Spring Sky StarS!   作:笹ピー

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 投稿前に内容チェックして、妙だな……ってコナン君みたいなことを言い出して結局修正に時間かけて投稿が後ろに伸びる奴~wwwww



 そうだよワタシだよ。


003

3-1

 

 

 

「――よし、準備完了!」

 

 ゲームプレイのセッティングを終えたミドリが、どこか充実感に満ちた声をあげる。

 

 そんな中、慣れない様子でコントローラーを握りつつ、座布団に正座してはジッと目の前のモニターに注目するアリス。その隣で、左右を挟むかのようにミドリとカービィが座っている。

 

 ――結論から言えば、アリスはゲームをすることを決めた。

 

 会話のバリエーションを増やせる、という名目で提案したミドリ自身も期待半分の案だったが、本人からの了承を得たことに、驚き半分嬉しさ半分といった感情を露わにしたまま準備を始める。

 

 大多数から酷評を貰ってしまった”迷作”とも呼べるシロモノだが、やはり自作品を遊んでもらえることは手掛けた本人として嬉しかったのか。心なしか、準備中も逸る気持ちが抑えられないミドリだったとか。

 

「……アリス、ゲームを開始します」

 

 準備が整ったことを察したアリスが静かに告げると、その言葉に連動するかのように、モニターに映像が映る。それから電子音をベースにした尊大なBGMが流れる中、プロローグが始まった。

 

 ──コスモス世紀2354年、人類は劫火の炎に包まれた――

 

 何処かで見たようなフレーズが流れる傍ら、ミドリがプレイしているゲーム――”テイルズ・サガ・クロニクル”について軽く説明を挟む。

 

「タイトルから分かるかもしれないけど、このゲームは童話テイストで、色彩豊かな王道ファンタジーRPGなの」

 

 「とは言っても、色々な要素を混ぜてたりするんだけどね」と、簡素にゲームの内容を説明していくミドリ。

 そんな彼女の説明に耳を傾けながらも、アリスは画面に映る文章を読み進めていく。

 カービィは、ぼ〜っとしていた。

 

 やがてプロローグが終わり、画面に”チュートリアルを開始します。”と表示されると、”Bボタンを押して眼の前の武器を装着してみてください”という一文が続けて表示される。

 

 一先ず表示された指示に従い、アリスは「Bボタン……」と呟きながら手元のコントローラーへと視線を落とす。そして、お目当てのBボタンを彼女は確認する。

 

 

 

 そして、指示通りBボタンを押した――その瞬間であった。

 

 

 

 突如、爆発を模した電子音が室内に響く。

 

 続いて”あなたは死にました”という、無慈悲なメッセージが画面に映し出される。

 アリスが首を傾げる。

 

 

 

 ガメオベラ。

 

 

 

「!?!?」

 

 ありのまま起こったことを把握しようと――まったく把握できず、思わず口が半開きになるアリス。隣にいたカービィも何が起きたのかわからず、目をパチクリさせる始末。

 一方、事情を知っていたであろうクリエイターの一人は、頬を引き攣らせたまま遠い目をしていた。

 

 指示通りにしたら、勇者が爆発四散した。

 なぜ。

 急展開に理解が追い付かないアリス。

 

「あははははっ!」

 

 そんな時、部室の入り口から高笑いが。

 3人が咄嗟に振り向くと――そこには先程、部室を飛び出していったモモイの姿が!

 

「予想できる展開ほどつまらないものはないよね! 本当はここで指示通りじゃなくて、Aボタンを押さなきゃいけないの!」

 

 ふふん、となぜか自慢げに腕を組みながら、今起こった現象を解説するモモイ。

 そんな、いつになくテンションが高い彼女に、ミドリが気になったことを尋ねる。

 

「お姉ちゃん、学生証を作りに行くって言ってなかった? それに先生は?」

「遅い時間だったからか誰もいなかったの。先生はまた明日来るって」

 

 「明日とりに行く」と言いながらミドリの隣に座るモモイに「ふうん」と納得した後、「それにしても改めて見てもちょっと酷いと思う」と呟きいたミドリがアリスへ同情の念を抱く。

 

 そんな彼女の視線の先で、しばらく唖然とした様子を露わにしていたアリス――だったが、「も、もう一度始めます」と、少し声を震わせながらもコントローラーのボタンを押し、ゲームを再開することに。

 

「……テキストでは説明不可能な感情が発生してます」

「あっ、それ分かるかも! きっと”興味”とか”期待”とか、そういう感情だと思う!」

「どう考えても”怒り”とか”困惑”だと思うけど……」

 

 困惑した表情を覗かせるアリスの一言にズレた共感を示すモモイに対し、ミドリは頬を引き攣らせながら指摘する。

 

 ともあれ気を取り直しプレイを再開したアリスは、再び先程の場面へとゲームを進める。

 それからこんな仕様にしやがった元凶の言う通り、チュートリアルの指示を無視しAボタンを押した。

 

 すると、今度は”武器を装備しました”と表示され、ゲームが進展する、と思いきや――

 

 ”エンカウントが発生しました!”

 ”野生の プニプニ が現れた!”

 

 突然、画面にテキストとスライムのような絵が共に表示された。

 

 いきなりの展開に戸惑うアリスの横で、カービィがフンすと云わんばかりに意気込んだ顔で画面に注目しだす。それを傍目で確認したアリスも只ならぬ展開であると予期し、画面に集中しながらコントローラーを握り直した。

 

「――緊張、高揚、興味」

「Aボタンを押して! 今度は嘘じゃないから!」

 

 モモイの指示通りボタンを押すと、”わざ”の一覧が表示された。

 まだ序盤の為か、一覧には1つの”わざ”だけが存在している。

 

 【秘剣つばめ返し : 敵に対して 2回 攻撃をする】

 

 ”わざ”にカーソルを合わせ、いよいよ”こうげき”の準備が整う。

 微かに緊張を覗かせつつ、目を輝かせたアリスが「行きます」と呟いた。

 

「――――プニプニに対して……秘剣! つばめ――」

 

 意気揚々と技名を叫ぶアリス――だったが。

 

 

 

 言い切る前にモニタースピーカーから鈍い銃声音が響く。

 

 ”攻撃が命中、即死しました”という非情なメッセージ。

 

 ”プニプニ:どれだけ剣術を鍛えたところで、我が銃の前では無力……ふっ。”と、どこからともなく黒いサングラスを掛けたスライムが勝ち口上をあげる。

 

 その光景に、技名を言い切ることができなかったアリスが、口を半開きのまま固まった。

 

 

 

 ガメオベラ。

 

 

 

「!?!?」

 

 ありのまま起こったことを把握しようとして――やはり把握できず、開いた口が塞がらない状態になってしまったアリス。隣のカービィもやはり理解ができず、目をまあるくする始末。

 

 攻撃しようとしたら、勇者が銃殺された。

 なぜ。

 展開に納得がいかないアリス。

 

 一方、この展開を作りやがった元凶はうーん、と考え込みながら今のシーンを振り返る。

 

「やっぱりプニプニが「ふっ」って言うのは不自然かな」

「……ツッコミどころはそこじゃないと思う」

 

 姉のとことんズレた指摘にミドリは”ちがう、そうじゃない”と言わんばかりに頭を抱え、心底同情するような様子でアリスを見る。

 

 現にアリスは こんらん じょうたいに陥っていた。

 

「思考停止、電算処理が追いつきません――」

 

 あろうことか、思考が追い付かず顔を項垂たせ、ついには動作が停止してしまう有様。

 心なしか頭から湯気があがっているようにも見えるのは、きっと気のせいでは無く。

 

 その様子を見ていたカービィが慌てて近くにあった下敷を持って、アリスを冷ますように扇ぎ始める。なお下敷きはミドリの私物の模様。

 

「ア、アリスちゃん? 大丈夫?」

 

 流石に心配になったのか、おそるおそる様子を伺うようにミドリが尋ねる。

 すると、少し間を置いてからアリスはゆっくりと顔をあげた。

 

「――リブート、再開します」

 

 「今度は銃の射程距離を把握しながら、対処します」と呟きつつ、先程以上に真剣な表情でコントローラーを握りなおすアリス。

 その姿を見たモモイが「そう、まさにそれ!」と、共感するように喜色の声を挙げる。

 

「諦めずに繰り返して、挑戦して、試行錯誤の末に答えを見つける――それが”レトロ”チックなゲームの”ロマン”だよ!」

 

 

 

 ――ぼうけんは まだまだ 続く。

 

 

 

 それからしばらくして――ゲームが開始されてから、約2時間ほどが経っていた。

 

 モモイの言う通りトライ&エラーを繰り返し、少しづつゲームを進めていくアリス。開発者の2人が助言してくれたのも、進行の後押しになっているだろう。

 

 そんな折、クライマックスを目前に控えた場面にて――突如、彼女が頭を抱えた。

 

「――電算処理系統、および意思表示システムに致命的なエラーが発生……!」

「が、頑張ってアリス、ここさえ乗り越えれば待望のクライマックスだよっ!」

「今のはどう考えても”草食系”って言葉が思い出せないからって、それを”植物人間”って書いたお姉ちゃんのせいでしょ!?」

 

 励ますモモイに対して、この騒動を引き起こした元凶を問い詰めつつミドリが画面を指差す。

 指差した画面には「ごめんなさい。私は”植物人間”ですので、女性に対して気軽に声を掛けることはできません」と、思わず文章を二度見してしまうようなメッセージが。

 

 これを手掛けたのは当然、そこにいるシナリオライターである。

 

「アリスちゃん、一瞬意識失ってたじゃん!」

 

 ミドリの容赦無きごもっともな指摘にうぐっ、と呻き声をあげるモモイ。

 本人としては「思い出した後で直そー」と思い、そのまま忘れっぱなしにしてしまった、苦い思ひでがリフレインしたとかなんとか。

 

 そんな裏事情など知る由もないアリスが、項垂れた頭をよろよろと上げつつ、衰弱した様子で「質問」と尋ねる。

 

「どうして、母親がヒロインで、それでいて前世の妻で、さらにどうしてその妻の元に子供のころに別れたきりの腹違いの友人がタイムリープしてきているのか――いえそもそも”腹違いの友人”という表現はキヴォトスの辞書データに登録されていな――」

 

 自分で言ってて”なにいってだこいつ”と思考回路が追い付かなくなったのか、言い切る前に「エラー発生、エラー発生!」と床に蹲り、頭を抱え込んでしまうアリス。

 今まで以上に頭から湯気が湧いているのを見たカービィが、使い慣れてしまった下敷を大慌てかつ一生懸命に扇ぐ。

 

「が、頑張ってアリスちゃん! クライマックスまでもう少しだからっ!」

 

 それに触発されるように、ミドリも背中を擦りながら、アリスを必死に鼓舞する。

 正直この後もとんでもない展開が起きることは百も承知だが、此処で終わらせるのはもったいない――なんとか最後までやり切って欲しい、という懇願でもあった。

 地獄へと誘っているように見えるのはきっと気のせいである。

 

 その鼓舞によるものなのか――はたまた扇風機の微風程度による熱冷ましによるものなのか。

 ともかく、アリスは再び起き上がった。

 

「――リブート。プロセスを回復」

 

 再起動を果たし、ふう、と一息ついたのち、再びコントローラーを握りなおすアリス。

 その表情にはある感情を覗かせていた。

 

「――これが、”ゲーム”……」

 

 ”期待”と”興奮”。何が起こるかわからない、予測できないことに対しての、感情。

 このゲームを始めるまで、アリスが持ちえなかった”モノ”。

 

 無意識によるモノなのか――それでも、少女には微かな笑みが浮かんでいた。

 

「――再開しますっ」

 

 

 

 ――まだ見ぬ”未知”に期待を乗せ、彼女は再び、電子の世界へと歩みだすのであった。

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

3-2

 

 

 

 時刻は夜中の9時ごろ。

 日はすっかり落ち、月明かりが照らされる中。

 

 モモイと別れた”先生”はその後、所属している”シャーレ”のオフィスにてデスクワークを行っていた。

 彼女達の様子が気にならないといえば嘘になるが、溜まっている仕事と、ある”調べもの”を考慮し一度引き上げることにした模様。

 

 静寂に包まれた室内の中、キーボートのタイピング音だけが鳴り続き――やがて業務に一通り目途が立ったのか手を止めると同時に、椅子にもたれながら背筋を伸ばし、”先生”は凝り固まった体を解す。

 

 それから、少し一息つこうかなと”先生”が考えていた――その時だった。

 

『――”先生 "! 少しお時間いいですか?』

 

 彼のデスクに置いてあるタブレットから、女の子と思わしき声が響く。

 その声に驚く事もなく、”どうしたの、アロナ?”と応答する”先生”。

 

 ”アロナ”。

 それは”先生”が持つタブレット――”シッテムの箱”に在駐するシステム管理者であり、メインOS――ただしOSと謳いながらも画面に映っているのは、水色のショートヘアーをした人間の女の子であった。

 

 とはいえ、その見た目から想像できないほど高い性能を持っていることは確かであり、銃弾をまともに受けてしまえば致命傷となりうる”先生”が生徒達と行動できるのも、偏に彼女のおかげと言っても過言ではない。

 

『改めて情報を集めましたが――やっぱり該当する情報はありませんでした……』

 

 そう告げた彼女が、シュンと肩を落としながら『ごめんなさい……』と謝罪の言葉を口にした。

 

 それを咎めることなく、”そっか、気にしないで”と”先生”は優しく慰める。

 データの情報収集能力に秀でた彼女が一度ならず二度も探して見つからないのであれば、本当に存在していないか――あるいは厳重に秘匿されているのだろう、と考えたからこそ。

 

 尤も、どんな結果だろうと彼女を責めるつもりなど”先生”には毛頭無かったのだが。

 

 その言葉に安心したのか、笑みを浮かべ――ほどなくしてすぐに真面目な表情に切り替えたアロナが口を開く。

 

『これは私の見解ですが……アリスさんはともかく、”カービィ”さんはおそらくキヴォトスの外から来たのではないでしょうか?』

 

 彼女の予想に、”先生”も同意するように頷く。

 ”先生”の調べもの――それはあの廃墟で見つけた”カービィ”のことだった。

 

 あの廃墟でカービィを見つけた時、”先生”にしか聞こえないアロナの声は告げていた。

 カレは、”キヴォトスにおいて確認されていない生命体である”と。

 

 アリスも謎の多い存在であることは確かだが、”生徒”に模した姿からキヴォトスに関与する者が創り上げたものと推測できる。

 一方でカービィについては、一切の情報がない始末。そもそも、生物と分類していいのかさえも分からない始末。

 

 その後カレの様子を観察し、アロナに情報収集をお願いした結果――結局、情報を得られず、今に至る。

 

 一方で、外からやって来た来訪者とではないか、というアロナの意見に同意した”先生”だったが、それはそれである疑問を抱いていた

 

”私も知らなかったんだよね……”

 

 キヴォトスの外からやって来た当人も、カービィという存在は知りえなかった。自身の記憶を思い返してもあのような生物、見たことも聞いたことも無い。

 外からやってきた可能性は高いが、いったい何処か来たのか、という答えを”先生”は持ち合わせていなかった。

 

 そのような存在に心当たりがないかと考える”先生”。

 すると、ある人物が脳裏に浮かんだ。

 

 ”黒服”

 

 以前”先生”が関わった、ある事件の裏で暗躍していた人物。

 ”ゲマトリア”という組織の者。

 

 キヴォトスに満ちる神秘・真理・秘儀を解明しようと――ある”生徒”を実験体に仕立てようと企てた大人。

 

 彼は自身を”キヴォトスの外部の者”であり、”先生”とは違う領域から来た存在である、と語った。

 その言葉を信じるならば、”先生”の認知から――あるいはキヴォトスの認識から外れた世界から来たとも言える。

 

 その点だけ見れば今回のカービィにも当てはめることができるだろう。

 もっとも、カービィがあの黒服――ゲマトリアに連なる存在であるとは到底想像がつかなかった”先生”。ゲーム開発部で見せたあの笑顔が嘘とは、”先生”には到底思えなかったのだ。

 

 

 

 純粋無垢で、好奇心旺盛かつ友好的な性格。

 ”黒服”という男が纏っていた雰囲気とは、似ても似つかなかった。

 

 

 

 ”ひとまず……様子見、かな”

 

 迷いを見せつつも”先生”が告げると、アロナは『わかりました!』と元気よく頷く。

 どちらにせよ明日、ゲーム開発部に顔を出すのは確定事項なので、その際に再度様子を確認しようと考えつつ、未だに溜まっている仕事に”先生”は取り掛かることにした。

 

 

 

 願わくば、カレが彼女たちにとって良き存在であるように、

 そう願いながら――

 

 

 

 ”先生”が業務を再開し始めた、その一方。

 苦節、約3時間――少女は苦難を乗り越え遂に魔王討伐を果たしていた。

 

 こうして、世界は救われたのであった……。

 

「こ、ろ、し、て…………」

 

 代償になんか色々失ったようにも見えるが。

 

「すごいよアリス! 開発者二人が一緒とはいえ、3時間でトゥルーエンドなんて!」

 

 疲労感と達成感によるものなのか、床にうつ伏せになっているアリスの肩を揺らし、感嘆の声をあげるモモイ。その横でミドリも感極まった様子でウンウンと頷いている傍ら、周りの雰囲気につられてかカービィも嬉しそうにピョンピョンと小さく跳ねていた。

 

「――……長く、苦しい戦いであった」

「な、なんかアリスちゃんの喋り方のパターンがどんどん多彩になってきてる……!?」

 

 ポツリと呟いたアリスの言葉遣いに、驚くミドリ。

 最初のころの無機質な喋り方は多少鳴りを潜め、少しづつだが言葉の表現方法が増えていきつつあった。

 

「――勇者よ、汝が同意を求めるならば、私はそれを肯定しよう」

 

 正しい方に改善されているのかは不明だが。

 身体を起こしながら告げたアリスの言葉に、モモイは「そう、かも?」と何とも言えぬ表情で首を傾げる。

 

 その様子にまだまだ学習が必要だ、と思い直したところで「それより」と、ズイッとミドリがアリスに詰め寄る。

 

「こういうのを面と向かって聞くのは緊張するんだけど……わ、私達のゲーム、どうだった? 面白かった!?」

 

 期待と不安が綯い交ぜになった表情で、彼女はアリスに尋ねる。

 開発者としてやはり感想が気になる、といったところだろう。言葉こそ出さなかったが、開発に携わる1人であるモモイも、妹と同じ様子でアリスの反応を窺っていた。

 

 それに対し、アリスは考え込むように目を閉じ――やがて、ポツリと呟く。

 

「……説明不可、類似表現検索」

「え、ええっ!? なんで!?」

「も、もしかして、悪口を探してる……? そんなこと無いよね?」

 

 彼女の思いがけない発言にモモイとミドリが慌てふためく。

 そのまま沈黙するアリスを、そわそわとした様子で彼女達は見守る。

 

 そして数秒ほど経ってから、彼女の口が再び開く。

 

「――……面白さ。それは、明確に存在」

 

 アリスが出した評価に、「おおっ」と色めきだつ姉妹。

 今まで酷評しかなかった作品が、初めてゲームを体感した者に評価されたことが何よりも嬉しかったようだ。

 

 嬉しさに目を輝かせる2人を傍目に、アリスは自身が抱いた率直な感想を、少しづつ言葉にしていく。

 

「プレイを進めれば進めるほど、まるで別の世界を旅しているような……夢を見ているような、そんな気分……もう一度……」

 

 

 

 もう一度――噛み締める様にそう呟いている、その時。

 アリスの蒼い瞳から一筋の涙が伝った。

 

 

 

 その様子を見た3人が、思わず驚く。

 

「あ、アリスちゃん!? どうして泣いてるの!?」

「き、決まってるじゃん! それぐらい、私たちのゲームが感動的だったってことでしょ!」

「い、いくらなんでもそれは……というかこのゲーム、ギャグ寄りのRPGのはずだし……」

 

 困惑するミドリの指摘を余所に、モモイは興奮した様子で断言する。

 

 一方、自身が泣いていることに疑問を抱いているのか、当人も困惑した様子だった。

 厳密にいえば網膜部に搭載された冷却水の放出だが、なぜ誤作動したのか彼女にも理解できず。

 

 そんなアリスを心配したのか、カービィが傍に置いてあったティッシュ箱を上に持ち上げながら彼女の元へ持ってきた。

 それを目にしたアリスが、ひとまず涙を拭こうと箱に手を伸ばそうとし――その手はモモイに握られたことで遮られてしまう。

 

「――ありがとうアリス! その辺の評論家の言葉なんかより、その涙の方が100倍嬉しいよ!」

 

 アリスの手を両手で握りながら喜色満面の笑みで感謝の言葉を告げるモモイに対して、不思議そうに眼を瞬かせるアリス。

 

 ただ思った感想を述べていただけなのに、なぜこんなにも嬉しそうなのか。

 

 彼女の中で浮かび上がる疑問。

 しかし、その笑顔を目にした途端――胸の奥から何かが湧き上がってくる感覚を覚える。

 

 一方、彼女の心情など知る由もないモモイが「あー、早くユズにも教えてあげたい!」と、ここにいない人物へ思い馳せるかのように、残念がっていた。

 

 

 

 ――その言葉に反応したのか。

 

 

 

「──……ちゃ、ちゃんと全部見てた」

 

 少しくぐもった上に震えている声が聞こえると同時に、部室の隅に配置されていたロッカーの扉がギギギ、とひとりでに開く。

 

 それに、ギョッとした様子で4人がそちらへ視線を向け――視界に入れたと同時にモモイが「ああっ」と驚いたように声をあげる。

 

()()! そこにいたんだ!」

 

 視線の先では、長い橙色の髪におでこが少し特徴的な少女が、少し開かれたロッカー扉の隙間からこちらを伺うように、顔を覗かせていた。

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

3-3

 

 

 

「あれだけ探しても見つからなかったのに……いつからロッカーの中にいたの?」

 

 戸惑いつつも、少女の近くに駆け寄るモモイとミドリ。

 一方、先の質問に対し、ユズと呼ばれた少女が目を伏せつつ「み、皆が廃墟から戻ってきた時から」と答える、それを耳にしたミドリが「だいぶ前じゃん!?」と驚きを露わにする。

 

 そんな和気藹々とした3人の様子を遠巻きで見ていたアリスとカービィ。

 それに気付いたのか「あっ」と思い出したかのように、モモイが2人に説明する。

 

「アリスとカービィは初めてだよね。この人が私たちゲーム開発部の部長”花岡ユズ”こと、ユズだよ」

 

 その紹介にアリスは理解を示す一方、件の人物へと身体を向けたカービィは、”ハーイ!”と笑顔を浮かべつつ、片手を挙げては元気よく挨拶する。

 

 そんなカレの勢いに怖気づいたのか、ユズは「ヒッ」と小さく悲鳴を挙げる。

 ロッカーから様子を見ていたのである程度は知ってはいるが、やはり正体不明の存在ということもあってかまだ慣れていない様子。

 

 とはいえ挨拶をしてもらった手前、何もしないわけもいかず、おずおずと控えめに彼女は手を振り返す。それに対し、カービィも楽し気に両手いっぱいに振りかえした。

 

 そんなやり取りを終えた後。

 ちらちらとアリスの方へと視線を向けていたユズ――だったが、意を決したように少しづつ歩みだし、やがて彼女の前まで足を進める。

 

 その唐突な行動を目にしたアリスは、意図が読めず首を傾げる。

 一方、ユズ本人は緊張が勝っているのか「えっと、あの、その」と言葉を詰まらせ、なかなか次の言葉が出てこない。

 

 そんなもどかしい状況は、数秒ほど続き――覚悟を決めたのか、ユズが口を開く。

 

「――…………あ、ありがとう」

 

 囁くような、気弱な声だったが、確かにそれは感謝の言葉。

 突然のことに目を丸くするアリスだったが、それに構わずユズは続ける。

 

「ゲーム、面白いって言ってくれて……もう一度やりたいって言ってくれて…………泣いてくれて……」

 

 先程、耳にした言葉を思い返し、声を震わせながらも懸命に想いを伝えるユズ。

 

 周りからは散々たる評価を受けた作品だが、それでも彼女にとって大切な仲間と創り上げた作品。

 それを面白かったと、もう一度やりたいと、泣いてくれたことが、彼女にとって救われた気持ちになれた。

 

 

 

 ゲームを愛するからこそ、ゲームを楽しんで欲しい。

 その想いが伝わったことが、嬉しくて。

 

 

 

「――本当に、ありがとう。面白いとか、もう一度とか……そういう言葉が、ずっと聞きたかったの……!」

 

 か細く、震えた声ではあったが。

 涙を零した少女が、花咲くような笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 それから、アリスに色々なゲームを知ってほしいと、矢継ぎ早に各々のお気に入り作品を薦め始めるゲーム開発部の3人。

 一応、ゲームをすればするほど彼女の感情表現が精錬されていく、という建前はあるのだが、どちらかと言えば自分の好きなモノを知ってほしい――ゲームをもっと好きになってほしい、というの気持ちの方が強いのは疑いようなく。

 

 片や、アリスからも否定の声は無く、むしろ期待に満ちた表情で取り組む姿勢を見せ、今か今かとモニターの前で待機していた。

 

「――けど、ミドリも思い切ったことするよね。まさか私たちの作ったゲームを初っ端から薦めるなんて!」

 

 そんな中、次のゲームの準備を行っていたモモイが、ミドリへ話し掛ける。

 結果として面白いと評価してくれたから良かったものの、周りの評価は散々たるモノである作品を薦めるのは、確かに肝が据わっているとしか思えないだろう。

 

 一方、彼女の問いかけに対して、ミドリは少し複雑な表情を浮かべる。

 

「まあ、プレイを薦めたのは私だけど……最初見つけたのは私じゃないよ」

「……んん? どういうこと?」

 

 意味あり気な発言に対して首を傾げるモモイ。

 そんな彼女の反応に対して、ミドリは座布団に座りながらアリスと同じくゲームの開始を待っているカービィに視線を向けた。

 

「あの子が最初に見つけてきたの」

「カービィが?」

 

 モモイの言葉に「うん」とミドリが頷く。

 

 その答えに「ふうん」と一時納得した様子のモモイ、だったが何か思うところがあったのか、”テイルズ・サガ・クロニクル”のゲームソフトを手にしてカービィの元に近づく。

 

「ねえカービィ、どうしてこのゲームを持ってきたの?」

 

 その声に反応したのか、カービィはモモイの方へと目を向ける。

 

 「流石に偶然じゃない?」と指摘するミドリだったが、モモイは「もしかしたら何か意味があるかもしれないじゃん」と何かに期待しているようだった。

 それを隣で聴いていたアリスや、少し遠めから耳を傾けていたユズも興味があるのか、2人の方へと視線を向ける。

 

 そんなモモイの問いに対して、片手を口元に当て考える素振りを見せるカービィ。

 するとヨイショ、と体を起こし、ある方向にまあるい手を指す。

 

 それにつられ、四人が手の指す方へ視線を向けるとそこには壁に立て掛けていた姉妹の”銃器”――モモイとミドリの愛銃があった。

 

 その意図が読めず疑問符を浮かべる4人を余所に、ニコニコと笑みを浮かべるカービィは今度はモモイの方へ指す。

 片や、自分が指されるとは思ってもなかったからか、「えっ、わ、私?」と慌てる彼女を横で見ていたミドリが、あることに気付いた。

 

「お姉ちゃんじゃなくて、ゲームソフトの方じゃない?」

 

 ミドリが指摘すると、確かにカービィの手はモモイというよりも、その手に持っているゲームソフトに向けられていた。

 

 つまりカービィはゲームソフトと二人の銃器になんらかの関連性を見出したから持ってきた、ということに。しかしそれが分からず、ゲームソフトを見詰めながら「ううむ」とモモイとミドリは頭を悩ませる。

 

 一方、いつの間にか2人の傍まで近づいて来ていたユズが、ふと何かに気付いたようにゲームソフトの表面を見つめ――それから、先程カービィが指示した二人の銃器の方へ顔を向ける。

 その際に。銃器に刻まれた”あるマーク”を確認する。

 

 そして、モモイに断りを入れてからゲームソフトを受け取った彼女は「もしかして……」と、ある箇所を指しながら尋ねる。

 

「……この”エムブレム”があった、から……?」

 

 おそるおそる確かめるユズに、何度も頷いてはニコニコと笑みを浮かべるカービィ。

 他の3人もその箇所に目を向け――それを目にした途端、モモイとミドリが「あっ」と口を揃えた。

 

 指示された箇所には、ドット絵でデフォルメ調に描かれた桃色と緑色のオッドアイを持つ白猫の顔。

 

「ゲーム開発部のエムブレム……」

 

 あらためて銃器を確認すると、確かに同じマークが刻まれている。

 経緯としては、棚を探っていたカービィが見つけたゲームソフトに、モモイとミドリの銃器に描かれていたマークが記されていたことが気になり、ミドリへ見せつけた――といったところだろうか。

 

 そう仮説を語ったユズの話に「なるほどなー」と、納得するモモイとミドリ。

 一方、謎を解いた彼女は表情を緩ませ、懐かしむようにそのマークを見つめていた。

 

 その様子が気になったアリスが、「どうかしましたか?」と尋ねると、ユズは当時を思い出すかのように語り始める。

 

「このエムブレム……このゲームを作るときに、作られたの」

「あ、そういえば。その時まで無かったんだよね」

「提案したのお姉ちゃんでしょ? ”このマークを見て私たちが作ったことがわかるようにしよう”って」

 

 ユズの言葉に触発されたのか、モモイとミドリも当時のことを懐かしむように思い返す。

 

 

 

 ――モモイが3人の好きなモノの要素を兼ね備えたエムブレムにしようと言い、

 ――ユズがそれぞれの要素を纏め、

 ――ミドリが試行錯誤して絵描き、

 

 そうして、ゲーム開発部のエムブレムとなった。

 ユズの――3人の大切な思い出である。

 

 

 

 思い出話に花を咲かせている中、ふと考えるユズ。

 

 もし、モモイが二人を連れてきてなければ、

 もし、カービィがこの”ゲーム”を持ってこなかったら、

 もし、ミドリがアリスにプレイを薦めていなければ、

 

 

 

 今、この時間を。こんなにも暖かな気持ちで迎えられただろうか――

 

 

 

「ユズ?」

 

 話の最中に急に黙り込んだ相手が気になったのか、モモイが呼びかける。

 

 その言葉にハッと我に返ったユズが「な、なんでもないよ」と慌てて取り繕う。

 モモイもそこまで心配していたわけでもないからか、「そう?」とあっさり納得する。

 

「――それより、早く次のゲームの準備をしなくちゃね! アリスも待ちわびたでしょ?」

「現在、期待・興奮の感情指数が上昇中です」

「いや、元はと言えばお姉ちゃんが発端でしょ……」

 

 そんな会話をしながら、モニターの前で準備を再開する姉妹と、期待を胸に座布団に正座して待機するアリス。

 それに倣い、カービィも先程まで座っていた座布団へ戻ろうとして、

 

「あ、ま、まって……っ」

 

 と、控えめながらも慌てた様子のユズに呼び止められる。

 

 急な制止の言葉に身体を傾げるカービィに対し、できるだけ距離を近付けようとしゃがみこんだユズ。それから彼女は囁くような声で語り掛ける。

 

「え、えっとね。アリスちゃんには言ったけど、アナタには言ってなかったから……」

 

 そう前置きしてから、一呼吸を挟む。

 それからすぐに、想いを込めた言葉を贈る。

 

 理由はどうあれ――切っ掛けをくれた、小さな桃色の訪問者へ。

 

 

 

「――――ありがとう。これから、よろしくね。”カービィ”」

 

 少女ははにかんだ笑みを浮かべては、カレを迎える。

 それに応えるように、カレも満面の笑みで頷く。

 

 

 

 少なくとも、彼女にとってこの出会いは幸運だった、と語られるのは、また別の話である。

 

 

 

 【 つ づ く 】

 

 

 




●タメになる☆TIPS集



【──コスモス世紀2354年、人類は劫火の炎に包まれた――】
→ヒャッハー!

【カービィは、ぼ~っとしていた】
→ヘルパーのせいでこうなる人私だけじゃないはず

【ガメオベラ】
→OH、ガメオベ~ラ

【ありのまま起こったことを】
→ポルポル君をわざわざ階段の下まで運ぶDIO様お茶目で好き

【横でカービィがキリッとした目でフンすと言わんばかりの意気込むような様子で画面を注視した】
→アイツも最初スライムだしてたなあ

【秘剣つばめ返し : 敵に対して 2回 攻撃をする】
→3回じゃないからTSUBAME斬れないね^^

【プニプニ:どれだけ剣術を鍛えたところで、我が銃の前では無力……ふっ】
→銃は剣よりも強し。ンッン~名言だなコレは

【アロナ】
→青封筒はもういいよぉ!

【黒服】
→先生LOVE勢やぞ


 
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