Spring Sky StarS!   作:笹ピー

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 川´_ゝ`)<リミッターを外させてもらう!

 いやまあ今回から投稿ペースが上がるワケじゃないんですがグヘヘ


004

4-1

 

 

 

 ――いい天気だなぁ。

 

 ミレニアムサイエンススクールのキャンパス内。

 休憩用に設置されたベンチに座り、燦々と降り注ぐ陽光に目を細めながら青空を見上げている人物――シャーレの”先生”が、そんな平凡な感想を抱いた。

 

 普段の日常と云えば、シャーレのオフィスで日に日に積み重なる業務に追われているか、急なトラブルの対応に身を粉にしているかのどちらか。それゆえに、こうしてのんびりとした時を過ごすのは久々であった。

 

 たまにはこうした時間を過ごすのも悪くない。

 そんな風なことを思いつつ、荷物を取りに行った待ち人をのんびり待つ”先生”。

 

 すると、少し離れた所から長い黒髪をなびかせる少女と、まあるい体にまあるい手足がくっついたような生物の姿が視界の端に映る。

 それに気づいた”先生”がある予感を胸にその方向へ視線を向けると――予感通り、待ち人であった少女と生物がこちらに向かって駆け寄ってきている姿を捉えた。

 

 それから、さほど時間を掛けず手が届く距離まで近寄ってきた少女達に声を掛けようと口を開く――その前に。

 

「お待たせしました! いざ、()()()()()()です!」

 

 喜々とした表情を浮かべては、高らかに告げる少女――アリス。

 その隣――というより、足元で元気よく片手を挙げたのは、彼女のオトモであるカービィ。

 

 そんな元気いっぱいな2人に倣ってか、にこやかに微笑んだ”先生”は――

 

”うん。よろしくね、2人とも”

 

 と、言葉を返すのであった。

 

 

 

 先程まで、ゲーム開発部の部室にいた3名がなぜ屋外に出かけているのか。

 切っ掛けは、悪質なチーターを打倒した後の出来事まで遡る――

 

 

 

 ちょっとしたハプニングこそあったが、何はともあれ、今日の活動目的である次回作のゲームについてアイデア出しを始めるゲーム開発部。

 

 次回作のジャンルは『まったりスローライフ系ダンジョン探索型RPG』。 

 そのため今回は、基盤となる作品の構想――コンセプトの決定、並びにどういった要素を盛り込むとより面白くなるかを話し合うのが目的である。

 

 まず、”どのようなコンセプトを目指すのか”――

 ホワイトボードに書かれたその言葉を一同が見据えている中、モモイがハキハキと語りかける。

 

「ダンジョン探索型RPGなんだから、やっぱり重要なのはメインになるダンジョンだよね!」

「うん……ダンジョンをどう設計するかで、ゲームの内容も変わるし……」

 

 モモイの主張に同意する形で、頷くユズ。

 ダンジョン探索型、とはいっても、最初から構造が定まっているダンジョンを探索する従来通りにするのか、入るたびに構造が変わる――所謂ローグライク型にするかで、彼女の言葉通りゲーム内容は大きく変わる。

 

 従来型なら、ダンジョン内を少しづつ探索していく楽しみはあるが、道順や攻略方法を覚えてしまえばそれ以降は作業感を否めず、どうしても新鮮さが薄れてしまう。

 一方、ローグライク型は入るたび構造が変わるため探索方法を毎回考える面白さがあるが、逆にいえば攻略方法が安定せず、良くも悪くも運に左右されやすいため忌避する者もいる。

 

 どちらも一長一短であるが、本企画における主軸と言っても過言ではなく。

 今後を見据えて、早い段階で決めておくことに越したことはないだろう。

 

「決められたダンジョンを攻略するのか……それともローグライクにするのか……」

 

 問題は、どちらを選ぶか。

 ううんと悩むように頭を捻るミドリの傍らで、ハイッと威勢よく挙手する人物が。

 

「アリスはローグライクがいいです!」

 

 やや食い気味に、そう主張したのは――アリスであった。

 威勢のいい彼女に注目が集まる中、”アリスはローグライクが好きなの?”と尋ねた”先生”の問いに、問いかけられた本人は「はい!」と元気よく応じる。

 

「毎回ダンジョンの構造が変わるので、今度はどんなモンスターやレア装備に出会えるのだろうかと、ワクワクします!」

 

 目を輝かせながら力説するアリス。

 その様子に本当にゲームが好きなんだなぁ、と微笑ましいものを見るような目付きで相槌を打つ”先生”――だったが。

 

「特に、前回みんなで作ったローグライクゲームでは、”先生”の名前で()()()()()()()()を作りましたっ」

”……ん?”

 

 なにそれしらない。

 

 ニコニコと笑みを浮かべる少女とは裏腹に、いつの間にか自身の名前を許可なく使われていた事実に目を白黒する”先生”。その傍ら、ゲームに組み込むことにゴーサインを出した元凶が「あっ、そ、それは! 若干の遊び心というか」と焦り顔を浮かべては取り繕い始めた。

 

「ゲームの難易度的にもっと、え、エク……エク……」

 

 該当する単語が思い出せないのか、途中で言葉を詰まらせるモモイ。

 しかし、懸命に頭を回転させたおかげか、ハッとした表情を浮かべ――

 

「――”エクストリーム”してほしいと思って!」

 

 スッキリした表情で言い切るモモイ――しかし、「そこは”エキサイティング”じゃないの?」と呆れ果てたミドリから言い間違いを指摘され、「へ?」と云わんばかりに首を傾げる。

 そもそも、名前を勝手に使ったことへの釈明に全くなっていないのはこれ如何に。

 

 口をポカンと開けたままのモモイに苦笑いする”先生”。名前が使われた件について特に気にしている訳ではないが、ともかく自身の名前が使われたというアイテムについて、改めてアリスに尋ねることに。

 

「名付けて『”先生”のはなまるシール』です! 使うとキャラクターがすごく強くなるのです!」

 

 満面の笑みで語る彼女曰く、強化アイテムの名称として出演を果たしていたらしい”先生”。

 何とも言えぬ感情を抱きながらも、野暮な事は口にせず”……はなまるシールの効果、すごいね!”と、”先生”は話を合わせる。断じて主要キャラとして出番が欲しかったなどと思っていたワケではない。きっと。

 

 一方で、”先生”の反応に気を良くしたアリスが、喜々とした様子で話を続ける。

 

「シールを手に入れると、アリスはとても嬉しかったです。今度のゲームでも、アリスは『はなまるシール』をたくさん集めたいです!」

”アリスの言葉は嬉しいけど、せっかくならパーティーメンバーになりたいかな……!”

 

 意気揚々と語り掛ける彼女に、ついつい内心を吐露してしまう”先生”。

 やはり主要キャラ――せめて、NPCとして扱われたい気持ちがあったのだろうか、その訴えにどこか熱が入っているような気がしないでもない。なおアリスの膝元でご褒美(だいふく)に舌鼓を打つピンク玉は、ある勇者のお供役として出演したとか。

 

 そんな”先生”の訴えは、さておき。

 ひとまずアリスが主張したローグライク型をベースとして、次はダンジョンのデザインや形式を決めることに議題は移る。

 まずは先程と同じく、各々から案を出しあっていくことに。

 

「地下遺跡……とか? ダンジョンでは一番基本になる形だから……」

「う~ん、普通過ぎない?」

 

 ユズの提案に、モモイが微妙な反応を示し「もっとこう、特別感があって、壮大なのがいいんだけど……」とざっくりな例えを交えつつ別の案を要望する。ありきたりな案では、彼女の琴線に触れない模様。

 

「塔の形式で登っていくのは? 階段で上層にいく毎に、難易度も上がる形式だったら直感的じゃないかな」

「それだと意外性がないじゃん! 階段なんて安直すぎるよ!」

 

 次に発言したミドリの提案についても、ピシャリと言い放つモモイ。意外性のない案も彼女にはウケが悪い模様。

 

「文句ばっか……じゃあ、そういうお姉ちゃんのアイデアは?」

 

 各々の案に意見ばかりする態度に苛立ちを覚えたのか、ミドリが不満げに眉を顰めながら問いかける。

 それに対し「地下遺跡……塔……だったら、階段じゃなくて……」とうわ言を呟きながら、熟考するかのように固く目を閉じ、腕を組んで考え込むモモイ。

 

 そして、何か思いついたのか――

 

「――エレベーター! エレベーターとかどうかな?」

「エレベーターに乗って地下遺跡を降りるの?」

 

 声高らかに答える彼女の発言に、ミドリは疑問符を浮かべつつ問いかける。

 すると、そのやり取りに耳を傾けていたアリスが「そういえば」と何か既視感を抱いたのか、呟いた。

 

「以前アリスがやったゲームにも似たようなものがありました。スパイになって、マンションのエレベーターで敵を倒すゲームです」

「あ、レトロゲームの中でも、結構人気があるヤツだね」

 

 上下するエレベーターを利用しながら、押し寄せてくる敵を銃で倒していく場面を想像するアリスとユズが談笑する――そんな時、2人の会話を耳にしたモモイが何故かウッ、と狼狽える。

 

「う~ん、お姉ちゃんのアイデアにしては無難な……」

 

 それに追い打ちを掛けるかの如く、妹の何気ない一言に、うぐぐ、とモモイは苦しそうに声を漏らす。

 どうやら彼女自身、自分で言っておきながらあまり意外な要素でもないことに、薄々気付いていた模様。そもそも今のご時世、数えきれないほど様々なゲームが存在する以上、意外性を求めるのはなかなか難しいのかもしれない。

 

「そうだよね! やっぱり全然足りない! 意外性がなさすぎる!」

 

 「必要なのは華やかなビジュアル! そして壮大なシナリオと意外性!」と自身に言い聞かせるように声を上げ、再び頭を捻りだすモモイ。

 そんな彼女に一同がやや呆気に取られている中、ミドリにある予感が芽生えた。

 

 シナリオライターとして演出や設定に拘りたい、という気持ちは彼女にも理解できるが、その場での思い付きによるせいなのか、モモイの発案するモノの大半は突拍子もないアイデアばかり、ということは覆しようのない事実。

 

 ――そして、それに振り回されるのは部員であるミドリ達だということも、また事実。

 

 この間も”ダンジョンを表現するには、内部を細かく描く必要がある”とかなんとか言いだしたのを切っ掛けに、全員で一日中ダンジョンを描くことになったのが記憶に新しい。その上、肝心のゲームでは殆ど使われず、結局徒労に終わる羽目になった――約1名(アリス)1匹(カービィ)は終始楽しそうだったが。

 

 イヤな予感を感じつつ――いや、今回はきっと違うハズ、と一抹の希望を抱きたいミドリ。

 

 そんな希望を向けられているとも知らず、彼女の姉は何か思いついたように口を開き――

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

 

4-2

 

 

 

「――――もうっ、お姉ちゃんはいっつもそう言うよね!」

 

 ああ、やっぱり今回もダメだったよ。

 

 塔をエレベーターで昇った後、最後は屋上を爆発させる――という、果たしてダンジョン探索とはいったい何なのかを問うような急展開を発案するモモイに、前回の無駄骨事件を例に挙げ、いよいよミドリが不満を爆発させた。

 

 塔をエレベーターで上がるなら、ダンジョンはどうやって攻略するのか?

 爆破させる理由をちゃんと考えているのか?

 そもそも、本当にゲームに組み込むつもりはあるのか?

 

 などなど――矢継ぎ早に疑問点を口にしていく迫力に狼狽えるモモイ。

 そんな反応にお構いなく、ミドリは更に不満を口にする。

 

「描くこと自体が嫌って言ってるわけじゃないよ。でも無駄な事はさせないで、実現可能なレベルの話をしてよ!」

「で、でも! それだと地平線の景色が見れないよ! 限界を突破できないよ!」

 

 現実的な意見を述べるミドリに対し、理想を追い求めることが大事だと強く反論するモモイ。

 互いに意見を曲げる気はないのか、口論はだんだん激しさを増していく一方。

 

 言い争いがエスカレートしていく2人の勢いに他の面々が気圧される中、喧嘩に成りかねないと予期した”先生”が両者を宥めるために”二人とも落ち着いて……”と声を掛ける――が、

 

 

 

「――そうだ! ”先生”の意見はどう!?」

「こういう時こそ、”先生”の意見が必要です! どちらが正しいと思いますか!?」

 

 

 

 ――木乃伊(ミイラ)取りが木乃伊(ミイラ)

 

 ――藪をつついて、蛇を出す。

 

 そんな言葉が”先生”の脳裏に過るが、言い争いに巻き込まれてしまったことに変わりなく。

 思わず”ちょっと待って、最初に呼んだ理由から変わってない……?”と困惑気味に疑問を呈するが、今の2人は聞く耳持たず。

 

「やっぱり派手な方がいいよね!?」

「実現可能なラインの妥協が必要ですよね!?」

 

『ね!? ”先生”!』

 

 グイッ、と同時に詰め寄る双子の放つ迫力に、内心冷や汗を流す”先生”。

 互いの意見は正反対なのに、行動や発声がハモるところは双子ゆえのコンビネーションか――などと場違いな感心を抱くが、都合よく事態が変わることなど起こる筈もなく、選択は”先生”に委ねられてしまった。

 

 どちらを選ぼうとも酷いことになりそうな未来が目に見えている以上、すぐに答えられずつい口籠る”先生”。しかしその一方で、答えを急かすようにモモイとミドリの視線が”早くしろ”と訴えかけてくる。

 

 鬼気迫る視線を受け、答えざるを得ないと腹を括る”先生”。

 出来るかぎり両者の言い分を汲みつつ、自身の意見を口にしようと――

 

「ふ、2人とも、ちょっとストップ!」

 

 その時、室内に少女の声が響く。

 思わず声が聞こえた方へとモモイ達が視線を向けた先には、できるだけ毅然に振舞おうと頑張るユズの姿が!

 

「せ、”先生”が困ってる……!」

 

 やや上ずった声で告げた彼女の言葉に、ハッとした表情を浮かべるモモイとミドリ。

 一方、その言葉に救われる形となった”先生”は助かったと云わんばかりにホッと胸を撫で下ろした。

 

「ご、ごめん……」

「ごめんなさい……」

 

 ひとまず頭が冷えたのか、先程から一転してしおらしくなった2人が申し訳なさそうに頭を下げる。しかし、先程のやり取りが尾を引いているのか、2人の間に気まずい空気が漂い始める――

 

 

 

 ――と、思いきや。

 

「――つめたっ!?」

「ひゃっ……!?」

 

 首筋辺りに感じた、氷のような冷たい感触に思わず肩を跳ねるモモイとミドリ。

 

 思わず振り返れば、アリスに持ち上げられた状態で、2人の反応を面白がるカービィが目の前にいた。その手に桜色と黄緑色のアイスキャンディーがそれぞれ握られているところを見ると、どうやらそれを2人の首筋に当てた模様。

 

 やんちゃなピンクボールが起こした唐突な行動に目を瞬かせるモモイとミドリに、アリスがえへんとその理由を説明をする。

 

「さきほどのモモイとミドリはバーサク状態だったので、これで状態回復するべき、と伝えています!」

 

 そんな彼女の言葉を裏付ける様に、ニコニコと笑みを浮かべたカービィが手に持っていたアイスキャンディーを2人へ差し出す――モモイは桜色のピーチ味、ミドリは黄緑色のメロン味である。

 

 差し出されたアイスキャンディーに、一度目を落とす双子。

 それから隣にいる片割へ、おずおずと視線を移す。

 

 初めはバツが悪そうに、横目でチラチラと相手の反応を窺う2人――だったが、その様子が可笑しく見えたのか互いに小さく噴き出すように笑い合い、やがて差し出されたモノを手に取る。

 

「もー、アイスで大人しくなるほど子供じゃないってば」

「とか言いながら、しっかり手に持ってるくせに」

 

 ご飯を食べればすぐ元気になるピンク玉に呆れたような言葉を吐きつつも、頬が緩んでるモモイを茶化すように指摘するミドリ。

 それに対し「い、いいじゃんべつに」と少し気恥ずかしそうに口を尖らせたモモイが、桜色に彩ったアイスキャンディーを口元へ運ぶ。それに倣い、ミドリも自身の手に持っていた黄緑色のアイスキャンディーを食べ始めた。

 

 そんなやり取りを見守っていた他の面々は、姉妹がなんとか仲直りできたことに一安心。

 その後、折角なのでカレが部室の冷蔵庫から取りだしてきたアイスキャンディーを全員が頂き――いったん頭を冷やしてから話し合いを再開しよう、ということになるのであった。

 

 

 

 それから、全員が食べ終わったのを見計らい、話し合いは再開。

 とはいえ、一旦保留となった2人の意見について解決していないのも事実。

 

 堅実に現実的な計画を突き詰めるのか。

 無理をしてでも派手な演出や展開を追い求めるのか。

 

 どちらが正しいか、と云うよりも当人達が納得できる形で収めた方が良い、と考えた結果――

 

「……ここは、ゲーム開発部で代々受け継がれてる『アレ』で決めた方が良いと思う」

「なるほど、『アレ』ですね、ユズ!」

 

 ()()、と強調して話を進めていくユズに、妙案だと云わんばかりに頷くアリス。

 

 それに対し、それが何を指しているのか当然知る由もない”先生”が首を傾げる。

 そもそも、今が初代だというのに”代々”とは一体。

 

「その、たまに……結構…………よく、意見が平行線になることが多くて」

”よくあることなんだ……”

 

 目を泳がせ、2回ぐらい言い直したユズの苦労が垣間見えたことは、さておき。

 事情を知らない”先生”の為に彼女は説明を続ける。

 

「なので、お互いの意見に納得できない時は勝負をする事にしたんです。”勝者の意見は絶対”というルールで」

 

 緩い雰囲気にそぐわず、弱肉強食なルールが実在していたことに”ゲーム開発部って思ったより武闘派なんだ……”と慄く”先生”。もしかすると弱者には厳しい部活なのかもしれないと、考えを改めたとかなんとか。

 

 一方で、当事者であるモモイとミドリは覚悟を決めたように、ゆっくりと立ち上がると――

 

「いいよ……ユズがそう言うなら――」

「――その勝負、受けて立つ!」

 

 互いに相手を見据えながら、闘志を燃やす才羽姉妹。

 今にも対決が始まりそうな緊張感を肌で感じ取ったのか、危ないことは止めた方が良い、と”先生”が慌てた様子で2人を説得しようと――

 

 

 

『”フルゼリー大戦”で勝負だよ!』

 

 

 

”……あ、ゲームで勝負するのね”

「はい、ゲーム開発部ですから」

 

 予想を裏切る展開に呆然とする”先生”に失礼と思いつつも、くすりと笑うユズ。

 少し驚かせようと悪戯心が芽生えたのか、故意に黙っていた彼女であった。

 

 

 

 そうと決まれば早速、とばかりにモモイとミドリがいそいそと対戦の準備を進めていく中。

 対照的に、手持無沙汰になったアリスがカービィを抱き抱えながらユズへ尋ねる。

 

「アリスたちは何をしたらいいでしょう?」

「そうだね……アリスちゃんとカービィは新しいアイデアになりそうなものを探してきてもらえるかな」

 

 「思わぬところでが新しいインスピレーションが生まれるかもしれないから」と、言葉を付け足したユズがお願いすると、頼まれた2人は嫌な顔ひとつせず、元気よく手を上げながら返事をすることで了承の意を示した。

 

 すると突然、何か妙案を思いついたのか表情を明るくしたアリスは――

 

「”先生”も一緒に冒険しましょう! 3人パーティーならクエスト効率も3倍です!」

 

 と、思いついた考えを当の本人へと告げた。

 

 その言葉を向けられた”先生”は一瞬目を丸くしたが、次第に柔らかく微笑むと”うん、いいよ”と了承。その返答に、アリスの顔に喜々とした感情が浮かびあがると共に、彼女の腕に抱えられたカービィも嬉しそうな笑顔を浮かべ、”先生”の同行を歓迎した。

 

”ユズはどうする?”

「あ、えっ、と……私は、ここに残ります。モモイとミドリの決着を見届けないと、なので」

 

 ”先生”の問いかけに、対戦を始めようとしている姉妹の様子を窺いながらユズが答える。

 あの2人なら、対戦後に屁理屈を捏ねることはないと信じてはいるものの、ここは”部長”としての立場を優先したいと考えているようだ。

 部長として責務を果たそうとする、貫禄ある姿に”先生”が胸打たれたのはまた別の話。

 

 

 

 斯くして、話は決まり。

 後にも先にも恐らくないだろう、()()()()()()()()()の――

 

「――さあ”先生”! カービィ! アリスと一緒に冒険を始めましょう!」

 

 ちょっとした()()が、幕を開けたのであった。

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

 

4-3

 

 

 

 ――――そして、時は冒頭に戻る。

 

 部室を出た3人が屋外のキャンパスに移動している最中、何かを思い出したアリスが「必須アイテムを取りに行ってきます!」と言い残し、突如オトモを抱えたまま自身の住居へと駆け出した。

 その姿を、突然のことで呆気にとられた”先生”は見送ることしかできず、仕方なく一足先にキャンパスへと向かい、休憩用に設置されたベンチに腰掛け2人を待っていたのだった。

 

「パンパカパーン! アリスたちは村の外に出る事になりました! 見習い勇者アリスと愉快な仲間たちの冒険はここから始まるのです!」

 

 ともあれ、合流を果たしたアリス達。

 その際、彼女が先程まで持っていなかったであろう、肩に掛けているボストンバッグが目についた”先生”がそれについて尋ねる。

 

”もしかして、それが取りに行ってた必須アイテム?”

「はいっ、拾ったアイテムを収納する道具袋と……――」

 

 そう答えながら、バックを開けたアリスはその中に仕舞っていたある物を取り出すと、”先生”に見せつけるかのようにもう一つの必須アイテムを披露する。

 

 ”先生”の視界に入ってきたのは、レンジファインダーカメラを模したデジタルカメラ。

 その道に詳しいわけではないが、”先生”から見て中々に値が張りそうな作りこみであった。

 

 思った以上にしっかりとした道具が出てきたことに驚きつつ”どうしたのこれ?”と再度尋ねる”先生”。

 するとアリスは、そのカメラについて語り始めた。

 

 

 

『――つまりこれこそわがエンジニア部が作り上げた前代未聞超高性能革新的カメラ”時よ永遠に君第1号”です! このカメラが素晴らしいのは備え付けた機能や性能もそうですが何より一番の目玉はシャッターよりほんの一瞬早く濃縮した窒素ガスをカメラ上部分から高圧発射し約0.001秒で()()()()()()()()()ことによりブレを気にせず完全な静止画を撮ることができる点なのです! さらに撮影ビギナー救済措置としてオートロックオン機能が備え付いてますので標準に自信が無い方でも問題なく狙いを定めることができますよ!』

『Bluetooth機能やPay機能もついてるよ』

 

 

 

 ――要は、瞬時に相手を凍らせるカメラ型凍結兵器である。

 

 なるほど確かにコレを使えば、簡単に静止画が撮れるだろう。

 被写体の安否はしらん。

 

 そして説明が始まる直前、アリスに断りを入れてカメラを手あたり次第弄っていた”先生”が凍らされている訳でもないのにすごい形相で固まるのも仕方がないことで――ちょうどレンズが”先生”に向いている角度なのも踏まえて。

 

「ですが、開発段階で窒素ガスを発射する機構に不具合が生じた為、今は()()()()()()として活用していると言ってました」

 

 その一言が欲しかった……ッ!

 

 彼女の注釈に心の底から安堵した”先生”が深い深い溜息を吐いたのち、震えた手でカメラを返す。今度から迂闊な行動は控えよう、と心に誓った模様。

 そして、そのまま倉庫で埃を被らせるのも勿体無い、と思っていた製作者であるエンジニア部から譲り受けたのだと、アリスは説明を締めくくるのであった。

 

 思わぬ所で危機に瀕されたかもしれない”先生”が、何とか気持ちを落ち着かせている、一方。

 ニコニコと楽しげな様子のアリスが告げる。

 

「今日はアリスも”先生”もレベル1の見習い勇者です! 今までは冒険の時に伝説の勇者から始めたりもしましたが……今日は、せっかく先生と一緒に冒険できるので、レベル1から始めます」

 

 「少しずつモンスターを倒し、レベルアップして、伝説の勇者を目指しましょう!」と言葉尻を加えながら意気込むアリス。その様子から、一緒にお出掛け――もとい、冒険するのを心待ちしていたのが目に見えていた。

 

 いつもより気持ちが逸っている彼女の様子に、思わず微笑んでしまう”先生”――とそこで、先の発言で気になったことがあったのか問いかける。

 

”カービィは見習い勇者じゃないの?”

「はい! カービィは勇者のオトモなので、アリスたちをサポートする心強い存在です!」

 

 ハツラツと答えるアリスに、ヨロシクと云わんばかりにカービィが元気よく手を挙げた。

 本人が勇者役に固執していないのもそうだが、確かに勇者と名乗るには見た目が愛くるしすぎるのかもしれない。

 

 ――いや、それ以前にアリスの中では『カービィはオトモである』ことは絶対なのかも――

 

 折角、という理由だけで見習い勇者で始める中でもカービィだけ役割が変わらないのは、それだけカレの立ち位置は、アリスにとって()()()()()なのだろう。

 尤も、彼女自身がそのことを自覚しているのかは定かではないが。

 

 ”先生”が改めて2人の関係性を不思議に思っている傍ら、先程のカメラを手にしたままのアリスが2人に向きあうと――

 

「では冒険の始まりということで、思い出の写真を撮りましょう!」

 

 と、声を弾ませながら提案した。

 当然、否定する理由などない2人が賛成の意を返すと、さっそく彼女は準備に取り掛かる。

 

 それからものの数分の内に、バッグに仕舞っていたであろう三脚にカメラを取り付け、準備は完了。

 セルフタイマーを設定し終えたアリスはとてとてと小走りし、2人の間に入り込む様に並ぶ。後はシャッターが切られるのを待つのみ。

 

 今か今かと、ワクワクしながらその時を待つアリス。

 その隣で”先生”が、本当にガス飛んでこないよね? とこっそり不安を抱いているなんて知る由もなく。

 

 そして、いよいよシャッターが切られる――

 

 

 

 その直前。

 ”先生”とは対となるように、アリスの隣に位置していたカービィが――

 

 

 

 ――タイミングを見計らったかのように、()()()()()()

 

 

 

「チーズ、サンドイッチです!」

 

 突然ピンク玉が2mほど飛び跳ねたことに驚く”先生”を余所に、満面の笑みを浮かべたアリスの一言に連動するかのように、パシャリとシャッター音が響く。

 

 撮影が終わるやいなや、今度はカメラの方へ小走りするアリス。

 三脚からカメラを取り外すと、今度は撮ったばかりの写真を確認しようと操作を始める。

 

 そうして、出来上がった写真を3人が目を通すと――

 

「”先生”はどうしてカービィの方を見ているのですか?」

”……な、なんでだろうね”

 

 カメラ目線でピースサインと共に笑顔を浮かべる自身の横で、カメラではなくカービィがいる真横の方へと顔を向けている”先生”の姿に、首を傾げるアリス。

 それに対し、驚きのあまり振り向いてしまった、などと少し情けなくて言えない”先生”は頬を掻きつつ理由をはぐらかし――そして、その原因であったピンクボールが、何故いきなり跳んだのかを理解した。

 

 その写真には、空中でポーズを決めているカービィの姿が見事に収められていた。

 被写体ブレも生じていない所を見ると、タイミングを完全に察知していた模様。

 

”すごいねカービィ、タイミングバッチリ!”

 

 まるで、見えない何かで持ち上げられているのではないか、と思い込んでしまうほど上手い具合に空中で静止する姿に”先生”が感心の声を上げる――と、なぜかアリスが得意げに「カービィの直感スキルはSクラスですので、シャッタータイミングは絶対に見逃しませんっ」と自慢するかのように胸を張っていた。その様子を見るに、今回が初めてというワケではないようだ。

 

 2人からお褒めの言葉をもらい、テレテレと照れくさそうに頭(?)を掻くカービィに、アリスと”先生”が和みつつ、記念撮影も済んだということで、いよいよ冒険――という名のゲーム制作のアイデア探しへと出発する3人。

 

 ――その時、何か懸念していることでもあるのか、「ですが……」とアリスが少し悩む様子を露わにする。

 

「こうして一緒に冒険を始めるにあたって、アリスは悩んでいます。ユズのクエストをクリアするにはどうすれば良いのでしょう……?」

 

 ううん、と難しい顔をするアリスに、”うーん……”と”先生”も考え込む。

 具体的に何を探す、という話でもない以上、どう動けば良いのか迷ってしまうのも無理はないだろう。

 

 

 

 始まりの1歩目で、いきなり足踏みをしてしまう勇者一行――そんな時。

 考え悩む2人を通り過ぎ、先へと進む者が。

 

 思わずその姿を視線で追うと、桃色の若者(カービィ)が陽気に進んでいく姿が目に入った。

 

 迷わず進んでいく姿にアリス達が目を丸くする一方で、誰も来ていないことに気付いたカービィが少し離れた所で振り返ると、急かしているつもりなのか笑顔で手を大きく振る。

 

 その姿に、クスリと笑う”先生”がアリスに語り掛ける。

 

”とりあえず、前進してみようか”

「……はい! 出会いも、バトルも……レベルアップやクエストクリアも、始まりは()()からですね!」

 

 晴れ晴れとした面持ちで、大きく頷くアリス。

 それから、先で待っているカレに早く追い付こうと、駆け出した。

 

 そんな彼女の背中を追うように、少し遅れて”先生”も歩みだす。

 その際、”先生”は先程の言葉を思い返していた。

 

――カービィは勇者のオトモなので、アリスたちをサポートする心強い存在です!

 

 頭に浮かんだその言葉に、なるほど、と頷く”先生”。

 彼女の言う通り、ああやって勇者(アリス)を導いていく――頼もしい存在なのは、間違いなく。

 

 

 

 少し先で待ち侘びる2人を見遣りつつ、そんなことを考える”先生”であった。

 

 

 

  【 つ づ く 】

 

 

 




●タメになる☆TIPS集



【冒険の始まり】
→りたーん とぅ どりーむらんど

【ローグライク】
→モンスターハウスだ! ゲイズ先生やめてくださいませんか(^q^)

【スパイになって、マンションのエレベーターで敵を倒すゲーム】
→コミカルなテイストでもエレベーターでの圧死は残酷すぎるのだわ

【ああ、やっぱり今回もダメだったよ。】
→大丈夫だ、問題ない。

【フルゼリー大戦】
→ぱよえ~ん

【チーズ、サンドイッチ】
→大人も子供も、おねーさんも。

【空中でポーズを決めているカービィの姿】
→ディスカバとか見ると写真うつり良いのよねこの子



 この間ピックアップされた白い子ちょっとあざとすぎませんかね、おかげでクレジットと育成素材が消し飛んだですけど?
 まあええか^^


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