Spring Sky StarS!   作:笹ピー

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 展開に悩んで気が付いたら一ヵ月たってたよ! ふっしぎー!
 スマヌ……スマヌ……。

 とりあえず殴り込もうぜ、っていう回です。


014

14-1

 

 

 

 有事に備える為に開発された、要塞都市”エリドゥ”。

 1人の少女が秘密裏に計画してたせいもあり、その存在を知る者はごく僅か。

 

 故に、都市と謳いながらも人の気配はなく。

 最新鋭の技術を取り込んだ巨大都市にも拘わらず、命令に従って巡回するドローンが発する駆動音と、建物の間を吹き抜ける風の音だけが、虚しく響き渡っていた。

 

 そんな無人都市の中央部に設けられた、1棟の隔離施設。

 そこへ数日前から監禁されている少女が、ひとり。

 

「……リ(・)オ(・)、あなたがやっていることは本当に忌むべき事です。直視に堪えません」

 

 そう口にしては、備え付けられたモニターに映しだされた人物へと厳しい言葉を浴びせる少女。

 薄暗い牢に閉じ込められている状況でありながら臆する様子無く、その相手へと非難の目を向けていた。

 

 片や、非難の対象である人物――調(・)月(・)リ(・)オ(・)が、その態度に小さく溜息を零しては口を開く。

 

『貴女はいつも悪し様に私のことを罵るわね。陰気だとか浄化槽に浮かぶ腐った水だとか……』

 

 などと、今まで浴びせられた雑言を思い出しては、ひとつひとつ口に出していくリオ。

 表情の変化に乏しいせいで、動じていない様に周りから見受けられがちの彼女だが、実のところ気にしていたのかもしれない。

 

 その文句とも言い換えられる言葉に対して、少女は不機嫌そうに睨み返すのみ。

 訂正する気も謝罪する気もない、という断固たる決意を示すかのように。

 

 それを目にしたリオが呆れつつ、『……まあ、いいわ』と静かに呟くと――

 

『そんな風に私を非難する事ができるのは、このキヴォトス上でヒ(・)マ(・)リ(・)――貴女くらいでしょうね』

 

 そう口にしながら、独創的な車椅子に腰掛けながらコチラを睨む続ける少女――かつての協力者であった明(・)星(・)ヒ(・)マ(・)リ(・)へと、冷淡な視線を向けるリオだった。

 

 

 

 互いに同盟関係を破棄した、5日前のあの日。

 リオが予め待機させていた襲撃者(飛鳥馬トキ)に不意を突かれ、為すすべなく気を失ったヒマリ。

 

 そして、次に目を覚ました時には――既に牢屋へと閉じ込められている状態だった。

 

 それから意識を取り戻した彼女はすぐさま脱出を図ろうとするものの、堅牢な鉄格子を力ずくで破ることができるわけもなく。

 携帯端末や車椅子に備え付けられていたツールさえ取り上げられている為、お得意のハッキングも不可能。なお、車輪部分が破壊されていた車椅子は、律儀に修復してくれた模様。

 

 つまるところ、八方塞がりの状況。

 それを理解したと同時に、自分の置かれた境遇を把握したヒマリは、憂うように溜息を零したのだとか。

 

 ――そうして5日が経った、今日の昼過ぎ。

 

 監禁されてから状況が掴めていないであろうヒマリへ、リオは今までの経緯を伝えることに。

 それは、同盟関係こそ解消したものの調査に協力してくれた当人には知る権利がある、という彼女なりの義務感に基づいての行動であった。

 

 

 

『……そんな貴女だからこそ、私がしようとしていることを理解してくれるのではないかと、期待していたわ』

 

 そんな中、目線を微かに落としたリオが小さく呟く。

 あっさり同盟を破棄した割には、そのことを未だに名残惜しく思っているような雰囲気を醸し出しながら。

 

 一方、相手の発言を心外だと思ったのか、

 

「ア(・)リ(・)ス(・)の(・)ヘ(・)イ(・)ロ(・)ー(・)を(・)破(・)壊(・)す(・)る(・)行(・)為(・)を、ですか?」

 

 声こそ荒げることはなかったが、皮肉交じりにそう口にしたヒマリが、普段温厚な彼女にしては珍しく険しい表情を浮かべ、怒りの感情を露わにした。

 

「あなたはミレニアム……ひいては、キヴォトスを守るための行為だとの信じているのでしょうけど――結局のところ、少女を誘拐した挙句、ヘイローを破壊しようとしているだけではありませんか」

 

 如何に崇高な主義主張があろうとも、やっていることは誘拐と殺人を企てる犯罪者と同じ。

 言外にそう告げた彼女の指摘は、厳しい言い回しではあったが、ある意味間違いではなかった。

 

 それに対し、リオ本人も認めていたのか『その言葉は間違いではないわ』と、否定はせず。

 けれど彼女にも思うところはあったのか、何かを言おうと口を開き――しかし結局、浮かんだ言葉は口にせず、そのまま心の奥底へと仕舞いこんでしまった。

 

『……いえ、そうね。貴女はそう考えているから私の事が理解できず、許容もできないのでしょうね』

「ええ、私は賛同できません――そしてそれは、他の者達も同じ考えでしょう」

 

 リオの諦観じみた発言に対し、ヒマリがはっきりと物申す。

 近い将来、その目論見を阻止しようとする者達が必ず現れる、と示唆した上で。

 

 ――その時だった。

 

 

 

『――……誰一人、ただのひとりさえ、私のことを理解してくれないのね』

 

 

 

 突然の事だった。

 今まで冷淡な表情を崩さなかったリオが、寂しげな感情を滲ませながら、そう呟いたのは。

 

 相手の反応が想定外だったのか、目を見開いたまま言葉を失うヒマリ。

 決して仲が良いとはお世辞にも言えないものの、リオという少女と長い付き合いの彼女でさえ、ここまで分かり易く心情を吐露する姿を見たことがなかったがゆえに。

 

「…………リオ、あなたはそれを理解しているというのに、こんな――」

『――それでも構わないわ』

 

 戸惑いつつ、お節介焼きの性分から出てしまったヒマリの言葉を遮るように、口を挟むリオ。

 そしてそのまま、相手の言及から逃れるように、彼女は通信を一方的に遮断するのであった。

 

 

 

 相手に断りもしないまま、通信を終えてから間もなく。

 つい感情的な所を見せてしまった己自身を戒めつつ、これから起こるであろう事態に備えるため、リオは深く息を吐いては気持ちを切り替えていた。

 

 そして、その予想を裏切ることなく。

 突如として彼女のいる管制室に鳴り響く、けたたましい警報音。

 

 同時に、今の彼女にとって唯一の協力者――飛鳥馬トキから、連絡が入る。

 

『リオ様、防衛システムより報告が』

「……そう。結局、データが示した通りになるのね」

 

 告げられた報告を耳にしてもなお、リオは冷静な態度を崩さず。

 まるでこの展開も織り込み済み、と云わんばかりの反応であった。

 

 それから手元のタブレットを操作し、報告が挙がった地点周辺の監視映像を管制室のモニターへ映し出す。

 

 画面に映し出されたのは、地上部と思わしき箇所。

 そこで、数(・)名(・)の(・)少(・)女(・)達(・)が戦闘用ドローンを相手に、派手に戦闘を繰り広げている姿が映像に時折映っていた。

 

(場所は、都市の正(・)面(・)口(・)……エリドゥで最(・)も(・)目(・)立(・)つ(・)場所……)

 

 その映像を目にしたまま、思考を巡らせるリオ――と思いきや、数秒後には凡その見当がついたのか、指示を待っていたトキに「当該地点へと向かって頂戴」と迷うことなく告げる。

 

『よろしいのですか?』

「心配は不要よ。も(・)う(・)一(・)方(・)は私が対応する」

 

 トキが思い浮かぶ懸念を見越しているかのように、リオはきっぱりと言葉を返す。

 それは事前にシミュレートした結果から裏付けられた根拠によるものなのか、はたまた別の理由によるものなのかは、当人のみぞ知る。

 

「到着次第、襲撃者を無力化しなさい――多少、手荒な手段でも構わない」

 

 つまり、必要とあれば武力行使も辞さない。

 言外にそう伝えるリオの言葉に対し、『イエス、マム』と躊躇する様子無く了承の意を返すトキであった。

 

 

 

 そうして、彼女との通信を終えたのを皮切りに。

 再びモニターへと視線を向けたリオは、誰に向けたモノでもなく自分に言い聞かせるように、独り呟く。

 

「……理解されなくても、この世が私を悪と規定しても構わない。私は、私が正しいと信じる道を進むだけ」

 

 今更、後戻りなど出来るはずもなく。

 道を阻む者が誰であろうとも、既に彼女は突き進むことしかできず。

 

 例えそれが、多数の生徒から信頼を集めている大(・)人(・)が相手でも。

 未知の星から訪れた、常識外れの異(・)種(・)生(・)命(・)体(・)が相手であろうとも。

 

 その先に、多くの者にとって安寧の未来が待ち受けているはずだと信じて。

 最後の最後に、自分の選択が正しかった、という未来を信じて――

 

 

 

「――――全てが終わったら、ヒマリ、”先生”……貴方たちも、きっと……」

 

 

 

 そう囁くように言葉を発したリオに、普段の面影はなく。

 夕陽が差し込んだ薄暗い室内で、ただ認(・)め(・)て(・)も(・)ら(・)い(・)た(・)い(・)という渇望を募らせた、独りぼっちの少女が佇んでいるだけだった。

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

 

 

 

14-2

 

 

 

 地上の方で派手に騒動が起きている、その一方。

 ある場所へと向かって、地中を掘り進む土竜の如く1台の列車が、鉄道線上をひた走っていた。

 

 本来であれば、物資輸送のために使用される無人列車。

 しかし、いま走行している列車には肝心の物資など積んでおらず、それどころか無(・)人(・)ですらない。

 

 そんな本来の用途から逸脱した列車に乗り込んでいたのは、6人の少女――と、も(・)う(・)ひ(・)と(・)り(・)。

 

 各々浮かべる表情に違いはあれど、目的は皆同じ。

 逸る気持ちを抱きつつ、今はただ列車に揺られながら、目的地へ目指していく。

 

 その想いが通じたのか――不意に、金属が擦れ合う甲高い音が一同の耳に入る。

 同時に、徐々に速度を落としていく列車の揺れを感じ取りながら。

 

 

 

 それから程なくして、完全に停止した列車から降りた一同を出迎えたのは、地下のプラットホーム。あくまで物資を輸送するための場所なだけあって、複数の列車を同時に停められることが可能な程、広々とした面積を有していた。

 

 一方、当然のことではあるが辺り一帯に人の気配はなく。

 最新の施設でありながら地下特有の薄暗い雰囲気も相まって、一同は寂れた廃墟のような印象を抱かざるを得なかった。

 

「――……よし、想定通り”物流輸送用無人列車”で現場に来れたね」

 

 すると、列車に乗り込んでいた内の1人――白石ウタハが、辺りを見渡しながらそう告げる。

 自分から立案しておきながら違う場所に到着する、などという目も当てられない事態が起きずに済んだことに、一安心した模様。

 

 そんな彼女の言葉を耳にした一同は、あらためて実感する。

 今いる場所こそ目(・)的(・)地(・)であり、敵(・)の(・)本(・)拠(・)地(・)であるということを。

 

「ここが……」

「エリドゥ……」

「ここに、アリスちゃんが……」

 

 その事実を噛み締めながら呟いたのは、ゲーム開発部所属のモモイとミドリ、ユズの3人。

 彼女達が口にした言葉の通り、エリドゥの地下――――潜入の足掛かりとなる資材運搬通路へ、足を踏み入れたのであった。

 

 

 

 エリドゥの場所が判明した際、突如として姿を現したエンジニア部の3人。

 その内の1人であるウタハが提供したのは、エリドゥの潜入方法についてだった。

 

 第一に、地上から突入するのは得策ではなく。

 要塞都市の名の通り、不用意に内部へと足を踏み入れた途端に”対侵入者用の防衛システム”が作動し、瞬く間に包囲網が完成するだろう、と彼女は語る。

 

 その上、システムの構築者は合理主義者の調月リオ。

 一筋縄でいかないことは、もはや明白。

 

 そんな前途多難な話を聞かされた面々からは、ならばどうする、といった声が当然上がる。

 場所が分かっていてもアリスの元に辿り着くどころか、都市に侵入することさえままならない、といった具合に。

 

 すると、その言葉を待っていたと云わんばかりに、薄く笑みを浮かべるウタハ。

 彼女が続けて提示したのは、地上よりも比較的警備が薄いであろう――別(・)ル(・)ー(・)ト(・)の存在だった。

 

『都市建設の”人手”だけだったら、リオ会長のドローンだけで事足りるだろうけど、”資(・)材(・)”となれば話は変わってくる――無から有は作れないからね』

 

 曰く、ミレニアム自治区の郊外には輸送用に設けられた鉄道路線が張り巡らされており、都市建設に使う資材を学区内から送るのであれば、コレを利用するのが最も効率的。その上、郊外に数多く存在する無人列車を使えば、人手を気にする必要もない。

 

 それらを踏まえて、この経路を利用した可能性は十分高いと、彼女は断言する。

 少なくとも、その路線が特定できれば必然的にエリドゥへと辿り着くはずだ、と一言付け加えながら。

 

 その時、ルートを探すことも含めて、あらためてエンジニア部が作戦への協力を申し出る。

 危険が待ち受けていることや、アリスという少女の正体を理解したうえで。

 

 発明品(光の剣)の理解者でもあり、ある意味隣(・)人(・)とも云える、3人にとって良き友人。

 そんな尊い存在が失われようとしている時に、彼女達が見て見ぬ振りができるはずもなかった。

 

 

 

 そして、多数存在する路線の中から――見事にエリドゥへ繋がる道を探し当てたのだった。

 

「それにしてもさすがヴェリタスです! まさか列車システムごとハッキングしてくださるとは、ハイジャックもお手の物ですね!」

「うん、鮮やかなお手並みだった」

 

 とはいえシステムに侵入し、無人列車の使用履歴と云った情報を引っこ抜いたヴェリタスの助力あってこその成果であることも事実。なお、得意とする情報戦に徹するためか彼女達は同行はせず、別の拠点から支援する役割を担っていた。

 

 そんなヴェリタスの有能さを、同行者の内の2人――エンジニア部の部員である豊見コトリと猫塚ヒビキが素直に称賛する一方、ハイジャック常習犯と認識されていそうな言い回しについて、『それ褒めてるつもり?』と、通信機越しにハレが不服そうな反応を露わにしていた。

 

『……まあいいや。その通路の先を進んでいけば、エリドゥの地上部に出られるよ』

 

 溜息交じりに言及を諦めた彼女は、共に行動させていた自作の球状ドローン――”アテナ3号”を操作する。本作戦において別地点から支援する彼女達の目と耳となり、一同の道順を示す誘導役でもあり、外部から介入が難しいエリドゥ内の電子機器にハッキングするための中継器でもあった。

 

 そうして浮遊しながら移動するアテナ3号を目で追った一同は、件の通路へと視線を移す。

 視界に映った通路の先は薄暗い闇に包まれており、地上まで長い道のりである予感をイヤでも匂わせている。

 

『……気をつけてね。道中に警備用のドローンが配置されてるみたい』

「それって、ハッキングでもどうにもならないの?」

 

 通路先の状況を確認したハレの忠告に、モモイがふと疑問に思ったことを口にする。

 彼女の中では、どんなモノであろうと電子機器である以上ハッキングでどうにかできる、という考えがあったからこその疑問。

 

 それに対し、『それは、ちょっと厳しいかも』と、困ったように眉を顰めるハレ。

 彼女曰く、この周辺のネットワークへ侵入を行った際、ドローンに関するプログラム等が見受けられなかったことから、管理や制御はネ(・)ッ(・)ト(・)ワ(・)ー(・)ク(・)を(・)利(・)用(・)し(・)て(・)い(・)な(・)い(・)構(・)造(・)である可能性が高い、とのこと。

 

 つまり、アレは予め設定された指示だけで動いているス(・)タ(・)ン(・)ド(・)ア(・)ロ(・)ー(・)ン(・)型(・)。

 機体そのものに直接干渉でもしない限り、ハッキングは容易ではない、と彼女は口にした。

 

 ――しかし、裏を返せば、

 

「じゃあ……見つかったとしても、潜入がバレたわけじゃない……?」

 

 回(・)線(・)か(・)ら(・)独(・)立(・)している以上、ソ(・)レ(・)に(・)介(・)入(・)す(・)る(・)こ(・)と(・)も(・)不(・)可(・)能(・)ではないだろうか。

 そう考えたユズが口にした予想に、『そういうこと』とハレが頷いた。

 

『本来ならドローンの騒ぎに乗じて、防衛システムが反応するようになっているようですが……』

『この周辺のシステムは、すでに私たちが掌握済みだよっ!』

 

 コタマの説明を引き継ぐ形で、マキが自信満々に告げる。

 少なくとも、この通路を抜けるまでその心配は不要であると。

 

 それを踏まえた上で、彼女達の話に耳を傾けていたミドリが「ようするに」と、思考を巡らせながら呟く。

 

「見(・)つ(・)か(・)っ(・)て(・)も(・)す(・)ぐ(・)に(・)倒(・)せ(・)ば(・)問(・)題(・)な(・)い(・)、ってことかな」

「わかりやすくていいじゃん! ”さーち・あんど・ふ(・)ぇ(・)い(・)た(・)り(・)て(・)ぃ(・)”ってことでしょ!」

 

 分かりやすく要点を搔い摘んだ彼女の言葉に、意気揚々と反応するモモイ。

 単純明快な作戦は当人の気性にも合っているのか、いつになく乗り気な様子である。

 

 一方、彼女の発言に対して「それを言うなら”見敵必殺(サーチ・アンド・デストロイ)”じゃないの?」と、ミドリが指摘する。 ”Key(キー)”を”ケイ”と言い間違えた時といい、相変わらず勉学を疎かにしている姉に少々呆れている模様。

 

 片や、妹の指摘に呆気にとられたモモイが「そ、そうだっけ」と、バツが悪そうな顔を浮かべる――のも束の間。小恥ずかしさを誤魔化すことも兼ねて、気を取り直すかのように彼女は口を開いた。

 

「と、とにかくっ、ここまで来たらあとはアリスの所まで突き進むだけだよ!」

「ああ。彼女達が注意を引き付けてくれているこの機会を、逃す手はないだろう」

 

 声高々にそう口にした彼女の言葉に頷いては、同意を示すウタハ。

 地上の騒動へと警備を割いているであろう今こそ、最終地点である中心部のタワーに近づきやすい状況であると、考えているからこそ。

 

 そんな2人の意見に反対する声はなく、賛成の意を示した他の面々。

 とはいえ、道中待ち受けているであろう敵勢力との戦闘を予期しているのか、表情からは緊張感を滲ませていたが。

 

 それに気が付いてか、「大丈夫だって!」と、モモイが周囲を鼓舞するかのように――或いは、不安と心配を内心抱えていた己自身に言い聞かせるように、

 

「こっちには、最強の”オ(・)ト(・)モ(・)”が付いてるんだから!」

 

 と、口にしつつ信頼の籠った視線を、ある方へと向けた。

 それにつられる形で、他の少女達もそちらの方へと視線を向けていく。

 

 そうして一同の視界に入ったのは、共に同行していた”若者”。

 この中で最も小柄な存在でありながら、おそらくこの中で最も勇敢な心の持ち主。

 

 

 

 ――ここまで来るのに色々あったが、後はアリスがいるであろうタワーへ向かうのみ。

 ――い(・)つ(・)も(・)の(・)様(・)に(・)、行く手を邪魔する相手を蹴散らして、ひたすら前へ進むだけ。

 

 

 

 そんな気概を示すかのように、モモイ達の信頼に応えるように、カービィは力強く頷く。

 確固たる決意を、瞳の奥で煌めかせながら。

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

 

 

 

14-3

 

 

 

 モモイ達が地下から潜入を果たした時と、同じくして。

 夕陽に照らされたエリドゥの正面口――から、中央へ向かって少し先へ進んだ地点。

 

 つい先刻までは満ち溢れていた物寂しい雰囲気はいまや見る影はなく。

 堂々と正面から侵入した襲撃者達を迎え撃つべくして、呼び寄せられた大群のAMASが放つ銃声が、一帯に途絶えることなく木霊していた。

 

 一方、弾幕とも云える銃弾の中を、一陣の風の如く突き進んでいく少(・)女(・)が、ひとり。

 傍から見れば無謀としかいえない行為にも拘らず楽し気な表情を浮かべては、長い襟巻のようにも見える長髪を靡かせながら、駆け抜けていく。

 

 不思議なことに、露出している地肌はおろか、揺れ動く髪の毛にすら弾丸が掠めることはなく。

 まるで、どこをどう動けば当たらないのかを予め知っているかの如く。

 

 そうして事も無げに弾幕を搔い潜った少女は、手に握られていたFA-MAS(ファマス)を掃射。

 今まで銃撃を行っていたAMASに対してお返し、と云わんばかりに容赦なく銃弾を叩きこんでは、装甲に風穴を開ける。

 

 結果、貫通した弾丸により内燃機関を著しく損傷させられたドローンは、耐え切れず爆散。

 その後を追うかのように、他の機体も同じ末路を迎えていった。

 

「あははっ! どんどん爆発してく!」

 

 次々と敵機が爆発していくその光景を、足を止めて目の当たりにした少女―― 一ノ瀬アスナが瞳を輝かせては、無邪気な反応を見せる。この惨状を生みだした本人がしていい言動なのかは、ともかく。

 

 そんな油断とも言い表せる姿を、好機と捉えたのか。

 遮蔽物に身を潜ませていた1体のAMASが、足を止めた彼女の死角から照準を定めていた。

 

 そして、対象に悟られぬまま銃撃を行おうとする――その刹那。

 どこからともなく飛来した、1発の弾丸が命中。

 

 弾け飛ぶような鈍い金属音を響かせた弾丸に貫かれた機体は、目論見を果たせぬまま爆散していくのであった。

 

「……これで30台目」

 

 その光景をアスナの後方から見届けた少女――角楯カリンが小さく息を吐くと、構えていたボーイズ対戦車ライフルの遊底(ボルト)を慣れた手つきで操作し、排莢と次弾の装填を行う。

 並外れた直感を持つアスナなら問題ないと解っていたものの、仲間の危機をみすみす見逃すつもりもなかった模様。

 

 そうして今の狙撃で仕留めたのが最後だったのか、周囲の敵を一掃し終えた2人。

 しかし一段落できる状況にも拘わらず、カリンの表情は芳しくない。

 

 その理由として、絶えずコチラへと向かってきているAMASの大群が、遠目からでも彼女の視界に入ってきていたのが原因である。

 

「……終わりが見えない」

「ええ、想定より数が多いですね」

 

 ぼやくように呟いたカリンの言葉に、いつの間にか後ろに控えていた1(・)人(・)の(・)少(・)女(・)がため息交じりに応じる。ここまで然したる労力を費やしていない彼女達といえど、際限なく湧いてくる敵の数にはやや食傷気味な様子。約1名(アスナ)だけ、なぜか意気揚々としていたが。

 

 そうしている内に、3人の方へと徐々に距離を詰めていく大群――と、思いきや。

 ある地点を越えた瞬間、いつの間にかその辺り一帯に仕掛けられていたC(・)-(・)4(・)爆(・)弾(・)が一斉に起爆。

 

 1つだけならまだしも、数(・)十(・)を(・)超(・)え(・)る(・)量(・)となれば話は別。

 ミサイルが落ちてきた、と錯覚するほどまでの爆発に、大群は為す術もなく巻き込まれていった。

 

「まあ、そのおかげで”派手に暴れて騒ぎを起こす”という目的は達成できていますが……」

 

 そんな凄惨とも云える光景を、涼しい顔で眺めていた人物――室笠アカネが、今しがた役目を果たした起(・)爆(・)装(・)置(・)を仕舞いながら、数時間ほど前の出来事を思い返していた。

 

 

 

 エンジニア部からの情報提供により、別ルートの存在を知った一同。

 とはいえ、それだけで全ての問題が解決できるというワケではなく、あくまで他よりも警備が薄いであろうルートの存在を知った、ということだけ。

 

 ある意味、本作戦の肝と云える、AMASやリオのボディガードである飛鳥馬トキの対処については、未だ案は挙がらないままだった。

 

 例え潜入に成功したとしても、相手が相手(リオ)なだけに補足されるのは時間の問題。

 ましてや、目的地に近づけば近づくほどその可能性が高くなることは、自明の理。

 

『――――あたしらに必要なのは作戦だな』

 

 結局のところ、敵の襲撃を避けて通れないのは事実。

 それを改めて認識した上でぼそりと呟いたのは、C&Cのリーダーの美(・)甘(・)ネ(・)ル(・)だった。

 

 なお、作戦などという言葉があまりにも似つかわしくない彼女から出てきたことに、C&Cの部員以外が仰天したり大層失礼なことを口走ったりしたことは、さておき。

 

『こっちの勝利条件は単純明快だ。”あたしらがやられる前に、あのチビを救い出す”』

 

 兎にも角にも、そう口にした彼女が今しがた思いついた作戦について、周囲へと説明する。

 

 曰く、片方は先ほど教えてもらった別ルートから潜入し、最終目的地であるタワーへと目指す。

 その間、もう片方が正面から突っ込んでは騒ぎを起こし、リオやトキの注意を引き付ける。

 

 いうなれば、陽(・)動(・)作(・)戦(・)。

 一方が注意を引きつけている間、もう一方が本懐を遂げる、といった内容であった。

 

 そして、肝心の注意を引きつける役はC&Cが受け持つと、一瞬目をギラつかせたネルが申し出る。例え罠だと気付かれたとしても、否応がなしにリオ達は対応せざるを得ない、という理由を付け加えながら。

 

 実際C&Cの4人ならば、襲い来るであろうAMASに後れは取らず。

 加えて、リオや特殊な武装を用いるトキからしてみても、決して無視できる存在ではない。彼女達を放っておけば状況が厳しくなるのは向こうなのだから。

 

 ――尤も、彼女にとって理由はそ(・)れ(・)だ(・)け(・)で(・)は(・)な(・)い(・)様子だが。

 

 ともあれ、シンプルな作戦であるが、守衛より殲滅が得意なC&Cにとって打って付けの作戦。

 激戦となる予感を察しながらも、部長(ネル)の提案に部員3人は迷う事なく快諾し、周囲の同意も得られたことでいよいよ作戦が決まる。

 

 その後、各々の役割を決めたり細かい打合せなど、少し前までの停滞していた空気が嘘のように話が纏まっていくのであった。

 

 

 

 こうした経緯を得て、作戦通り順当に役割をこなしていた彼女達の元に。

 ある意味待ち望んでいた、本(・)命(・)が現れる。

 

 

 

「――――そっちか!」

 

 建物の影に潜む存在に気が付いたカリンが、咄嗟に構えたライフルを発砲。

 彼女の位置からは気付きにくい場所でありながらも、放たれた弾丸は相手の居場所を正確無比に捉えていた。

 

 一方、奇襲に失敗したあげく反撃を受けた相手は、飛来してくる凶弾を動じることなく回避。

 それに伴い、潜ませていたその身を3人の前へと晒す羽目となる。

 

「あら」

「わぁ! すご〜い!」

「……お出ましだな」

 

 その動きを目の当たりにしたアカネが目を丸くする傍ら、反射神経の良さを素直に感心するアスナ――そして、不意打ちとも云える一撃を難なく躱された事実に、警戒の色を濃くするカリン。

 三者三様の反応を示した3人の目に映っていたのは、自身達と同じくメイド服を模した衣服を纏う少女の姿。

 

 同じ部の所属でありながら、今まで直接的な面識のない後輩。

 ある意味リオ以上に得体が知れない、謎多き人物。

 

 恐らく、本作戦において――最も警戒すべき相手。

 

「お待ちしておりました、先輩方」

 

 客人をもてなす様な言動とは裏腹に、浮かんだ表情は温かみさえ感じさせない冷淡なモノ。

 そんな無機質な雰囲気を放ったまま、改めて彼女は己の身を明かす。

 

 

 

「”コールサイン・ゼロフォー”、飛鳥馬トキ。ご挨拶申し上げます」

 

 

 

  【 つ づ く 】

 

 

 




●タメになる☆TIPS集



【ふぇいたりてぃ】
→FATALITY…
 デスモモイってなんだよ

【見敵必殺(サーチ・アンド・デストロイ)】
→命令(オーダー)は唯ひとつ(オンリーワン) 「見敵必殺(サーチアンドデストロイ)」 以上(オーバー)

【FA-MAS(ファマス)】
→アサルトライフル、通称トランペット。MGSでお世話になった人は多いはず。
 どうでもいい話だけど私は今までずっと”ファーマス”って呼んでた。ファーww

【ボーイズ対戦車ライフル】
→対戦車ライフル、のはずが戦車の進歩がヤバくて戦車対策にならなかったっぽい。かなしい。
 なお総重量約16kg。これを片手で扱えるカリンちゃんは中々パワフル。

【C-4爆弾】
→プラスチック爆弾。蛇の下B。「そこだッ」
 雷管や起爆装置を使用しない限りまず爆発しないのでとっても便利。
 そして爆発範囲を見誤ったまま起爆して乙る奴も数知れず



 いよいよ。


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