Spring Sky StarS! 作:笹ピー
今年から執筆し始めた拙作にもかかわらず、色々な方にご関心をお寄せいただき、感謝の言葉もございません。こんな感じに緩々と続けていきますので、来年もどうぞよろしくお願いいたします。
え、アンケートの結果?
言わんでもええやろ(白目)
2-1
朝焼けから少し過ぎ、空が青く染まりつつある時間帯。
窓から差し込んだ陽の光に照らされ、アリスの意識は覚醒した。
休止状態から通常状態へと移行した彼女が、ゆっくりと目を開いている最中、自分が何か抱きかかえていたことに気が付く。
その違和感から、すぐに胸元へ視線を移すと、一緒に過ごしているオトモの姿が彼女の視界に入ってきた。
いつの間に抱きかかえていたのか、全く覚えが無いアリスが目を丸くする。
しかし、いつも通り呑気に寝顔を晒すカービィの様子に微笑ましさを感じたのか、次第に頬を緩ませると、起こさないよう加減をしつつ抱きしめ続ける。
そうしてしばらくの間、抱き心地よいモチモチの感触を堪能するアリス――とはいえ、このままだと時間が過ぎていく一方。
せっかく早起きしたというのに、遅刻してしまっては元も子も無い。
なので、名残惜しい気持ちを押さえつつ――
「――カービィ、新しい朝がやってきました!」
屈託のない笑顔を浮かべた、アリスの元気のいい一声が室内に響く。
その呼び掛けに気が付いたカービィは、眠たげながらも、むっくりと起きるのであった。
そんな、何気ない朝の一幕から、少し時を経て――
時刻は正午を少し過ぎた頃のこと。
ミレニアムサイエンススクールの数ある部の1つである、”ゲーム開発部”。
廃部の危機に瀕していたのも、少し前までの話。苦難の末、ひとまず廃部は免れ正式な部活動と認められてから、はや数ヶ月。
そこに所属する、部員の1人である”才羽モモイ”は、ある格闘ゲームへと興じていた。
「おりゃあーっ!」
威勢の良い声を上げながら、手元のコントローラーを忙しなく操作するモモイ。
そんな彼女と対戦しているのは、ある理由から久しく部室を訪ねていた――シャーレの”先生”であった。
「覚悟して”先生”! 今からとっておきの必殺技……”モモイスプラッシュ”を見せてあげるんだから!」
”とっておきの、必殺技……っ!?”
自信満々に笑みを浮かべるモモイに、思わず息を呑む”先生”。
ここまで豪語するからには余程自信があると踏んだのか、俄かに警戒を強めた。
「ふっふっふっ、私の戦術に死角はないよ! 先生の! HPがなくなるまで! 止まらないッ!」
恋人を傷物にされてブチギレた英国紳士みたいな台詞を吐いた後、エメラルドに似た宝石状のエネルギー弾を連射し始める、モモイの操作キャラ。
これなら離れた場所からでも攻撃できるうえに、この弾幕を捌きつつ相手に近づくことは難しい。現に近距離パワー系の”先生”の操作キャラは近づくことができず、攻めあぐねている状況。
その状況に、勝機と見込んだモモイ。
目を煌めかせ、「やあーーっ!」と雄叫びを上げながら勇猛果敢に攻め立てる――!
*おおっと* コマンドミス。
「あっ」
『オラァ!』
彼女の操作キャラが、虚空へと虚しく蹴りを放った――その瞬間を見逃さず、”先生”の操作キャラが荒々しい掛け声と共に急接近。
対するモモイは相手を迎え撃とうと、咄嗟に必殺技を振る――が焦りからかレバー入力を誤り、再びコマンドミス。
迎撃に失敗したモモイとは裏腹に、接近に成功した”先生”。
”射程距離”に入ったと見るや否や――
『オラオラオラオラオラオラァーッ!』
「うにゃあァーッ!」
目にも止まらぬ拳の連打に、残り少なかったモモイ側の体力が、見る見るうちに削られていく。その光景に思わず、猫みたいな絶叫を上げるモモイ。
――やがて、拳のラッシュが終わる頃には”再起不能”と云わんばかりに、モモイの操作していたキャラがぐったりと、地面に横たわっていたのであった。
――Player ”MOMORIA” LOSE!――
――Winner! Player ”TEACHER”!――
バァーーzンッ、とスピーカーから響く、勝者と敗者を告げる声。
それを耳にしたモモイが負けた悔しさから、床をバンバンと叩きながら不満を訴える。
「うわーん! なんで私の必殺技がでないの!?」
”モモイは焦るとレバガチャするから……”
半べそ搔いて悔しがるモモイに対し、彼女の悪い癖を”先生”は指摘する――が、数日前にも似たようなことを言われた記憶を思い出させてしまったのか、彼女は苦々しい表情を浮かべては、うぐぐぐと呻き声を漏らし始めた。
急に苦しみ始めたモモイの様子に、どう声を掛けるべきか戸惑う”先生”。
それを見兼ねてか、今まで2人の対戦を眺めていた”才羽ミドリ”が、呆れ気味に声を掛ける。
「お姉ちゃん……”先生”は今日始めたばかりの初心者だって言ってたよね」
「ミドリ、あんまり辛い現実を突きつけないで!?」
慰めるどころか追い打ちを掛ける妹の言葉に、びえーんと涙目を浮かべるモモイ。言っていることに間違いがないのが、また辛いところ。
しかし、この程度でへこたれる彼女ではなく――
「もう一回! もう一回やって”先生”! 今度は正真正銘とっておきの必殺技を……!」
躍起になって、再び勝負を挑むモモイ。
負けても諦めずに挑み続ける、その根性と姿勢は見習うところがあるかもしれない。
その反面、かれこれ彼女と連戦し続けている当の本人は”その言葉、もう8回目……”と頬を引き攣らせる始末。そんな”先生”を気遣ってか、モモイを窘めるようにミドリが口を挟む。
「もう……お姉ちゃん、その辺にしておこう? ”先生”が困ってるでしょ」
「で、でも負けたまま終わるのは、げ、ゲーマーとしてのプライドが……」
諦めの悪いモモイがワガママじみた言い訳を口にするが、それに対し「またそんなこと言って……」と、ミドリが呆れながらも眉を顰める。
「じゃあ”先生”は負けたまま終わっていいってこと?」
「うにゃあっ!? それは……そ、そう、なる……?」
痛いところを突かれたように、狼狽えたモモイがしどろもどろに呟く。
それでも往生際が悪い彼女の反応に、ますます眉を顰めるミドリだが、その一方で”私は別に大丈夫だよ”と”先生”が宥めるように、穏やかな笑みを浮かべる。
そんな”先生”の対応に、ミドリはため息を零しつつ「”先生”、あまりお姉ちゃんのこと甘やかしちゃダメですよ」と、やんわりとだが諫める。
と、同時に――
「――というか、こんなに遊んでばっかりでお姉ちゃん……今日の部活の目的、覚えてる?」
両手を腰に当てながら、モモイを問い詰めるミドリ。
片や、問い詰められた本人はきょとん、となんにも分かってないような顔を晒した後――「あっ、そうだった……!」などと言いながら、ハッとした表情を浮かべた。
「そうだった……?」
「ち、違う! 違うのミドリ! ちゃんと覚えてるから! ね!?」
不穏な気配を察知したモモイが、睨んでいる妹を必死に宥めようと試みる。
そんな彼女に追い討ちするかの如く、そういえば、と”先生”が呟く。
”何をするのか、まだちゃんと話聞いてなかったね”
「えっ、まさかお姉ちゃん……”先生”に何も説明してなかったの……?」
疑うような視線を向けられ、思わず目を逸らすモモイ。
それを見たミドリが、肩をワナワナと震わせながら、「お~ね~え~ちゃ~ん~?」といよいよ堪忍袋の緒がキレそうな雰囲気を匂わせた。
その様子に、流石に怒られる未来を予期したモモイが「い、今! 今から言うから!」と、宿題が終わってないことがバレた子供じみた言い分を口にしながら、改めて”先生”へと向き合う。
――それから、少し大げさに、オホンと咳払いを挟んでから、
「今日は――次回作のアイデア出しをしようと思って!」
と、今回の目的を明かすモモイなのであった。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
2-2
”次回作……?”
「はい、ウチもそろそろ次回作の準備をしようという話が出たんです」
先程の言葉を復唱しながら、首を傾げる”先生”に、いつの間にか隣に座っていたミドリが事の経緯を説明する。
廃部は免れたと言っても、他の部活動と比べて実績数が大きく劣る、ゲーム開発部。
そもそも、廃部の話も一時保留という扱い。今年度中に実績を挙げなければ、再び廃部の可能性が浮き上がるのは確実。おまけに貰える部費も、小学生のお小遣い程度。
そんな現状を変えるため、いよいよ新しいゲーム開発へ着手しようと部員達が全会一致し――まずはどんなゲームに作るかを、決めることに。
「そう! しかも、いつも捕まらない”先生”の手が空いたって聞いたから、これはと思って呼んでみたの!」
”……あんまり顔出せなくてゴメンね”
嬉々とした様子を見せるモモイとは裏腹に、申し訳なさそうに謝罪する”先生”。
実のところ、
少し前まで、
そのタイミングで、モモイから呼び掛けを受けたことを切っ掛けにこの部室を訪れ――今に至るのであった。
そんな”先生”の多忙さは熟知していたのか、「まあ、”先生”が忙しいのは知っているから……来てくれてありがとう!」と、気にしてないどころか、寧ろ応じてくれたことについて嬉しそうに感謝を述べるモモイ。
その器の広さに、心打たれた”先生”の目頭が少し熱くなったとかなんとか。
「とにかく! こうして”先生”に来てもらえたんだから、次回作の意見を聞けるんじゃないかな~って……すごいアイデアをいっぱい出してくれるんじゃないかな~って……」
「そういうわけで、部室に来てもらいました!」と、キラキラと期待感に満ち溢れた彼女の視線に、”う、うん……ちょっと期待が重いような……”と、目頭が急に冷めてきた”先生”は頬を引き攣らせる。
信頼されているからこその期待なのだろうが、ゲーム開発に関して素人同然の”先生”が、彼女達が求めるモノを考案できるかは、また別問題である。
そもそも、部室に来てからずっとゲームばかりやっているような――
そんな疑問を口にした”先生”に「あ、それはお姉ちゃんのアイデアなんです」とミドリが答える。
「いろんな人気作をプレイして、その上でアイデアを出してみよう、って」
「なにも浮かんでない状態でぐるぐる悩んだって、いいアイデアは出てこないじゃない? だから色んなゲームを分析しようと思って!」
ミドリの説明に補足を継ぎ足すモモイの言葉に、”なるほど、一理あるね”と頷く”先生”。
先程の対戦も、彼女にとっては貴重な分析作業だったのだろう。きっと。
その反応に気をよくしたモモイは、「ふふふ、でしょ!」と口角を吊り上げながら、得意げに語り出す。
「特にさっきやってたこのゲーム――『ジュジュの奇怪な冒険~卒業への遺産~』は、格ゲー界隈でも色んな意味で異端児と呼ばれている人気ゲームなんだ! 参考になる点が多いゲームだから、これを分析したらきっと次回作に役立つ素晴らしいアイデアが浮かんでくる! はず!」
「ウチの次回作は『まったりスローライフ系ダンジョン探索型RPG』なんです」
そう言いながら、企画書らしき書類を”先生”に手渡すミドリ。
表紙には、ゆるい雰囲気なデフォルメ調に描かれた人物がツルハシ片手に、洞窟らしき所を探索している場面を切り抜いたような、一枚絵が描かれている。
渡された企画書に目を通しつつ、”それなのに格ゲー要素が入るの?”と、至極当然の疑問を呈する”先生”――すると、触発されたかのように「何言ってるの!」とモモイが勢い良く声を上げた。
「たしかに一般人から見たら、ダンジョン探索型RPGと格ゲーに接点がなさそうに見えるかもしれない……けど、それだけで判断するのはNGだよ! 次のミレニアムプライスを狙うなら、誰にも予想がつかないような新しい挑戦が必須……――そう、つまり! 先入観を捨て、あらゆる偏見を乗り越えてこそ、新しい地平線の向こう側に辿り着ける――」
「全く関係なさそうなジャンルの要素を組み合わせたら、意外と面白いゲームになるかもしれませんし」
長々と熱く語りだす姉の演説をぶった切るかの如く、端的に伝えるミドリ。
とても分かりやすい説明に、”先生”が成程と相槌を打つ。
「あっ、ミドリ! 私のセリフを奪わないでよ!」
「お姉ちゃんがもったいぶって言わないからだよ」
格好つけたがっていたモモイが文句を垂れるが、対するミドリはしれっとした態度で返すのみ。
あんまりな妹の対応に、「うわ~ん! ひどいよー!」と姉が半べそを掻く始末。はたして姉の威厳は何処に。
ある意味、いつも通りとも云える姉妹のやり取りが繰り広げられる、そんな時。
手元の企画書に目を通していた”先生”が、感心した様子で呟く。
”みんな、新作開発に全力なんだね”
その言葉に、言い争いを止め、きょとんとした表情を浮かべる2人――だったが、口元に弧を描くと、やる気に満ち溢れた表情を浮かべた。
「そりゃあ、もちろん!」
「はい。みんなで一緒に……今度こそ”ミレニアムプライス”を取ると約束しましたから」
テンションの差はあれど、浮かべた表情から読み取れる感情は、互いに同じ。
最初の頃――
「――それが、今私たちに与えられた『クエスト』なんだ!」
活き活きとした表情で、モモイがそう言い切る。元から前向き思考な彼女だったが、
彼女に比べ、内向的だったミドリも、随分と意欲的な姿勢が現れていた。
そんな2人の成長を、微笑ましく見つめる”先生”。
一方で、思い出したかのように室内を見渡してから、2人へと問いかける。
”そういえば……”ユズ”と”アリス”――それから、”カービィ”はいないの?”
せっかくのアイデア出しをしようというのに、残りの部員2人と、未確認生物の姿が見当たらないことに首を傾げる”先生”。
一方で、その疑問に、ああ、と納得したミドリとモモイが交互に答える。
「ユズちゃんなら、ロッカーの中にいますよ。ちょっと今、手が離せないみたいで」
「さっきのゲームで潜ってるからねー。集中してるから声掛けても反応しないと思うよ?」
「集中してる時のユズって、スゴいんだから!」と自慢げなモモイの言葉に、へぇと相槌を打つ”先生”。確かに、ロッカーの方から微かに物音らしき音が聞こえてこなくもない。
そして、もう1人と1匹については――
「アリスちゃんとカービィは、確か……”先生”が来る前にハレ先輩に呼ばれて――――」
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
2-3
ヴェリタスの部員の1人であり、ミレニアム内でも屈指の頭脳を有する天才――小鈎ハレ。
主にAIやドローンの開発を得意としており、また、ハッカー技術に関して優れた技量を有する少女である。
そんな彼女から連絡を受けたアリスは、いつもの様にオトモを抱き抱え、早速ヴェリタスの部室へと足を運ぶ。なお、他の部員である小塗マキと音瀬コタマは、私用で席を外しているのか、部室には3人のみ。
用件は――以前、アリスが個人的に依頼していた、カービィの調査。
そして、今まさに、ハレ本人の口から報告を聞くところであった。
「――……調査の結果、あることが分かったよ」
体操座りのような特徴的な椅子の座り方をする彼女が、静かに口を開く。
控え目な声量にも拘わらず、彼女の声が室内に響き渡る。
彼女の言葉を、固唾を呑んで待つアリス。
一方、調査対象であるにも拘わらず、ぼ~っとしているカービィ。
対照的な反応を示す2人を見据えつつ、「結論から言うね」とハレは告げる。
そして、勿体ぶるように間を置いてから、彼女が真剣な表情を浮かべる――
――と思えば、一転して、バツが悪そうな表情を浮かべると、
「……”何もわからない”ってことが分かった」
「えっ……?」
ため息交じりの一言に、目を瞬かせるアリス。
流石に言葉の意味を理解しきれていない彼女を見兼ねてか、「順序立てて説明するね」とこれまでの経緯を、ハレは語り始めた。
依頼を受けてから、さっそく情報集めに着手し始めたハレ。
アリスが既に調べたであろう、表向きの情報から――持ち前のハッキング技術を活かし、表に出回っていない情報や各企業が抱える極秘情報など、とにかく手あたり次第に。
しかし、いくら探せど、カレに繋がる情報は欠片もなく。
それらしき目撃証言こそあったが、結局は見間違いや悪戯の範疇でしかなく。
そうして、有益な情報を得られないまま時間が過ぎていき――気が付けば、ミレニアム学区内の企業や団体が保管している、データサーバーの殆どを調べ尽くしてしまったほど。
苦肉の策として、他の学区にまで手を伸ばそうとも考えたようだが、万が一にも特定されれば、外交問題にまで発展する可能性を考慮し、流石に思いとどまった模様。
「――逆に、アリスの方は何か分かった?」
「あ……え、えっと。その」
経緯を語っていたハレが逆に問いかけると、アリスは困ったように口籠らせる。
実際のところ、カレに関する秘密を、彼女は1つ知っている。
思わぬところで知ってしまった、カレの正体。それは、
しかし、やはりと云うべきか、カレが描いた惑星はどこの文献や資料にも載っておらず、確かめる術はなく――依然として、正体不明の存在であることには変わりはない模様。アリス本人は異星人説を信じているが。
もっとも、その場で一緒に知った1人である”早瀬ユウカ”から、そのことについて口止めを言い渡されてしまった以上、この事実を外部に口外することはできない。
その一方で、ここまで調べてくれたハレならば言っても良いのではないか、という想いが彼女の中に芽生えつつある。
言おうか言うまいかで、人知れず葛藤するアリス――そんな彼女を見兼ねたハレは、気遣うように声を掛ける。
「無理に言えないならいいよ。事情は察したから」
「ご、ごめんなさい……。ユウカから『カービィが異星人だってことは誰にも言っちゃダメ』というリクエストを承諾したので、守らないとヒップドロップの刑だとモモイが……」
「うん全部察した」
せめて口止めされている理由を説明しようとしたアリスが、禁則事項までポロッと口から漏らしていることに、ハレが頬を引き攣らせながらやんわりと指摘する。
その指摘に、最初こそきょとんと可愛らしく首を傾げるアリス――だったが、やがて自分の失言に気が付いたのか、次第にあわあわと慌てふためく。
「あ、あのっ、今のは言語エラーというか、誤情報の誤発信なのでっ」
「……ふふ、じゃあそういうことにしとくね」
先程の言葉を必死に撤回しようとする様子が可笑しく映ったのか、クスリと微笑むハレ。
それからアリスが落ち着くのを見計らい、「まあ、ともかく」と、彼女はあらためて結論を告げる。
「少なくとも、ミレニアム内においてその子の情報は限りなくゼロ――あえて言うなら、アリス達が
その言葉を受け、アリスは改めて胸元へと視線を移す。
彼女の目に映るのは、呑気にあくびをしている小さな異星人の姿。それを視界に入れつつ、「アリス達が、第一発見者……」と、先程の言葉を復唱するかのように呟く。
「……ごめん。せっかく腕を信じて依頼してくれたのにこんな結果しか出せなくて」
そんな中、期待に応えられなかったことに対して、申し訳なさからかアリスへと謝るハレ。
その謝罪に、顔を上げたアリスが不思議そうな表情を浮かべてから――はっきりと「そんなことはありません」と口にしながら、ニコリと微笑んだ。
「ハレ先輩の情報収集スキルがSSクラスなのはアリスも知っています。それでもこの結果なら、きっとそれは正しいのだと思います」
「アリス……」
「それに、”アリス達が第一発見者”ということがわかりましたから」
ウトウトし始めたカービィの頭を撫でつつ、アリスは明るい表情を浮かべる。
望んだ結果を得られなかったにも拘らず、ハレの技量を疑うことなく信じ切っている。真っ直ぐな信頼を示すかのように。
彼女からの純粋な信頼に目を丸くしながらも、どこかくすぐったい気持ちを抱くハレ。
それから、少し気恥ずかしさを誤魔化すように頬を掻くと、はにかみながら呟いた。
「……引き続き、調査は続けてみるね。私個人としても、その子のことはやっぱり気になるから」
それが彼女にとって、せめてもの誠意と、意地。
この結果に一番納得していないのは、実のところ彼女本人なのかもしれない。
「――はいっ、お願いします!」
そんな彼女の言葉に、嬉しそうに応じるアリスなのだった。
それから、少しゲームに関連した雑談を交えて――大事な打ち合わせがあるとかなんとかで、部室を後にしたアリスと、結局寝落ちしたピンクボール。
そんな2人を見送ったあと、相変わらず特徴的な姿勢で座ったまま、ぼんやりと考え事をするハレ。他の部員はまだ戻ってきていないからか、今も部室には彼女1人のみ。
(……まさか、異星人だったなんて)
考えていたのは、うっかりアリスの口から漏れてしまったピンクボールの正体について。
ハレ自身、全てを信じているわけではないが、虚言とも言い切れないのも事実。寧ろここまで情報がない理由や、あの身体能力の持ち主である点から、納得できる話ではあったとか。
ともあれ、約束通りこの事実は口外しないでおこう、と決心するハレ。
万が一にでも、アリスがお尻に潰されてしまうのは流石に可哀そうだと思った模様。
そんな中、好物のエナジードリンクである、『妖怪MAX』を飲みつつ――彼女は先程、自身が口にした発言を思い返していた。
『ミレニアム内において、その子の情報は限りなくゼロ――』
その言葉に、嘘偽りはない。
彼女自身、可能な限り学区内のデータを調べ尽くした、と自負できるほど。
――つまり、
(生徒会長のオフィス、か)
ハッキング技術に長けたハレでも、容易に侵入できない場所。
それは、ミレニアムサイエンススクールの生徒会長――”調月リオ”が管理するオフィスに設けられた、彼女個人用のデータサーバー。
徹底した秘密主義者である彼女ならば、表に出ていない情報の1つや2つ抱えている可能性は高い、と考えるハレ。
しかし、リオ自らが手掛けたセキュリティは、高度なクラッキング対策を講じているゆえ、外部からの侵入を許さない鉄壁の守り。流石のハレも、策も無しに突破することは困難であることは重々理解している。
このセキュリティを破るには、
或いは、セキュリティを取り除いて丸ごとコピーする
――少し悩んだ末、自身のスマホを取り出したハレは、続けてモモトークを起動させる。
それから、流れるような手つきで操作を続け、やがてある人物の連絡先を表示させた。
スマホ画面に表示された連絡先には――”明星ヒマリ”の名前が。
そのまま音声電話を始めると同時に、コール音が鳴り響く――
――なんてことは無く。
『おかけになった電話は電波の届かない場所にあるか、電源が入っていない為かかりません――』
すぐさま、抑制のない機械的なアナウンスが、スピーカーを通じてハレの耳に伝わる。
それに対し、残念、と云わんばかりに小さく溜息を吐いた彼女は、そのまま通話を終了させる。
(……まあ、最近忙しいみたいだし)
ここ最近、部室に顔を出していないことが少し気掛かりではあるものの、基本的に神出鬼没な人物であるゆえに、そこまで心配はしていない――というより、心配するだけ無駄なことを過去の経験上、熟知しているハレ。つい最近も妙な事をしていたのが、まだ記憶に新しい。
ひとまずメッセージだけ送っておこう、と画面をタップし、文字を入力し始めるハレ。
それと同時に、部室の玄関が勢いよく開かれた。
「たっだいま~! ごめんハレ先輩、遅くなっちゃった!」
玄関を開けるなり活発な声を室内に響かせたのは、先程まで趣味であるグラフィティを描きに、ミレニアム学区の郊外まで足を運んでいたヴェリタスの1年生、小塗マキ。
そんな後輩におかえり、と声を掛けつつ、視線を手元のスマホから玄関の方へと向けたハレ。
その時、マキが何か――球状の物体を抱えていることに、彼女は気が付いた。
「……どうしたの、それ? ロボット、みたいだけど」
「あ、やっぱり先輩も見たことない?」
疑問符を浮かべるハレの言葉に、たはは、と陽気に笑うマキ。
抱えていたロボットを机の上に置いてから、たまたま入った路地裏で見つけたことを明かすと、ここまで持ち出してきた経緯について、彼女は語りだした。
「私も見かけたことのないタイプでさ。ちょ~っと気になって、1体だけ持ってきたんだ」
「1体だけ? ソレと同じ機種がまだあるっていうこと?」
その疑問に「うん、ざっと5体ぐらいはいたかな?」とマキが頷くと、意外と数が多かった事実にハレは目を見開く。そして、マキが持ち込んできた物体へと、改めて視線を向ける。
――球状のボディから伸び出る、クラゲの触手のようなコードが、左右それぞれに3本ずつ。
――それとは別に、ボディ下部分に備え付けられた、触腕のような2本のアーム。
「なんか深海魚っぽいよねっ」と、興味津々なマキの様子を傍目に――
奇怪な生物を連想させる外見のせいなのか、微かな胸騒ぎを覚えるハレであった。
【 つ づ く 】
●タメになる☆TIPS集
【モモイスプラッシュ】
→緑色でスジがあって、まるで光ったメロンだな!
【恋人を傷物にされてブチギレた英国紳士】
→ズキュゥゥゥン!!!
【近距離パワー系】
→無敵の『スタープラチナ』でなんとかしてくださいよォーッ!!
【*おおっと*】
→*いしのなかにいる*
【他の学区での問題】
→一体何園ミカ者なんだ……
この作品の時系列については、また今度。
【ジュジュの奇怪な冒険~卒業への遺産~】
→カシオペアから変更この前散々やったしええやろてかEVO2026に選ばれてて草
あっちとは違ってそんなにゲームバランスは崩れてないぜ! 鳥は知らん
【ヒップドロップの刑】
→オ”ォ”ウ”!
まだまだ平和。
お気に入り1,000件以上いったし、カービィチャンを他の学園と絡ませるべ^^ どれがいいかな? ※2章後予定です
-
アビドス高等学校
-
ゲヘナ学園
-
トリニティ総合学園
-
ん何でも描いてあげるよォォ~!!(全部)