Spring Sky StarS!   作:笹ピー

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 気付いたら前回投稿から2カ月経ってたとかマジ? お盆も終わってたとかマジ?

 大変お待たせして申し訳ありません。仕事忙しかったのもあるけどぶっちゃけ筆がまったく進まんかった。あたまいいひとがうまくかけないよおぐええ。
 チェックもあんまできてないから誤字とか誤用も多いかも。いつも多いとか言わない

 エアライダーはよやりたいのだ。



Ex.004:常識という理性を捨てる者達

4-1

 

 

 

「――――お金が無いっ!」

 

 某日。昼前の時間帯にて。

 ゲーム開発部の部室に、1人の少女の声が木霊した。

 

 部室に入るなり奇行を行う少女に他の面子が驚く一方で、いつものことか、と唯一異なる反応を見せていた彼女の妹――才羽ミドリが呆れたように問いかけた。

 

「お姉ちゃん、またゲームに課金したんでしょ」

「いやちが――……くないけどそうじゃなくて!」

 

 その指摘に少女――才羽モモイは違う、と云わんばかりに頭を振る。

 ただし課金については事実の模様。

 

 すると彼女は、制服のポケットから1枚の用紙を取り出し、続けてローテーブルに勢いよく叩きつけた。その用紙を疑問符を浮かべながらも一同は覗き込んだ。

 

 彼女達の視界に入ったのは、”部活動予算明細書”と書かれた書類。先程、ユズの代理として部長会議に出席したモモイが生徒会の役員から渡されたモノである。

 そこには部費として給付される金額や、部室の維持費や備品に掛かる費用などが表記されていた。宛先は当然、ゲーム開発部である。

 

 これがどうかしたのか、と疑問に思う周囲の心情を察して、「ここ見て、ここ!」と憤慨した表情を浮かべたモモイが用紙のある個所を指した。

 

 彼女の指先が示したのは”実績手当”の欄。

 部の実績に対して、それに見合うだけの金銭を生徒会から支給される手当である。主にミレニアムの発展または貢献――などといった功績を立てた部活動が対象となるようだ。

 

 一方、モモイが指差した枠内に記載されていた金額は――1,600円。

 

 つまりゲーム開発部に充てられる実績手当は小学生のお小遣い程度、ということを示す他ならない。

 

「ありえなくない!? 私たち、ミレニアムプライスで特別賞取ったじゃん!」

「わ、私に聞かれても……」

 

 プンスカと憤るモモイに詰め寄られたミドリが、困り顔を浮かべる。

 相当腹に据えかねているご様子である。

 

 そんな彼女の様相に首を傾げたアリスが、いつものようにお菓子を頬張っているオトモを抱き抱えながら尋ねた。

 

「モモイはなぜあんなにも怒っているのですか?」

「たぶん、特別賞って響きだから、手当もいっぱい貰えるものと考えた、のかな……」

 

 アリスの疑問にユズが憶測交じりに答える。しかし彼女の性格を考えると十分にあり得る話であった。残念ながら、元々用意されていた賞では無かったために、彼女の期待とは裏腹に金額は低く見積もられてしまったようだが。

 

 何れにしろ、ミレニアムプライス特別賞を除けば、それ以降目ぼしい功績を挙げていないゲーム開発部がそれ以上の手当が貰えるわけでもなく。

 至って当然の結論なのでは、と思わなくもないミドリだったが、彼女の姉は納得がいかないのか、

 

「――実績を作ろう!」

 

 と、湧き上がる感情のまま、高らかに声を上げた。

 その発言に「いやいや」と、戸惑いの表情を浮かべ意見するミドリ。

 

「いきなり作れるわけないでしょ。何か策でもあるの?」

「もちろん、私だって考えなしに行動しないって!」

 

 ふふん、と自信ありげに不敵に笑うモモイに怪訝な視線を向けるミドリ。

 前向きさだけならカービィにも負けてないのでは、とか思ったりとかなんとか。

 

 そんな妹の心情など知る由もないモモイは、周囲へと語りかけた。

 

「そもそもどういった作品が評価されやすいとか、私たち分かってないわけじゃん?」

 

 モモイの言葉に「まあ確かに」と頷く面々。

 今までは廃部阻止に必死だったこともあり、とにかく良い作品を作ろうと奮起していたゲーム開発部だが、彼女の言う通り功績として認められるモノが何たるかを理解していると言い切れないのも事実。

 

 当然、それはモモイにも当て嵌まる――が、本人もその自覚はあるのか、1つの案を口にする。

 

「だから、ここは()()()()に知恵を借りない?」

「ベテラン?」

 

 その言葉にミドリが訊き返すと、そう! と大きく頷くモモイ。

 

「ミレニアムで、最も実績を残しているところと言えばもちろん――」

 

 

 

「――……なるほど。それで私たちのところへ来た、と」

 

 ここへ訪れた理由について、今まで説明を受けていた少女――白石ウタハが合点がいったように頷いた。

 

 最もミレニアムに貢献している部活動、と考えた末にモモイが思い浮かんだのが、エンジニア部。実際、彼女達の技術力は自治区だけではなく、学区外まで知れ渡っているのは紛れも無い事実。そういう意味で頼る相手としては間違っては無いのかもしれない。

 

 そういった理由から、発案者でもあるモモイを先頭にエンジニア部へと訪れたゲーム開発部。

 対するウタハは、ううむと少し悩んだ様子で「私たちと君たちとでは作品の方向性が違うからあくまで参考程度だが」と、前置きを述べてから――

 

「例えば――これを見てどう思うかな?」

 

 人差し指と親指で何かを摘むような手振りを見せつけた。

 虚空を摘むような手草に首を傾げるモモイ達――だったが、唯一アリスだけが何かに気が付くと反射的に口を開いた。

 

「目の前に薄い生地を検知しました。主に綿で構成されているようです」

「え? でも何もないように見えるけど……」

 

 その言葉に困惑を覗かせたミドリを余所に、抱き抱えられていたカービィがなんとなくの違和感を感じたままに、身を乗り出すように手を伸ばした。

 

 すると、突き出された手の先で――ほんの一瞬、揺れるように景色が()()()

 

 予想だにしなかった現象に、ギョッとモモイ達は目を疑う。

 それに対し、気持ち良いぐらいに驚愕してくれた彼女達の反応に得意げに微笑んだウタハ。それからすぐに今の現象について説明をしようと――

 

「説明しましょう!!」

「うわびっくりした!」

 

 突然、背後から響き渡る大声に肩を跳ねるモモイ。

 すかさず振り返ると、そこにいたのはエンジニア部1年生、豊見コトリ――その隣では同じ部のメンバーである、猫塚ヒビキが挨拶代わりなのか、小さく片手を振っていた。

 

 それから、周囲の反応など意に介さず、出番を得たと云わんばかりに目を輝かせながらコトリはハキハキと説明を始めた。

 

「これこそ、ミレニアムプライス第7位に選ばれたウタハ先輩の発明――"光学迷彩下着"です!」

「え、し、下着?」

 

 得意げに語られた説明に、今度は耳を疑うモモイ達。

 つまり今の彼女の言葉を信じるのであれば、目の前にあるのは()()()()()()()()穿()()という事である。

 

 思わず「な、なんで下着なの?」とミドリが困惑気味に尋ねるが、「見えない下着って面白くない?」と逆に聞き返すヒビキ。ちょっと何言ってるのかわかんないので、ミドリはそれ以上問い掛けることを止めた。

 

 常軌を逸する発想力に各々が困惑した表情を浮かべる中、「まあともかく」とウタハが一度話を戻す。

 

「残念なことに下着としてはごく僅かな生徒にしか興味は持たれなかったが……迷彩機能は各方面から評価されてね。結果的には受賞に至ったわけさ」

「そ、それだけで受賞されたんですか……?」

 

 控えめながらも驚く様子を覗かせたユズに対し、「そういうものだよ」と頷いてからも彼女は話を続ける。

 

「独創的な作品でも要所要所で光るモノがあれば、評価はされる。だから私たちは拘りたい部分は徹底するようにしているんだ」

「……それが切っ掛けで、他所から依頼が来ることもあるしね」

 

 補足を付け加えたヒビキの一言を皮切りに、意外そうな反応を返すモモイ達。実績を数多く保有するエンジニア部から、そのような話が出てくるとは思っていなかったようだ。

 

 とはいえ、今の話に通ずるものがあったのか――

 

「確かに、ゲームバランス悪くてもシナリオが面白いおかげで密かに評価されるゲームとかってあるよね」

「キャラデザが良くて、大手会社に声掛けられたって話はよく聞くかも」

 

 ――などなど、ゲーム関連でも良くある話なのか、理解を深めた模様。

 

 その反応を見て、一先ず納得を得たことに安堵するウタハ。

 それから一旦話を締め括ろうと口を開こうとして――

 

 

 

 ――ふと、何かを思いついたのか不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

「……そうだね、ちょうど良い機会かもしれないな」

 

 そう、呟いた彼女の視線は、キョトンと体を傾げたカービィへと向けられていたのだった。

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

4-2

 

 

 

 エンジニア部を訪れてから今に至るまで、正直話に付いていけてなかったカービィ。

 

 とはいえアリス達からすればいつものことであり、寧ろ寝ていないだけでも普段の行いからすれば割と珍しい事だったりする。

 別にお昼が近くて、お腹が空いたから起きていたわけではない。

 

 何はともあれ、夢の世界へと旅立たなかったカレは今――

 

「というワケで、これが今開発中の児童向け二足歩行メカ――”あしがーる君”プロトタイプだ」

「なにが”というワケ”なの!?」

 

 不思議そうな面持ちで、屋根など無い半球形の操縦席に座らされたカービィを見据えながら、得意げに語るウタハ。そんな彼女に対し、今まで呆然としていた4人を代表してモモイが声を上げた。

 

 先程、何かを思い付いたウタハはすぐさま部員2人へと耳打ち。

 すぐに話を把握したコトリとヒビキが意気揚々と何処かへ駆け出してから――アレよコレよという間にピンクボールは、この半円球の胴体に寸胴な両足がくっついているだけの珍妙な乗り物に乗せられてしまったのだった。

 

 急な展開に話が付いてけず戸惑いを見せるゲーム開発中のメンバー。

 そんな彼女達を見兼ね、天啓を得たりと言わんばかりに「説明が必要ですね!?」とコトリが目を輝かせながら身を乗り出すと、意気揚々とこのメカについて語り始めた。

 

 約10分ほど語られた説明を纏めると――これはエンジニア部の技術力に目を付けた、ある遊園地のオーナーから依頼されたアトラクション用の乗り物。『児童を対象に、誰でも簡単に操縦できることを謳い文句にしたい』というオーナー側からの要請に倣い、作られたのがこの”あしがーる君”だった。

 

 事細かに語られたコトリの説明に各々の理解度に差はあれど、一先ず開発の経緯を理解した4人。その一方で、どことなく落ち着かない様子のアリスが当然の疑問を口にした。

 

「で、でも、どうしてカービィが操縦役なのですか?」

「……だからこそ、かな。あの子が操縦できればある種の証明になるから」

 

 彼女の問いに答えたのはヒビキ。小さく笑みを浮かべつつ、その理由を語り出した。

 

 児童向け、と口で言うのは簡単ではあるが、実際の所どこまで手を施せばいいのか、彼女達にとっても不確定要素。おおよそ完成していると言ってもいいぐらいにまでは開発は進んだが、肝心の操縦の簡易化については未検証のままだった。

 

 動かし方はわかる――しかし、それは自分達が開発者であるからして当然のこと。

 ならば周囲に頼む――しかし、三度の飯よりも研究好きなミレニアムの生徒では、検証相手としては不向きかもしれない。

 

 そこで、小難しい話にも理解が追い付かずキョトンとするのが日常的なこの桃球生物が――子供以上に単純明快なカレが操縦できれば、ある程度の検証材料を得られると考えたのだった。

 

 尤も、彼女達もこじつけに近い理由であることは理解しているのか「まあ、カレが動かせるのか興味あるのも理由の1つだけど」と苦笑気味にウタハは本音を漏らす。

 

 何はともあれ、その理由に一先ず納得したアリスを初めとするゲーム開発部のメンバー。

 なし崩し的に搭乗者となった本人に至ってはよくわかってないにも係わらず、断ることもなく楽し気に返事を返す始末であった。

 

「ではカービィ! まずは目の前の操縦桿を握ってください!」

 

 カレの反応を了承の意であると読み取ったコトリが、早速指示を飛ばす。

 彼女の言葉を受け、先端に皿のようなモノがくっついた棒状の操縦桿へと注目するカービィ――何故か三箇所の持ち手がついているコントローラーのスティックが頭を過ったのはさておき。

 

 ともかく指示通り操縦桿を握ると、今度は「ゆっくりと前に倒してください!」とコトリから次の指示が飛ぶ。それに従い、操縦桿をゆっくり倒していくと――

 

「わっ、動いた!」

 

 カレが乗っていた機体が動き始め、それを見たモモイが驚愕とも興奮ともとれる声を上げた。

 確かに機体は操縦桿の倒した方向へと二足による前進をゆっくりと行っている。

 

 彼女が動き出したことに軽く感動を覚えるその一方で、隣でその様子を眺めていたミドリが「でも」と一言前置きしてから、素直に思ったことを口にした。

 

「ちょっと遅いね」

「うん……、アトラクション用だから、かな?」

 

 彼女の言葉に同意するようにユズが頷く。

 確かにドシンドシンと重量感溢れる音を鳴らしながら歩んではいるが、その速度はお世辞にも早いとは言い難い。寧ろメカから降りて自分で歩いた方が早いだろう。

 

 とはいえ、アトラクション用に作られた乗り物だから別に問題ないか――と考えていたユズの思案を一蹴するかのように、突如「フフフ」という笑い声が彼女の耳に入ってきた。

 思わず振り向いた先で目に映ったのは、揃って不敵な笑みを浮かべていたエンジニア部の3人である。

 

 その様子に不気味さを感じたユズが少し怯えているのを余所に――

 

「……カービィ、今度は”弾く”ように、操縦桿を思いっきり倒してみて」

 

 と、ヒビキが指示を出す。

 その言葉にやはり素直に頷くと、指示通り操縦桿を勢いよく前へ倒すカービィ。

 

 

 

 すると次の瞬間、メカの体勢が少し前屈みとなり――なんと、その体勢を維持したまま地面を滑るように前進し始めた!

 

 

 

 急に移動速度を上げた機体に「おおーっ」と色めき立つモモイ達。

 その反応に気を良くしたのか、エンジニア部の面々が得意げな表情を浮かべていた。

 

「操縦桿を思いっきり倒すことで、ブースト移動状態に移行……上手くいった、かな」

「バーニアとスラスターの出力調整も問題ありませんね!」

 

 操縦桿との連動機能の出来に微笑むヒビキと、出力調整に問題が無いことに喜ぶコトリ。

 確かに、機体の背面部と足部の踵辺りに備え付けられている噴射口から、バーナーの如く短く火が噴出され続けていた。

 

 一方で、急激に加速し始めた機体に最初は驚くカービィだったが、それもすぐ慣れる。

 操縦桿を右へ左に前へと倒し機体を操縦していく内に、徐々に操縦に慣れ始めてきたのか、それからしばらく楽し気に機体を縦横無尽に奔らせる。

 

 その様子を他の面子と並んで眺めていたモモイが、ふと思い浮かんだ疑問を口にした。

 

「でも、アレってどうやって止まるの?」

「操縦桿から手を離せばいい。ニュートラルポジションに戻ると同時に機体も停止する仕組みとなっている」

 

 その疑問にウタハが答えた後、続けてカービィへ操縦桿から手を離すように指示を送る。

 それから指示通りに操縦桿を手放すと同時に、機体は少しずつ速度を落としていき――やがてピタリとその場で停止した。

 

 一旦機体が停止したのを皮切りに、駆け足気味のアリスを筆頭に機体へ近付く一同。

 最初にカービィの元へ辿り着いた彼女は、目をキラキラと輝かせ、興奮冷めやらぬ様子であった。

 

「スゴイですカービィ! まるで”アーマード・ソウル”のような機体制御でした!」

「確かに……初めてにしては随分乗りこなしていたね」

 

 カレのまあるい頭を撫でながら褒めるアリスの言葉に、他の面々と一緒に少し遅れて合流したミドリが同意するように呟く。それは彼女だけではなく、その他の面々も、見た目とは裏腹に高い操縦技術を有していたことに感心しているようだ。

 

 

 

 そんなカレが周囲から褒められていることに照れるように笑みを浮かべる一方、あることを思い出していた。

 実のところ、ここまで上手く操縦できたのも、その時の経験が活かせたことが大きい。

 

 

 

 機械化された星を元に戻す為――

 共に星中を駆け巡った、頼もしき鋼の相棒との冒険の日々を。

 

 

 

 アリスに撫でられつつそんなことを思い出し、懐かしい気持ちを抱いたカービィだったとさ。

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

4-3

 

 

 

 試運転を始めてから、1時間ほどが経った後。

 その甲斐もあり、結果的に”あしがーる君”の命題であった操縦の簡易化は凡そ成功、というのがエンジニア部の結論だった。

 

 搭乗者の高い操縦技術は予想外ではあったが、裏を返せば操縦のしやすさに対し安定した機体制御が可能であるという証左にもなるため、彼女達にとって嬉しい誤算だったとか。

 そういう意味では”誰にでも操縦できる”という売り文句が確実なモノになったとも云えるだろう。

 

 それから、当初の目的を果たしたゲーム開発部の面々が引き上げた後――

 

「……それにしても、意外な才能だったかも」

「そうですね。人は見かけによらないと言いますが、あの子はその最たる例でしょう!」

 

 機体の点検と整備を行なっていたヒビキとコトリが先の事を思い返しながら会話に興じる。その話の種は先程まで操縦を行なっていたピンクの未確認生命体についてである。

 その傍らで、2人の会話に耳を傾けていたウタハも「確かに」と同意を示す様に呟きながら、改めてカレについて思考を巡らせた。

 

 突如、謎の少女と共に現れた謎の生物。

 そんな奇妙な生物と予期せぬ邂逅を果たした彼女の心を占めたのは――尽きぬ好奇心だった。

 

 あの小さな体の何処から生み出しているのか、不思議な驚異的な肺活量。

 軟弱そうな見た目とは裏腹の、高い戦闘能力。

 先程も垣間見せた、どんな状況でもすぐに順応する、柔軟な対応力。

 

 そして――――最も謎が多い、変身能力。

 

(まったく、次から次へと興味が尽きない子だ)

 

 そう思いながら、彼女は小さく笑みを零す。

 

 彼女にとって、未知の発見は大いに歓迎すべきモノであった。

 その出会いこそ、自分自身の見識を広める機会だと信じているが故に。

 

 何より――損得を考えず、己の信念を貫く姿勢は、彼女にとって好ましく映った。

 それが友人――仲間の為であれば、なおさら。

 

 そういったことも含めて、表立って口にすることはしていないが、カレの事を大分気に入っているウタハ。

 そんな彼女は、頼まれた仕事が達成できたことに満足して――

 

 

 

「…………まてよ?」

 

 ――――なかった。

 

 徐に、何か考え込むように眉間に皺を寄せるウタハ。

 そんな彼女の変化に、機体の整備を行いながらも気付いたコトリとヒビキが疑問符を浮かべる。

 

 

 それからしばらくして、難しい表情を浮かべつつ思考を巡らせていた彼女は、ポツリと呟いた。

 

 

 

「――――この機体、飛ぶことができるんじゃないか?」

 

 なんかまた悪い予感がしてきたのう。

 

 その言葉に、電気ショックを受けたかのようにハッと目を見開くエンジニア部の1年生。

 それから整備の手を止めるや否や、部長の元へと駆け出した。

 

「……確かに。ブースターの出力をさらに上げれば……子供の体重ぐらいなら浮くこともできる、かも」

「足部のスラスターも追加させましょう! まだ1つ、2つぐらいなら十分備え付けられると思います!」

「そうなると、背面部にウィングが必要となるな。アームは予算的に厳しいから見送ったが、これならギリギリなんとか収まるはずだ」

 

 集まるや否や熱い議論を繰り広げる3人。

 それを止める者は残念ながら此処には存在しない。

 そもそも飛ぶ必要性はあるのか、という話は彼女達が今考慮すべき問題ではないご様子。ちなみに依頼したオーナーは別に求めてない。

 

 アレやコレやと魔改造計画が進んでいく中、突如コトリが「あっ!」と何か閃いた様に大きな声を上げると、彼女の大声に慣れている2人は特に驚く様子も無く、声を発した本人へと注目する。

 

「いっそのこと――――()()()()を追加するのはいかがでしょうか!」

 

 一体何を作ろうとしているのか。

 強いて言うならば、子供が乗ることを前提にしたアトラクション用の乗り物の話である。

 

 そんな意気揚々とした彼女の様子とは裏腹に――ウタハとヒビキは少し呆然とした表情を覗かせた後、ウタハが真剣な表情で問いかけた。

 

「――……つまり、飛行状態に移る際に、機体を変形させる、ということかい?」

「……そうなると、今ある構造をもう一度作り変える必要がある。少し大変かも……」

 

 その提案に対し、冷静に問題点を挙げるヒビキの指摘にウッとたじろぐコトリ。

 彼女自身、難しいことを言っている自覚は多少あるのか「や、やはり無茶でしょうか」と彼女には珍しくやや消極的な態度で訊き返す。

 

 その発言に対して――

 

「そうだね、確かに無茶だし――何より無駄な機能ともいえる」

 

 と、自身の考えを誤魔化さずに、正直に答えたウタハ。当然の反応である。

 その言葉に若干涙目を浮かべて肩を落とすコトリだが、反論はない。部長がそういうのならば仕方ない、と理解していたからこその態度である。

 

 

 

 本来なら、それで話が終わるはずであった。

 終わるのが当然であった。

 

 

 

 それから少しの間、沈黙が訪れる。

 その間、何か考え込むように視線を彷徨わせるウタハとヒビキ。

 

 

 

 ――しばらくして、「ふむ」と小さく頷いた後、

 

()()()()()

「……うん、面白そう」

「エヘヘ、そう言うと思っていましたっ!」

 

 先程のやり取りは一体なんだったのか。

 落ち込んでいたコトリが大して驚きもしないあたり、この展開は予測済みだった模様。そもそも彼女達は難点こそ挙げたが、別に”できない”とは公言していない。 

 

 数多くの実績を持ち、他学区にもその名を響き渡らせているエンジニア部。

 しかしそんな彼女達が抱える、唯一にして最大の欠点。

 

 それは、開発に掛ける情熱と拘りが強すぎるが故の――暴走。

 

 過去にも”面白そう”という理由だけで”タバスコを撃ちだす銃”や、今回の”光学迷彩下着”を作ったこともあり、もはや常人では理解できない発想力の持ち主である。それが想像だけで済めばまだ良い話だが質が悪いことに、それを実現できる技術力を持ち合わせてしまった。

 

 特に、宇宙戦艦といった――在りし日の男子達が憧れるようなロマンに全力で打ち込んでしまうぐらいには。アリスが持つレールガンもその例に漏れない1つである。

 

 なお、その被害を大体被るのは、組織上管理しているセミナーなのは内緒。

 

 

 

 こうしていつも通り暴走し始めた問題児達は、早速”あしがーる君”の大改造計画へと着手し始める。暴走、と云いながらも予算や工程から組み直すところから始めたりと、妙なところで冷静かつ計画的であるのがなんとも。

 

 しかし、ある発明家はこんな言葉を残している。

 

 ”大事なことは、頭の中に巣くっている常識という()()を綺麗さっぱりと捨てること”。

 ”もっともらしい考えの中に新しい問題の解決の糸口はない”――と。

 

 

 

 嬉々として開発に臨む3人。

 間違いなく彼女達は、輝いていた――――

 

 

 

 ――それから、数日後。

 某サイトのネットニュースにこんな記事が載せられる。

 

『あるテーマパークで、二足歩行メカが児童を乗せたまま突如上空へ!?』

『なお児童は、隣町で無事発見された模様』

『オーナーはこの件について、無関係を訴え――』

 

 

 

「空飛ぶ変形メカだって! 凄くない!?」

 

 そのネットニュースをたまたま見つけたモモイが他の面々へと興奮気味に話題を振る。その一方で、彼女のスマホを横から覗き込んだミドリが首を傾げる。

 

「これって……こないだウタハ先輩たちが作ってたやつじゃない?」

「え? でも見た目全然違うと思うよ?」

 

 ほら、と記事をスクロールし、一緒に載せられていた画像を見せつけるモモイ。

 確かに、数日前に彼女達が見た代物とは似ても付かない造形が写し出されていた。記事にも”フライ・ガールくん”と異なる機体名が載っている。

 

 それを見て「じゃあ別物か」とミドリは納得する。

 そもそもブースター移動できる時点で過剰な機能では、とその時も疑問を抱いていた彼女だったが、いくら何でも流石に飛行機能まで付けることは無いだろうと考え直した。

 

 そんな中、居眠り中のピンクボールをなんとなしに撫でていたアリスが、エンジニア部の話が出てきたことを皮切りに「そういえば」と思い出すように呟く。

 

「今朝、エンジニア部の人たちが修行をしていました」

「しゅ、修行……?」

 

 思わずアリスの言葉を反芻するユズ。耳を傾けていたモモイとミドリも、その姿が想像つかないのか困惑気味な反応を返すばかり。

 

 

 

 対するアリスは周囲の反応に「はいっ」と頷いてから、今朝見かけた情景を思い浮かべつつ――

 

「【私たちがやりました】と書かれたカードを装備して(くびにかけて)精神統一(せいざ)をしていました。MPアップですね!」

 

 

 

 それからしばらく、足の痺れが収まらなかったエンジニア部の3人だったのであった。

 

 

 

 ――そして、足の痺れが一瞬で解消できるメカの開発に着手し始めることとなったのは、また別の話。

 

 

 

  【 つ づ く 】

 

 

 




●タメになる☆TIPS集



【お姉ちゃん、またゲームに課金したんでしょ】
→課金して何が悪いんだ(半ギレ)ガチャは悪い文明だけどな!

【あしがーる君】
→タイムマシン作れる弟がいるとかどうなってんだあの世界

【3箇所の持ち手がついているコントローラー】
→3Dスティックがよくヘタレたものですわ

【弾く】
→SMAAAASH!!

【アーマード・ソウル】
→乙る度に改造手術されそう

【頼もしき鋼の相棒】
→あなたとの思い出は忘れない

【なんか、悪い予感がしてきたのう】
→このヘアースタイルがサザエさんみてェーだとォ?

【エンジニア部】
→オチ要因には持って来いだな! と思っていた時期が、私にもありました



 次はヴェリタス。
 投稿は早くても1か月後ぐらいかも。遅くて申し訳ありませぬ。


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