Spring Sky StarS!   作:笹ピー

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004

4-1

 

 

 

 深夜。

 

 夜はすっかり更け、多くの人が寝静まっているであろう時間帯。

 その例に漏れず、ゲーム開発部の面々は床上だったりソファの上だったり、場所を選ばず各々は夢の世界へと旅立っていた。

 

 

 

「……クリア」

 

 

 

 ――1人の少女を除いて。

 

 

 

 あれから、アリスはゲーム好きの部員達から勧められたゲームに、着手し始めた。

 最初こそ、内容を熟知しているモモイ達から助言や解説を受けながらプレイを進めていた――が、やはり迫りくる睡魔には勝てなかったのか、夜が更けこんでいくにつれて1人、また1人と脱落していくかのように寝落ちしてしまう。ちなみにピンク玉は真っ先に脱落していた。

 

 ところが、アリスの興味と好奇心は留まるところを知らず。

 周りから支援を受けずとも自力で攻略法を編み出し、1人でゲームを攻略していくほどまで成長していった。無論、プレイしたゲームの内容を一つ一つ噛み締めながら。

 

 今も一つのゲームのエンディングを迎え、その勢いのまま次なるゲームに手を伸ばす。

 ゲームソフトの入れ替えもすっかり板についた模様。

 

 

 

 積まれたゲームを少しづつ、”消化”していくアリス。

 深夜の静けさの中、彼女は黙々と電子の世界を救っていく。

 

 

 

 そんな時、すっかりゲームの世界にのめり込んでいた彼女が、違和感を覚える。

 正確には、何かが太腿辺りに寄りかかっているような感覚。

 

 モニターから目を離し、そちらへと目を向けると気持ちよさそうに寝入っているピンクの生物が目に入る。どうやらコロンと寝返りを打った際に彼女の身体に寄りかかってしまったようだ。

 

 その姿をジッと見つめていたアリスだったが、やがて気を取り直す様にゲームへと意識を戻し、新たな冒険へと足を踏み出す。

 

 

 

 ――すると、新たなゲームを開始して間もない頃、あるNPCのセリフが表示された。

 

[ いろんな モンスターを オトモに するんじゃ! ]

 

 今、彼女がプレイしているのは”モンスター”を仲間――いわゆる”オトモ”にして育てつつ、世界征服を企てる悪の秘密結社と戦い世界を救う、という育成要素を組み込んだRPGゲーム。

 そして白衣を纏う老人のような見た目のNPCは、初めてゲームをプレイする初心者に向けた説明役と言ったところだった。

 

 その流れに沿って、セリフの先を促すようにアリスがボタンを押すと――”どうやって?”/”きょうみないね”――と主人公の言葉を代弁するかのような選択肢が表示される。

 

 興味があった彼女は”どうやって?”にカーソルを合わせて、決定ボタンを押す。

 

[ ナデナデを して モンスターが よろこべば キミのオトモに なるんじゃ ! ]

 

 すると突然、まん丸い体躯のネズミのようなモンスターが現れた。

 

 いきなりの戦闘イベントに面を食らうアリスだったが、すぐにその意図を理解する。実際にモンスターをオトモにする行程を体験しろ、ということだろう。

 そう察した彼女は主人公のコマンド一覧から”ナデナデ”を選び、早速目の前のモンスターをオトモにしようと試みる。

 

〔 アリス は ナデナデ を ためした! ]

〔 ……マルチュウ は よろこんでいる ようだ! ]

 

 ナデナデを行うと、少し間を置いてからマルチュウと呼ばれたモンスターの顔が喜んでいる表情へと変化する。

 

〔 オトモに しますか ? ]

 

 新たなメッセージが表示されると同時に”はい/いいえ”という選択肢が現れる。

 それに対し、アリスは迷うことなく”はい”を選ぶ。

 

〔 やったぜ! マルチュウを オトモに したぞ! ]

 

 ファンファーレの様なBGMが流れる中、オトモにした旨を伝えるメッセージを目にしたアリスが、上手くできたことにホッと胸を撫で下ろす。そして、オトモにしたマルチュウをあらためてマジマジと観察するアリス。

 まるっこい体につぶらな瞳。チューチューと鳴く姿はモンスターというよりペットと云ってもいいぐらいの愛くるしさを醸し出していた。

 

 その姿に目を奪われていたアリスだった――が、ふとその姿に何処か既視感を感じ、

 

 

 

 ――そしてその答えは、彼女のすぐ傍にいたことに気が付く。

 

 

 

 グースカと眠り続けるカービィに再び目を向けるアリス。

 そんなカレへと恐る恐る手を伸ばし、慎重に頭へ触れる。

 

「……”オトモ”にするには、”ナデナデ”で喜ばせる……」

 

 そう独り言を呟きながらアリスは、先程ゲームの中の主人公がしていた動作を真似して、柔らかくも意外と弾力性のあるカービィの頭を撫でる。

 とはいえ慣れてない彼女の手つきはどちらかと言えばさわさわと擦ってるような手つきであった。

 

 

 

 しかし、夢の中で楽しい夢を見ていたカービィにとっては、誰かの温もりは心地よいものだったようで――

 

 

 

 ――――眠りながらも、口元をにへらと緩めた。

 

 

 

 その反応に目を見開いたアリスは、次第に頬を綻ばせる。

 

 喜々として目を輝かせた彼女は、夢中になってカレを撫で続ける。

 決して起こさないように、気を付けながら。

 

 

 

 結局、彼女がやりかけていたゲームへと戻るのは、それから数十分ほど過ぎた頃だったとか。

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

4-2

 

 

 

 アリスとカービィを部室に招き入れた、次の日の朝。

 朧気ながらも意識を覚醒させたミドリはゆっくりと上半身を起こす。

 

 気だるげな体を解す為に腕を上へ突き上げ体を伸ばしつつ、彼女は昨日の出来事を振り返る。最後に思い出せたのは周りが寝静まった中、ぼんやりとアリスのプレイを見ていた記憶。

 

(――そっか。あのまま寝落ちしちゃったんだ)

 

 ぼーっと昨日の事を思い出していると、今何時だろうと近くに投げ出されていた自分のスマホをのろのろと手に取り確認する。

 

 起きてからずっと寝ぼけ目のままだったミドリだったが、そんな彼女もスマホに表示された時刻を見て、一気に眠気が吹き飛んだ。

 時刻は、昼まえ頃を示していた。

 

「も、もうこんな時間!? しまった、準備しなきゃ――」

「――――ようやく気が付いたか……」

 

 慌てて起き上がるミドリが隣で眠っていたユズを起こそうとする、その直前。

 突如として背後から聞こえてきた言葉により、呆気にとられてしまう。

 

「無事に目を覚ましたようで何よりだ、君は運がいい」

 

 どっかで聞いたな、と思いつつ「誰?」と声が聞こえた方へと振り返るミドリ。

 そこには不敵な笑みを浮かべながら仁王立ちをする、アリスの姿が!

 

「あ、アリスちゃんか……調子はどう? 色々と覚えられた?」

 

 一先ず見知った顔でホッと胸を撫で下ろすミドリ。妙な言い回しが聞こえたような気がしたが聞き間違い、と思うことにした彼女は調子を窺う。

 

 その言葉に対して、アリスはニッコリ笑みを浮かべながら――何故か片手を前に突き出しながら――答えた。

 

「君の言葉を肯定しよう、必滅者よ!」

「何か偏った台詞ばっかり覚えてない!?」

 

 先程の喋り方といい、ポーズといい、表現方法に偏りを見せるアリスに戸惑いを隠せないミドリ。

 確かに最初の頃の機械的な受け答えでは無くなったが果たしてコレでいいのか、という一抹の不安が彼女に芽生え始める。薦めたゲームの内容がほとんど冒険活劇系だったのも、影響を助長したのかもしれないと、少し後悔したとか。

 

 次からはもう少しお淑やかなゲームをさせよう、とミドリが考えている中、話し声に気付いたのか傍で寝ていたユズがむっくりと起き上がった。

 

 欠伸をしながら挨拶する彼女と言葉を交わすミドリの横で、先程と同じセリフで挨拶を返すアリス。その言葉遣いに目を点にするユズの反応にミドリも同情しては苦笑い。なおずんぐりピンクはまだ寝てた。

 

そんな穏やな空気が流れる中、部室のドアが開かれると2人の人物――この場に唯一いなかったモモイと、シャーレの”先生”が室内に入ってきた。

 

「おはよう!」

”おはよう、よく眠れた?”

 

 片や元気に、片や落ち着いた様子で挨拶し、先程と同じ様にミドリとアリスも挨拶を返す。

 先程と同じ調子で言葉を返すアリスには”、先生”も目を丸くしたが。

 

 その一方。

 

「――――……えっ、あっ、ひああっ!?」

 

 急に部室に入ってきた”先生”を視界に入れてから10秒ほど固まり、我に返るなり、か細い悲鳴をあげながら駆け出し、ユズはあっという間にロッカーの中へと引き籠った。

 

 そんな一連の動作を観ていた”先生”は、何が起きたのかわからずポカンとした表情でロッカーを見るしかできず。その横で、今の奇行に心当たりがありまくるモモイが「あー……」とばつの悪そうな顔を浮かべる。

 

「……そういえばユズと”先生”って初対面だったっけ」

「”だったっけ”……じゃないでしょ!」

 

 頭を掻くモモイに対してプンスカと詰め寄るミドリ。

 ある時を境に、極度の人見知りになってしまったユズにとって、初対面の”大人”はハードルが高かったようで、今もロッカーの中でガタガタ震えたまま。

 

 それを見兼ねたモモイとミドリが、慌ててロッカーの前にまで近づく。

 

「だ、大丈夫だよユズ! ”先生”は怖くないから! 取って食わないって!」

「う、うん。私たちも一緒にいるから、ね?」

 

 一生懸命宥めようとしている姉妹だが、その説得内容に””まるで猛獣の様な扱いだ……”と複雑そうな表情を浮かべる”先生”。

 

 一方、今までドタバタを眺めていたアリスは成程、と云わんばかりに頷くと――

 

「そこがユズの”いばしょ”なのですね!」

 

 ――などと、呟いたとかなんとか。

 

 

 

「すすす、すみません。”先生”に大変しし失礼を……!」

”ううん、こっちこそ、いきなりでごめんね”

 

 あれから少し気が落ち着いたのを皮切りに、なんとかロッカーから出てきたユズは先程の行動について謝罪した。流石に無礼にもほどがあると彼女も思った模様。

 それに対し、大して気にした様子も無い”先生”は、事情を知らなかったとはいえ怖がらせてしまったことについて、申し訳なさそうに彼女へ謝罪する。

 

 そんな互いに謝罪し合う2人の様子に「とりあえず問題ないかな」と判断したモモイは、

 

「アリス、これ」

 

 と、カードの様なモノを当人へ手渡した。

 片や、渡されたカードをまじまじと目を通す彼女は「アリスは正体不明の書類を手に入れた」と呟きながら、手渡してきた相手へと説明を求めるように視線を送る。

 

「おっ、またさらに口調が洗練されてるね。これは”学生証”だよ」

「洗練っていうか、レトロゲームの会話調そのものだけどね……」

 

 モモイがアリスの成長に感心する傍ら、複雑な表情を浮かべるミドリ。

 そんな中、「学生証……」と先程の言葉を復唱するかのように呟いたアリスは、あらためてカードの裏面などを確認し始める。確かにミレニアム所属を意味する紋章や顔写真が記されている。

 

「この学生証は、私たちの学校の生徒だっていう証明書。生徒名簿にもヴェリタスがハッキ……いや、登録してくれたから、アリスも正式に私たちの仲間だよ!」

 

 胸を張ったモモイが自信満々に告げる――その一方、不安な言葉がチラついたのを聞き逃さなかったミドリが、嫌な予感を抱きつつ尋ねる。

 

「……ねえ、今”ハッキング”って言いかけなかった?」

「大丈夫大丈夫! バレなきゃオッケーだって!」

 

 能天気な姉の返事に、妹は胃が痛くなるのを覚える。

 この時点で立入禁止区域の侵入、少女の拉致(?)、未確認生物の捕獲(?)に加え、ハッキングの余罪まで背負うことになってしまったことには間違いなく。

 

 すかさず”先生”へと縋るような視線を飛ばすが、残念ながら相手は苦笑いを浮かべるだけ。

 その反応を前に、腹を括るしかないのかと、ミドリは悲痛な覚悟を抱えた。

 

 一方、仲間の証という部分が琴線に触れたアリスが「なるほど、理解しました」とニコリと頷くと、

 

「パンパカパーン! アリスが”仲間”として合流しました!」

 

 と、ゲームのSEを口ずさみ、ゲームのメッセージの様な言葉を口にするアリス。

 まるでRPGゲームにおける仲間が加入するイベントの再現であった。

 

 個性的な表現ではあるが、彼女が喜んでいることが伝わったモモイはウンウンと気を良くしたように頷き、その傍らで見守っていたミドリも笑みを浮かべる。

 

 それを少し離れたところで様子を見ていた”先生”も、微笑ましいものを見るかのような表情を浮かべ――ふと脳裏に浮かんだ疑問を口にする。

 

”そういえば、もう一人の子は?”

 

 そう言いつつ、まさかまた自分の肩に、と思い出し視線を向けるが、姿は無く。

 するとミドリが少し立ち位置をずらすと、”先生”の視界に座布団の上でぐっすりと眠っているカービィの姿が入る。どうやら彼女達が妨げとなっていたのか、”先生”の場所からは見えにくかった模様。

 

「まだ熟睡中です」

「結構騒がしかったと思うけど、よく起きなかったよねー」

 

 感心半分、呆れ半分といった具合に呟きつつ、しゃがみこんでは寝坊助の頬を指で軽くつつくモモイ。もちろん起きる様子は無い。

 

 ここまで気持ちよさそうに寝ていると起こすのも憚れる――と思いきや。

 そんなことお構いなしなアリスが、カービィの体をゆさゆさと揺する。

 

「カービィ見て下さい、”仲間”の証です!」

 

 流石に揺さぶられていることに気付いたのか、目元を手で擦りながらのっそり起床するカービィ。

 すると先程貰った学生証をアリスは意気揚々と見せつけ、その証をぼんやりと見つめていたカレに語り掛ける。

 

「カービィはアリスの”オトモ”なので、これでカービィも”仲間”として合流しました!」

 

 そう意気込む彼女の発言に、いつの間に決まったの? と疑問を抱くモモイ達。

 当の本人でもあるカービィも、なんのことだかと、きょとんとするのみ。

 

 一方、「パンパカパーン!」と嬉しそうにファンファーレを口ずさむアリス。

 そんな彼女の雰囲気に釣られてか、次第に楽しくなってきたカービィは彼女に笑いかける。

 

 

 

 そんな2人を、少し離れて見守っていた4人。

 純粋無垢なやり取りに微笑ましさを感じてか、優しい眼差しを向けているのであった。

 

 すると少し逡巡した後、”先生”はモモイとミドリ、ユズの3人へと尋ねる。

 

”あの子とは――カービィとは仲良くやってけそう?”

 

 唐突な質問に、つい目を丸くする3人。

 それから彼女達は、ううんと少し考えてから――同時に頷いた。

 

「うんっ、ちょっと呑気だけどいい子だと思う!」

「お姉ちゃんがそれ言う? ……でも、悪い子じゃないのは確かかも」

「う、うん。きっと、優しい子だと、思う……」

 

 ニュアンスこそ違いはあれど、3人とも仲良くできる”と言った答え。

 

 連れてきた本人であるモモイや向こうで一緒にはしゃいでいるアリスは勿論のこと、最初こそ警戒していたミドリも、自由気ままな性格とボールのような見た目に毒気を抜かれたせいか、今ではあまり警戒していない模様。

 特に先ほどのやり取りで一番警戒心が強いと思っていたユズも、だいぶ心を許していたことに”先生”は内心驚きを隠せなかった。

 

 それを聞いた”先生”は安心したかのように微笑み、あらためてアリスとカービィの方に視線を向ける。

 

 ”――どうやら私の杞憂だったかな”

 

 そう思い至った”先生”は、2人の微笑ましいやり取りをしばらく見守るのであった。

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

4-3

 

 

 

 

 何はともあれ、アリスの身分問題を解決したゲーム開発部。

 

 バレればお叱り上等な手段だが背に腹は代えられない、ということで”先生”は黙認することに決めた。尤も本人としてもゲーム開発部の存続を依頼された手前、見過ごす他無いといった具合だったが。

 

 会話も独特な言い回しこそ目立つが、ゲーム開発部の部員なら多少のごまかしは効く範囲――ミドリは若干不安そうだったが――ということで、その点に関してもクリアしたと言っても良い。

 

「ミレニアム……キヴォトスの生徒は、みんなそれぞれ自分の武器を持ってるの。だから、アリスにも武器を見繕ってもらわないとね」

 

 残る問題はアリスの武器。

 未だ彼女はモモイ達の様な銃器を所持しておらず。

 

 モモイが自身の愛銃――”ユニーク・アイディア(アサルトライフル)”を見せつつ、これから向かう行き先について説明する。

 

「調達する方法は色々あるけど、このミレニアムで一番手っ取り早く、ちゃんとした武器が手に入る場所と言えば……やっぱり”エンジニア部”かな」

「エンジニア、部……?」

 

 聞き慣れない単語に首を傾げるアリスに、今度はミドリが説明する。

 

「機械を作ったり、修理したりする専門家たちのことを、ミレニアムでは”マイスター”って呼んでるんだけど……そのマイスターがたくさん集まってる、ハードウェアに特化した部活なの」

「機械全般に精通してるのはもちろん、武器の修理とか改造なんかも担当してる部活だから、多分使ってない武器とかが色々残ってるんじゃないかなって」

 

 彼女達の説明に耳を傾けていたアリスは成程、と頷く。

 その内容から、高い技術力を有している集団だと理解した模様。

 

 その反応を見て、異存は無いと判断したモモイが「よしっ」と意気込むかのように声を上げると、

 

「――というわけで学校の案内がてら、早速行ってみよっか!」

 

 そう口にした彼女の号令を皮切りに、エンジニア部へと向かうことになったのだった。

 

 

 

 そうして、行き先を知っているモモイを先頭に、エンジニア部に向かう一同――流石に面識の少ない相手に会うことに慣れていないユズは部室で留守番中。

 その道中、廃墟から部室に連れてこられた時はあまり学区内を見学することが無かったアリスとカービィは、物珍しそうに辺りを見回している。

 

 ”ミレニアム・サイエンススクール”

 キヴォトスにおいて”ゲヘナ学園”、”トリニティ総合学園”に並ぶ三大学園の一つ。

 

 他学園と比べて規模や歴史こそ劣るが、それを補って余りある最先端技術が強みであり、現にキヴォトス内に流通している電子機器や化学薬品のほとんどがこの学園から創り出されたと言っても過言ではない。

 その校内にも当然のように近未来的な技術を取り入れており、宙に浮かぶホログラムや、徘徊中の警備ドローンなどが目に入る。

 

 その光景に目を輝かせている2人を尻目に、モモイが誇らしげな態度で尋ねる。

 

「どう、2人とも? これがミレニアムの科学力だよ!」

「なんでお姉ちゃんがドヤッてるの……」

 

 調子づくモモイの態度に呆れるミドリ。そんな姉妹のいつものやり取りを余所に、アリスは感銘を受けた様子で呟いた。

 

「これが、夢追う若人達の英知の結晶……!」

「そ、それは大げさすぎない?」

 

 相変わらずのアリスの大仰な発言に対し、少し苦笑いを浮かべるミドリ。

 

 ――そんな中、ふと気になったことをアリスに尋ねる。

 

「それよりアリスちゃん、重くない? その子」

「はいっ、まったく負荷を感じません」

 

 

 

 ミドリが指差した先には――――ニコニコと笑みを浮かべたアリスの両腕で抱き抱えられたカービィの姿があった。

 

 

 

 出発当初こそ、いつものように地に足をつけていたカービィ。

 その際、ふとモモイが「ぬいぐるみ扱いなのに、自走させてたらおかしくない?」と発言したのが始まりだった。

 

 実際、カービィの正体がバレれば面倒なことになることは間違いなく。

 故に、極力怪しまれないように誰かがぬいぐるみとして抱えて持っていこう、という話に。

 

 では肝心の誰が抱えるか――とその時、真っ先に立候補したのがアリスだった。

 

 最初は同じく身元がバレると不味いアリスと組み合わせるのはどうか、という話にもなったが、才羽姉妹の2人は既にミレニアム内では大半の生徒に色んな意味で知れ渡っている。

 彼女達が普段と違うことをすれば余計に目立つのではないか、と”先生”は指摘した。

 

 その一方で、アリスは新たに入学した生徒――という設定。

 ならば最初こそ目立つだろうが、予めそういう子だと印象付けておけば、今後怪しまれることも少なくなるだろう、という”先生”の話に一同は納得する。

 

 こうして抱えられることになったカービィは、アリスの腕の中に納まるのであった。

 

「汝、我が腕の中で永遠の安息を得るがいい」

「アリス、それどっちかというと魔王のセリフだから!」

 

 アリスの呟いた台詞にどっかの大魔王を連想したモモイがツッコミを入れる。

 凍てつきそうな波動を放つアリスの姿がミドリの頭の中で思い浮かんだとかなんとか。

 

 

 

 それから和気藹々と談笑しつつ、しばらく校舎内を歩くモモイ達。

 そんな時間が続く中、「あっ」とモモイが小さく声を上げると、ある方へと指しながら周囲に告げた。

 

「見えてきた、アレがエンジニア部の部室だよ!」

 

 

 

 【 つ づ く 】

 

 

 




●タメになる☆TIPS集



【きょうみないね】
→ガーキャン上Bやめてくださいませんか(^o^)

【マルチュウ】
→ピカとかは言わない

【だ、大丈夫だよユズ! ”先生”は怖くないから! 取って食わないって!】
→足は舐めるがな!

【そこがユズの”ばしょ”なのですね!】
→しかし いまは わたしの ばしょだ

【これがミレニアムの科学力だよ!】
→かがくの ちからって すげー!

【我が腕の中でしばしの安息を得るがいい】
→ほろびこそ わが よろこび。 しにゆくものこそ うつくしい。


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