Spring Sky StarS! 作:笹ピー
我ながら勿体ぶりすぎだわさゲロゲロ。
ここ最近投稿ペースが遅く、お待たせしてしまい申し訳ないです。
私事が落ち着くまでこんなペースだけど、のんびり待って頂けると嬉しかです。いつも遅いだろというお言葉は、密に 密に
15-1
日もすっかり暮れて、俄かに夜の気配を漂わせ始めてきた黄昏時。
然るべき時に備えるべくして創られた要塞都市”エリドゥ”のある場所――大通りと思わしき広々とした一帯にて、メイド服を模した衣装を纏う少女達が、二手に分かれて対峙していた。
片や、アリスを救出するため都市を襲撃した、C&C所属のアスナとカリン、アカネの3人。
片や、襲撃者を鎮圧すべくこの場に赴いた、同じくC&C所属のトキ。
奇妙なことに、同じ所属でありながら両方共に直接の面識はなく、お互い言伝や噂程度でしかその存在を認知していなかった。
そういった経緯もあり、この場を以ってようやく彼女達は対面を果たす。
尤も、今の時点では互いに相容れない存在だったのだが。
「思ったより早く現れてくれましたね」
「私たちがここに来る事は最初からお見通しだったわけだ」
本作戦における要注意人物を前にしたにも拘わらず、落ち着き払った様子で呟くアカネ。
その呟きに応じつつ、警戒心を顕わにしたカリンは敵対者へと鋭い視線を向ける。
そんな彼女の射貫く様な視線を受けてなお、動じる素振りを見せないトキは「はい、リオ様はすべて把握されておいでです」と答えつつ、
「C&Cの判断も、その動きも……――もちろん、”先生”の狙いも、全て」
と、この場に姿を見せない人物について言及した。
まるでそちらの魂胆はお見通しだ、と云わんばかりの口ぶりで。
「先輩方が私の足止めをしている間、”先生”とネル先輩を自由にさせる……そういう作戦なのでしょう?」
半ば確信に近い予感を抱いていた彼女が、己の推測を交えつつ3人へ問いかける。
現にその指摘を裏付けるかの如く、本来であればこの場にいるはずのシャーレの”先生”とC\&Cの部長――美甘ネルの姿はない。
協力な武装を用いるトキは間違いなく強敵であるが、あくまでも一行の目的はアリスの救出。
時間が限られた中で失敗が許されない以上、3人にこの場を任せ、あとの2人を目的を果たすために別行動させた方が合理的。
そう考えたトキが「それはある意味正しい考えです」と、理解を示す。
「リオ様特製の”武装”を纏った私と正面対決を挑むよりも……ええ、まだ勝算があるでしょう」
裏を返せば、自分と真正面から戦ったところで勝負は見えていると。
聞きようによっては相手を舐め切っている言動とも捉えられる発言だが、武装した彼女がネルを無力化したことは事実。当人もその事実を踏まえた上での発言であった。
――もっとも、それを黙って聞いていられるほど、
「誰に勝算がある、って?」
彼女は我慢強くはなかったのだが。
聞き覚えのある声を耳にした途端、悪寒を覚えるトキ。
その感覚を疑うことをせず、彼女はその場から飛び退き――それに一瞬遅れる形で、先程まで立っていた場所へと銃撃が襲いかかる。
結果的に、いち早く動くことができた彼女はなんとか回避に成功。
ほんの僅かでも反応し遅れていれば、アスファルトの代わりに数十モノの銃弾を容赦なく撃ち込まれていたことは言うまでもなく。
しかし、今のトキにそのことを安堵している余裕はない。
なぜなら、つい先程語った推測を裏切る光景が目の前に広がっていたのだから。
「ネル……先輩……っ」
視界に映っていたのは、新品と見間違うほど傷ひとつないスカジャンを纏うC&Cのリーダー。
小柄な見た目に反した獰猛な笑みを浮かべながら、辛酸を舐めさせられた相手を睨む美甘ネルの姿がそこにあった。
――そして、
――当人にとって予期していなかった人物が、
「――――シャーレの、”先生”……っ!」
”やあ、トキ。昨日ぶり”
目に映る人物の存在に困惑を隠せず、呆気にとられるトキ。
一方、知人に挨拶するかのように軽く片手を上げた”先生”が温和な笑みと共に話しかけた。
それを目にしながら、2人がこの場にいる理由が思いつかないトキが言葉に詰まる。
そもそも別行動していると予想していた彼女からすれば、非合理ともいえる行動にしか見えてならないがゆえに。
その反応が可笑しく映ったのか、「ンな難しい話じゃねぇよ」と、ネルが鼻で笑う。
「後々面倒になるぐらいなら、てめぇを倒してからチビを助けに行っても遅くはねぇ、ってだけだ」
――つまり陽動役をこなしつつも、救出作戦に於いて最も障害となるであろう飛鳥馬トキを打倒するのが真の目的。”先生”がこちら側に同行してもらったのも、万全を期するため。
そう口にしたネルの説明に、成り行きを見守っていたアカネが「貴女が出てくるまで、おふたりには後方で待機して頂いたんですよ」と補足を付け加える。くすくすと笑みを零した彼女曰く、あの程度の相手にわざわざ2人の手を煩わせる必要もない、と。
「……まあ、敵の詳しい位置や数については”先生”が頻繁に教えてくれてたが」
その際、会話を耳にしていたカリンが眉間に皺を寄せながら、ある方へと視線を向ける。
視線の先では、”本命が出てくるまで休んでいろ”と作戦前に告げられたにもかかわらず休むどころか、前線の3人に終始指示を飛ばしていた”先生”のぎくりとした姿が映っていた。
なお、その行動を同じく待機組だったネルに諫められた際、”2徹ぐらいならいつものこと”とズレた言い訳で彼女を呆れさせては、無理やり納得させたとかなんとか。
そうした経緯もあって、彼女の咎めるような視線に”先生”がバツが悪そうにしている最中。
今まで口を挟まなかったトキがようやく状況を呑み込めたのか「なるほど」と、呟いた。
「貴方たちはあくまでも陽動に徹し、奪還は別動隊が行う……そういうことですか」
視線だけを動かし、今度こそ他に誰もいないことを確認した彼女は相手の企みに気が付く。
同時に、
「……ですが、戦闘慣れしていないゲーム開発部や他の部活動が、はたして辿り着けるでしょうか」
純然たる疑問が思い浮かんだトキが、淡々と問いかける。
それは決して負け惜しみから出た発言ではなく、AMASに囲まれて身動きが取れなくなってしまった様子を目にした彼女からすれば、安易に事が進むとは考えていない模様。
”先生”が同行していれば話はまだ違っただろうが、当人がここにいる以上それは叶わぬ願い。
こちら側に戦力を回したところで、結果的に本懐を遂げられないのであれば意味がないのでは、と彼女は暗に告げた。
「大丈夫だと思うよ?」
そんな不安を煽るような発言に対し、アスナがあっさり答える。
相手の指摘を、まるで気にも留めない様子で。
彼女のあっけからんとした態度に、眉を顰めて訝しむトキ。
その反応を余所に、彼女は続けて言葉を紡ぐ。
「あの子たちも簡単にはやられないだろうし……それに――」
そう口にしていたアスナは一度言葉を区切ると、ある光景を思い返す。
悲観に暮れる少女の懇願に、迷うことなく手を貸した若者の姿に。
今まで以上に、
「”
その時の光景が脳裏に過ったアスナが、はにかんだ笑顔を浮かべながら告げる。
湧き上がる期待に、胸を膨らませながら。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
15-2
進む。
とにかく、進む。
心の奥底で助けを求めるトモダチを救うため。
悲しみに暮れたトモダチの願いを果たすため。
――そしてまた、呆れるほど平和な日常をみんなで過ごすため。
それだけの理由で突き進んでいく若者の姿は、まさしく猪突猛進というべきか。
その道を邪魔する有象無象は、何であろうと誰であろうとも一切の容赦はせず。
次々と襲い来る敵を、降りかかる火の粉を振り払うかの如く蹴散らしては。
ただひたすらに、先を進むのみ。
そうして1人の若者――カービィは、長く続く地下通路を突き進んでいく。
そんなカレに続く形で後を追いかけていたモモイ達は、その一騎当千な立ち回りに唖然とするばかりだった。
進路を阻む数機のAMASを見つけるや否や、特技の”すいこみ”を行うため相手へ急接近。
高さにしてみれば1mほどの大きさでも、1体程度
それから身の丈以上の敵を頬張って肥大化したカービィが吐き出すのは、虹色に輝く巨大な星形弾。ポップな見た目に反して驚異的な破壊力と貫通性を有した五芒星型の弾は、残りの敵機をあっという間に蹴散らしていくのであった。
「前々からよく動く子だな、って思ってた、けど……」
「そ、想像以上です! 今まで密かに記録していたデータを遥かに超えているのは間違いありません!」
通りすがりがてら、物言わぬスクラップと化したAMASの残骸を横目にしたヒビキの呟きに、コトリが興奮気味に応じる。現にここまで彼女達の前に立ち塞がった敵のほとんどは、カレによって対処されたと云っても過言ではない。
勘違いしてはいけないのが、リオが戦闘用に製作したAMASは決して楽に倒せる相手ではない。
C&Cのような戦闘能力の高い者達でもない限り、1機でも手を焼く相手であることは事実。
故に、放たれた銃撃を軽やかに掻い潜りあっさりと接近できる未確認生命体が十分すぎるほどの戦闘能力を有していることは、疑いようのない事実であった。
『つ、強いってのは、聞いてたけどさ……!』
『これほどとは……』
その可愛らしい見た目から想像できない実力を目にしたマキとコタマ。
ミレニアムタワー襲撃時に手を組んだとはいえ、実際に戦う姿を見たことがなかった2人にとって目を疑う光景でしかなかったのが本音だったとか。
勿論、1人だけに任せるような真似を彼女達も良しとはせず。
各々所持する銃器や装備などを用いて援護を行っていた――が、それでもカレの動きに追いつけず、今ではどんどん先へと進むピンクボールを追いかけるのが精一杯の状況。
「――どうやらあの子の潜在能力を、見誤っていたようだ」
『……さしずめ、眠れる獅子を起こした、ってところかな』
走行する雷の玉座――もとい”雷ちゃん”に跨りながら瞳を輝かせているウタハの言葉に、球状ドローンである”アテナ3号”から送られてきた映像に目を通していたハレが同感を示す。
理由や経緯に違いはあれどカービィという存在に興味を抱き、調べていた彼女達から見ても想定を超えていたからこその反応である。
そしてそれは、この中で一番付き合いが長いゲーム開発部の3人も同じく。
普段こそ能天気で食いしんぼうな印象の強いカービィだが、いざという時は頼りになる存在であることは彼女達の中では周知の事実。
「カービィって、こんなにスゴかったの……!?」
「う、ウソ、みたい……!」
だからこそ、想像以上の活躍を見せつけるカレに驚きを隠せず。
その姿を目にしていたミドリとユズが、思わず言葉を漏らしてしまうほど。
そんな中、ただひとりだけ言葉を発しなかった少女は――
(――――いける……!)
と、湧きあがる期待に心を震わせながら、ある確信を得ていた。
この調子で進めば、アリスが囚われているであろうタワーに辿り着くことができる、と。
C&Cと”先生”の班がトキと接触したことは、既にヴェリタスからの通信で把握済み。
懸念要素の1つだったAMASの襲撃も、先行くピンクボールが蹴散らしてくれるおかげで後は目的地へと向かうのみ。
故に、今こそ絶好の機会。
このままいけばアリスの奪還は、決して叶わぬ夢ではない。
その事はモモイだけではなく、他の面々も内心理解していたのか。
この機会を逃すべからずとばかりに、彼女達は若者が切り開いてくれた道を進んでいくのだった。
『――そろそろ出口だよ、みんな』
勢い付いた一同が地下通路を進んでいる最中、不意に届くハレの通信。
それから程なくして、彼女の言葉を裏付けるように運搬出入口用の大扉が各々の視界に入る。
『電子ロックされているようですが、コチラから解錠は可能です』
『いま開けるよっ』
人力ではまず開けることは不可能、と思えるほど重厚に造られた巨大な鋼製の扉だが、制御はあくまでも電子機器によるもの。この一帯の電子機器について掌握していたコタマとマキの言葉に続く形で、閉め切っていた扉が鈍い音を立てながらゆっくりと開かれていく。
そうして、重々しく開かれた扉から一同が目にしたのは、様々なビルが建ち並ぶ光景。
すっかり陽が暮れてしまった時間でありながらも、街灯や施設から漏れ出た照明によって照らされた都市の姿が、そこにあった。
「よーーし、外に出れた!」
「それで、ここからどこに向かえばいいの?」
ようやく屋外に出られたことに喜々とするモモイの傍ら、次に向かうべき場所を尋ねるミドリ。
幸いにして周囲に敵がいない状況に応じて、目的地へ急ぐべきだと考えている様子。
その疑問について、周囲を確認していたコタマが答える。
『現在地からルートを算出しました。左手にある大通りをまっすぐ北に進めば辿り着けます』
そう告げた彼女の言葉通り、その方へと視線を向けた面々の視界に道が開けた大通りが映る。
同時に、都市中央に高く聳え立つタワーの姿も、遠目からはっきりと。
『道はこっちでナビするから』
『みんな、はぐれないようについてきてね~!』
右も左も分からない場所に於いて頼もしい言葉を口にするハレとマキの通信を皮切りに、一歩先に出たアテナ3号が浮遊しながら移動し始め、その後に続く形で他の面々も移動することに。
『――――やはり貴女たちだったのね、ヴェリタス』
その時だった。
辺り一帯に、
突如として耳に入ってきた声に驚きを隠せない一同はすぐに周囲を見渡し、音の出処を探る。
しかし追い打ちを掛けるかの如く、予想外の事態は続く。
浮遊していたアテナ3号が、急に電源が切れたかのように地面へ落下。
そのまま反応を見せなくなった球状のドローンが静かに地面を転がっていくのと同時に、機を見計らっていた複数のAMASが建物の影から姿を見せると、統率が取れた動きで彼女達を取り囲む。
気が付けばハレ達との通信が途絶えてしまった上に、数十にも及ぶ敵機に包囲されてしまう始末。僅か数秒のうちにここまで状況が悪化するとは、いったい誰が予想できただろうか。
一転して窮地に陥ったことに、焦りを覚える一同。
そんな中、取り囲んでいたうちの1機が前へ出ると機体の頭部――アイカメラの部分が突如として光輝く。
すると彼女達の目の前に、黒を基調とした少女の姿がホログラム状で映し出された。
その姿を目にした途端、モモイが思わずその名を口にする。
――先日、完膚なきまでに打ちのめされた、相手の名を。
「
『……やはり、あの時の私の言葉と行動だけでは貴女たちを説得できなかったようね』
苦々しい表情で声を発するモモイに対し、落胆の色を滲ませた感情を覗かせるリオ。
そんな彼女が徐にある存在へ視線を向けると、小さく溜息を零した。
『できれば相手にするのは避けたいと考えていたけれど……こうなった以上やむを得ないわ』
不承不承な言い回しをする当人の目に映るのは、明星ヒマリが興味を抱いた
アリスと同じく危険視していたにも拘わらず、未だ掴み切れていない
『私は調月リオ――初めまして、
定石に則る形で自身の身元を明かしながらも、
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
15-3
「み、未知なる、惑星?」
「異星人……って……」
リオが今まで接触を避けてきた未確認生物と初の対面を果たした、その直後。
彼女の口にした内容があまりにも衝撃的だったせいか、目を白黒させるコトリとヒビキ。その反応を見たミドリが、「そういえば伝えてなかったっけ」と思い出しては、少しバツが悪そうな顔を浮かべていた。
以前、ひょんなことから判明したカレの出身と思わしき情報。
それを知っているのは、その場に居合わせていたゲーム開発部の部員と、セミナーの会計担当と書記担当――リオが知り得ているのはその2人から報告を受けたからである。
その後すぐに口外することを禁じられたこともあり、
「……非常に、たいへん興味深い話だが、それについてはまた今度聞くことにしようか」
そのうちの1人でもあるウタハが、困惑する後輩2人をなんとか宥めつつ話を戻す。
本音を言えば今すぐにでも言及したい気持ちでいっぱいな彼女だったが、流石に数多くの敵に包囲されている切迫した状況を鑑みて自重することに。
『……ここに来たという事は、彼女を取り返しに来た。そう解釈していいのかしら』
そんな彼女達の様相に構わず、冷徹な目を向けながら問いかけるリオ。
それに対し、「あったりまえじゃん」と一歩前に出たモモイが威勢よく応じる。
「誰が何と言おうとアリスを連れて帰る――そう決めたんだからっ!」
ホログラム状に映し出された相手を真っ直ぐ見つめ返しながら、彼女は躊躇うことなく告げる。
葛藤の末に導き出した、感情を第一とする己の答えに基づいて。
その強気な言動を目の当たりにしたリオが僅かに目を見開く――が、それも一瞬の事。
次の瞬間には冷徹な表情を浮かべていた彼女は、『そう』と合点がいったように呟く。
『……ならこれ以上の問答は不要ね』
才羽モモイ、及び彼女の決断に賛同した者達を説得することは、もはや不可能。
少しでも迷いを見せれば言葉を交わすこともやぶさかではなかった、と考えていたリオはそう結論付けた。
ならば、これ以上無駄な時間を費やすのは非合理的。
速やかに侵入者を鎮圧し、
『────
その一言が引き金となったのか、上空より4機の飛行ドローンが2〜3mほどの高さを持つロボットの様なモノをワイヤーで吊るしながら飛来。それから所定の位置に到達したドローンはワイヤーを取り外し、運んできたモノを降下させた。
そうして轟音と振動を生じさせながら一同の前に降り立つ、巨大ロボット。
その迫力に気圧されながらも、各々の武器を構えた彼女達は警戒心を滲ませながらソレを注視する。
肩の付け根から伸びる2本の腕――両方合わせて4本の腕と各種武器を持ち合わせる姿は、まさに破壊神の如く。
装甲戦闘車両を連想させる脚部は困難な道であろうとも進まんとする覚悟を示し、胸部にはっきりと描かれたミレニアムの校章は、真摯に学園を想う製作者の想いが具現化されている、と云っても過言ではない。
極めつけは、頭部。
人の頭とは程遠い平たい顔面に、短い横線を引っ張ったような無機質な目と食いしばっているような口元を付けることにより、決して動じない平常心を露わにしつつ敵を威嚇するかのような気迫を見せつけることに成功している、と云っても差し支えないだろう。
総じて、”
製作者曰く、ここまで芸術性と機能美に優れた発明は存在しないとのこと。
そんな独創的な外見を目の当たりにした一同は、
「うわダサッ!?」
「たしかに、あんまり可愛いデザインじゃないけど……」
「た、タンクアセンなら、もう少し腕部とコアを見直した方が……」
「ううん、私ならもう一工夫加えるかなぁ」
「むむむ、上手く言葉にできないコレジャナイ感を感じざるを得ないとしか言いようがありません!」
「ある種のセンスはある……と、思う」
なんということだろうか。
各々の口から出たのは、絶賛とは程遠い感想ばかりではないか。
唯一、言語を発しないピンクボールもその見た目にキョトンとするばかり。
似たような存在と相まみえてきたカレも、ここまで
一方、好き勝手なことを口にする失礼なヤツらに対して当の製作者はというと――
『………………見た目は関係ないわ』
と、長い間を置いてから言葉を返した。
本人的には澄ましているつもりなのだろうが、己の美的センスに共感を得られなかったことに気落ちしているのは明らかである。
そんな彼女を哀れだと感じ取ったのか、あるいは不満げな彼女が自ら操作したのか。
微動だにしなかった”アヴァンギャルド君”が、急に唸り声のような駆動音を鳴り響かせては――
――ぼ~っとしていたカービィに向かって、猛突進を仕掛けた!
「か、カービィ、あぶないっ!!」
その光景を目にした瞬間、咄嗟に叫ぶモモイ。
一方、不意打ちとも云える相手の攻撃に面食らいつつも、狙われた本人はその場から跳びはねるように側転することで直撃を免れる。
ひとまず初撃を回避することに成功したカービィ。
しかし周囲がそのことに安堵する間もなく、方向転換したアヴァンギャルド君は再びピンクボールへと迫る。
「あ、あのロボット……カービィばかり狙ってる……!?」
「……たぶん、というか明らかにそうだと思う」
その執拗とも云える行動から、ある予感を抱いたユズの呟きに、ヒビキが頷いては同意を示す。
実際、鉄の巨人は彼女達に目もくれずぬいぐるみサイズの異星人だけを標的にしている状況である。
「リオ会長も気付いているのだろう。この中で誰を一番警戒すべきなのかを」
「だ、だったら、早く助けに行かないと……!」
険しい表情を浮かべたウタハの言葉を耳にしたモモイが、慌てた様子で提言する。
今はまだ敵の猛攻を躱し続けているカービィだが、自身と比べて10倍以上の大きさを持つ相手は流石に吸い込めず、そもそも吸い込む暇さえ得られない状況。このままでは体力だけ悪戯に消耗していくことは、目に見えていた。
しかし、援護に向かおうとする彼女達の行く手を阻むかの如く、
「だ、だけど助けに行きたくても……っ!」
「こ、この数に囲まれている以上、どうしたって救援に向かえません!」
そう口にしたミドリとコトリが、辺りを見渡しては焦燥感を募らせる。
そんな2人を初めとする少女達の目に映っていたのは、いつの間にか彼女達の周囲を取り囲んでいた、多数のAMASだった。
結果的にカービィと分断されてしまった、モモイ達。
仲間の援護に向かうどころか自身達が追い詰められてしまった状況下で、ホログラムとして映し出されていたリオが口を開く。
『これでそちらの最大戦力は無力化したも同然。”先生”の指揮もない以上、貴女たちだけではその包囲を突破することは不可能でしょうから』
「……御大層な重火器を使わず、体当たりばかり繰り返してるのもカレへの対策というワケか」
勝ち誇るわけでもなく事実を突きつける彼女へ、ウタハは浮かんだ推測を問いかける。
現に彼女の言葉通り、”アヴァンギャルド君”は手に持つガトリング砲やバズーカ砲などの武器を用いらず、目標に向かって突進ばかりを繰り返していた。
その指摘に対して、『その通り』とリオは頷く。
『アレの能力が発揮される切っ掛けは、
まるで相手を知り尽くしているような言葉を口にする彼女に対し、一同は息を呑む。
例え未知の能力を持つ存在が相手であろうとも、それ相応の対策と準備を整えていたその周到さに。
『”先生”がC&Cの方に付いたのは少し想定外だったけれど、私の計画に狂いはない。貴方たちさえ無力化できれば事は足りるのだから』
「じゃ、じゃあ全部、会長の手のひらの上だったってこと!?」
「最初から仕組まれてた罠だったんだ……」
資材運搬に使用した路線を封鎖しないまま残していたのも、侵入口があると思い込ませるため。
飛鳥馬トキを引き付ける陽動班とアリスの救出を目指す潜入班に分かれることさえも、リオの思惑通り。
意図せず誘導されていた事実に、モモイとミドリを初めとする面々は戦慄する他なかった。
そして、”これ以上話すこともない”という意味合いも兼ねてか、
『――――さあ、終わりにしましょう』
と、口にしたリオの一言に連動するかのように、備え付けられた機銃を構えるAMAS。
囲まれている以上逃げ場などあるわけがなく、数十を超えるこの数から一斉射撃されれば一溜りもないことは想像に難くない。
次の瞬間には銃撃が行われてもおかしくない状況に、冷や汗を流す一同。
そんな緊迫した中、直径7cm程のボールの様なモノを上着のポケットの中で握りしめていたモモイが、
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
15-4
『――――……以上が、屋外実験場の監視カメラが捉えていた一部始終だ』
再生された映像が終わるのと同時に告げられた、ウタハの一言。
それに対し返事をする余裕もなかったのか、モモイを初めとしたゲーム開発部の3人と”先生”は呆然とした表情を浮かべたまま、画面から目を離すことができなかった。
事の始まりは、奪還作戦の打合せが終わった時のこと。
各々が準備に取り掛かろうとする中、エンジニア部――というよりウタハが『少し話したいことがある』と、4人に呼び掛けたのが切っ掛けであった。
いつになく真剣な様子の彼女に少し戸惑いつつ、断る理由もなかった彼女達は承諾。
なお、打合せが終わったと同時に腹の虫を盛大に鳴らしたピンクボールは、腹ペコな様子を見兼ねたネル達に連れられ食堂に向かった模様。
それからエンジニア部の部室まで連れてこられた4人は、ある映像に目を通すこととなる。
――ネルと対峙したカレが
『い、今の映像……ホンモノなの?』
『あんな姿、今まで見たことがないけど……』
あまりにも思い掛けない内容に半信半疑な様子のモモイとミドリが、各々正直な感想を述べる。
一方、2人の怪訝な反応を目にしたウタハが『やはりか』と納得する素振りを見せた。
『アリスも憶えていないとすれば、予想通りこの事実を知っていたのは私たちとC&Cの4人……』
『それからリオ会長とみて、間違いないでしょう!』
考え込んだ様子で呟く彼女の言葉について、得意げに補足を付け加えるコトリ。
その時、ある人物の名が出てきたことに一瞬目を見開いたユズが、おずおずと疑問を呈した。
『か、会長も知っているんですか……?』
『まあ、当然C&Cから報告されてるだろうし……そもそも私たちに口止めを命じた張本人、だから』
彼女の疑問に頷きつつ、ヒビキが事情を交えながら理由を答える。
すると、話の中にあった口止めという部分が気になった”先生”が”どういうこと?”と、詳しい説明を求めた。
エンジニア部曰く、この出来事が起きた翌日の朝。
朝一番、戦闘でもあったかのような屋外実験場の様子に唖然としていたウタハ達の元に、事情聴取のために訪れたC&Cのネル達。それから彼女達からの話を通じて、ここで何が起きたのかを3人はおおよそ把握した模様。
その、1時間ほど後のことである。
ミレニアム生徒会長であるリオからこの事について、ゲーム開発部も含めた第三者に口外しないように指示が送られてきたのは。
いきなりの指示に面食らいつつ、ミレニアムタワー襲撃の1件や、行き過ぎた開発意欲が齎した問題行為を持ち出されては渋々承諾せざるを得なかったウタハ達。
それからしばらくして、敷地内を荒らしてしまった件についてユズが訪れたのだったとか。
『何のためだったんだろう……』
”たぶん、リオ自身もどう対応すべきか、決めあぐねていたからじゃないかな”
情報規制を命じたリオの対応について首を傾げるミドリに答える形で、今まで見てきたリオの人物像を考慮した上で”先生”が推測を述べる。秘密主義者であり物事を慎重かつ万全な状態で進めようとする彼女だからこそ、不確定要素が多いうちは情報を広めないことを優先したのではないか、と。
ともあれ、各々の反応から事情を理解してくれたと判断したウタハが『本題に移ろう』と、周囲を一瞥しながら話を切り出す。
『状況的にあの能力を発揮したのは、
『カラクリ、って?』
得られた事実から考察を述べるウタハに、首を傾げながら尋ねるモモイ。
その疑問に対して、あくまでも仮定である、ということを伝えてから彼女は語り続ける。
『カレは
驚異的な火力を生む火薬を飲み込んだからこそ、爆発する能力を得られたのではないか――と、彼女は告げる。付き合いの長いモモイ達が今まで目撃していなかったのは、そうではない時が偶々重なった結果だろうと、補足を付け加えながら。
とはいえ、今の段階では状況から推察した仮説に過ぎず。
それを証明する手段は、今のところない。
その事を敢えて強調したウタハは、徐に近くのテーブルへと歩み寄り――卓上に置かれていた筆箱ぐらいの大きさのケースをゆっくりと手に取った。
『そこで、私たちが秘密裏に製作していたのが――――』
その時の事を思い返していたモモイが、ポケットの中で握りしめていたシロモノ。
それこそ、あの時ウタハが見せてくれた
追い詰められた自分達にとって、最後の希望。
計算づくされたリオの完璧とも云える計画を狂わせられるかもしれない、唯一の手段。
しかし、コレの説明後に告げられたある一言が、彼女に迷いを生じさせていた。
――
何も起こらないまま終わる分には、まだ良い。
けれども、万が一にもカレを傷つけてしまう結果で終わってしまったら?
そんなイヤな想像が彼女の脳裏に過っては、立て続けに
自分を庇ったカレがピクリとも動かなくなった、彼女にとって
(――…………だけどっ)
カレの身を案じて使わないのも、また選択の1つ。
しかし、その結果かけがえのない友人を救えなかったらここまで来た意味がない。
そして、その選択を一生後悔するだろうという確信が、彼女にはあった。
ならば使える手段は出し惜しみせず、すべて使う。
愚直と嘲られようとも、思い描いた輝かしい明日を夢見て、今はただ前へ進む。
それが、才羽モモイという人間の在り方だった。
「…………カービィっ!」
圧し掛かる恐怖や不安を跳ねのけ、声を張り上げてその名を呼ぶモモイ。
その呼び掛けに気が付いたカービィは、すぐさま彼女の方へと振り返る。
同時に、ポケットの中で握り締めていたボールを取り出し――
「――――
大きく振りかぶって、投げた!
がむしゃらに投げたモノは放物線の軌道を描き、彼女の唐突な行動に驚く面々や包囲していたAMASの頭上を飛び越えてカレの方へと飛んでいく。
ソレを視界に捉えるや否や、狙いを定め口を大きく開くカービィ。
そして指示通り”すいこみ”を行い、飛んできたボールを驚異的な吸引力により引き寄せる。
その時、先程までちょこまか動き回っていたピンクボールが動けない状態とみたのか、”アヴァンギャルド君”は標的目掛けて突進。現に、今のカービィはすぐに動ける状態ではないことは紛れもない事実。
巨大な鉄の塊が恐るべき速さで迫りくる、危機的な状況。
にも拘らず、怖気づく様子もなく吸い込み続けたカレが、遂に飛来してきたボールを口の中に収め、
――――直後、鋼鉄の巨体から放たれた突進を受け、大きく吹き飛ばされてしまう。
それを目にしたモモイ達が思わず悲鳴を上げる中、吹き飛ばされたカービィは建物の外壁に叩きつけられる――と思いきや勢い余って大きな風穴を開け、いつぞやの時のように崩れた瓦礫に埋もれてしまう羽目に。
そのまま瓦礫に埋もれたカレは姿を見せないまま、沈黙。
唯々、痛々しいほどの静けさだけが流れていく。
その光景に、思い出したくもない記憶が甦ったゲーム開発部の3人がサッと青褪める。
あの時の絶望が、再び彼女達の心に染みわたっていくかのように。
そんな彼女達の反応を傍目に『これで終わりね』と、冷たく言い放ったリオが言葉を紡ぐ。
『既に貴方たちの計画は頓挫したも――』
同然、と言い切ろうとした――次の瞬間だった。
思わぬ事態を目にしたせいか、二の句が継げなかったリオ。
そして、呆然自失となっていたモモイ達も、目を疑う光景を目の当たりにする。
目にしたのは、
轟々と燃え上がっては闇夜を照らす、橙色の炎。
その発生源は、カービィが埋もれているであろう瓦礫の山からであった。
突如として起こった異様な現象に理解が追いつかず、言葉を失う一同。
しかしその光景にある予感を抱いたモモイは、微かな希望を見出していた。
――カレは
ウタハの言葉が脳裏に過った彼女がさきほど投げたのは、表面に
内部に
ならば、ソレを飲み込んだカレが得られる能力は――――
――そんな彼女の期待に応えるかのように。
――
その中から姿を見せたのは、間違いなく
けれども、ここにいる彼女達が今まで
宝石が付いた冠の様なバンドを被っているのもそうだが、特に目を見張るべきはその上。
猛々しく燃え上がりながら頭部を覆う
これが、カービィのもう1つの能力。
飲み込んだモノの性質を模倣し、一時的に自分自身の能力にする――”コピー能力”。
そうして
コイツを倒さなければ先に進めないという事は今までの経験上、重々理解している模様。
――――なら、いつもの様に蹴散らして進むのみ。
そう意気込んだカレのやる気に呼応するかのように、頭の炎はより激しく揺らめくのであった。
【 つ づ く 】
●タメになる☆TIPS集
【2徹ぐらいならいつものこと】
→3徹もイケるらしい。スゴイぞ”先生”!
寝ろ
【道を邪魔する有象無象】
→やはり暴力……!! 暴力は全てを解決する……!!
〖アバンギャルド君】
→なんでコイツアリスちゃんより先にねんどろ化してんの???
【タンクアセン】
→タンクの癖にキック連打でずっと滞空すんのやめろWLRBでチクチクすんのやめろコラミサと一緒に突っ込んでくんのやめろ天使砲パなすのホントにやめろ一万近くAPが蒸発したのは流石に笑う
【吸い込んで】
→カービィ、スイコミヨー
【コピー能力】
→ちゃんとした形で出すのに1年半かかったSSがあるってマジすかwwwwww
【
→最初に開発された能力だし、初めてみんなの前でお披露目するならこの能力かなーとかそんな理由で抜擢。
前半の山場。