Spring Sky StarS!   作:笹ピー

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 アリスちゃんねんどろの次はアリスちゃんフィギュアだと……
 なんなんだ今年は……まったく……けしからん……



 カービィチャンといっしょに飾ってやる……かくごしろよ……(購入ポチー


013

13-1

 

 

 

 ――おかしい。

 

 

 

 心強い名誉マスコットと頼もしい先輩のおかげで、私なりの大きな決断をしたというのに。

 自分なりに覚悟を決めて、この場に赴いたはずなのに。

 

「ねえ、真面目に聞いてる!?」

 

 とりあえず、みんなにマスコットの無事と私の想いを伝えて、それから大事な友達を助けに行こう、というかんぺき~な流れを想定してたのに。

 

「――――ちょっと、お姉ちゃん!! 返事ぐらいしてよッ!!」

「アッハイ」

 

 みんなの前で、自分と瓜二つの妹にこっぴどく叱られているこの状況は、なんなんだろう。

 こっちが悪いのは分かってるけど、流石の私でも恥ずかしいからそろそろ勘弁してほしいと思うのは甘えだろうか。妹よ、私にだって姉としての矜持はあるんだよ???

 

 

 

 嗚呼、どうしてこうなった。

 やっぱり、なあなあにして話を流そうとしたのがダメだったのだろうか――

 

 

 

 そんなことを考えながら。

 こんな状況に至るまでの経緯を思い返す――()()()()()であった。

 

 

 

 ――時は、少し遡る。

 

 この場に姿を現さない2人を気に掛けながらも、対談スペースに集まった一同はあらためて現状の確認と今後の方針について話し合う事となる。何れにせよ、状況を把握しなければ纏まる話もまとまらない、という声が挙がったゆえに。

 

 第一に、リオとアリスが今どこにいるのか。

 秘密主義者であるリオが徹底して情報を隠蔽しているせいか、現在進行形でヴェリタスの3人が探ってはいるものの、未だ特定には至らず。

 

 また場所が分かったとして、行く手を阻むAMASやコールサイン・ゼロフォーのトキにどう対処すべきか。無尽蔵に湧いてくるだろう戦闘用ドローンを片手間に、特殊な装備を駆使するトキを相手にするのは、流石のC&Cでも骨が折れることは間違いなく。

 

 

 

 そして、万が一にもアリスを助け出せた、として。

 彼女の暴走について、どう対応すべきなのか。

 

 リオですら、()()()()()()()()()()()と結論付けてしまった、この難題に。

 

 

 

 アリスを救出したいという望みを阻むかの如く、彼女達に突きつけられる数々の問題。

 それを前にしては誰もが暗い影を落とし、悪戯に時間だけが過ぎ去っていく。

 

 

 

「――――モモイ…………」

 

 そんな時であった。

 

 

 

「――――降臨!」

 

 憮然としたこの場に突如として響き渡る、威勢の良い少女の声が!

 

 

 

 その聞き覚えのある大声に虚を突かれた一同は、すぐさま声が聞こえてきた方へと目線を向けて――程なくして視界に入った光景に、思わず言葉を失ってしまう。

 

 彼女達の視界に映ったのは、なぜか腕を組んだまましたり顔を浮かべている才羽モモイ。

 その横で、一ノ瀬アスナが無邪気な笑顔を浮かべながら、大きく手を振っていた。

 

 

 

 予期せぬことに呆然とする一同の前に姿を見せる、モモイとアスナ。

 しかし一同を最も驚かせたのは彼女達の登場ではなく、2人の間に位置していた者の存在。

 

”ハーイ!”

 

 おなじみのポーズを決めながら元気よく声を掛ける――()()()()の存在だった。

 

 

 

『――――カービィっ!』

 

 程なくして、我に返ったミドリとユズが、衝動に駆られた様子でカービィを呼ぶ。

 それから真っ先にカレの元へ真っ先に駆けつけると同時に、まあるい体を持ち上げたミドリを筆頭に、両者は泡食った様子で問いかける。

 

「カービィ大丈夫なの!? ケガとか、体調とか……っ!」

「あ、あのっ、痛いところとか、ない……? 無理とかしてない、よね……っ!?」

 

 そう口にしては、2人は落ち着きのない様子で次々に心配の言葉を投げかける。

 いきなり姿を現したカレに気持ちの整理ができていないせいか、本当に無事なのか、という不安がどうしても拭いきれていない様子。

 

 そんな彼女達の心配とは対照的に、元気よく応じるカービィ。

 心も体も元気いっぱいだ、と云わんばかりに、満面の笑みを彼女達に見せつけるのだった。

 

 それを目の当たりにした2人は、ようやく確信を得る。

 自分達が見慣れた、いつもと同じ底抜けに明るいカービィだと。

 

 同時に、カレの無事をようやく実感したのか――

 

「よかった……ほんとうに、よかった……っ!」

「うん……っ、うん……っ!」

 

 安心と喜びが綯い交ぜとなった表情を浮かべながら、涙ぐむミドリとユズ。

 今までが彼女達にとって悪い報せばかりだったのも相まって、その喜び様は計り知れないほどであった。

 

 

 

 そんな彼女達に続く形で、近づいてきていたヴェリタスの面々も――

 

「命に別状はないと信じていましたが……いつもの声が聴けて、安心しました」

「ほんとだよっ! これでもすっごく心配してたんだからね!」

 

 落ち着いた口ぶりでありながら、ハツラツとした元気な声を耳にしては胸を撫で下ろすコタマ。

 その横で、ゲーム開発部へと出向いてはカレともよく遊んでいたマキが瞳を潤ませつつ、実直に喜ぶ姿を見せていた。

 

「……ひとまず、今の私たちにとってこれ以上ない朗報だね」

 

 それは当然、カレの安否が内心気掛かりだったハレも同じく。

 普段はあまり感情を表に出さない彼女であるが、この時だけは素直に、喜々とした感情を露わにするのであった。

 

 

 

 その光景を遠巻きから見守っていたネルが、肩を竦めつつも小さく笑みを零す。

 

「……ったく、起きるのがおせぇんだよ」

「――と言いつつも、嬉しそうですねリーダー」

 

 呆れた口ぶりながらどことなく上機嫌な彼女に、アカネがニコニコと微笑みながら語りかける。

 それに対し図星を突かれたのか、「べ、別に嬉しかねェよ!」と、顔を赤くしたネルが慌てて否定した。

 

「別に照れる必要はない。嬉しいのなら素直に喜べばいい」

「だっ……だから、ちげぇって言ってんだろうが!!」

 

 その反応を照れていると解釈したカリンが指摘すると、ますます顔を赤くしては声を荒げるネル。しかし傍から見ても分かりやすい反応を返すせいか、後輩2人はつい微笑ましいモノを見るかのような視線を向けてしまった。

 

 当然、向けられた温かい視線に気付かないワケもなく。

 そのうち、積み重なる恥ずかしさが怒りへと変換されてしまったのか――

 

「――――テメェら、ヤキ入れんぞゴラァ!!」

 

 そう怒号を上げながら、茹で蛸のごとく顔を真っ赤っかにするネルであった。

 

 

 

 こうしてカレの復帰を境に、徐々に明るさが戻りつつある一同。

 その様子を眺めていたモモイとアスナが、互いに顔を見合わせては嬉々とした笑みを浮かべていた。

 

 そんな2人に、”モモイ、アスナ”と呼び掛ける声が。

 聞き覚えのある声を耳にした彼女達が、そちらへと視線を向け――「うわぁ! どしたの”先生”!?」と、相手の顔を見るなりモモイが驚愕を露わにする。

 

「ご主人様、すっごい()ができてるよ? もしかして、寝てないの?」

”……皆からも言われたよ”

 

 目を丸くしたアスナの言葉に対し、”先生”が苦笑交じりに答える。

 彼女の言葉通り目の下に隈を作っては、お世辞にも顔色が良いとは言えない姿が2人の目に映っていた。

 

 現に、昨日から一睡していない――というより、()()()に今日を迎えてしまった模様。

 挙句の果て、昨日から続く悩みは未だに解消できていない始末だった。

 

”2人とも、カービィのお見舞いに行ってたんだね”

 

 とはいえ、それについては語る気はないのか、さらっと話を変える”先生”。

 声を掛けたのも、今まで2人が何処にいたのかを確認する為でもあった。

 

「うん、そうだよー! 今日こそ起きそう、って気がしたから、ジッとしてられなくて!」

「私はたまたまっていうか……気付いたら保健室にいたっていうか……」

 

 確認を問うような言葉に、意気揚々と答えるアスナ。

 一方のモモイは、フラフラと彷徨ついたあげく辿り着いた先が保健室だっただけであり、カレの目覚めに立ち会えたのは全くの偶然である、と苦笑気味に語った。

 

 ともあれ、2人の話に耳を傾けていた”先生”が肩の荷が下りたかのように深く息を吐く。

 他の面々と同様、心配の種であったカービィの無事が確認でき、心の底から安心した様子。

 

”モモイは、大丈夫? その、昨日の事とか……”

 

 すると、続いてモモイの調子を確かめる”先生”。

 連絡はミドリに任せていたとはいえ、昨日の件もあってか姿を見せなかった彼女のことが気掛かりだったようだ。

 

 それに対し、「大丈夫だよ”先生”」と、ハツラツとした様子で彼女は答える。

 

「不安はまだあるけど……もう()()()()、って決めたから!」

 

 正直な想いを語りつつ、モモイは毅然とした笑みを浮かべる。

 ”先生”の心配とは裏腹に、自信に満ちた感情を滲ませながら。

 

 その姿を前にして、”先生”が思わず目を見開く。

 虚勢を張っているわけでもない、昨日とはまるで違う活力に溢れた少女の姿に、唯々驚くばかりであった。

 

「それで、みんなに話を聞いて欲しいんだけど……」

 

 そんな”先生”の驚愕など知る由もなく、徐に周囲へと呼びかけるモモイ。

 その真剣な様子に、大事な話だと察した面々が、彼女の方へと意識を向けていく。

 

 

 

 しかし、それに待ったをかける者が、1名。

 ピンクボールを抱き抱えたまま、ゆっくりと彼女の元へ近寄る人物が。

 

「――――お姉ちゃん」

「あっ、ミドリもちょっと聞いてほしい――」

 

 

 

()()()()()()()()()()()?」

「えっ」

 

 

 

「お姉ちゃん?」

「あ、いや、その」

 

 

 

「そこ座って」

「ハイ」

 

 

 

 ダメでした。

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

 

 

 

13-2

 

 

 

 結局、許されなかったモモイ。

 有無を言わせない妹の迫力にビビった結果、正座させられたまま申し開きを決行することに。

 

 なお、誤ってプリンを食べちゃった時よりも怖かったとは本人談。

 

 こうして、周囲から同情や憐みといった視線を向けられつつ、今朝から今に掛けてまでの経緯を一から順に説明する羽目となってしまうのであった。

 

 

 

 そして、今に至る。

 

「……昨日の事がショックで気が回らなかった、ってのはわかるよ。私も、そうだったし」

 

 一通り相手の言い分を聞いたミドリが険しい顔を浮かべながらも、相手の心境について同情を示す。彼女自身もあの場にいたからこそ、その点については仕方ないと考えているのだろう。

 

 ――と思いきや、落ち着いた物腰から一転して、

 

「だからって、みんなに黙っていなくなることはないでしょ!?」

 

 と、憤然とした感情を露わにしながら、ご尤もな意見を自分の姉へと突きつける。

 いつの時代も報連相は大事なのである。

 

 それに対し、「ハイ、仰る通りデス」と萎縮しつつ素直に非を認めるモモイ。

 言い返したくとも反論する余地がない上に、却って火に油を注ぎかねないと重々理解しているからこその聞き分けの良さであった。

 

 その様子を遠巻きから見ていた他の面々も、何時になく感情的なミドリの迫力に口を挟めず、困り果てる始末。あのネルでさえ、ちょっと口を挟みにくい迫力だったとかなんとか。

 

 とはいえ、このままでは埒が明かないのも事実。

 一先ず、頭に血が上っているであろう彼女を落ち着かせようと――

 

 

 

 その時、ミドリに抱き抱えられたままぼ〜っとしていたカービィが、ふと気が付く。

 頭の上で、小さな雫がひとつ落ちたことに。

 

「――――ほんとに、勘弁してよ……っ!」

 

 それは目の前でお説教を受けていたモモイも、同じ。

 気まずそうに顔を俯かせていた彼女が、チラリと相手の顔を覗き込んだ、その瞬間だった。

 

「み、ミドリ……?」

 

 思わず顔を上げ、困惑気味に問いかける姉の目に映っていたのは、

 

 

 

 ――ポロポロと涙を零し、泣きじゃくる妹の姿だった。

 

 

 

「カービィがたおれて、アリスちゃんが、いなくなって……お、おねえちゃんまでいなくなったら、わたし……どうしたらいいの……っ?」

 

 悲痛な表情を浮かべながら、弱々しく問いかけるミドリの言葉。

 その言動を前にしたモモイが、強い衝撃を受けたような錯覚を覚える。

 

 

 

「もう……()()()()や、()()()()()()()()()()()の……いやだよ……っ!!」

 

 

 

 そうして、今まで抱え込んでいた切実な想いを吐露した途端に泣き崩れるミドリ。

 その拍子に抱き抱えていたカービィを離してしまうが、それを気に掛ける余裕さえ今の彼女にはなく。

 

 周囲の目も憚らず――唯々、幼子のように泣き続けるだけであった。

 

 それを目の当たりにしたモモイが、ようやく気が付く。

 立て続けに周りがいなくなる状況で、()()()()()()()()()()()()()と連絡が付かなかったことが、計り知れないほどの不安や恐怖を募らせていたのだと。

 

 

 

 今まで見せていた怒りの感情は、ソレらの裏返しだったことに。

 

 

 

 そのことを深く痛感したモモイが、目の前で泣き続ける妹に手を伸ばす。

 そして、「ゴメンね」と、申し訳なさそうに一言呟いてから、語りかけた。

 

「お姉ちゃん、自分の事しか考えてなかったね」

 

 ここまで心労を掛けさせてしまったことに彼女は謝りながら、妹の頭をゆっくりと撫でる。

 少しでも安心させられればいいな、と思いつつ。

 

「大丈夫だよ、ミドリを置いてなんていかないよ」

 

 そう言いながら、優しい表情で微笑むモモイ。

 その言葉に「ほんと?」と声を震わせながら訊き返すミドリに、勿論と云わんばかりに頷く。

 

「だって、泣き虫で大事な妹を放っておけないもん」

 

 少し照れくさそうに、はにかんだ笑みを浮かべながらも彼女は告げる。

 

 気恥ずかしくて、普段は面と向かって言えないけれども。

 紛れもない――自分の本心からの言葉を。

 

 それに、双子の妹が気付かないワケがなく。

 心の底から湧き上がる感情に突き動かされるまま、大事な姉に勢いよく抱き着いた。

 

 急な行動に一瞬面食らうモモイだったが、すぐに困ったような笑みを浮かべる。

 それから、今も泣き声をあげる妹を、しっかりと抱き返してあげるのであった。

 

 

 

 その後、しばらくして、

 なんとか落ち着きを取り戻したミドリ――だったのだが、

 

「きえたい」

「だ、だいじょうぶだよ。ミドリの気持ち、みんな分かってるから……」

 

 説教するつもりが高ぶった感情のまま姉に泣きついた上に、慰められた。

 しかも、知り合いが見ている中で。

 

 我に返るや否や、自身がやらかしたことに恥ずかしさを覚えたミドリは、真っ赤な顔を両手で覆い隠しては誰とも顔を合わせようとせず。

 その様子に苦笑しながらも、彼女の気持ちに深く共感していたユズは隣で慰め続けていた。

 

 そんな、羞恥心に悶える相手に追い打ちを掛けるかの如く――

 

「良い姉妹愛でした」

「いやー、モモってお姉ちゃんしてたんだね~」

「ちょっと、グッときたかも」

 

 姉妹の絆に感銘を受けたのか、しみじみと感想を述べるヴェリタスの3人。

 それに同調するかのように、同じくやり取りを見守っていた面々が感嘆とした様子で頷いていた。

 

 その反応に、ますます居た堪れなくなるミドリ。

 一方のモモイは「あーもう、うっさい!」と、小っ恥ずかしさを誤魔化すかのように声を荒げる始末。彼女自身、周囲に見られていた状況だったことを頭から抜けていた模様。

 

 兎にも角にも、可愛い妹が泣き止んだのを頃合いと見たのか。

 いまも温かい視線を向けて茶化してくる奴らに向けて、「とにかく聞いてっ!!」と半ばヤケクソ気味に声を発したモモイが――

 

 

 

「――――私たちは、これからアリスを助けに行く!」

 

 

 

 と、口火を切るかの如く、威勢よく一声を放った。

 それがあまりにも突発的だったこともあり、一様に面食らった面々が戸惑う様子を見せる。

 

 唯一、既に彼女の決意を聞き届けた若者(カービィ)少女(アスナ)だけが、狼狽えることなく。

 寧ろこれからの事について、やる気に満ち溢れた姿勢を見せるばかり。

 

 そんな周囲の反応を一瞥してから、モモイはその決断に至った根拠を語りだす。

 

「色々と思い知らされたし、考えたり悩んだりもしたけど……それでもアリスがいなくなるなんてこと、私は納得できない!」

 

 葛藤に苦しんだ末、彼女が導き出した答え。

 それは理不尽に納得できない、認めたくないという――()()()()()()とは真逆とも云える、己が感情に基づくモノだった。

 

 良く言えば単純明快。悪く言えば手前勝手。

 彼女自身、駄々を捏ねる子供じみた我儘ということを重々理解している。

 

 

 

 それでもなお、アリスを助けに行くと、彼女は決断した。

 例えその先に何が待ち受けていようとも、()()()()()()()()()()()()()()()()、と。

 

 

 

 そうして話を続けていた最中、「それに」と徐に呟いたモモイが、ある方へ目を向ける。

 彼女に、()()()()を気付かせてくれた存在へと。

 

「アリスがいないままじゃ――”私たち”の日常(シナリオ)は一生始まらないままだからっ!」

 

 力強く発した彼女の言葉に、ミドリとユズが目を見開く。

 彼女が口にした”私たち”が、何を指しているのか察したからこそ。

 

 気が付けば、当たり前となっていた5人で過ごす日常。

 その日々がどれほど大切なモノだったのか、視線の先に映る()()()()()()()()()()のおかげで気付かされたモモイが、感謝の意を込めて清々しい笑みを浮かべる。

 

 それに気づいた若者も、彼女に笑みを返しながら頷く。

 助けに行く理由なんてそれだけで十分だ、と云わんばかりに。

 

 

 

 その言葉を皮切りに、静まり返る対談スペース。

 誰もが言葉を発しないのは彼女の決意表明に思うところがあったからか――或いは、別の感情からか。

 

「――――……情けねぇ」

 

 そんな静寂に包まれていた空間に、ぼそりと響き渡る少女の声。

 それを発した張本人である、()()()()が立て続けに呟く。

 

「後輩がここまで覚悟決めてんのに、手前が尻込みしててどうすんだ、って話だよな」

 

 そう口にすると共に深い溜息を吐き、今まで消極的だった自分自身に呆れ果てるネルだったが、間を置かずして「あんたの言う通りだ」と告げてはモモイへと視線を向ける。

 

 先の問題ばかりを気にしたところで、未来がどうなるかなど分かりようがない。

 ならば、せめて己を偽らない生き方を選びたい。

 

 それが、心を揺さぶられた彼女が抱いた想いだった。

 

「ゴチャゴチャ考える必要はねえ。殴られたら殴り返せばいい、奪われたモンがあるなら取り戻せばいい――単純明快だ」

「ネル先輩……!」

 

 不敵な笑みを浮かべながら賛同を示すネルに、喜々とした声を漏らすモモイ。

 その反応に鼻を軽く鳴らして笑いつつ、「なぁ、お前たちはどうだ?」と、ある方へ視線を向けた彼女は続けざまに声を掛ける。

 

「ふふ……言葉にする必要がありますか?」

「それが部長の決定なら」

 

 それに対してアカネは悠然と微笑み、カリンが毅然とした笑みを浮かべながら応じる。

 2人もまた、可愛い後輩が命を散らす結末を見過ごす気など微塵も無く。

 

 そして、真っ直ぐな想いに触発されたのは彼女達に限らず――

 

「……そうだね。今はアリスを助けることだけに集中しよう」

 

 静かに、けれどもはっきりと決意を口にするハレ。

 その言葉に迷うことなく、マキとコタマが力強く頷く。彼女達にとってもアリスは掛けがえのない友人であり、ここで動かなかったらきっと一生後悔する、という確信があるからゆえに。

 

 そうして、次々と賛同する意思を示していく少女達。

 まるで、今まで燻っていた火が燃え上がるかの如く。

 

 

 

 その様相に、目を丸くして眺めていた”先生”に、呼び掛ける人物が。

 反射的に声が聞こえた方へと視線を向けた”先生”の目に入ったのは、ある意味この状況を引き起こした人物と云っても過言ではない、才羽モモイであった。

 

”モモイ……”

「……”先生”は多分、リオ会長の言葉を気にしてるんだよね」

 

 大切な()()が、()()となる。

 唯一の違いは、()()を犠牲とするのか、()()を犠牲にするのか、ということのみ。

 

 半ば確信に近い彼女の問いに対し、”先生”は図星を突かれた様に苦々しい顔を浮かべる。

 実際に彼女の指摘は正鵠を得ており、答えを出した少女とは裏腹に、未だ決断に踏み切れていない己の不甲斐なさから出た反応であった。

 

 その心情をなんとなく察したモモイが「愚図ってた私が言えたことじゃないけどさ」と前置きした上で、語りかける。

 

「会長が出した選択に則るんじゃなくて――()()()()()()()を見つければいいんじゃないかな」

 

 

 

 先が見えず、心配になることもある。

 本当に正しいのかと、不安を抱えることだってある。

 

 けれど、最後の最後に答えを決めるのは誰でもない――()()()()であると。

 そう、彼女は語った。

 

 

 

「いっそのこと、()()()()()()()()()()()を作っちゃえばいいんだよ!」

 

 すると、普段からは考えられないほど大人びた言動をしていたモモイが、ある意味いつもの彼女らしい理想を突き詰めた提案を、意気揚々と告げる。

 

 それに対し、”作っちゃうって……”と苦笑する”先生”。

 しかし、そんな理想的な話に心を強く揺さぶられたことも、また事実。

 

 

 

 誰も犠牲にしない、という大人らしからぬ青臭い理想。

 叶えたくとも、現実的に困難な問題が山積みなのは間違いなく。

 

 それでも、今の”先生”にとって最も欲する理想であった。

 

 

 

”……最初から、()()()()()だけだったね”

 

 小さく呟いた”先生”が、立て続けに深く溜息を零す。

 結局のところ、それを成し遂げようとする覚悟が足りてなかったのだと――それを、生徒に諭されるまで気付けなかった、不甲斐ない己を恥じるかの如く。

 

 だからこそ気付いてしまった以上、それ以外の答えは思い浮かばず。

 

”――――分かった。一緒にアリスを連れ戻す方法を考えようか”

 

 それが、どんなに困難な道への一歩だとしても。

 意地でも現実にしてやる、という覚悟を決めた、その一言を皮切りに。

 

 

 

 アリス救出作戦が、いよいよ始まるのであった。

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

 

 

 

13-3

 

 

 

『…………アリスちゃんを誘拐して、その上ヘイローを破壊……?』

『最近、何か裏で進めている気配はありましたけど……そんなことになっていたんですね……』

 

 宙に浮かぶ、ホログラム・ディスプレイに映っていた()()()()()が思い思いの言葉を口にする。

 片方は現実味のない話に困惑の色を浮かべ、もう一方は深刻な面持ちを浮かべ、両者とも信じられない、と云わんばかりの感情を滲ませていた。

 

 そんな彼女達の姿を目にしながら、事情を説明していた”先生”が続けて言葉を紡ぐ。

 

”……お願い2人共。リオがアリスをどこへ連れて行ったのか、調べてほしいんだ”

 

 巻き込んでしまう事への申し訳なさを抱きつつ、画面に映る2人に頼み込む”先生”。

 事態が切迫している状況下で、なりふり構ってる余裕などなく。

 

 ゆえに、()()()()()()()()()――リオと同じ、()()()()()()()()()である彼女達に期待を抱いてしまうのも仕方のない話であった。

 

 

 

 ”先生”の賛同を得られた後、さっそく作戦会議を行うこととなった一同。

 刻限が何時までなのかは不明だが、合理主義者のリオが悠長に待つことなど考えにくい、という声もあってか、すぐさま行動に移す必要があった。

 

 とはいえ、相手の居場所が分からないことには何も始まらない。

 情報戦のエキスパートであるヴェリタスも、未だ場所の特定できず。

 

 ならばいっそのこと、リオと同じセミナー所属であるユウカやノアに協力を仰いだらどうか、と”先生”が思い切った提案を口にする。役員の立場である2人ならば、居場所に繋がる手がかりが得られるかもしれない、と考えた末に。

 

 しかし同じ所属である以上、リオに協力している可能性も無きにしも非ず。

 そんな懸念が挙がった時、「いや」と首を横に振る者が。

 

「あいつのことだ。他の奴らにも黙ってる可能性の方がたけぇ」

 

 この中でリオと長い付き合いであるネルが、そう断言する。

 実際、その秘密主義な性格に否が応でも付き合わされていた彼女の言葉には、妙な説得力があった。

 

「もし知っていたとしても、ユウカはそんなこと絶対協力しないと思う!」

 

 その際、彼女の意見を後押しするように、モモイがはっきりと言い切る。

 まるで相手の性分を分かりきっている――というより、()()()()()()ような口ぶりで。

 

 何れにせよ、このまま時間を浪費させるのは得策ではない。

 全員の同意を得た上で、その可能性に掛けることとなった。

 

 

 

 そんな、一か八かの決断が功を奏したのか――

 

『――分かりました。リオ会長の痕跡がないかセミナー内部の情報を確認してみます!』

 

 と、真剣な面持ちを浮かべたユウカが協力を約束する。

 もう1人のセミナー役員であるノアからも、反対の声は上がらず。

 

 大事になる前に問題を処理しよう、とする合理的な考えは解らないでもない。

 それでも、1人の少女を犠牲にするのは間違っている――というのが、2人の見解だった。

 

”……ありがとう、2人とも”

 

 協力を引き受けてくれた2人に、”先生”は深々と頭を下げる。

 善意に甘える形になったことは否めないが、今の状況に於いて2人の協力を得られたのは重畳であった。

 

 それに対し、『任せてください、全力をあげて協力します!』と、ユウカは力強く答える。

 彼女にとってもアリスの危機は他人事ではないのか、いつも以上にやる気に満ち溢れている様子を見せ――その姿を目にしたノアは、当人に気付かれぬように頬を綻ばせるのであった。

 

 

 

 それから、数分後。

 連絡を待ち望んでいた者達の期待に応えるかの如く、ユウカ達からの連絡が届く。

 

『リオ会長がアリスちゃんを連れて行った先が分かりました!』

 

 通信を繋ぐや否や、開口一番に告げられたユウカの発言におおっ、と色めき立つ一同。

 期待半分、不安半分で待っていただけに、喜々とした感情を抑えられなかった模様。

 

 それから間を置かず、『今、画面に映します!』と告げた彼女の言葉通り、ある場所の風景が画面に映し出される。

 

”これは……”

()()……?」

 

 映像を目にした”先生”とモモイが、思わず呟く。

 現に2人を初めとして、一同の目に映ったのは――高層ビルが至る所に建ち並ぶ巨大都市の光景であった。

 

「……このような都市、聞いたことがありません」

「それにコレ……なんか城壁みたいじゃない?」

 

 全く憶えのない都市の存在にコタマが戸惑う傍ら、難しい顔を浮かべたマキが映像のある部分を指差すと、確かに都市全体を取り囲むように存在する巨大な鉄の壁が。

 まるで、()()()()()かのように――或いは、()()()()()()()()()かのように。

 

『コードネーム”エリドゥ”――リオ会長が秘密裏に建設していた()()()()()()()()()()()()()、だそうです』

 

 そう告げた後、この要塞都市の存在に辿り着いた経緯をユウカ達は語りだす。

 

 

 

 ”先生”達からの協力を受け、早速2人はセミナーのデータベース内の調査を開始。

 その最中、削除された――というよりも、意図的に隠蔽されたような痕跡が見受けられるデータの断片を発見する。

 

 そのデータを復元し調べた結果、予算の一部に不透明な流れがあったことが発覚。

 それを元に、流れた予算の跡を辿った先が、この都市の存在だった。

 

 ――つまるところ、

 

「……()()()()()()()()()()()()()、か」

『……返す言葉もありません。まさか、そんなことをされる方だったなんて……』

 

 険しい顔つきを浮かべたカリンの指摘に頷きつつ、沈痛な面持ちを見せるノア。

 突飛な行動をすることはあれど、彼女にとってリオという生徒は尊敬に値する先輩であるのは確か。それだけに、予算の横領などという不正行為を働いたことに、心を痛めている様子だった。

 

『お金の流れを隠す事だって難しかったでしょうに……一体、いつの間にこんな規模の都市を……』

 

 一方でのユウカは、会計担当でありながら気付けなかったことに責任を感じつつ、人一倍資金管理に目を光らせていた自分さえ欺いたリオの手回しに戦慄していた。

 彼女の言う通り、巨大都市を造れるだけの資金流出を、誰にも悟られずここまで隠し通せたのはある意味奇跡に近い。

 

 そんな彼女の呟きに、アカネが「あっ」と何か気付いたかのように口を漏らす。

 

「もしかして……この間のコユキさんの件と紛れたのでは……」

 

 恐る恐ると口にした彼女の推測に、最初は理解できず眉を顰めるユウカ――だったが、すぐにハッとした表情を浮かべると同時に、あることを思い出す。

 

 

 

 ――え、いくら使ったって……い、いやぁ、勝負に熱中するとお金の事なんてどうでもよくなりますよねっ、にはははは!

 

 ――あ、いや、その……た、多分、300……400……いや、500だった、はず……?

 

 ――け、けどほら! お金は巡り巡ってこそ意味があるっていうじゃないですか! ミレニアムのお金も他学区の経済に貢献出来て、今頃嬉しい悲鳴を上げてますってきっと!

 

 ――い、いいじゃないですかぁー! いっぱいあるんだし少しぐらい使っても! 減るもんじゃないんですし!!

 

 

 

 ――あ、減ってはいますね。にはは。

 

 

 

『コーユーキーーーーッ!!』

 

 今も反省部屋に収容されている問題児とのやり取りを思い出し、つい怒りの声を上げるユウカ。

 なに笑ってんのよ因数分解するわよ、とか思ってしまった彼女は決して悪くない。

 

 要は、ある人物のやらかし(債券の大量無断発行)を隠れ蓑に利用し、横領を隠していた模様。

 何ならやれ実験だのやれ任務だのといった理由で、日頃損害を起こすミレニアム生のやらかしも間接的に関係してるかもしれない。

 

 

 

 そんな彼女の急なキレっぷりに、各々が戸惑っている中で。

 我関せずと今まで画面をジッと注視していた者が1人。

 

「……うん。私も、そこにアリスちゃんがいると思う!」

 

 唯一、その視線に気が付いていたアスナが、同じ所を見つめては語りかける。

 言外に、己の勘もそこを指し示している、と伝えながら。

 

 それを耳にした一同が驚愕すると同時に、彼女が話しかけたであろう者――カービィの方へ視線を向けるものの、当人は周囲の様子を気にも留めず、画面のある個所だけを見つめるのみ。

 

 国中の食べ物を1つ残さず奪い去った暴君の、山頂に堂々とそびえる王城へ乗り込む時、然り。

 堕落に満ちた国を変えようと目論んだ騎士の、逆襲の翼を広げた飛行戦艦に攻め込む時、然り。

 

 様々な冒険で、カレを導いてきた直感が告げている。

 あそこが、()()()()だと。

 

 周辺の建物より一際高く、エリドゥ中心部に聳え立つタワーにアリスがいる、と。

 

「そこに……アリスちゃんが……」

「そもそも、どうしてこんな都市を作ったのかな……」

 

 緊張した面持ちでタワーを見つめるミドリの横で、ユズが脳裏に浮かんだ疑問を口にする。

 有事に備えるためとはいえ、横領までしてこんな都市を造るのは流石に大袈裟ではないか、と考えてしまったゆえに。

 

 その疑問に、『リオ会長は、ご自身がやると決めたことは絶対に迷いません』と、呟いたノアが、自身が目にしてきた調月リオという人物について――重大な決断を求められる場面でも迷う事なく合理的な判断を下し、目標達成の為であればブルドーザーの如く強引に事を進めてしまう人物なのだと、語った。

 

『様々な危険を排除し、キヴォトスの終焉を防ぐべく奔走した結果――できたのが、この”エリドゥ”なのでしょう』

 

 いうなれば、この都市こそ調月リオが追い求める()()そのもの。

 あらゆる事態に対処でき、人々が平穏に暮らすことを可能とする、彼女にとっての()()()

 

 すると、ノアが語り終わったのを見計らったように『……だからって、いくら会長でもやっていい事と悪い事があるわよ!』と、ユウカが怒りを露わにする。

 

『前々から何を考えているのか分からなかったけど、せめて私たちにも事情ぐらい話しておくのが筋でしょう!? そうじゃなきゃ収まる話も収まるわけないじゃない!』

 

 そう口に出しては、火が付いたかのように次々と不満を漏らすユウカ。

 その様子をみると、常日頃から鬱憤を積もらせていた模様。

 

 それを目の当たりにしたハレが、苦笑交じりにぼそりと呟く。

 

「……仮にも自分の先輩なのに、容赦ないね」

「でしょ? ま、そういうところがユウカらしいよね!」

 

 彼女の言葉に、どことなく自慢げに答えるモモイ。

 普段、説教されることが多いものの、なんだかんだ彼女にとって信頼に値する相手だからこそできる反応であった。

 

 

 

 何はともあれ、アリスが連れ去られた場所は判明した。

 程なくして、落ち着きを取り戻したユウカから詳しい座標を受け立った一同は、いよいよ本格的な作戦会議へと移ることに。

 

 すると、画面に映っていたユウカとノアが心苦しそうな感情を滲ませながら、口を開く。

 

『……私たちが表立って協力できるのは、ここまでです』

『私たちの動きが見張られていない、とも言い切れませんから……』

 

 そう告げた彼女達の発言に驚く一同。それを見兼ねてか、その理由について2人は語る。

 

 そもそも、セミナーの立場だったからこそ、リオの居場所を突き止めることができた。

 ならば、その逆――()()()()()()()()()()()()()()()()()()可能性も、無きにしも非ず。

 

 そうなれば、共に行動するのは却って危険。

 折角の作戦も、筒抜けになってしまえば意味がない。

 

 万が一とはいえ、その可能性を考慮した2人はやりきれない思いを抱きつつも、ここで降りる決断を下したのであった。

 

『……お願いします。リオ会長を止めて、アリスちゃんを連れ帰ってきてください……!』

 

 この先、協力できないことへの負い目を感じつつ、後を託すように懇願するユウカ。

 それに対し、彼女の願いに応じるように、一同は力強く頷きを返すのであった。

 

 

 

 ――そして、通信を終えた彼女達と入れ替わるような形で、

 

 

 

「エリドゥの座標は確保できたけど、問題は潜入方法だね」

 

 突如として響く、凛とした少女の声。

 その声に引き寄せられるかのように、一同は声が聞こえた方へと視線を向ける。

 

「その辺り、私たちがサポートできそうだけど――どうだろう?」

 

 そんな彼女達の視界に入ってきたのは、3人の少女達。

 その内の1人――()()()()()()の部長、白石ウタハが不敵な笑みを浮かべながら、協力を持ちかけるのであった。

 

 

 

 

 

 

「――……ノア、この後の業務なんだけど」

 

 つい先程、通信を終えたばかりのユウカが、唐突にノアへと話しかける。

 まるで何かを決心したような、毅然とした表情を覗かせたまま。

 

 表立って”先生”達に協力できない、と語ったことは、紛れもない事実。

 監視の目が何処にあるのかも分からない現状、共に行動をすることは得策ではない。

 

 けれども、()()()から支援することは、できるかもしれない。

 何より、このままジッとしているわけにはいかない。

 

 そう考えていた彼女は自身の業務をノアに託し、1人だけでも動こうとする。

 流石に、自分の我儘に親友を巻き込むわけにはいかないと――

 

 

 

「もう他の子たちにお願いしましたよ?」

「…………ハイ?」

 

 

 そんな彼女の思惑など、関係ないと云わんばかりに。

 小首を傾げたノアの言葉に理解が追い付かず、呆気に取られてしまうユウカ。

 

 すると突然、機を見計らったかの様に彼女のスマホへメッセージが届く。

 先の言葉を裏付けるかの如く、セミナーの役員達からの連絡であった。

 

【なんかスゴイ大変だって聞いたんですけど……こっちは任せてくださいねー】

【ノア先輩から聞きました。緊急のお仕事がんばってください!】

【かしこまっ!】

 

 等々、同期や後輩達から次々と了承と応援のメッセージが送られてくる次第。

 対するユウカはとんとん拍子に話が進んでいく状況に、目を白黒させるばかりである。

 

()()()()()が入ったので、業務をお願いしたい――と言ったら、みなさん快く引き受けてくれたんです」

 

 その様子をどこか楽し気に見ていたノアが、事の経緯を語る。

 リオやアリスの事など伏せた上で、火急の仕事が入ったので自分達の業務を任せたい、と役員達へこっそり連絡していたのだと。

 

 結果、彼女達が積み重ねてきた人望が功を奏したのか。

 多くの者が快諾してくれたおかげで、2人はしばらく自由に動ける身となるのであった。

 

 「これで私たちも動けますね」と彼女が朗らかに微笑む一方、ようやく我に返ったユウカが慌てた様子で尋ねる。

 

「ちょ、ちょっと待って! 下手したらノアだって危ない目に――」

「それは、ユウカちゃんも同じでしょう?」

 

 落ち着いた声色でありながら、相手の懸念をピシャリと一蹴するノア。

 それに面食らったユウカは、彼女を言い包める言葉が思い浮かばず口籠り――やがて、根負けしたかのように溜息を吐く。こういう時の親友に、言葉では勝てないと解っているがゆえに。

 

「……もうっ、あとで後悔しないでよ」

「あら。ではそうならないように最善を尽くしますね」

 

 不貞腐れたように口を尖らせる態度に対し、それが心配と照れ隠しの裏返しであることを理解していたノアは、クスクスと笑みを零すのだった。 

 

 

 

 ――――決戦の時は、刻一刻と近づきつつある。

 

 

 

  【 つ づ く 】

 

 

 




●タメになる☆TIPS集



【憮然としたこの場に突如として響き渡る、威勢の良い少女の声が!】
→ようかんマン

【プリンを食べちゃった時】
→うん…でもね

【勝負に熱中するとお金の事なんてどうでもよくなりますよね】
→わかるわかる^^ 今回2天井いってたわ

【なに笑ってんのよ因数分解するわよ】
→〇〇ですか(笑)

【かしこまっ!】
→12年
 なんのことだって? さあなんのことだろうね(白目

【姉妹】
→こんな私にもやたら口内炎の治し方に詳しい姉がいるのですがよく自分のことお姉ちゃんというので、なんで言うんって聞いたことがあります。
 そしたら「お姉ちゃんだから笑」ってドヤ顔して答えおったわあやつ。

 意味はわからんが とにかくすごい自信だ!



 次回、エリドゥにのりこめー^^


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