Spring Sky StarS!   作:笹ピー

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 時オカリメイク……だと……? しかも年内……??
 スタフォといい今年は64世代を殺しに来てるとですか??? 

 許せるッ! カスタムロボもリメイクしてクレメンス……


012

12-1

 

 

 

 アリスが姿を消した、次の日。

 昨日の豪雨がウソの様に、晴れ渡った青空が広がる早朝。

 

 そんな人気が少ない時間でありながらも、ミレニアムタワー内に設けられた対談スペースには、複数人の姿が見受けられていた。

 

 

 

 あれから、リオとアリスが去っていく姿をただ見ていることしかできなかった、”先生”達。

 その後しばらくしてAMASの包囲から一同は解放され――ネルを抑えつけていたトキも、拘束を解くと同時にすぐさま姿を消してしまった。

 

 それから急ぎ、アリスが暴走した時に居合わせていたヴェリタスと、昨日居合わせなかったメンバーも含めたC&Cへと、事情を説明するための場を設けることに。

 そして――昨日の出来事について、呼び掛けに応じてくれた面々へ事細かに明かす。

 

 

 

 ミレニアムの生徒会長、調月リオから告げられた、アリスの正体。

 彼女の存在が、キヴォトスに破壊と災厄を招く恐れがあること。

 

 それを未然に防ぐ為、自ら犠牲になることを選んだアリス。

 

 

 

 そうして一通り話し終わったのを機に、対談スペースに重苦しい空気が流れ始める。

 誰もがこの事態を、重々しく受け取っているがゆえに。

 

 そんな中、ヴェリタス所属のハレが眉を顰めながら口を開く。

 

「……結局、会長がアリスを連れて行ったんだね」

「ねぇ……これって結構ヤバいんじゃない……?」

 

 その言葉に反応するかのように、彼女と同じ所属であるマキが不安げに呟くと、「はい、非常事態です」と深刻な面持ちで頷くコタマ。理由はどうあれ、1人の少女が命を落とすことに変わりはないのだから、その反応は当然のモノと云えるだろう。

 

「では、リオ会長が部長以外を呼び出さなかったのは……」

「おそらく、最初からリーダーが裏切ると想定していたのだろう」

 

 その傍らで、昨日課せられた依頼の真意を理解したアカネの言葉を引き継ぐ形で、カリンが答える。決して無意味な依頼というわけではないが、自分達を遠ざける様に敢えてあのタイミングで命じたと、考えてる模様。

 

 そして、C&Cのメンバーで唯一現場にいた張本人はというと――

 

「…………はあ」

 

 落ち込んでいるような苛立っているような――複雑な心境を露わにしながら、溜息を吐くネル。

 その様子に”ネル……まだどこか痛む……?”と、容体を案ずる”先生”。事実、昨日負った怪我について、まだ完治できていない状態ではある。

 

 対するネルは、そうじゃない、と首を横に振っては、口を開く。

 

「目の前であいつが連れて行かれるのを……あたしは、ただ見てる事しかできなかった……」

 

 悔しさを滲ませた彼女の言葉に、一同は口を噤む。

 戦闘面において特に自負があった彼女だからこそ、あの場で何もできなかった事実に相当堪えている様子だった。

 

「リーダー、気に病む必要はない。正面から戦ったわけじゃないんだろ?」

「それに、リオ会長はあらかじめ策を用意していました。対等な勝負とは……」

 

 そんな彼女を励ますかの如く、カリンとアカネが先の戦闘について口を出す。

 彼女達の言葉通り、強力な爆発による負傷やAMASによる数の差――それらを考慮すれば戦況は限りなくネル側が不利だったのは間違いなく。

 

 しかし、その発言に対し眉間に皺を寄せたネルは、

 

「……お前らは、任務が失敗してもそんな言い訳をするのか?」

 

 と、鋭い言葉をアカネとカリンの両者に投げかける。

 

 例え戦況が不利であろうと、失敗は失敗。

 決して負けていい理由にならない、と。

 

 言外にそう伝える彼女の指摘に、何も言い返せず口を濁す2人。

 それを目にした途端、バツが悪そうな顔を浮かべたネルが「わりぃ。要はあたしが腑抜けてた、ってだけの話だ」と気が立っていたことを謝罪する。

 

 それから気まずい雰囲気を払拭する意味合いも兼ねて、彼女に苦い経験をさせた件の人物について話を切り出す。

 

「あたしを物ともしなかったアイツ――トキ、つったっけか。アカネ、何か知ってるか?」

「……そうですね」

 

 C&C所属と謳いながらも、部長のネルですら知り得なかった人物。

 謎多き生徒について尋ねるネルに、少し考え込んだアカネが「存在は、知っておりました」と応えると、知る限りの情報を語りだした。

 

 

 

 飛鳥馬トキ。

 コールサイン・ゼロフォーの肩書を与えられた生徒。

 

 C&Cの所属でありながらリオ専属のメンバーであり、曰くボディーガード。

 そのためリオ以外のセミナー役員の指示にも耳を貸すネル達とは違い、トキは彼女の指示だけに従う存在。リオが謳っていたC&Cの在り方は、トキのような在り方を指していたのかもしれない。

 

「ですが、私も実際に対面したことがなく……まさか、会長が彼女を使ってこのような事をしてくるとは……」

「それに、奇襲とはいえリーダーを圧倒するなんて……」

 

 俄かに信じがたいといった様子を覗かせるアカネの横で、険しい顔を浮かべるカリン。

 一方で、その時のことを思い返したネルが、腑に落ちない様子を露わにしていた。

 

「……あいつ、なんか変なモン使ってやがった」

”……リオは、特殊武装って言ってたね”

 

 彼女が呟いた言葉に、同じ様にその光景を思い返していた”先生”が頷く。

 トキ曰く”モード2”という状態に移行した瞬間、飛躍的に向上した彼女の機動力。仕組みはどうあれ、あの装備がある限り彼女の動きを捉えることは容易ではないことは確かだった。

 

 そんな中、「なあ、”先生”」とネルがぼそりと呟くと、続けざまに問いかける。

 普段の彼女から想像し難い、苦々しい面持ちを見せながら。

 

「……ヘイローを壊すなんて話をされたのに、あのチビはどうしてリオに付いていったんだ? 言葉の意味を理解して、納得した上で付いていってるのか?」

 

 そう疑問を呈していくうち、意味が分からない、と云わんばかりに眉を顰めるネル。

 それに気づきながらも、”先生”は口を挟むことなく耳を傾けていた。

 

「なぁ……ゲームがちょっとできる程度のチビに、なんでリオはあんな事を言ったんだ?」

 

 美甘ネルと、調月リオ。

 両者とも同学年ということもあり、意外なことにその付き合いは長い。

 

 融通が利かない性格に苦言を呈することもあるが、リオの指示に従っているあたりネル自身もなんだかんだ彼女のことを認めている上に、少なくとも悪い奴ではないと今でも信じていた。

 

 

 

 ――だからこそ、あそこまで冷酷な決断を下せたことが、未だ信じ切れず。

 

 

 

「なぁ……一体これはなんなんだ? あたしだけが理解できてないだけなのか……?」

 

 数日前、一緒にゲームした相手が今や危険人物どころか、命の危機が迫る状況。

 ましてや、それを実行しようとしているのが、よりにもよって長い付き合いのある知人。

 

 本人からすれば余りにも現実離れしている現状に理解が追いつかないのか、流石の彼女も頭を抱えてしまう程であった。

 

 

 

 その様子を目にしては、やるせない気持ちを抱く”先生”。

 すると、横から「あの、”先生”」と、瞳に涙を浮かべていたミドリが躊躇いがちに問いかける。

 

「……アリスちゃんは……本当に”魔王”、なんでしょうか……?」

”ミドリ……”

 

 彼女が口にした悲痛な問いに、”先生”は掛けるべき言葉が見つからず。

 否定するのは簡単だが、今の状況では気休め程度にもならないと理解しているがゆえに。

 

「…………わ、わたし、には…………よく、わからない……」

 

 その時、今まで口を閉ざしていたユズが、囁き声と言い表せるほど弱弱しい声で答える。

 お世辞にも顔色が良いとは言えないほど、憔悴した様子であった。

 

「アリスちゃんの気持ちを、ちゃんと聞いて、お話したいよ……アリスちゃんは、魔王なんかじゃないって……会長を説得、したい……」

 

 そう胸に抱いていた願いをぼつぼつと口にした彼女の瞳から、涙が零れる。

 今となっては手遅れだと理解していても、それでも望まずにはいられなかった。

 

「……”先生”、私たちはどうすればいいかな?」

 

 ますます沈んでいく空気に耐えかねたハレが、縋るような視線を”先生”へと向ける。

 結局のところ、これから何をするべきなのかを決めなければ、話が進まないことは確か。

 

 だが、”先生”はその問いにすぐに答えられなかった。

 

 

 

『アレとキヴォトスの全生徒を秤にかけろと問われたら、答えは明白でしょう?』

 

 

 

 アリスを助けたい気持ちは、確かにある。

 しかし、あの時の言葉が”先生”の脳裏から離れず、今も頭を悩ませている。

 

 彼女を助けるということは、全生徒を危険に晒す可能性を自ら選ぶということ。

 リオが予期する災厄が必ず起こるとは限らないが、起こらないという確証もない――事実、アリスは確かに暴走したのだから。

 

 何れにせよ、大切な生徒が犠牲になる。

 その事実を前に、シャーレの”先生”は未だに答えが見出せなかった。

 

 

 

 そうしてハレの言葉を最後に、再び重苦しい沈黙が流れる――と、思いきや。

 

 

 

「そ……そういえば、モモはどうしたの……?」

 

 気まずい空気の中、おずおずと声を出したのはマキ。

 実のところ、最初からモモイの姿が見えないことに疑問を抱いていたのだが、話し合う内容が内容なだけに、なかなか話を切り出せなかった模様。

 

 すると、彼女の言葉に便乗するように「そういや」と呟いたネルが、

 

「アスナの奴もどうした。まだ来てねぇのか?」

 

 と、怪訝な表情を浮かべては同じく顔を見せない人物について行方を知ってそうなアカネへと尋ねた。

 

 そして各々の事情を知るミドリとアカネが、それぞれ答える。

 

 片や、心配と不安を滲ませた表情で。

 片や、困ったような表情で。

 

 

 

「……おねえちゃんは、その……()()()姿を見かけなくて……()()も、つかなくて……」

「アスナ先輩は、()()()()に立ち寄ってから、こちらへ向かうと……」

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

 

 

 

12-2

 

 

 

 ――――何してんだろ、わたし。

 

 

 

 ミドリ達が、姿を見せない2人を気にかけている一方。

 その片方である才羽モモイは誰に伝えることなく、ただひとり保健室へと訪れていた。

 

 あれから――昨日の出来事から、どうやって自分の部屋に帰ってきたのか憶えていないモモイ。

 寝ているのか判断しがたいおぼろげな意識の中、ただ時間が過ぎていくのを待つだけだった。

 

 そうしている内に、朝が来たことを報せる陽の光が、窓から差し込む。

 それに気が付いた彼女は、なんの脈絡もなしにフラフラと部屋を出ては、何かに誘われるようにある場所へと向かいだす。途中、呼び掛ける様に着信音を鳴らしたスマホにさえ気にも留めないまま。

 

 そして気が付けば、今も眠り続けているトモダチのいるこの場所へと足を運んでいたのだった。

 

(……ほんと、何してんだろ、わたし)

 

 ベット傍に置いてあったパイプ椅子に座りながら、モモイはカレの寝顔をぼんやりと見つめる。

 こんなことをしてる場合ではないと理解しつつ――けれど、一体何をすればいいのか思いつかず、動こうとする活力すら起きない有様。

 

 そんな彼女の脳内では、あの時の光景が繰り返されていた。

 

 

 

『アリスは…………アリス(わたし)が、しんじられません』

『そのせいで()()()が傷ついたとしても仕方ない、と?』

 

 

 

 自分自身が信じられないと語った、友人の言葉。

 彼女を救うことが周りを危険に晒すことになりかねないと語る、友人を連れて行った者の指摘。

 

 自分を信じろと告げた彼女の言葉は、アリスには届かず。

 リオが指摘した言葉に、反論するどころか答えることさえできず。

 

 挙句の果てに、複数の戦闘用ドローンに囲まれただけで動くことができず、去っていく友人の後ろ姿をただ眺めることしかできない始末。

 

 

 

(……ただのゲーマーに、そんなスゴイことできるわけないじゃん)

 

 完膚なきまでに、己の無力さを痛感させられたモモイ。

 その結果、自分が何をしたところで無駄なのだと自嘲し、諦めに近い感情が芽生えつつあった。

 

 

 

 そんな時だった。

 

 

 

「あれ? 一番乗りだと思ったのに先越されちゃった?」

 

 突然、出入口の方から響いた声に思いもよらなかったのか、モモイの肩が跳ねる。

 それから其方へ目を向けた彼女の視界に入ってきたのは、軽装なメイド服を身に纏う少女。

 

「やっほー、おはよー! モモイちゃんもお見舞い?」

 

 同じく対談の場に姿を見せなかった()()()()()()が、眩しい笑顔と共にそこにいた。

 

 

 

 それから、モモイと並ぶように椅子に座りこんだアスナは、カービィの様子を窺う。

 何かを期待するように、相変わらず寝たきりのカレの顔をジッと見つめながら。

 

 一方のモモイは、その様子を横目で見ながら、どことなく居た堪れない気持ちを抱く。

 普段なら特に気負う必要のない人物だが今の彼女にそんな余裕はなく、相手が喋らないこともあって、気まずそうに様子を窺うことしかできなかった。

 

 そんな彼女の考えを察したのか、あるいは偶然か――

 

「何か困りごと?」

「えっ……?」

 

 唐突に、目線をカービィへと向けたままモモイに話しかけるアスナ。

 対する当人は、いきなり声を掛けられたせいか、呆気にとられてしまう。

 

「すごく困ってて――悩んでるような気がしたから」

 

 そう口にした彼女は、顔を向けつつ柔らかく微笑む。

 モモイが知る限り、普段の快活な雰囲気から想像しにくい、穏やかな表情であった。

 

 そんな普段と違う表情に一瞬目を奪われた彼女は、「わ、私、そんなに顔にででた……?」と、少し慌てた様子で問いかける。それに対し、「んー」と小首を傾げながら考えこんだアスナは、

 

「顔にというか、雰囲気というかー……なんとなくそんな気がしただけ!」

 

 と、悪戯っぽく笑いながら答えた。

 今度はある意味、普段の彼女らしいとも云える無邪気な面持ちで。

 

 そんなコロコロと雰囲気が一変する彼女に目を白黒させながらも、相変わらず読めない先輩だなあ、と妙な関心を抱くモモイであったとか。

 

 

 

 それから悩みの種でもある、昨日の出来事についてぽつぽつと語るモモイ。

 何れにせよ、アリスと付き合いがあるアスナにも事情を伝えておいた方が良いと、考えた模様。

 

 明かされたアリスの正体。そんな彼女のヘイローを破壊することが目的と語るリオ。

 目的に賛同できず離反したネルと、リオのボディガードであるトキの対決と、敗北。

 

 そして――自分達の為に犠牲となることを選んだアリス。

 それを、ただ黙って見ていることしかできなかった自分達。

 

 

 

「ひどい! アリスちゃんを連れてった上にリーダーの事もいじめるなんて!」

 

 そうして、一通り話し終わった途端。

 今まで話に相槌を打ちながら耳を傾けていたアスナはプンスカと頬を膨らませ、誰が見ても分かりやすいぐらいに怒りを露わにしていた。

 

 と、思いきや。

 一転して真顔になった彼女は、暗い顔を浮かばせていたモモイの方へと詰め寄ると――

 

「それで、モモイちゃんはどうしたいの?」

 

 そう口にしては、今のモモイにとって核心を突くようなことを躊躇うことなく尋ねるアスナ。

 片や、思いがけない言葉に動揺してしまった彼女は苦々しい表情を浮かべる。

 

「…………助けに、いきたいよ」

 

 それからしばらく答えに窮した後、彼女はポツリと呟く。

 けれどその表情には、普段の態度から想像できないほど、後ろ向きな態度を覗かせていた。

 

「でも、私じゃ何にもできないし……私なんかがリオ会長を止めることなんか……」

「んー? そうじゃなくて、さ」

 

 卑屈な言動を繰り返す彼女に対し、疑問符を浮かべたアスナが首を横に振る。

 そして、その言動に戸惑いを見せる相手へと、彼女はあらためて問い掛ける。

 

 

 

()()()()()()じゃなくて……()()()()()()()()()()()()って、なに?」

 

 

 

 その言葉に虚を突かれたのか、モモイが目を見開く。

 つまるところ、本心は何を望んでいるのか、ということを彼女は尋ねていた。

 

 それから、何かを堪えるかのように表情を歪ませていたモモイは、やがて口を開く。

 今の彼女が心の底から望んでいることは、たった1つだけ。

 

 

 

「――――助けにいきたいよ!! だって、大事な友達だもんっ!!」

 

 

 

 今まで抑え込んでいた感情を爆発させるかのように、立ち上がりながら声を張り上げるモモイ。

 その声は怒号とも、慟哭とも言い換えられるモノだった。

 

「なんでアリスが犠牲にならなきゃいけないの!? それで救われたって、納得できるわけないじゃんっ!!」

 

 湧き上がる怒りと悲しみに身を任せるかのように、彼女は本心を吐露していく。

 大事な友人が命を落とさなければならないという現実を認められないのか、「おかしいよ……っ! あんなかたちでお別れなんて、絶対イヤだ……っ!!」と、首を横に振っては断固として納得できない様子を露わにしながら。

 

 アスナはそれに口を挟むことはせず、真剣な表情で静かに耳を傾けていた。

 彼女の心からの叫びを、一言一句聞き逃さないように。

 

「なのにわたし……っ、とめなきゃいけなかったのに、なにがなんだかわかんなくて……っ、なんにも、できなくて……っ!!」

 

 

 

 あの時――()()()()()、友人に否定されただけで、頭が真っ白になってしまったモモイ。

 そんな自分自身の弱さを、そのとき彼女は徹底的に思い知らされた。

 

 ネルの様に、戦闘に長けているわけではない。

 リオの様に、優秀な知能を有しているわけでもない。

 

 彼女はあくまでも、一般の範疇を出ない平凡な生徒。ゲームでいえば、凡庸な能力しか持ち合わせない5レア中の2レアキャラ。

 

 もっと自分が強かったら――

 もっと自分が賢ければ――

 

 ありもしない仮定を思い浮かんでは何もできない自分に失望し、今も駄々を捏ねるしかできない自分に腹を立てる始末。

 

 

 

()()()じゃ……アリスを、たすけられない……っ」

 

 悔しさを滲ませた表情を浮かべては、己の無力感に打ちひしがれるモモイ。

 非情な現実を前に、心が折れかけていた彼女は悲痛な声を漏らし――――

 

 

 

「――じゃあ、()()()で助けに行こっか!」

 

 

 

「…………ふぇ?」

 

 それに水を差すかの如く、あっけからんと答えたアスナの言葉に。

 理解が追いつなかったモモイは、思わず呆けた声を漏らしてしまった。

 

 その反応に対し、「だって1人でやらなきゃいけない、って決まりはないでしょ?」とアスナは今にも泣きだしそうな後輩の頭を撫でながら語り掛ける。

 

「リーダーだって私たちを頼ることあるし、会長だって誰かの協力があって、ここまで準備できたと思うんだよね」

 

 そもそも1人でできることなど数える程度しかなく、どんな実力者でも限度はあるのだと、彼女は語る。まるで、それを実際に近くで見てきたかのような口ぶりで。

 

「だから諦めないで、頑張ろ? 私も協力するし、きっと()()()も協力してくれるはずだから!」

 

 と、励ますかのような言葉を口にした彼女がにこやかに笑う。

 一方、話の一部分に疑問を抱いたモモイが「この、子?」とうわ言の様に訊き返した。

 

 それに対し、アスナがしっかりと頷く。

 視界に、カレの姿を捉えながら。

 

 

 

 その時だった。

 今まで微動だにしなかったカレが――ピクリと、体を震わしたのは。

 

 

 

 それに気付いたモモイが、目を見開く。

 同時に湧きあがる期待から、胸の鼓動が早くなるのを感じつつ。

 

 隣で目を輝かせていたアスナも「なんとなく今日な気がする、って朝一番に思ったの!」と、胸を躍らせながらその時を待つ。そもそも彼女がここへ立ち寄ったのも、それが理由。

 

 

 

 そんな2人の期待に、応えるが如く。

 素敵な夢の世界から、飛び立った若者が。

 

 

 

 ――――()()()()()()()()が、目を覚ました。

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

 

 

 

12-3

 

 

 

 ――いいユメを みたなぁ。

 

 

 

 久しぶりに夢見が良く、清々しい目覚めを迎えたカービィ。

 約2日間に及ぶ爆睡ではあったが、夢とはいえ顔なじみに会えたせいか晴々とした様子であった。

 

 そんなカレが夢の内容について誰かと語り合いたい、等と呑気な事を考えていたのも束の間。

 程なくして自分に向けられている視線に気が付き、すぐに其方へと目を向けると2人の少女が視界に入る。

 

 片や、呆然とした様子で目を見開いているモモイ。

 片や、喜色満面の笑みを浮かべているアスナ。

 

 それぞれ異なる反応を示していた彼女達を目にしたカービィが、キョトンと体を傾げる――とはいえ、まずは今日初めて顔を会わせるであろう彼女達に挨拶をば、と考えたのか、

 

”ハーイ!”

 

 と、片手片足を上げながら無垢な笑みを浮かべたカレが、元気よく声を掛ける。

 彼女達もすっかり見慣れた、いつものおなじみのポーズであった。

 

 

 

 それを目にした瞬間。

 涙腺が壊れたかのように、ポロポロと涙を流し始めたモモイは、

 

 

 

「――――うわあぁぁん、カービィーっ!!」

 

 

 

 と、これ以上ないほどの泣き顔を晒しながら、ベットに飛び込むようにカレに抱き着いた。

 もっともこれまでとは違い、喜びと安心から出た涙ではあるが。

 

 一方のカービィは、急に抱き着いてきた彼女の行動に目をまあるくする。

 流石のカレも、あまりにも突然の出来事に驚きを隠せない模様。

 

 

 

 と、それに便乗するかの如く――

 

 

 

「あー、ズルいっ! 私もー!」

 

 そう口にしては、隣で見守っていたアスナも満面の笑みを浮かべながら加わってくる始末。

 結果的に、左右から挟まれる形でカービィは彼女達に抱きしめられてしまった。

 

 傍から見れば2人の少女から抱き着かれるという、一部の層から大変羨ましがられる光景だが、このピンクボールからすればちょっと窮屈で苦しいだけだったり。何なら巨大な岩の魔人に手でにぎにぎされた時を思い出してたとかなんとか。

 

 こうして泣きつくモモイとはしゃぐアスナに、もみくちゃにされるカービィ。

 カレが解放されたのは、その数分後の事だった。

 

 

 

 そうして、落ち着きを取り戻したモモイ達はピンクボールを解放――約1名だけ名残惜しそうだったのはさておき。それから現状を把握していないカレの為に、眠ってから今に至るまでの経緯をモモイが説明することに。

 

 暴走したアリスの砲撃。それが原因で今まで寝たきりの状態だったカービィ。

 その間、突如としてモモイ達の前に姿を現したリオの口から明かされた、彼女の正体と危険性。

 

 そして、為すすべなくアリスは連れ去られてしまい――今まさに、その身を犠牲にしようとしていること。

 

 一方のカービィは、アリスが名もなき神々の王女だとか、そういった類の話はやはり理解できず。

 しかしそんなカレでも、話を聞いていて理解したことが。

 

 

 

 このままではアリスが危ない、という事実。

 いつになくマジな雰囲気に、彼女がかつてないピンチであることをカレは察した。

 

 

 

「……正直、アリスを助けるのが正しいとかそうじゃないとか……私には、わかんない」

 

 そんな中、一通り説明が終わったのを機に、モモイが胸に抱えていた本音を漏らす。

 それは昨日から今に掛けてまで、彼女が心の中で葛藤していたことであった。

 

 理由はどうあれアリスが暴走したのは事実であり、それを無視することはできない。

 現に目の前のカレが被害に遇い、妹と友人を秤にかけられた当人は咄嗟に答えることができなかったのだから。

 

 そして、その問いに対する答えを、彼女はまだ見つけられていない。

 

「……ほんとは、会長の判断が正しいのかも、しれない」

 

 そういった意味では、危険を未然に防ごうとするリオの行いは間違ってはいないかもしれない、と苦々しく語る。その表情には認めたくないが認めざるを得ない、といった複雑な感情を滲ませていた。

 

 しかし、先程自分の本心を暴露したおかげか。

 諦めきれない気持ちが再発した彼女は、啖呵を切るかのように口を開く。

 

「それでもあんなお別れ、納得できない……っ! あんなのまともなエンディングですらないっ!」

 

 モモイ達を傷つけたくないと、自ら犠牲になることを選んだアリス。

 だからこそ、心優しい彼女があんな残酷な選択しか選べなかったことを、彼女は認めることができなかった。

 

 

 

 何よりあんな結末(シナリオ)を――()()()()()()()()()()()()()()()が認めるワケにはいかず。

 

 

 

「だから私は、アリスを連れ戻しに行く! 誰が何と言おうと、連れ戻しに行くっ!!」

 

 弱気な気持ちを振り払うかのように、そう口にした彼女は「だからカービィっ」と語り掛ける。

 まっすぐ見つめ返してくれるカレの視線から、決して目を逸らさないまま。

 

「おねがい……力を、貸して……っ!」

 

 不安と緊張が入り混じった表情を浮かべながら、モモイは懇願する。

 彼女自身あまりにも図々しい頼みだと自覚した上で、目覚めたばかりのカレに心苦しさを覚えつつ、それでも協力を仰いだ。

 

 ネル程の実力者と渡り合えるトキと、あらゆる可能性に目を光らせる先見の明を持つリオ。

 両者を相手にする以上、彼女1人ではどうにもならないことは紛うことなき事実。

 

 だからこそ、モモイはカービィに一抹の希望を抱く。

 自分にとっても、恐らく相手にとっても未知数の潜在能力を持つカレがいれば、或いはと。

 

 

 

 彼女の――勇者(アリス)のオトモであるカレならば、と。

 

 

 

 そんな切実な想いが通じたのか――否。

 そもそもカレからすれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 ――任せろ、とばかりに勇ましい笑みを浮かべては、若者はすぐに頷き返した。

 

 

 

「――――……いい、の?」

 

 それを目にしたモモイが、呆然とした表情で呟く。

 まるで、信じられないモノを見たかのような反応で。

 

 片や、意外な反応を返す彼女の様子にキョトンとするカービィ。

 そんなカレを目の当たりにした彼女は腑に落ちない様子で、頭に浮かんだ疑問をつい口に出してしまった。

 

「……なんで、そこまでしてくれるの……?」

 

 酷い目に遇いながらも、危険を承知で迷うことなく手を差し伸べるカービィ。

 その純粋すぎる正義感に――ここまで尽くしてくれる理由が思い当たらず、彼女は疑問を抱かずにはいられなかった。

 

 一方のカービィは、口元に手を当てながら彼女の問いについて考える。

 あの星の仲間達なら言葉で簡単に伝えられるが、この世界ではそうもいかない故に。

 

 

 

 だからこそ、精一杯の行動で示す。

 込められた意味の全てが伝わらなくとも、気持ちは伝わるはずだと信じて。

 

 

 

 その時、ベット脇に配置されたサイドテーブル――その上に置かれていた1枚の用紙とボールペンがカレの目に留まる。本来は患者の状態などを記録する為に用意されたモノのようだが、当人にとって重要なのはそこではなく。

 

 ある事を思いついたと同時に、瞬く間にペンと用紙を手に取ったカービィは、何も書かれていない用紙の裏側に絵を描き始める。その突発的な行動を前に、モモイは戸惑いながら、アスナは興味津々、といった様子で眺めていた。

 

 やがて大した時間も掛けず、用紙いっぱいに使った1枚の絵が完成。

 そして、出来栄えに自信ありげなカービィが見せつけた絵に、モモイは思わず目を見開いた。

 

 

 

 いつぞやの時に描いていた絵と同じく、笑顔を浮かべるゲーム開発部の4人。

 お世辞にも上手いとは言えないが、優れた洞察力によるものなのかそれぞれの特徴はしっかり反映されている。

 

 加えて、彼女達と並んで満面の笑みを浮かべたカレの姿。

 それは彼女達と過ごす時間が楽しい、という本心を雄弁に語っていた。

 

 

 

『もちろん――ゲーム開発部の()()()()()()()証書だよ!』

 

 

 

「――――……バカだなぁ、わたし」

 

 その絵を見つめながら、涙ぐんだ声でポツリと呟くモモイ。

 彼女の脳裏では、あの絵を最初に見た時の記憶が、鮮明に思い出されていた。

 

 普段は能天気なくせに、いざという時は誰よりも勇敢で。

 損得や後先など考えず、困っている人がいれば見過ごせない底抜けのお人好しで。

 

 そんなカレだからこそ、彼女は信頼できた。

 大丈夫、という自信が持てた。

 

 この5人で、この先もっと面白い物語を作り出していけると信じて。

 だからこそ、カレを正式に部活動のメンバーとして受け入れるべきだ、という使命感に似た感情が芽生えたのだから。

 

「結局、私たちの()()にアリスがいないとダメ、ってことじゃん」

 

 端的に言うと、そういうことだった。

 すでに彼女の存在は、モモイ達にとっても必要不可欠な存在であり――それは、カレも同じ。

 

 

 

 カービィにとってこの世界における日常の1つは、ゲーム開発部の4人と過ごす日々。

 そのうちの誰かひとりでも欠けては、成り立つことはありえない。

 

 ()()()()()()()()()()こそが、なにより掛け替えのないモノ。それを誰よりも理解しているからこそ、今までだってカレはどんな相手にも立ち向かうことができた。

 

 何より、トモダチである彼女達が悲しんでいるのを、見過ごせるわけがなく。

 

 

 

 その想いを、全てじゃないにしろ理解したモモイが目元を手で拭っては、目に浮かんでいた涙を払う。これ以上泣き顔を晒してたまるか、という彼女なりの矜持でもあった。

 そして「ありがとう、カービィ」と心の底から感謝を告げた彼女は、吹っ切れた様子で口を開く。

 

 ――()()()()()()()()()()

 

「もう大丈夫――――もう、()()()()からっ!」

 

 威勢のいい言葉を口にしたモモイは、いつもの活気に溢れた笑みを浮かべていた。

 それを目にしたカービィも、いつもの彼女が戻ってきたことに喜びを示すように、笑顔を浮かべて応えるのであった。

 

 

 

 ――そんな、笑い合う2人の間を割って入るかのように、

 

「それじゃ、そろそろ行こっか?」

 

 と、微笑ましそうにやり取りを見守っていたアスナが頃合いと見たのか、椅子から立ち上がりながら2人に声を掛ける。一方、いきなり耳にした彼女の言葉にモモイは「えっ」と目を丸くするばかり。

 

「い、行くって……どこに?」

「あれ? 連絡来てなかった?」

 

 戸惑いながら訊き返した彼女の言葉に、アスナはきょとんと首を傾げる。

 それに対し、何のことだか、と云わんばかりの呆けた顔を浮かべるモモイ――だったが、しばらくしてハッとした表情を浮かべると、自身のスマホを取り出しては画面を点ける。

 

 画面に映し出されたのは、大量の不在着信と未読メッセージを報せる通知の山。

 大半は、自分の妹(ミドリ)からのモノである。

 

「そ、そういえば鳴ってたような……ぜんぜん気にしてなかったけど……」

「アハッ、すごーい! これって鬼電ってやつだよね!」

 

 大量の通知を目にしては、冷や汗を掻くモモイ。

 その画面を覗き込んでいたアスナは、あまり見たことのない大量の不在着信になぜか感心を覚えていた。

 

 ひとまず届いたメッセージに目を通していくモモイだったが、

 

【おねえちゃん、どこ?】

【スマホ持ってるよね、気付いてる?】

【ユズちゃんも”先生”も心配してるよ】

【ねえ、大丈夫?】

【ねえお願いだから返事して】

 

 

 

【気付いたら返信してください。必ず返信してください】

 

 

 

「お、怒ってる……これぜったいおこってる……!!」

 

 最後に送られたメッセージの文体から、静かな圧を感じ取ったモモイが顔を青ざめる。

 先程の勇ましい態度は一体どこへやら。

 

 ともかく妹のお怒りが怖いので直ちに返信しようとする彼女だったが、「今から向かえばよくない?」と口にしたアスナの提案により一旦作業を止める。

 それから先程うやむやになった行先について、彼女は再度尋ねることに。

 

「そういえば、どこに向かうつもりだったの?」

「タワーの対談スペース! なんかリーダーや”ご主人様”たちも集まってるみたい!」

 

 その言葉を耳にして、モモイはなんとなく状況を察した――”ご主人様”の部分については疑問符を浮かべていたが。

 恐らく昨日の出来事について、”先生”が他の面々と情報共有する場を設けたのだろう、と。

 

 そして間違いなく妹もいるだろう、と確信する。

 

「……うん、そうだね。すぐに行こう!」

 

 アリスの無事が保証されているかも怪しい状況である以上、時は一刻を争う。

 故に、電話するよりもカービィの無事を報せることもあり、全員がいる場で直接話し合った方が早く済むと、彼女は考えた模様。

 

 決してピンクボールの無事にかこつけて妹の怒りをうやむやにしよう、とか考えていない。

 断じてないったらない。

 

 何はともあれ、そうと決まればと云わんばかりに立ち上がったモモイが、視線をカービィの方へと向ける。

 

「――――行こう、カービィ! アリスを助けに!」

 

 意気揚々と告げる彼女の言葉に賛同するかのように、元気よく応じるカービィ。

 そうして、今までお世話になったベッドから飛び降り――

 

 

 

『がんばれ カービィ!』

 

 

 

 ふと、後ろから馴染みの声が聞こえた気がしたカレが、振り返る。

 そこには誰もおらず、視界に映るのはたった今飛び降りたベッドと、窓から覗き見える晴れ渡った蒼い空。

 

 不可思議な現象に体を傾げるカービィだったが、その正体に気が付くと口元に弧を描く。

 どんなに遠く離れていても、応援してくれているのだ、と。

 

 

 

 その声に応えるように、透き通った蒼い空に向かってカレは大きく頷く。

 そして、出入口でカレを待つ彼女達の元へと、急いで駆けつけるのであった。

 

 

 

  【 つ づ く 】

 

 

 




●タメになる☆TIPS集



【5レア中の2レア】
→でもこの子他の貫通タイプより使い勝手いいのよな……

【巨大な岩の魔人】
→アンタ死ぬわよこのネタ今じゃ絶対通じんだろ

【がんばれ カービィ!】
→それいけ カービィ

【才羽モモイ】
→本文と違う展開になっちゃったからこういう展開になっちゃった。ごめんよモモイ……
 でも一度挫折してもなお立ち上がる少年少女、イイと思うます!

【一ノ瀬アスナ】
→気付いてたらサブヒロインみたいになってたでござるの巻。
 オカシイ……初期構成じゃこんなはずでは……
 まあええか^^



 いよいよお披露目かなー


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