Spring Sky StarS! 作:笹ピー
腹いせで帰りにカービィチャンビッグぬいぐるみ2体クレーンでとった私を許しておくれ……。
それよりバンドナツガチャでピックアップすり抜けてノアが出たわ何やってんだアロナァ!! Switch2もすり抜けたのは内緒^^
3-1
ある日の昼下がり――ミレニアム生徒会役員用のオフィス。
数週間前に開催された”ミレニアムプライス”が無事終了し、学区内も落ち着きを見せ始めた頃。
ミレニアム生徒会である”セミナー”も、この間起きたタワー襲撃による後処理が一段落し、普段の日常が戻りつつあった。
――そんな最中、モニター画面に表示された文章に目を通したまま頭を悩ませる少女が1人。
その様子を気に掛けたセミナー役員の1人――生塩ノアが、少女に話し掛ける。
「何かお困りごとですか、
彼女の問いかけに気が付いたのか、顔をそちらの方へ向けた少女――早瀬ユウカは難しい表情を浮かべて、事情を説明する。
「……さっき、会長から指示書が送られてきたんだけど……」
「リオ会長から、ですか?」
ユウカの言葉に少し驚きつつ訊き返すノア。
それにユウカは頷くと、送られた指示書の内容を口にした。
――ゲーム開発部に在留している未確認生物について、可能な限り情報の報告を命ずる――
大まかに内容を要約するとそんな内容であった。
指示書の内容を把握したノアが戸惑う様子を窺わせると、再度ユウカへと問い掛けた。
「未確認生物、とはやはり……」
「カービィのことでしょうね、間違いなく」
断言したユウカが、改めて文章へと視線を向ける。
その視線には微かに疑惑の念が込められていた。
ここ最近、彼女の悩みの種であったタワー襲撃において不審な行動を見せた2人の人物。
1人は、事前に襲撃者側であるヴェリタスの部長――明星ヒマリの情報リーク。
もう1人は、この騒動を起こした生徒や作戦に加担したシャーレへの抗議といった処置を講じないまま、静観に徹したミレニアムサイエンススクールの生徒会長――調月リオの対応。
この間の襲撃に関して、あの2人が裏で手を組んでいたのでは――?
ここまでの事実を踏まえ、ユウカの脳裏にそんな考えが過ることもあった。
とはいえ物的証拠はなく、あくまでも状況証拠に基づく想像。
何より、リオとヒマリの仲の悪さはセミナー内では有名な話であり、両者が協力する可能性は低いと考えるのが現実的であった。
――この指示書を見るまでは。
「つまり、その子の潜在能力……ひいては情報を得るために?」
「……あるいは、別の子を探っていたとか」
「例えば、アリスちゃんとか」と、推測を重ねるユウカ。最近はあのピンクの生物に注目が行きがちだが、彼女もまた謎多き生徒であることも事実である。そのついでにカレの存在に目を付けた、とも考えられる。
身元不明の2人の正体を探る為に――もっといえば”ミレニアムにとって実害を及ぼす存在"であるか、否か。
共通の目的――それも自身の学園を守るという目的であれば、あの2人も一時的に手を組むこともありえない話ではない――というのがユウカの見解であった。
尤も、これも想像に過ぎない発想ではあると彼女も理解しているが。
何れにしろ――思惑はどうあれ、カレについてユウカも確かめたいことがあるのは確か。
これを機に、改めてカレの素性を明らかにすべきだと考えているようだ。
早速、ゲーム開発部へと足を運ぼうと椅子から立ち上がるユウカ――に続くように、ノアも立ち上がる。
彼女の行動に「ノアも来るの?」と意外そうな顔をしたユウカ。
それに対し、ハイ、とにこやかに相槌を打つノアは――
「私個人としても、その子たちに興味がありますので♪」
と、どことなく楽し気に声を弾ませたのであった。
それから、件のゲーム開発部へと訪れる事となった2人。
これから向かう、という趣旨の連絡は一応入れたが、何かに集中しているのか応答は返ってくることはなく、仕方なくそのまま訪ねることとなった。
普通に考えれば、新しいゲーム開発に没頭していると考えるのが常だが――
「――うわぁぁんっ! 最後の最後でやられたぁ!」
「惜しかったね、さっきのコンボがミスらなければ……」
――ゲームはゲームでも、遊ぶ側としての業務に没頭している模様。
遊んでいた格闘ゲームで逆転負けを喫してしまったモモイが悔しそうに声をあげる様子を、隣でミドリが励ますように声を掛けていた。
「相手はダウン後に、ガードの択が多かったから……次は投げ択を混ぜるといいかも」
「なるほど、対戦相手の癖を読むことが約束された勝利に繋がるのですねっ」
一方で、先ほどの対戦についてアドバイスするユズの言葉に、合点する様に頷くアリス。
そんな彼女の膝元で、カービィは相も変わらずお昼寝タイムを謳歌しているご様子。
それを後ろから眺めていたユウカが溜息を吐く。どうやら彼女達2人が室内に入ってきたのも気付かない程に熱中していたようだ。
初めてゲーム開発部を訪れたノアもこの展開は予想外だったのか、少し目を丸くしていた。
「――ずいぶん、忙しそうね」
とはいえこのままでは話が進まないので、皮肉混じりに声を掛けたユウカ。
その声に気が付いたモモイ達が振り返り――「げぇっ、ユウカ!」とモモイが気持ちの良いぐらいに驚愕のリアクションをとる。
「こ、これは新たなゲーム作りの着想を得るために、新たなジャンルのゲームに挑戦してみようと……!」
「私の記憶が正しければ、この間”先生”に買ってもらった
説明じみたユウカの指摘に、閉口を余儀なくされるモモイ。詰みである。
言い逃れのできない状況に立たされた彼女にできることは、お叱りを甘んじて受け入れることのみ。終わりである。
そんな彼女の予想通り、いつもならここでお説教が始まる――のだが今回に限り、此処へ訪れることとなった切っ掛けの方を優先したのか「まあいいわ」とユウカは流す。
予想外な彼女の発言に耳を疑ったモモイ達の反応は意に介さず、そのまま不思議そうに見つめてくるアリス――の膝元で眠る生物へと目を向ける。
一方のアリスはユウカを見つめていたというより、彼女の少し後ろで控えていた見慣れない人物へ視線を向けていたようで――その視線に気付いたノアは彼女の疑問を察したのか、自身の身元を明かす為に一歩前に出る。
「はじめまして。セミナーの書記を担当しています、生塩ノアといいます」
よろしくお願いしますね、と言葉尻に加えながらアリスに微笑みかけるノア。
片や、ノアの自己紹介に耳を傾けていたアリスは徐に頷いてから「なるほど、新たな出会いイベントの発生ですね」と、目を輝かせ――
「パンパカパーン! アリスはノア先輩とフレンズになりました!」
と、笑みを浮かべた。
そんな彼女の反応に少々驚いたのか数回目を瞬かせるものの、次第に微笑ましいものを見るようにノアは頬を緩ませる。
すると立て続けに、「カービィ、イベント発生ですっ」と声を弾ませたアリスは、膝元で眠るオトモの体をユサユサと揺する。その振動に気付いたカレは、のっそりとした動作で起き上がりながら欠伸をつき、寝惚け眼のまま辺りを見渡す。
そうしている内に見慣れない人物の存在に気が付き、目をパチクリさせながらその方へ視線を向けるカービィ。その視線を受けたノアは、目線を合わせるため身を少し屈めながら「はじめまして、ノアといいます」と、やはり微笑んで挨拶する。
挨拶をされた以上、此方も返さねば無作法というもの――とまでは考えてはいないが、笑みを浮かべて”ハーイ”と片手を上げて元気に返事を返すカービィに、「はい、よろしくお願いしますね♪」と彼女も返事を返すのであった。
そんな光景を眺めていたユウカの横顔を覗き込んだモモイが、首を傾げながら呟く。
「なんでニヤニヤしてんの?」
「し、してないわよっ!?」
モモイの指摘に。頬を赤らめ焦りながらも否定するユウカ。
相変わらず、愛らしい存在にはガードが甘くなるのであったとさ。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
3-2
何はともあれ、ここへ訪れた理由――カービィへの聴取が目的だとモモイ達に明かしたユウカ。
実際は生徒会長からの御達しであるのだが、その点に関しては伝える必要が無いと判断し、そのあたりの事情は省略した模様。
そして、話を一通り聞き終えた彼女達は、早々に難しい表情を浮かべる。
「聴取、って言っても……」
「カービィは、その……しゃべることが、できなくて……」
困った様子で眉を寄せるミドリとユズの呟きに対し、「でも意思の疎通はできてるじゃない」と意見するユウカ。その言葉にアリスが少し肩を落とした調子で答える。
「ホームポイントでも何度も話しかけてみましたが……どうしても言葉を話すことができませんでした……」
「っていうか、話せたら私たちの方が話を聞きたいぐらいだってば!」
アリスの言葉を引き継ぐように、文句を漏らすかの如くモモイが声をあげる。
その応答に、今度はユウカが困ったように難しい顔を浮かべる。
そもそも意思疎通ができると言っても、小難しい話でも大体キョトンとしているカービィが、彼女達の会話を理解しきれているとはとても言い難く。云わば今のカレは、外国語のリスニングは多少できるが、スピーキングがまったく出来ないという奇妙な状況である。
今から喋れるように言語を覚えさせる、という手段も思いつくが、話の中心人物にも拘らず、既に舟を漕ぎ始めているカレに覚えられるのか――という不安がユウカの脳裏を過る。
言ってしまえば、犬や猫に喋ることができるように教えるようなモノ。
勉強の時間がお昼寝の時間に変わるだけだと、予想するのは容易いことであった。
頭を悩ませるユウカの傍らで、同じように考え込んでいたノア――だったが、室内に飾っていたあるモノに気が付くと、ある案が思い立ったのか「それなら」と前置きし、
「――質問に対して、絵で答えてもらうのはどうでしょう?」
と、周囲に提案した。
その言葉に疑問符を浮かべる一同を余所に、彼女はある方向へと指差しながら「あの絵はその子が描いたものではありませんか?」とモモイ達へと尋ねる。
指先を目で追った先には――以前カービィが描いた、ゲーム開発部のメンバーと自身を描いた絵が映った。
確かにカレが描いたものだが、初めてここへ訪れたノアが知っていることに驚愕を隠せないモモイ達。そんな彼女達を代表してミドリが「ど、どうしてわかったんですか?」と問いかけた。
「部室の中であの絵だけ雰囲気が少し違ったので、もしかしてと思いましたが――」
「その様子だと当たりのようですね」とにこやかに答えるノアに、感嘆の声を漏らすモモイ達。彼女の洞察力に驚くばかりであった。
その様子を見ていたユウカは「じゃあ、少しは話ができるってことよね」と表情を明るくする。ゲーム開発部の面々もしたことのない試みだが、カービィの反応に興味を示す彼女達が断る理由は無く。
周囲から異論が無いことを確認すると、早速準備に取り掛かるセミナーの2人。
かくして――前代未聞となる未確認生物への聴取が始まるのであった。
ということで、数枚の画用紙とクレヨンが置かれたローテーブルの前に座らせられたカービィ。少し座高が足りなかったので部室に置いてあった段ボール箱を椅子代わりにしている。
「――じゃあ、質問を始めるわ」
そんなカレと、正座しながらも真剣な表情で対面するセミナー会計役のユウカ。
その隣で、内容の記録係として書記役のノアが付き添う。
一方で、カービィの傍を陣取ったゲーム開発部の部員――その中の1人であるモモイがポツリと呟く。
「……真面目な感じ出してるけど、これって園児レベルの絵を皆で見るだけだよね」
「そう言っちゃうと、シュール感がスゴイね」
耳打ちする彼女の呟きにミドリが苦笑いを浮かべたが、「聞こえてるわよ」とジロリと睨むユウカに2人は慌てて口を噤む。
2人が沈黙したのを確認した後、気を取り直すように「こほん」と咳払いをしてから、ユウカは目の前でクレヨン片手に楽しげに身体をユラユラ揺らす未確認生命体へと向き合う。
そんなカレを見据えながら「そうね、まずは簡単な質問からしましょうか」と彼女は呟くと――
「好きな食べ物を教えてくれる?」
と、問いかける。
彼女が今まで見てきた中で、食べることが大好きなカレが最も答えやすいであろう質問で答えられるのか、と様子を伺うことにしたようだ。
ありきたりな質問にも関わらず、素直に応じたカービィは画用紙に絵を描いていく。
それから1分も経たずに描き終えたのを確認した一同は、絵に注目する。
描かれていたのは――赤色で塗られた少し不格好な楕円形の絵。そのほかの特徴としては真ん中部分に”M”に似た黒文字が書かれていることと、上の部分に緑色で塗られた蔕のようなものが付いていることぐらいか。
「……な、なにかしらこれ」
「なにかの果物……でしょうか」
カレの描いた絵を前にして、考え込むユウカとノア。
お世辞にも上手いとは言えない画力も相まって、その正体に頭を悩ませている模様。
「マンゴーじゃない?」
「トマトに見えなくもないけど……」
「ドラゴンフルーツ……じゃない、よね」
「世界樹の実ではないでしょうか?」
同じく隣から覗き込んだゲーム開発部の面々も、それぞれ思い浮かんだ予想を口に出していく。とはいえ、確たる自信をもって答えた者は誰一人もいないのだが。
彼女達は知る由も無いが――これこそ、カービィの大好物である”マキシムトマト”。
その美味さもさることながら、一口食べれば失われた元気もたちまち復活する不思議なトマト。実はミドリの予想は当たっていた。
当然だが、キヴォトスにそんな奇跡じみた食べ物は存在せず。
ううむと絵の正体に悩む彼女達を余所に、最近口にしていない好物の味を思い返していたカービィは、懐かしむようにこっそりヨダレを垂らす。
しばらくナゾの実について考えていた一同だったが、埒が明かない、と判断したユウカが一先ず次の質問を投げかけることにした。ひとまず答えられるのかを確認できただけ、良しとしたようだ。
寧ろ今のは小手調べも同然――ここからが本番であると彼女は気を引き締める。
「――ここに来る前に、あなたが暮らしていた場所を教えてくれる?」
彼女の言葉にモモイ達の間で一瞬のどよめきがわく。
2つ目にして、なかなか核心を突いた問いであった。
対する回答者は特に動じることなく、無邪気に頷いてから新たな画用紙へと絵を描いていく。特段、秘密にすることでもない様子。
一体、何が飛び出してくるのやら。
期待と不安が綯い交ぜになった感情を抱いたまま、描き終わるのを彼女達は待つ。
やがて描き終えたのか、カレが得意気に絵を見せつける。
描かれていたのは――黄色のヒトデのようなモノに、輪っかが2つかかっている絵。
「こ、これまた難解な……」
「ヒトデ……じゃないわよね。流石に」
再び頭を悩ませるような絵に戸惑うモモイの一言に続くように、浮かんだ考えを口に出しては、すぐに考え直すユウカ。暮らしていた場所と聞いて、急にヒトデが出てくるとは考えにくかったようだ。
またしても頭を悩ませることとなるのか――と思われた中、「少しいいでしょうか?」と落ち着き払った声色でノアがカービィへ問いかける。
「――これは星……というより
事実確認するかのような彼女の問いに対し、カレはニコニコと笑みを浮かべて素直に頷く。
その反応に、なるほど、と微笑んで納得するノア。
そんな2人とは対照的に、他の面々が驚愕に目を見開いた。2人は簡単に流したが、今のやり取りに重要すぎる点があった。
要約するのであれば――カービィは此処ではない惑星から来た、ということになるだろう。
すなわち、ソレを意味するのは――
「――――カービィは外なる星からやってきた、宇宙人だったのですね!」
目を輝かせたアリスが、自分の事の様に嬉しそうに声を弾ませた。
そんな彼女とは対照的に、「いやなんとなくそんな気はしてたんだけどさ」と前置きしたモモイが、絵を指差しながら困惑げに口を開く。
「こんな惑星見たことないんだけど!?」
「というかコレ、ほんとに惑星なの? ゲームとかに出てきそうな星って感じだけど……」
彼女の言葉に同意するように、訝しげに絵を見つめるミドリ。彼女達――というより世間一般的に、惑星と云えば球体というイメージからか、星型の惑星があるとは信じられない様子である。
あまりの荒唐無稽な話に、半信半疑な様子を伺わせる2人――そんな双子の姉妹に「で、でも」と躊躇いがちにユズが意見を口にする。
「カービィがこんなウソをつく必要……ない、と思う」
その言葉に、「うっ」とたじろぐモモイとミドリ。
彼女の言う通り、”素直・正直・実直”がトレードマークのカービィが態々こんな嘘を吐く理由は無く、誤魔化すのであればノアの質問に対して、すっとぼければ済む話であった。
つまり――このおとぎ話に出てくるような惑星こそ、カレの住んでいた場所。
銀河の、遠い遠いところに存在する、呆れるほど平和な星の人であった。
(……キヴォトスの外――どころか、未開の星から来た宇宙人……って)
それを今まで静聴に徹していた――否、静聴せざるを得ない程、動揺していたユウカは、改めて目の前の存在を見据えていた。正直、発覚した事実に一杯一杯なのが彼女の本音だったとか。
加えて、生徒会長であるリオがカレについて情報を集めて欲しい、という指示書を送った理由に彼女は納得した。情報が少ないのではなく、情報がまったく無い状況だからこその今回の指示。
カレの情報を得ることが目的ではあったモノの、得られたモノは予想の遥か上を超え、それはあまりにもユウカ1人では手に負える案件では無く。
――もしかしてこれ、すごく面倒なことになったのでは?
そう思わざるを得ない彼女は、そのまま疲れたように溜息を零すのであった。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
3-3
日が暮れ、空が夕焼け色に染まる頃。
つい先刻、セミナーのオフィスに戻ってきたユウカとノアは早速パソコンと向き合い、報告書の作成へと勤しんでいた。
――しかし、ユウカはここを出る時よりも頭を悩ませている模様。
げんなりした表情を浮かべる彼女に苦笑しつつ、ノアが声を掛ける。
「少し、予想外な顛末になりましたね」
「あの子が絡むと、大体そうなるのよね……」
深々とため息をつくユウカ。
何より、あの宇宙人は聞かれたことを素直に答えていたに過ぎない為、文句のつけようも無いのが却って性質が悪いとかなんとか。
カレが未開の星からやってきた存在だと判明してからも(正直、何が飛び出してくるのか些か恐怖感を抱きつつ)質問を続けたユウカ。
とはいえあまり踏み込んだ内容は避け、その星の住民について尋ねてみることに。
それに応じたカービィは、画用紙いっぱいに使い、不可思議な生物を次々に描き始める。
カレに似た容姿もいれば、まったく似てない生物もいたり――ハムスターや鳥、魚に似た生物も存在していた。
結局、1枚の画用紙に何十体もの生物が描かれることとなった――が、画力が追い付いていないせいかユウカ達には奇妙な生物としか認識されなかった模様。
その後もいくつか質問を続け――日が傾き始めたタイミングを頃合いに、2人はオフィスへと戻ってきたのであった。
「……これ、会長は信じるかしら」
内容をざっと纏めた報告書を作り終えたユウカが、ポツリと呟く。
至って真面目に作っているつもりなのだが、読み返せば読み返すほど正気を疑われるレベルの内容であることが気になって仕方がないようだ。
未開の星――少なくともあの場にいた彼女達が知り得なかった惑星。
カレはそこからやって来た、と思われる星外生物。
大まかに要約するのであれば、そんな内容で。
相手が納得する姿が想像つかないユウカは、思わず後ろ向きな言葉を漏らしてしまう。
「どう判断するにせよ、それが事実ですから――後は会長の判断に任せましょう」
そんな彼女を、コーヒーの淹れたマグカップを差し入れながら励ますノア。
一言礼を述べてからカップに口をつけたユウカは少し考えた後、「……それもそうね」とある種の開き直りを見せた。相手が相手なだけに、下手な誤魔化しは通用しないことも理由ではあるが、なにより彼女自身そういった腹芸が得意ではないが故の判断であった。
ノアの言葉に幾分気が紛れたせいか、少し余裕がでてきたユウカは、今まで尋ねなかった疑問を彼女に問い掛けた。
「ノアは信じてるの? あの子が、その……宇宙人って話」
「私、ですか?」
その問いにノアは首を傾げる。初対面でありながらいきなりとんでもない事実に対面した彼女の心境がユウカは気になったようだ。
それから少し目線を泳がせ、考え込む素振りを見せるノアの言葉を静かに待つユウカ。
やがて考えが纏まったのか、微笑みながら彼女は答えた。
「少なくとも、嘘はついてないと思います」
「……まあ、嘘をつくような子じゃないと思うけど」
普段の能天気っぷりを思い返し、何とも言えない表情を浮かべたユウカ――に対し「いえ、それ
もそうなのですが」と、ノアが先の言葉に籠められていた意味を伝える。
「今日初めてお会いして――友達想いな子なんだな、と思いました」
最初に、部室に飾られていた絵が彼女の脳裏に思い浮かぶ。
アレこそ驚愕の事実を知る切っ掛けでもあり――彼女がカレの人となりを知る切っ掛けでもあった。
そして、次に彼女が思い浮かんだ光景は――
『――アリス、カービィのいた星をもっと知りたいです!』
好奇心に瞳を煌めかせたアリスが、未知を秘めたオトモへ意気揚々と語りかける。今まで知り得なかったカービィの事実を知れることに、嬉々とした様子であった。
その言葉に笑顔で頷いたカレは、楽しげにクレヨンを走らせ、絵を描いていく。単純にお絵描き自体を楽しんでいるのもそうだが、描いた絵に律義に反応を返してくれるのが面白いようである。
それから草原と森が入り混じった絵を皮切りに、今まで冒険した場所を描写していくカービィ。
それを見て、彼女はまた嬉しそうに頬を綻ばせるのであった。
――そんな光景を思い返していたノアが、微笑む。
「そんな子が、友達を騙すようなことをするとは考えにくいですから」
「ずいぶん、あの子のこと買ってるわね……」
「ユウカちゃんは違うのですか?」
意外そうな声をあげたユウカに、今度はノアが尋ねる。
虚を突かれたのか「えっ」と反応してから、複雑な面持で口をまごつかせるユウカだったが、
「……ま、まあ、いい子だとは思うけど」
と、少し照れくさそうに答えた。
なんだかんだ彼女自身、あのピンクボールのことは気に入っているご様子。
そのいじらしい反応にニコニコと笑みを浮かべるノアを見て、揶揄われたことに気付いたユウカは「も〜っ、ノア〜!」と頬を赤らめる。
――これから、もっと賑やかになりそうですね。
夕焼けに照らされた室内で。
拗ねたように不満げな表情を浮かべる親友を宥めつつ、これからのことを、楽し気に予期するノアであった。
――モニターのバックライトだけが明かりとなる、薄暗い一室の中で佇む一人の少女。
モニターに映るのは、ある場面が映った映像。
彼女の視線はその映像に向けられていた。
【これは星……というより
【カービィは外なる星からやってきた、宇宙人だったのですね!】
モニターから発せられる音声に、少女は静かに耳を傾ける。
その表情はどこまでも冷静沈着なものであったが、彼女の脳内では映像から判明した事実について考えを巡らせていた――決して、馬鹿馬鹿しい絵空事と断じず。
――未開の惑星から来た、異星人――
――そして、未知の能力を秘めた存在――
少女が思考を重ねている間に、次なる映像へ切り替わる。
次に映るのは、ユウカから送られてきた報告書の内容と、カレが描いた絵。
絵に描かれているのは、カレと似た未知の存在と思われる生物の姿。
その絵を視界に入れた少女は、ほんの僅かにだが眉間を顰めた。
(コレを見る限り……アレと同じ生命体は多数存在すると考えるべきね)
他の存在がカレのような能力を持っている筈が無い――と考えられるほど彼女は楽観視していなかった。寧ろこの瞬間、未知の生命体について対応を慎重にするべきだと考えている様子。
単体で、ミレニアムの最高戦力でもある美甘ネルを撃退できる能力の持ち主。
それが他にも存在するのであれば――
――下手を打てば、報復行為もあり得ない話ではない。
と、真剣に考えてしまう程であった。
とはいえ、あのピンクボールが侵略行為に及ばないとも言い切れない状況で、少女としては何もしない、というわけにもいかない。
幸い、彼女にとって
そうして方向性を固めた彼女は、報告書のある部分へと視線を向けた。
【――未だ不明な点が多々ありますが、私個人の所見ではカレは敵意や悪意と云ったものが希少であり、少なくともこちらに害意を及ぼす意思は見受けられない、と考えます】
その一文に続くように【以上ご報告を申し上げます】と、報告は締めくくられていた。
それから、内容を確認し終えた少女は無意識に――ポツリと呟く。
「……随分と、慕われているようね」
声色こそ平坦なモノ。
しかし、彼女としては抑えていたつもりの、僅かながらの困惑が表情に浮かんでいた。
――自分よりも、周りから信用を得ていることに疑問を抱くかのように。
(……別に、気にするようなことではないわ)
合理的な思考ではない――。
そう断じ、沸き立つ感情を押し殺すと、鉄仮面のような表情へと戻る。
こうして、いつもの様に心に蓋をした少女――調月リオは。
改めて今後の計画について、思慮を重ねていくのであった――。
――ふとモニターに映ったままの未確認生命体の集合絵へと視線を向けるリオ。
彼女が見つめる先には、目元だけ露出させている特徴的な仮面を付けた生物の絵。
それを見た彼女は、
(悪くないデザインね)
――などと、僅かに目を輝かせて思ったとかなんとか。
【 つ づ く 】
●タメになる☆TIPS集
【約束された勝利】
→武内社長はあと何体増やせば気が済むのだろうか……もう手遅れとか言うな
【挨拶をされた以上、此方も返さねば無作法というもの】
→お労しや 兄上
【マキシムトマト】
→”左右反転で描け、かつボリューム感があり、白黒でもおいしげに見え、文字情報を乗せても大丈夫なデザイン”でトマトっていう発想は脱帽でしたわ。
【呆れるほど平和な星】
→皆まで言わんでもいいっ
【ハムスターや鳥、魚に似た生物】
→陸 空 海
【草原と森が入り混じった絵】
→すべてはここから
【目元だけ露出させている特徴的な仮面を付けた生物の絵】
→ロボプラのステッカーのらくがき版を想像してくだしあ。アレを悪くないデザインって言ってるだわこの人。私も大好きだけど
【調月リオ】
→セミナーの話だしちょい見せ程度に登場。え? コユキちゃん? そ、その内ね
次はエンジニア部編。
最近筆が遅くてすまぬ……すまぬ……。