けられているぐらいか。

 

 そんな部屋で、肩身狭そうに少女が独り、椅子に座りながら顔を俯かせていた。

 まるで処刑を待つ、囚人の如く。

 

 そうして、時間だけが刻一刻と過ぎていく中――取調室の扉が開かれる。

 扉の向こうから姿を現したのは、威圧感を醸し出し、片目だけ隠した金髪の前髪から鋭い目つきを覗かせる1人の生徒。今まで大人しく椅子に座っていた()()()は、その目つきを向けられ身を震わせる。

 

 そんな彼女の反応に構わず、対面する形で椅子に腰かけ――

 

「ヴァルキューレ警察学校、公安局局長の”尾刃カンナ”だ」

 

 と、自らの素性を明かした。

 

 その言葉にビクッと反応するも、沈黙を保ち続ける少女。

 やはりその反応に構わず、カンナは強面のまま語り続ける。

 

「……念のため伝えておくが、今お前たちにはD.U.地域内における()()()()、並びに()()()()()()の容疑が掛かっている」

 

 容疑に掛かっている罪状を改めて確認した彼女が「言いたいことは分かるな」と眉間に皺を寄せ、目の前の容疑者を睨む。その視線を受け、緊張感からか少女が下唇を噛む。

 

 机から身を乗り出す様に顔を近づけさせ、脅しをかけるようにカンナは表明する。

 

「――私を騙そうとしても無駄だ。事実だけを話してもらおう」

 

 短いながら、迫力の篭った一声。

 彼女の言葉に、思い悩むように苦渋の表情を浮かべる少女。相当の葛藤を抱えているようだ。

 

 そんな彼女の反応を尻目に「では、尋問を始める」と、淡々と告げたカンナはまず相手の素性を確認する。

 

「……名前は」

 

 静かに問いかけるカンナに対し、少女は相変わらず思い悩んだ様子。

 しかし、それも無駄な足搔きだと観念したのか――数秒ほど間を置いてから、ポツリと呟いた。

 

 

 

「――――……()()()()()です」

 

 

 

 嗚呼、なぜこうなってしまったのか。

 そもそも、どうして自分はここにいるのか。

 

 内心、こうなってしまったことを嘆きつつ――

 彼女はここ数時間前の出来事を、思い返した。

 

 

 

 

 

 

 遡ること、約3時間ほど前。昼頃。

 モモイが所属しているゲーム開発部――そのメンバーはシャーレのオフィスへと足を運んでいた。

 

 そんな彼女達の目に映るのは、ミレニアムサイエンススクールの生徒会――セミナーの役員である早瀬ユウカ。彼女が原稿用紙を確認している様子を、緊張した面持ちで見守るモモイ達。

 

 それからしばらくして、用紙に目を通していた彼女の顔が上がる。

 そして一度、面々を見渡してから――

 

「――まあ、概ね良しとしましょう」

 

 と、一息吐いてからユウカは口角を上げる。

 彼女の返答に喜々とした表情を浮かべたモモイ達。2日間の頑張りが実を結んだ結果である。

 

 慣れない宿題から解放されたモモイ達は、互いに喜び合う。

 そんな時、「ただ……」と笑みを浮かべていたユウカの態度が徐に少しずつ影が射す。

 

「……この原稿用紙を書いたのは、誰かしら」

 

 頬を引き攣らせた彼女が、一枚の用紙をピラピラと見せつけながら呟く。

 それに目を向けた4人と1匹だったが、目を瞬かせてから、その内容を書いていたであろう少女の方へと視線を移す。

 

 視線の先で、気まずそうに目を逸らすモモイの姿が。

 

 そんな彼女に、やっぱりか、と云わんばかりに眉間を寄せたユウカが「……まず、最初の出だしだけど」と、内容について問いただす。

 

 

 

【時は、世紀末。ミレニアムは、権力を我が物顔で振り翳すセミナーに支配されていた!】

 

 

 

「普通に書きなさいよ!?」

「で、出だしの掴みは大事かなー、って……」

 

 へへっ、と誤魔化す様に苦笑するモモイに対して「いくらなんでも、これはないでしょ!?」と詰め寄るユウカ。これだけ見れば確かにミレニアムは世紀末である。

 

 先程と一転して憤慨するユウカに、しどろもどろになりながら彼女を宥めようとするモモイ。

 しかし問題はそこだけではなかったのか、ユウカは続けて、次の箇所を指摘する。

 

 

 

【勇者達が目指すのは、()()()()()が守る宝。恐怖の魔王に恐れつつ、先を目指していくのであった】

 

 

 

「誰が魔王よッ!!」

「そ、そういうところかなー、って……」

「火に油注いでどうするの、お姉ちゃん……」

 

 堪らず、頬を引き攣らせたミドリが横から口を出す。こんな内容を当の本人を相手に提出するのだから、モモイの度胸は実は凄いのかもしれない。

 

 それから続いて、モモイ筆の内容に口出ししていくユウカ。

 最初の概ね良いと言っていたのはなんだったんだろう、と疑問に思いつつ、これ以上火に油を注ぐと銃弾が飛んできそうだと予感したモモイは、黙って聞き入れることに。

 

 それもようやく終わりつつある中、徐に全員を見渡したユウカが「……最後に、()()()についてだけど」と、アリスが抱きかかえているカービィへ視線を向け――

 

「全員、具体的なことが1つもないんだけど!?」

 

 例えば、【吸い込んで吐き出す】とか。

 例えば、【空気を口に含んで空を飛ぶ】とか。

 例えば、【勇気ある子】とか、

 例えば、【オトモ】とか――等々。

 

 彼女達としては見たこと、感じたことを正直に書いているつもりなのだが、内容を読んだユウカには、カレがどういう生き物かいまいち伝わらなかったようである。

 

 一方、指摘を受けた4人は互いに顔を見合わせて困り顔を浮かべる。

 そもそも彼女達もどういう生物なのか分からず――寧ろ、それを一番知りたがっている人物こそ、今カレを抱きかかえている少女なのだから。

 

 当の本人に至っては話が長かったせいか、うたた寝している始末である。

 

 そんな彼女達の心境を察したのか、溜息を吐いたユウカはこの場での追及は止め、「後日、改めて話を伺わせてもらうわ」ということで、この話は一先ず落ち着いたのだった。

 

 

 

 何はともあれ、ゲーム開発部に課せられた課題は無事完了。指摘をいっぱい受けたモモイの筆記内容も、ニュアンスだけなら伝わるということで、今回は大目に見ることにしたようだ。

 

 そんな彼女達を、デスクワークを行いつつ見守っていた”先生”が”ちょっと休憩しようか。ケーキもあるよ”と促すと、目を輝かせるモモイ達。

 

 当然、断る理由などなく。

 休憩も兼ねた、少し早めのおやつタイムへと移るのであった。

 

 

 

「カービィはどれにしますか?」

 

 ”先生”が冷蔵庫から取り出した、数々のケーキに各々がどれにするか悩んでいる中、ゆさゆさと身体を揺らしてカレを起こすアリス。その揺れに気付いて――或いはケーキのいい匂いにつられて――目を覚ましたカレは、目に映ったケーキに目を輝かせる。

 

 そしてすぐに、イチゴの乗ったショートケーキを手で指したカービィ。

 カレの希望にアリスがニコリと微笑みながら頷くと、周囲の同意を得てから取り皿に装う。

 

 それからしばらくして、各々選び終わったのを皮切りに、ケーキに舌鼓を打つ。

 ”先生”曰く、スイーツに詳しい生徒から教えてもらった有名店のケーキとのこと。その評判に嘘偽りなく、その美味しさに頬を綻ばせるモモイ達。

 

 それはアリスの膝元で、形を崩さず器用にフォークで持ち上げて食べているカービィも同じで。

 そんなカレの様子を目にしたユウカが、頭に浮かんだ疑問を口にする。

 

「その子って、いつもなに食べてるの?」

「カービィはなんでも食べます。ご飯3合分も一瞬で平らげてしまいます!」

 

 疑問にアリスが得意げに答える傍ら、3合分の量を一瞬で身体の中に収めてしまうピンクボールを半信半疑な様子でユウカは凝視する。美味しそうにケーキを頬張るこの小さな身体のどこにその量が入るのか、不思議でしょうがない様子であった。

 

 

 

 談笑を挟みながら、穏やかな時間が続く。

 そんな時、あることを思い出したようにモモイが「あ!」と、唐突に顔を上げた。

 

「”先生”! そういえばまだ、ゲーム買ってもらってないよね!?」

 

 意気揚々と声を上げるモモイに一瞬目を丸くする”先生”だったが、以前交わした約束を忘れたつもりはなく”何にするのか決まったの?”と口元を緩めながら尋ねる。

 

 その言葉に「もちろん!」と頷くと、彼女は続けさまに、

 

「今から買いに行こう! 善は急げっていうし!」

 

 と、提案した。

 唐突な彼女の提案に目を丸くする一同。一方で「ちょ、ちょっとっ」と慌てたように。ユウカが反応した。

 

「まだ業務が残ってるのよ? そんな遊びに行くようなこと……」

「ちょっとした息抜きだって! それに頑張った私たちにご褒美ぐらいあってもいいじゃんっ」

 

 モモイの言い分にむぅと口を噤むユウカ。そう言われてしまうと弱いのが早瀬ユウカという人間である。

 

 とはいえ、そもそも業務に追われているのは”先生”のため、本人の許可無しでは成り立たない話である――と思い、ユウカが視線を向けると、快く頷く”先生”の姿が。

 本人としても、彼女達の約束を保留し続けるのは、あまり気が進まなかったのだろう。

 

 決して、デスクワークから一時的に離れたかったわけではない。たぶん。

 

 その様子に、ユウカは溜息を吐く。

 そして、不承不承な表情を浮かべた彼女は――

 

「……買うだけですからね」

 

 ――そういうことに、なった。

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

1-2

 

 

 

 それから、シャーレから一番近いショッピングモールへと足を運ぶことになった一同。

 目的はゲーム開発部の部員に好きなゲームを奢る――ということなので、向かうのは当然ゲームショップ。

 

 約束通り、欲しいゲームを買ってもらえたゲーム開発部は各々満足げな表情を浮かべていた。

 ちなみにピンクボールはおやつを食べ終えた後のお昼寝の真っ最中である。

 

 その後、来たついでにシャーレの備品――あくまでも文房具の類だが――を補充しようと文具店に向かう一行。それさえ済めば、息抜きも兼ねた買い物が終わるはずであった。

 

 

 

 ――平穏に、終わるはずだった。

 

 

 

「あれ?」

 

 文具店に向かう途中、モモイがある方向へ目を向けて首を傾げる。

 その言葉につられてか、他の面々も彼女が見つめている先へと視線を移す。

 

 

 

 彼女の視線の先にあるのは、各地にチェーン展開している有名な店舗。

 ()()()()店、”Lucky Cat”であった。

 

 

 

 尤も、彼女がカラオケに興味があるから、という理由で視線を向けたのではなく。

 どちらかといえば店舗の入り口に貼られているポスターの方に興味があった様子。

 

『ウルトラマリンシスターズ 40周年記念コラボ開催中! 今なら限定グッズが付いてくる!』

 

 そんな事が書かれたポスターを見て、「あー」とミドリが得心が行ったように声を漏らす。

 

「そういえば、今年で40周年だったっけ」

「昔から続いてる人気タイトルだから……色んなところでコラボしてるみたい」

 

 ミドリの呟きに、補足を付け加えるように言葉を返すユズ。

 その説明にへえ、と感心したように相槌を打つ”先生”。ちなみにコラボ期間は今日までのようだ。

 

 一方、先程から何か考え込む様子を窺わせるモモイ。

 なんとなく、いつもの雰囲気を察した彼女の妹が、嫌な予感を抱く。

 

 

 

「――この店に、入ろう!」

 

 

 

 声高々と宣告したモモイの言葉で、ミドリの予感が的中した。

 本日二度目のモモイの提案に、「ちょっと待ちなさいっ」とユウカが咎めるように口を出す。

 

「もう欲しいものは買ったでしょう!?」

「何言ってるのさ! 欲しいと思った瞬間、それが今欲しいものなんだよ!」

 

 滅茶苦茶な自論を展開するモモイに、面食らうユウカ。どっちかというと彼女の迫力に気圧されたと云ってもいいかもしれない。

 

「だ、だから業務が残っているって言ったでしょ!?」

「入って皆一回ずつ歌うだけだって! それなら1時間も経たないじゃん! 仕事は後でもできるけど限定グッズは今だけなんだよ!?」

 

 そこまでして限定グッズが欲しいのか。

 彼女の湧き上がる執念に、たじろぐユウカ。

 

 とはいえ、幾ら何でも流石の”先生”も止めるだろう――と期待を込めた視線を向けるも、腕組んで力強く頷く姿が目に映った。

 唖然とするユウカだったが、そういえばこの人もそっち側の人だと思い出し、頭を抱えた。

 

「私、経験ないんだけど……」

「わ、わたしも……」

 

 一方、二人が言い争っている傍らでカラオケ経験がないミドリとユズが互いに不安そうに呟く。

 その言葉に「大丈夫!」と、自信満々に笑みを浮かべるモモイが断言した。

 

「私もないから!」

 

 一体何が大丈夫なのか。

 ミドリは訝しんだ。

 

 そんな中、経験どころかカラオケ自体知り得なかったアリスが、カラオケ店を眺めつつ首を傾げながらモモイに尋ねた。

 

「ここは何をするところなのですか?」

「簡単に言えば……()()()ストレスを発散させるところだねっ」

 

 簡素な説明を行うモモイだったが、一応理解を得られたアリスは成程と頷いた。

 ちなみに、胸元のぬいぐるみ擬きは未だに寝たまま。

 

 

 

 結局モモイの熱心な説得によって、一同は店に入ることに。

 実際、全員1曲分程度なら大して時間を掛けないだろうとユウカが折れた結果である。

 

 定員に案内されたカラオケルームを物珍しそうに見回すゲーム開発部の面々に、「はい」と部屋に備え付けられていたマイクとタブレットのようなリモコンを手渡すユウカ。

 一方、マイクはともかく、見慣れないリモコンについて疑問符を浮かべるモモイ達。そんな彼女達を見兼ねて、ユウカは懇切丁寧に使い方を教えていく。

 

 

 

 そんな時である。

 今まで寝入っていたカービィが、目を覚ましたのは。

 

 

 

「……あ、カービィ起きたみたいだね」

「おやつ後のお昼寝タイムが終了したみたいです」

 

 目を覚ましたことにユズが気が付き、アリスが抱きかかえていたカレの頭を撫でる。

 対するカレは、起きたとはいえまだ眠たげな様子。

 

 しかし、目に映った()()()()をみて表情を一変。

 寝ぼけ目を見開き、代わりに目を輝かせるカービィ。

 

 その様子の変わり様に目を丸くしたアリスが、カレの視線の先に()()()()を視界に捉えて、尋ねる。

 

()()()というアイテムが気になるのですか?」

 

 アリスの言葉に、何度か頷くカービィ。

 その反応を見て「もしかして」とミドリが思い浮かんだ推測を口にした。

 

「歌いたいのかな」

「この子が?」

 

 その言葉にユウカが少し驚くような素振りを見せると、ミドリの推測を裏付けるように今度は大きく頷くカービィ。

 

 意外なカレの反応に対し、ううんと考え込むモモイだったが、その内興味が湧いてきたのか、カレにマイクを手渡す。

 

「じゃあ最初はカービィからね」

「……でも、曲はどうするの?」

 

 ミドリの問いに「簡単そうな歌でいいんじゃない?」と答えるモモイ。

 どちらにせよ言葉を発せない上に、キヴォトスの言語を理解していないカービィでは、メロディーに沿って鼻歌のような歌い方しかできないと踏んで、童謡のような比較的易しめな曲がいいと判断したようだ。

 

 それからリモコンで曲の予約を行うと、すぐに室内に備え付けられているモニターの映像が切り替わり、曲のタイトルが映し出された。歌う本人はというと、マイク片手にモニターの前で既に準備完了していた。

 

 スピーカーから曲のイントロが流れる中、”どんな歌い方なのか楽しみだね”と”先生”が口にすると、アリスが「はいっ」と心の底から楽しそうに頷いた。

 

「歌といえば、色々なバフ効果をもたらします。きっとカービィの歌もアリス達にバフ効果をもたらしてくれるはずです!」

「ふふ、そうだね」

 

 意気揚々としたアリスの言葉に、微笑みながら頷くミドリ。

 上手いかどうかは別として、きっと和む結果に終わるだろうと予想したのだろう。

 

 何より、歌うのを心待ちしているカービィの楽し気な姿は、彼女達にとってそれだけで癒しになる。流れるイントロのリズムに合わせて体を揺らす様子も、その一環として担っていた。

 

 そんなカレのご機嫌な様子を微笑ましく見守る一同。

 そして――いよいよイントロが終わり、Aメロ部に差し掛かろうとしていた。

 

 

 

 ――とある言葉が、ある。

 

 歌は本来、人々の心を豊かにし、()()()()()をもたらす。

 

 

 

 ――それとは別に、こんな言葉もある。

 

『なんで■■■■自身はあのすさまじい歌にけろっとしていられるんだろ』

『あたりまえだろ、フグが()()()()で死ぬか!?』

 

 

 

 自分の好きな事が相手に幸せな結果をもたらすとは限らない。

 時として、()()を起こしてしまうこともまた事実。

 

 そしてよりによって、それを本人が自覚していないことがあるのも――また事実。

 

 

 

 Aメロに入る。

 

 笑顔を浮かべたカービィが息を吸う。

 

 

 

 ――――()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 それ以上、語ることは無い。

 何故ならその場にいる者達が、例外なく一斉に気を失ってしまったからである。

 

 

 

 ――これは後で判明したことだが。

 

 

 

 件のカラオケ店は爆撃にでもあったかのように、瓦礫の山と化し――

 

 その周囲の建造物の一部を崩壊させ、通行人の何名かが失神したとかなんとか。

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

1-3

 

 

 

 モモイが話を終えたと同時に、取調室に流れる気まずい空気。

 そうしたのは自分であることは重々理解していたモモイは、相手に問い掛けることもできず。

 

 

 

 あれから気を失った彼女が目を覚ました時には、既にヴァルキューレ警察学校の保健室にいた。

 

 起きてからも、しばらく頭痛が収まらなかったモモイ。

 そんな彼女に追い打ちするかのような出来事が。

 

『起きて早々ですが、これから取り調べを行いますので準備をお願いします』

 

 と、ヴァルキューレの生徒に告げられ、口をあんぐりするモモイ。

 それから考える間もなく、あれよこれよと取調室に連れられてしまったのだった。

 

 

 

「……つまり、飼っているぬいぐるみロボットが歌った瞬間、失神して何も覚えていない――と」

 

 重苦しい空気の中、口を先に開いたのは取り調べを行っていたカンナ。

 モモイの話を要約した彼女は、話を端的に纏めて相手に確認を取る。

 

 その言葉に、後ろめたそうに頷くモモイ。

 そうした反応になってしまったのには、2つ理由がある。

 

 1つはカービィに容疑を向けてしまう言い方になってしまったこと。

 尤も、事実を話す上でこれは避けようがない。どっちかというと彼女の性格上、気になってしまう点であった。

 

 

 もう1つは――

 

 

 

 その時、くわっと怒りの形相を浮かべたカンナが、勢いよく机を叩いた。

 瞬間、「ひえ」とモモイの肩が跳ねる。

 

「そんな言い逃れが通じると思うか!?」

「ホントだもん!」

「ロボットが歌ったら失神した? もっとまともな嘘を吐け!!」

「ホントだもん!!」

 

 

 

 ――こんな話、誰が信じんの? という不安からであった。

 

 

 

 カンナの怒号に、駄々っ子のように応じるモモイ。

 哀しいことに、こんな嘘みたいな話をどうにか信じさせないといけないモモイであった。

 

「なら、今ここで歌わせて証明しろ!」

「死にたいのッ!?」

 

 カンナの言い分に、あんまりな言葉で返すモモイ。

 しかしはっきりと記憶にはないが、間違いなく殺人的大音波を身に受けたと身体が訴えている彼女にとってカンナの発言は、自ら命を絶ちに行く者の言葉にしか聞こえなかった。

 

 そんなモモイの反応に対し、内心戸惑いを抱えていたカンナ。

 現場での叩き上げで培われてきた彼女の経験が、目の前の少女が嘘を言っているわけではない、と訴えていたからである。

 

 なお犯行手口について、当初彼女は”隠し持っていた爆破物による自爆テロ”だと睨んでいた模様。寧ろそっちの方が、まだ信憑性が高いまである。

 

 涙目を浮かべるモモイを目の前にしてどうしたものか、と彼女は頭を悩ませる。

 すると、取調室の扉が開かれ――「失礼します」という言葉と共に姿を現したのは、彼女と同じヴァルキューレ生。

 

「カンナ局長、他の容疑者から調書が取れたのですが……」

 

 と、前置きした彼女の報告に耳を傾けるカンナ。

 しかし結局、今しがたモモイがした話と同じく”歌を聴いた瞬間、失神した”という報告ばかり。こんな嘘っぱちじみた話に口裏を合わせる意味が分からず、彼女は難しい表情を浮かべる。

 

 ――と、思いきや。

 

「――ただ1人だけ、()()()という生徒がそのぬいぐるみを庇うような発言をしまして……」

「ほう……」

 

 今までと違う話に、目を光らせるカンナ。

 本来容疑の掛かったグループは全員の口裏を合わせるのが定石だが、逆にそれがボロを生む切っ掛けにもなる。今回は口裏を合わせ切れなかったのが原因と考えたようだ。

 対して、モモイが緊張した面持ちで息を呑む。

 

 一体どんな言葉が飛び出して来るのか。

 報告に来たヴァルキューレ生の言葉を、各々の心境で待つ両者。

 

 一方、彼女はどこか困ったような表情を浮かべ――

 

 

 

「――()()()()()()()()()()なだけで、悪意はありません――と……」

 

 

 

 ――それは本当に庇っているのか?

 

 残酷なまでに正直なアリスの感想。

 それに対して、何とも言えない表情を浮かべたカンナとモモイだった。

 

 

 

 それからしばらくして。

 結果的に、モモイ達は無事釈放された。

 

 彼女達が店を訪れて5分もしない内に店が崩壊した、と意識を取り戻した店員からの証言から、容疑者として扱われていたモモイ達だったが、証拠不十分ということで解放されたのであった。

 容疑者の中にミレニアム生徒会の役員やシャーレの”先生”が交じってることで、”こんなテロ行為、わざわざする必要あるのか”という疑惑の声が上がったのも理由の1つだったとか。

 

 ちなみに、失神した”先生”が揺れる電車の中で会った少女に『こんな理由でここに来ないで下さい!』とお叱りを受けた夢を見たとかなんとか。

 

 ぬいぐるみを歌わせ事実確認を行うという声もあったが、”先生”も含めた容疑者一同による決死の食い止めによって、第二の被害を免れたのであった。

 

 かくして、この事件は通り魔による爆撃事件として公表されるのであった。

 その結末に納得できない局長が、行きつけの屋台でおでんとウーロン茶をきめたとか。

 

 

 

 一方で、解放された彼女達はこの日から”ある鉄則”が作られた。

 それに対し、誰も否定の声は上がらなかった模様。

 

 

 

――この子に マイクを 与えてはいけない――

 

 

 

 ――余談であるが。

 

「すみません。この前から計画していたカレの歌声のレコーディングの件ですが――」

 

 後日。

 何も知らずに部室へ訪れたコタマを、全力で止めるゲーム開発部の面々。

 

 そんな彼女達を不思議そうに見つめる、カービィだったとか。

 

 

 

  【 つ づ く 】

 

 

 




●タメになる☆TIPS集



【尾刃カンナ】
→水着衣装といいどんどん可愛い要素が露見してくなこの人……

【イチゴの乗ったショートケーキ】
→(`・ω・´)きっと食いしん坊のデデデ大王のしわざに違いありません。
 鬼かよ

【そう言われてしまうと弱いのが早瀬ユウカという人間】
→お金が絡まなければ大体許してくれそう

【カラオケ店、”Lucky Cat”】
→コラボ繋がりでエンジニア部も道連れ入れたかったけど大人数だと表現しきれなくて泣く泣く断念。

【ウルトラマリンシスターズ】
→スーパーマリオシリーズが今年で40周年目と聞いてビビったわ。

【あたりまえだろ、フグが()()()()で死ぬか!?】
→F先生のこういうセリフ回しが大好きなのです。

【『こんな理由でここに来ないで下さい!』とお叱りを受けた夢】
→ガメオベラるとボロクソ言われるゲームがあってだな……

【この子に マイクを 与えてはいけない】
→1回で良かったね^^
 ある作品だと255回できるようになるバグ技もあるからな(白目)



 次はメイド部編。


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