Spring Sky StarS! 作:笹ピー
よせばいいのにログレス宝具マ目指した結果寂しくなったお財布を本気出してきたブルアカの5周年ガチャで焼き払われたら、給料をガチャに回している笹ピーの精神まで燃え尽きちゃう!
お願い、死なないで笹ピー!
あんたが今ここで倒れたら、最終章のプロットはどうなっちゃうの?
クレカ利用可能枠はまだ残ってる! ここを耐えれば、あの子とカービィチャンのイチャイチャが書けるんだから!
次回「笹ピー 爆死す」
次回も重課金者と地獄に付き合ってもらう。わァ……ァ……
3-1
「――アリスパーティー、ただいま帰還しました!」
個人的な用事を済ませ、自身が所属しているゲーム開発部の部室に戻ってきたアリスとカービィ。ちなみにピンクボールは彼女の腕の中で睡眠の真っ最中。
元気のよい一声と共に、部室へと入ってきたアリスに気が付いてか――モモイとミドリ、そして、先程までオンライン対戦に集中していた花岡ユズが、入口の方へと振り向きざまに声を掛ける。
「おかえりアリス! なんか面白い話でもあった?」
「アリスちゃん、おかえり。ちょうど今日の部活動について説明してたところだよ」
「おかえりなさい、アリスちゃん」
各々、お迎えの言葉を口にしながら帰ってきた部員の元に歩み寄ると、そのまま仲睦まじくワイワイと談笑に興じる4人。
――そんな最中、アリスの視界にある人物の姿が映る。
それに気が付くと同時に、あっと声を上げた彼女は、すぐにその人物の元へと小走りで駆け寄る。
「やせいの”先生”とエンカウントしました、約3ヶ月ぶりの遭遇です!」
”やあ、アリス。こんにちは”
相手に近づくや否や、満面の笑みを浮かべるアリスに対し、”先生”も微笑みながら応える。
ここ最近、顔を合わせていなかったことも相まってか、彼女が心の底から喜んでいるのが、目に見えて顕れていた。
そして、彼女が抱えている未確認生物にも挨拶しようと――
”……えっと、カービィはお昼寝中かな?”
「いいえ、違います。お昼寝タイムはお昼ご飯を食べ終えたあとなので、これはただのお休みタイムです!」
熟睡するカレの姿を目にした”先生”の問いに、意気揚々と答えるアリス。
グースカ眠るピンクボールを目の当たりにし、お昼寝とどう違うのだろうと疑問を抱く”先生”だったが、ニコニコと楽し気な彼女を前にして言わぬが花と思ったのか、”そ、そうなんだ”と話を合わせることに。
「それよりアリス、すごいんだよ!」
すると突然、2人の会話に割って入るかの如く、モモイがアリスへと語りかけた。
いつもよりテンションの高い様子に、きょとんと首を傾げたアリスを見据えながら、モモイがその理由を告げる。
「ユズがあの”ジュジュ”のオンライン対戦で――ついに10連勝したの!」
大々的に告げた彼女の言葉に、驚愕を表すかの如く目を見開くアリス。
そしてすぐに、自分のことのように喜々として目を輝かせながら、ユズの方へと視線を向ける。
「すごいです、さすがは伝説の勇者『UZQueen』です! アリスは感動しました!」
「でしょ! 『UZQueenモード』のユズは無敵なんだから!」
目を煌めかせたまま、称賛を贈るアリスと、それに大きく頷くモモイ。
一方で2人の賞賛の言葉に、褒め慣れていないせいか「そ、そんな、大したことじゃないよ……」と照れくさそうにユズは頬を染める――とはいえ、謙遜しながらも口元が緩んでいるところを見ると、満更でもない様子。
”『UZQueenモード』……?”
そんな時、会話の中で聞き慣れない単語を耳にした”先生”が首を傾げる。
するとそれに答えるべくして、「説明しよう!」と何故か気取った言い回しをするモモイが、その台詞通り説明し始めた。
「『UZQueenモード』とは! 特定の条件下で発動するユズのバフスキルだよ!」
と、意気揚々と語り始めた彼女曰く――
・いつもよりちょっと大胆になる。
・頭の回転が通常時の1.5倍、高速化。
・動体視力が通常時の2.8倍、上昇。
結論:めっちゃスゴイ。
「そんな設定、いつの間につけたの?」
「アリスも知っています! こういう時のユズはすごく強いです! アリスも『UZQueenモード』が欲しいです!」
つらつらと得意げに語られた内容に疑問符を浮かべるミドリとは裏腹に、純粋にその実力に感銘を受けたアリスは、尊敬と羨望が入り混じった眼差しをその相手へと向ける。
そして、それに便乗する形で――
”『UZQueenモード』ってすごいんだね……!”
「せ、”先生”まで!?」
普段、部員たち以外から褒められることが少ないせいか、思いがけない相手からも称賛されたことに慌てふためくユズ。
やがて、周囲から持て囃される状況に居た堪れなくなってきたのか、恥ずかしげに顔を赤らめては「ふ、普通に頑張っただけ、なんだけど……」と囁くほどの声量で呟く始末である。
そんな彼女の心境など露知らず。
触発されたように、むんっとやる気に満ち溢れた様子のアリスが、おもむろに口を開く。
「ユズの活躍を聞いたらアリスもやる気が出てきました! 次はアリスの番です!」
そう言い切るや否や、抱き抱えていた桃球生物をソファに寝かせると、彼女はゲームコントローラーを両の手でしっかり握りしめ、陣取る様にモニターの前に正座し始めた。プレイするゲームは勿論、先程までユズやモモイが遊んでいた”ジュジュ”である。
本日の部活動から些か脱線はしているが、気合十分な彼女に充てられてか、成り行きを見守ることにする一同。普段真面目なミドリさえ口を挟まない所を見るに、アリスに関して結構甘いのかもしれない。
”――あっ、挑戦者が現れたようだね”
画面を眺めていた”先生”の言葉通り、然程時間を要さずにオンライン対戦の相手が見つかると同時に、両プレイヤーが選択したキャラが互いに睨み合うような絵図が映し出される。
アリスが選んだキャラは、先程”先生”も使っていた、近距離パワータイプ。
片や、対戦相手が選ぶキャラは、同じくモモイが使用していた、遠距離戦が得意なキャラ。
奇しくも、先程の対戦と類似した光景が映し出されることになる。
心待ちにしていた対戦を前に、アリスが意気込んだ表情を浮かべる。
「今こそモモイ相手に鍛えてきた腕前、見せます!」
「お姉ちゃん相手じゃ、ちょっと不安だけどね」
「妹よ! お姉ちゃんだって傷つくことがあるんだよ!?」
「あ、アリスちゃん、頑張れ……!」
特定の第三者を茶化す声はさておき――周囲からの応援を受けつつ、いよいよ対戦が始まる。
開始を告げるラウンドコールが響き渡る、と同時に急接近を仕掛け、果敢に攻めこむアリス。
対する相手はその場から動かず、待ちの姿勢。迎撃する動きも見せず、彼女の接近を易々と許すことに。
ともあれ、相手に難なく接近することができたアリスは、「えいっ、やあっ!」という勇ましい掛け声に合わせ、近接攻撃を繰り出す――が。
「全部、回避されてる……」
「いいえ、まだアリスの攻撃は終わっていません!」
ユズの呟き通り、巧みに攻撃を避け続ける対戦者。
それに少し驚きつつも、いつか当たるはずだと信じ、アリスは攻撃の手を弛めない。
その判断が功を奏したのか、攻撃を避け続けることに限度が来た対戦相手に、彼女の攻撃がヒットする――
――と、思いきや。
「……え!?」
「今、アリスが攻撃したのに、アリス側のHPが減ってなかった?」
驚愕するアリスと同じく、ありのまま今起こった現象について、モモイが目を丸くする。
実際、攻撃を受けて仰け反っているのは相手のキャラだというのに、何故か体力ゲージが減ったのはアリス側。その奇妙な現象に操作する本人は勿論、観戦していた周囲の表情にも困惑の色が浮かび始める。
――しかしこれだけに止まらず、奇怪な現象は続く。
”今度はキャラクターが……消えた!?”
一瞬の内に、パッと相手のキャラが消えたことに目を疑う一同。
動揺を隠せないアリスの手元が止まってしまったことにより、必然的に彼女の操作するキャラはその場で棒立ちするばかり。
その隙を逃さんとばかりに――なんと、彼女の操作キャラの背後から姿を現した。
「あっ、ひゃっ……! あうっ! こ、攻撃!」
コンボを決められ、大幅に体力を削られながらも反撃を試みようとするアリス。
しかし、今度は透過するように攻撃が相手の体をすり抜け、思わずその光景に「ええっ!?」と訳が分からないとばかりに声を張り上げる。
当然ながら、対戦相手が使用しているキャラに、そのような技は搭載されていない。
あまりにも不自然な状況に”これってどう見ても……”と呟く”先生”に、ミドリが重々しく頷く。
「――――まぎれもなく、チーターです……!」
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
3-2
――その後の対戦は、惨憺たるものであった。
キャラの透明化や、当たり判定の消失は当たり前――あろうことか、キャラを巨大化させて画面を見えなくするというとんでもない妨害行為などを行う始末。
結局、相手側の理不尽な行為に為すすべなく、アリスは惨敗。
そもそも、真っ当な対戦になっていないのだから、この結果は仕方ないと言えるだろう。
しかし、それを当の本人達が納得できるかできないかは、また別問題である。
「う、うわーん! このプレイヤーに勝てません!」
「なんなのコイツ! どう見てもチート使ってるじゃん!」
「ひどい……こんな方法で勝って、楽しいのかな」
完膚なきまでに敗北を喫し、アリスがべそを掻く。
その姿を不憫に思ったのか、腹を立て憤慨するモモイと険しい表情を浮かべたミドリが、相手の不正行為について文句を述べる。もっとも、その相手が目の前にいない以上、彼女達の訴えが伝わることはないのだが。
対戦前の和気藹々とした空気から一転、沈んだ空気が漂い始める室内。
すると、それに拍車を掛けるような出来事が。
【――Challengers Next Battle Again!!】
まさかの再戦要求。
完全にアリスのことをカモだと見做している模様。
「再戦要求!? どうせまたチートを使うつもりだよ!」
相手の舐めた態度に益々怒りを積み重ねたのか、声を荒げるモモイ。
要求先であるアリス自身、先程の対戦内容は流石にこたえたか、「……どうしましょう?」と困り顔を浮かべては周囲に意見を求める。
”相手がチートを使っているなら……勝つのは難しいかも……”
はっきりと言葉にこそしないが、勝つことは不可能であると遠回しに伝える”先生”。
そもそも、どんな手段を使ってでも勝ちたいが為にチートを使用している以上、最初から勝ち目が薄いことは当然の話である。
「もう断っちゃおうよ! こんなチーターに付き合う必要ないよ!」
「うん……アリスちゃん、残念だけど今回ばかりは……」
怒りを抑えられないのか、言い捨てるかのように要求を断ることを提言するモモイ。
その隣で、彼女の言葉に同意する形でアリスに断ることをミドリは促す。
掛ける言葉はどうあれ、意味合いとしては”ここは退くべきだ”という周囲の言葉に頷くアリス。彼女自身、今回ばかりは運悪く悪質な相手と鉢合わせてしまった、という事実は、重々理解はしている様子。
しかしそれとは真逆に、浮かべている表情は納得からほど遠いモノ。
その姿に、今まで静観に徹していたユズが声を掛けようと――――
――する前に、アリスの背中をポンポンと軽く叩く存在が。
それに気が付いた彼女が反射的に振り返ると、先程までソファでグースカ眠っていたオトモが体を傾げている姿が目に入ってきた。
「カービィ……」
いつも通りなカレとは裏腹に、意気消沈した様子を隠せないアリス。
そんな普段と異なる彼女の様子に、疑問符を浮かべるカービィを見兼ねて、「聞いてよカービィ!」と、怒りを抑えきれないモモイが事の経緯を語り始めた。
彼女の説明に加え、周りからの補足も有り、概ね事情を把握したカービィ。
全てを理解したとは到底いえないが、目の前の少女が落ち込んでいる理由はキチンと把握した模様。
すると、彼女を元気づけるかのように――任せろ、と云わんばかりに自信満々に胸(?)を叩くカービィ。そんなカレの振舞いに、思わずアリスは目を丸くする。
一方、なぜか自信満々なピンクボールを宥めるように「いやいや」とモモイが首を横に振る。
「いくらカービィでも、チーター相手じゃ……」
悔しそうな面持ちを浮かべながらも、弱気な言葉を漏らすモモイ。
直感と反射神経に優れているカービィと云えど、当然の様に不正をしてくる相手では流石に分が悪い、と彼女が考えてしまうのも無理のないことではある。
「――……ううん、方法はあるよ」
その発言を一蹴するかの如く、1人の少女の呟きが室内に響いた。
思わず一同は、先程の声を発した少女――ユズの方へと振り返る。
”ユズ?”
「ユズちゃん……ほんとなの?」
突然の発言に戸惑う”先生”の傍らで、真偽を確かめるように尋ねるミドリ。
その問いにユズは頷くことで、肯定を返す。
そして、やる気満々のカービィへと、彼女は身を屈めて近寄ると――
「わたしが隣でアドバイスするから……、カービィは対戦、お願いできる?」
と、控えめな口調で頼み込んだ。
それに躊躇う様子なく、すぐに”ハーイ!”と元気よく手を挙げて了承の意を返すカービィ。そんなカレの素直な反応に感謝の意も込めて、ユズは微笑む。
一方で、彼女が口にしていた”方法”とやらに、他の4人は首を傾げるばかりであった。
ともあれ、相手からの要求を呑む形で、対戦の時が再び訪れる。
アリスの代わりにカービィが操作を受け持つこととなったが、ユーザーネームに変化はないため、対戦者は引き続き彼女が相手だと思い込んでいることだろう。
相手の選択キャラは、先程の対戦と変わらず。
一方、ユズの指示に従い、アリスとは別のキャラを選択したカービィ。
選択したのは独特な攻撃方法が特徴的な、トリッキータイプ。クセのある技が多いため、使いこなすにはそれ相応の操作精度が求められる。
互いに準備が整い、後は開始を告げるラウンドコールを待つのみ。
固唾を飲んで、成り行きを見守る観戦組の4人。
それとは対照的に、特段緊張した様子もなく、静かに対戦開始を待つカービィとユズ。
そして、待ちに待ったラウンドコールが響く――と同時に、カレの操作キャラが鉄球のついたアメリカンクラッカーを、ブーメランの如く相手に向けて放つ。
開幕いきなりの攻撃に相手は面食らうものの、冷静に飛んできた鉄球付きアメリカンクラッカーをガード。その後、不意を突かれたお返しと言わんばかりに、画面から姿を消した。
「あっ、また透明になるチートを使ったよ!」
「大丈夫。さっき見てたら、透明になるけど影はそのままだったから……」
姿を消した事に慌てるモモイとは対照的に、落ち着いた様子でユズがカービィに助言する。
その言葉に頷いたカレは、地面に映し出されたままの影を頼りに、見えない攻撃を危なげなく防いでいく。
的確に攻撃を凌ぐ光景におおっ、と周囲が俄かに湧き立つ――のも、束の間。
大振りな攻撃をした相手の隙を見逃さず、影の位置を確認した上で反撃するカービィ。
しかし、相手の体力に変動は起きず、影の形からしても攻撃を受けたようにも見えない。
「どう見ても当たってるのに、ダメージが通ってない!」
「また無敵チートを……!」
立て続けに行われる卑怯な行為が目に余ったのか、憤りを隠せないモモイとミドリ。
すると、彼女達――というよりミドリの指摘に対して、ユズが首を横に振った。
「多分、これは当たり判定を調整するチート……それなら、当たり判定が関係ない確定ダメージを与えればいい」
そう答えながら、彼女は画面上部に表示されていた、残り時間へと視線を移す。
それから、対戦から約5秒ほど経過していたことを確かめた上で、再びカービィへ「距離を取ってから、挑発スキルを発動してみて」と指示を送った。
彼女からの言葉に先程と同じく頷くと、すぐさま相手との距離を取るカービィ。
十分に距離を置いてから、指示通り挑発スキルを繰り出すと――
『次にお前は、『なぜ攻撃が読まれている!?』――という!』
と、独特なポーズと共に、カレが操作するキャラが声高らかに告げた。
その奇抜な行動に動揺したのかさておき、相手はソレを妨害することもなく様子見に徹し――
――なぜか、相手側の体力が一割ほど減少したッ!
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
3-3
「モモイ! ミドリ! い、今の見ましたか!?」
無敵と思われていた相手に、ダメージが入った――
その事実に、思わず興奮気味に声を上げるアリス。それは彼女だけではなく、その瞬間を目撃した双子の姉妹も同じだった。
「本当だ……」
「ダメージが通った!」
喜々とした表情を浮かべ、画面を食い入るように見つめるモモイとミドリ。
その一方で、”でも、どうして?”と3人と同じく画面に注目していた”先生”が疑問を口にした。
「このキャラが持ってる挑発スキルは、妨害されなければ確定ダメージを与えられるんです。発動には、ある条件を満たさないといけませんが……」
その疑問に答えつつ、続けてその条件についてユズは語る。
彼女曰く、”5秒以上攻撃がヒットしていない状態かつ、一定回数以上の攻撃をガードする”ことが発動条件であり、それを満たした場合のみ特殊な挑発が発動できる、とのこと。
その説明に、成程と”先生”は得心がいったように頷く。
条件を満たすことは難しいが、コレなら相手の状態に関係なくダメージを与えることができる。だからこそ、彼女はこのキャラを選択させたのだろう。
何はともあれ、ダメージを与えたのは事実。
それは対戦相手にとっても、信じられない事態だったのか――
”あっ、相手が急に猛攻撃を始めたよ!”
”先生”の言葉通り、最初の立ち回りから打って変わり、攻めに転じる相手。
攻撃が通じない、という絶対的優位性を失った上に、状況はカービィ側が有利。それに焦りを覚えたのか、とにかく体力を削ろうとがむしゃらに攻撃を繰り出し始めた。
そんな猛攻も、操作している当人にとってはどこ吹く風なのか――
「……うん、その調子。そのまま端で相手を誘い込んで……――」
姿の見えない猛攻を前にしても、焦ることなく攻撃を捌き続けるカービィ。
どこぞの仮面の剣士が繰り出す剣戟に比べればこの程度、カレにとっては些事でしかない。
そのままユズの指示通り、カービィは画面端近くで待ちの姿勢。
一方、固い守りに痺れを切らした相手は攻撃の手を止め、不用意に近付き――
「――今!」
それを待っていた、と云わんばかりに、ユズが声を張る。
その言葉に反応する形で、カービィの操作キャラが画面端に向かって後方へ飛ぶ――とほぼ同時に、相手が立っているであろう位置に目掛けて、足を突きだす様な蹴りを放った。
思わぬ迎撃に防御など出来る筈もなく、直撃を受けた相手は透明だった姿を現しつつ、吹き飛ばされた勢いそのままに、地面へと叩きつけられた。
その一瞬で起こった光景に周囲から、わっと歓声が湧く。
「相手のキャラがダウン状態に!」
「これで牽制しておけば、対策しない限り絶対に近付けない……相手の実力的に、多分できないと思うから」
驚くモモイを尻目に、行動の意図を語るユズ。
粘り強く防御し続けていたのも、相手に接近を誘い、返り討ちにするための布石であった。
『お前の次のセリフは、『こ、こんなバカなことが』――という!』
倒れた相手の隙を見逃さず、ダメ押しにもう1本、とばかりに容赦なく特殊挑発を繰り出すピンクボール。先程の猛攻を防いだおかげで、既に条件は満たしていた模様。
ダウン状態だろうとお構いなく1割ほど体力を削り――気付けば相手の体力は残り7割ほど。
一方、カービィ側の体力は未だ削られておらず、俄然として有利な状況。
アリスが対戦した時とは真逆の展開に、観戦者である4人が唖然としている中、周囲――特にアリスの方へ向けて、ユズは優しく諭すように伝えた。
「――こうやって、一つ一つ相手の弱点を突いていけば……勝てるよ」
そうして彼女の言葉通り、相手の行動一つ一つに適切な対処を続けていき――
『――またまたやらせていただきましたァン!』
『WINNER! Player ALICE・THE・BLUEEYE!』
ゲーム内のキャラの勝ち口上に続くように、勝者を告げるアナウンスが室内に響き渡る。
画面に映し出されていたのは、カービィが操作していたキャラが勝ち誇った姿であった。
勝利を確信したカービィが、決めポーズを決めるかのように片手を上げる――すると、カレを後ろから勢いよく抱き上げる人物が。
「やりました! 不正を働く邪悪の化身を打ち倒しました!」
湧き上がる喜びを抑えきれないように晴れ晴れしい笑顔を浮かべ、「パンパカパーン!」とオトモを胴上げするアリス。片や、持ち上げられた本人は突然の事に目をまあるくしていたが、彼女の様子に釣られてか、すぐに楽し気な笑みを浮かべていった。
”すごい……本当に倒しちゃうなんて……!”
「へっへーん! どう? ウチの部長とマスコットの力は!」
2人の無邪気なやり取りを眺めつつ、驚嘆するように呟いた”先生”の言葉に、先程とは打って変わって上機嫌なモモイが得意げに口角を上げる。相手が対戦終了に併せて、逃げるように退散していったのも、上機嫌である理由の1つなのかもしれない。
そんな、浮かれている状態の彼女に「なんでお姉ちゃんがドヤってるの」とミドリが呆れたように口漏らしつつも、もう一人の功労者であるユズの方へと目を輝かせながら視線を向けた。
「ユズちゃんもお疲れ様っ、的確な指示だったよ!」
「う、ううん。私は隣でアドバイスしてただけだったから……」
弾んだ声で称賛の言葉を送るミドリに対し、謙遜するようにユズが小さく手を横に振る。しかし、彼女の助言あってこその快勝であるということは言うまでもなく。
ともあれ、功労者の2人を褒め称える形で、再び戻ってきた和気藹々な空気。
そんな中、ふとある事が気になったのか、唐突にモモイが首を傾げた。
「でも、どうしてカービィに操作任せたの? ユズが操作してもよかったのに」
ごもっともな疑問を口にする彼女の言葉に、たしかに、と頷く他の面々。
実際、わざわざピンクボールに操作役を任せるよりも、ユズ本人が操作した方が手っ取り早いと考えるのは自然なことではある。
その疑問に「あ、うん」と相槌を打ち、
「わたしより……カービィの方が
と、何でもないかのような素振りでユズが答え――対照的に、驚愕で目を見開くモモイ達。
特に長い付き合いでもあるモモイとミドリにいたっては、それが顕著であった。
「そ、それってどゆこと!?」
「ま、まさかカービィって、ユズちゃんよりも上手いってこと……!?」
落ち着きのない様子で、詰め寄る2人。
その血気迫る様相に狼狽えはしたものの、なんとか両者を宥めつつユズは「えっとね」と語り始めた。
「コンボの練習とかもちろん大事だけど……対戦だと相手の癖や、行動パターンを見抜くことが重要になってくるの」
例えば、今回対戦したチートプレイヤーの場合。
的確なガードを前に、痺れを切らし投げ技を仕掛けようと、地上から近づいてきた場面があった。
その行動、並びに判断自体におかしな点はないが、彼女が着目したのはその
「さっきの相手……自分から接近するとき、地上から近づくことが多かったんだけど……」
「えっ、そうだったっけ?」
ユズの言葉に心当たりが浮かばないのか、首を傾げるモモイ。
その一方で、アリスとの対戦内容や、先程の対戦を思い返していた”先生”が、”そういえば、あんまり空中から攻撃してなかったような……”と曖昧に呟く。
「たぶん、空中からの差し込みとか、すかしの重要性を理解してない……そもそも、チートを使えばいい、って考えてたんだと思う」
「まあ、透明になれば簡単に近づけるからね……」
そう口にしたミドリがその場面を思い出したのか、苦々しく顔を歪めた。
実際、それが最も有効的な手段であるのがなんとも。
――しかし、その甘えこそ、相手に付け入る隙を生む切っ掛けであった。
”それが、あの牽制だったの?”
”先生”の問いに、「はい」とユズが頷く。
行動が予測できるのであれば、対処は容易い。相手が近づいてくるのに合わせて、反撃を受けにくい技を繰り出せばよい。事実、それだけで相手はしばらくの間、攻めあぐねる状況が続いていた。
ここまでの説明で、相手の行動や癖を見抜くことが大事、という事柄は概ね理解した一同。
そして話は、最初の疑問――なぜカービィに操作役を任せたのか、という話へと戻ると、「あくまで、私が感じたことなんだけど……」と前置きした上で、理由についてユズが口を開く。
「その
「読んでる……って、運ゲー泣かせの直感とかで凌いでたんじゃないの?」
話にいまいちピンとこないのか、思い浮かんだ疑問を口にするモモイ。
それに対し、当のピンクボールについて不確定要素が多すぎるがゆえに、断言できるほど自信がないのか「まあそうかも、なんだけど」とユズは困ったような表情を浮かべながらも意見を述べる。
「全部の攻撃を直感だけで凌ぎ切るのは、あまり現実的じゃない、と思う……」
「確かに……むしろ相手の行動を読んでる、って考えた方が自然かも」
ユズの意見に、同調するようにミドリが頷く。
どちらかというと現実的な観点寄りな彼女にとっても、運だけでどうにかできてしまうとは考えにくかった模様。
いうなれば、人並外れた直感と洞察力を持ち合わせているからこその先の芸当。
加えて、状況の変化にすぐに応じ、動きを変えることができる柔軟性の持ち主。
総じて、ゲームの実力云々よりも、その高い適応力が今回の相手に適していると考え、アリスの仇を取るにしてもカレが最適、と見込んだ上で代役をお願いした、とユズは話を纏めるのであった。
彼女の話に、一先ず理解を示したモモイ達。
やがて、自ずと視線は先程の話題における中心人物へと向けられた。
先程の話だけ聞けば、カレが優れた能力の持ち主であることは確か。
しかし、一同の視界に映るのは、アリスの腕の中で呑気に欠伸をするピンクの異星人。
戦闘民族じみた能力を持ちながら、愛いらしい見た目を持ち合わせているというギャップ差に、なんとも言えぬ空気が流れ始め――
「まあ、カービィだからいっか!」
「うーん……まあ、カービィなら」
「う、うん……カービィだもんね」
「はい! カービィだからです!」
”そ、そうだね。カービィならしょうがないよね!”
と、各々が勝手に納得し始めた。
そんな無理やりな納得方法は、カレに対する純然たる信頼の表れなのか。
或いは、このピンクボールについて考えだしたらキリが無いからこその思考放棄によるモノなのか――両方かもしんない。
やがて、温かい目を向け始めた周りの様子に疑問を抱いたのか。
不思議そうにキョトン、とするカービィだったとさ。
【 つ づ く 】
●タメになる☆TIPS集
【UZQueenモード】
→トランザムみたい(小並感
【チーター】
→一般人「うわチーターやん、通報しとこ」
身体が闘争を求める駄犬「チーターだ!! チーターだろう!? なあチーターだろおまえ」
なぜなのか
【次にお前は】
→ハッピーうれピーよろピくねー
ちなみに元ゲーにはダメージ云々はないのであしからず。
【どこぞの仮面の剣士】
→剣戟は音速を超えるらしい。マジかよ
【カービィならしょうがないよね!】
→誤解でボコってもしゃーないしゃーない^^
明日が楽しみだよまったく(震え声