Spring Sky StarS! 作:笹ピー
16-1
『――――つまり、物質を素粒子に近いレベルになるまで分解を繰り返し、生成されたエネルギーをこの球型容器に蓄えることによって疑似的に分解元とほぼ同一な性質を維持できるのではないか、と考えた末に開発されたのがこの”物質超圧縮
――と、締め括りの言葉を最後に。
ウタハが示したケースの中に入っていたボールを1つ取り出しては、水を得た魚の如く活き活きと語り始めたコトリの数十分にも及ぶ説明に、区切りがつく。
要はいつもの勢いで作ってしまった発明品の1つ、ということなのだが。
そんな中、ほぼノンストップで語り続けた彼女が齎した膨大な情報量に正直理解が追いついていなかったモモイが、なんとか頭を捻りながらも尋ねる。
『え、ええっと、つまり物質とかをコンパクトにして持ち運べるようにしたのがそのボールで……』
『ソレを使えばカービィは変身できる、かもしれない……ってことです、か?』
必死に要点を纏めて理解しようとする部員を見兼ねてか、”B・B弾”の用途を端的に問うユズ。
それに対し『その通りです!』と、話を聞いてもらった上に理解してくれたことへ喜々とした感情を覗かせるコトリが、大きく頷いた。
ともかく、この野球ボールサイズの発明品でカービィが変身できる。
それを理解したゲーム開発部の3人は、興味津々といった様子でそれを眺めていた。
一方、説明が終わってから黙り込んでいた”先生”が、疑問に感じていたことを口にする。
”でもコレ……まだ
敢えて、実証はしていないことを確かめる様な言い回しで尋ねる”先生”。
それに対し難しい顔を浮かべたウタハが、『ああ』と頷くと、続けて言葉を紡ぐ。
『今の時点において安全性や実証性については……正直、保証はできない。さっきも言ったように変身するメカニズムについて推測の域を出ていないのが現状なんだ』
安全面についてはおそらく問題ないだろう、と彼女は今までの様子を思い返しながら、告げる。
実際、危険な火薬を吸い込んだピンクボールは、その後もいつも通りに過ごしていたのだから。
一方で、確信が持てないこともまた事実。
爆薬だけに順応する性質なのかもしれないし、自分達が知り得ない何か特別な条件が必要なのかもしれないし、安全であると断言できないのが正直な話。
しかし文献も存在しない以上、偶然にでも頼らない限りこれ以上の情報を得ることは不可能に近い。それこそ、臨床実験でもしなければ確証は得られないまま。
とはいえ、恐らく生物に該当するであろう友人に対し、こんなモノを飲ませることに流石に気が引けたのか、別の方法がないか今日まで模索していた、と彼女は語る。
『――だから、コレを使うのは
可能性を秘めていると同時に、危険性も孕んでいる、と。
そう言外に伝えるウタハの意図を悟ったモモイ達は事の重大さを理解したのか、緊張した面持ちで固唾を呑む。
コレがどのような結果を生みだすかは、未知なる可能性を秘めたカービィ次第。
そして、カレに予測できない危険を押し付けてしまうことも確かな事実。
それを理解した彼女達は各々複雑な心境を抱きながら、改めて”B・B弾”へと視線を向けるのであった。
そういった経緯を経て、今。
彼女達の目の前で、
(――――やはり、カレは飲み込んだモノの性質を取り込む能力を有していた……!)
炎の能力を宿したカレの姿を視界に捉えながら、表にこそ出さないが歓喜に打ち震えるウタハ。
想定していた通りの結果とはいえ、改めてカービィという存在が秘める可能性を目の当たりにした彼女は、無垢な子供のように瞳を爛々と輝かせていた。
そしてソレは、彼女だけに限らず。
カレが変身する切っ掛けを与えた少女も同じだったのか、
「ほ、ホントに変身した……!!」
と、冷めやらぬ様子でカレの姿を目にしたモモイが、この場にいる全員の気持ちを代弁する。
先程まで抱えていた不安と恐怖の反動か、希望と喜びに満ち溢れた感情を滲ませながら。
そんな彼女達に目も暮れず動いたのは、当人達を取り囲んでいたAMASの群れ。
高度な思考回路による判断かこの場にはいない主の指示によるものかは定かではないが、ともかく要警戒対象に向けて一斉に銃撃を放つ――
それより先に動いたのは、四方八方から銃口を向けられた要警戒対象。
一瞬の内に頬を膨らませたと思いきや、次の瞬間には凄まじい熱量を誇る火炎を、口から放射した!
勢いよく放たれた炎に、為すすべなく呑まれた機体は次々に爆散。
辛くも免れた機体がやぶれかぶれに銃撃を放つものの、噴流された火の勢いに敵わず銃弾もろとも猛火の餌食に。
気付けば、先程まで睨みを利かせるように少女達を包囲していた敵機は、いまや見る影もなく。
驚愕を隠せない彼女達の視界には、黒煙を燻らせながら焼き焦げた姿を晒す鉄屑の姿が映っていた。
「あの一瞬で……!?」
「お、恐らくですが一般に流通している火炎放射器の火力を遥かに上回っているかと……!」
その光景に思わず目を見張ったヒビキとコトリが、群れを一蹴した炎の威力に息を呑む。
秘密裏に製造されたドローンの耐熱性能がどの位なのか知る由のない2人だが、そう思わせるには十分過ぎるほどの光景だったようだ。
無論、今のが
ともあれ、一同を囲っていたAMASを一掃したカービィ。
ひとまず安否を気遣ってか、仲間達の元へ駆けつけようとし――
『――――武装の使用を許可します。対象を速やかに無力化しなさい、”アヴァンギャルド君”』
ソレを拒むかの如く、この場には存在しない人物の口から告げられる端的な指示。
声の出処は、その指示を向けた相手でもある”アヴァンギャルド君”から。
それから間を置かずして、巨大な体躯に見合ったアサルトライフルとガトリング砲を2本の左腕それぞれに構えるや否や、銃撃を開始。一方のカービィは動じることなく、ボールの様に身体を弾ませた側転で回避する。
しかし散々繰り返された行動を読まれていたのか、右腕のバズーカ砲から放たれたロケット弾が回避先へと向かう。
流石のカレも、不意を突く偏差射撃に対応しきれない――なんてことは、なく。
予測していたかのようにすぐさま口から炎を噴き、迫りくるロケット弾を迎え撃つ。
間を置かずしてロケット弾と火炎放射が、衝突。
結果、1,000℃近くの火に炙られた弾は、目標に届く前に爆散した。
一方、そのまま突き進む火炎に対して、”アヴァンギャルド君”はもう片方の右腕に構えていた、黄金長方形を模した巨大な盾で身を守る。リオとしては幸いなことに、盾を突き破るほどの威力は無かったのか、被弾は免れた模様。
その隙を歴戦を潜り抜けてきた若者は、見逃さない。
いつの間にか巨人の背面に回り込んでいたことに、周囲が気付いた時にはもう、
――――激しい炎の噴流が、カレの口から放たれた直後だった。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
16-2
それが、映像越しで火を噴く異種生命体の姿を目撃したリオが抱いた、率直な感想であった。
(仮にあの容器から能力を得たとしても、明らかに容量以上の炎を放出している……)
彼女の見立てでも、飲み込んだボールの大きさは直径7㎝ほど。
当然、放出できる火はソレに見合った容量分に限られる、と考えるのは至極当然のことである。
しかし予想に反して、件のピンクボールが吐いた炎の量はソレを遥かに上回る。
体内に焼却炉でも内臓しているのではないか、と馬鹿げた空想を抱いてしまうほどには。
――アレは、本当に
幾ら異なる惑星から来た存在だとしても、物理法則を無視して無から有を生みだす、などと云う奇跡染みた所業ができるものなのか。自分達の常識が通じないと言われればソコまでだが、はたしてそれだけの理由で納得していいものなのだろうか。
ナニか、あの生物に対して
そんな疑惑が、次々と脳裏を過り――
(……今は、そのことを考えている場合ではないわね)
雑念を振り払うかのように、小さく頭を横に振るリオ。
今の彼女にとって重要視すべきことは、その生物がこれ以上ない脅威となった事と、カレに対する対策の殆どが無意味と化した事実。
それを理解してなお、彼女の表情に焦りが浮かぶことはない。
その理由は、彼女が目にしていた映像の中に映し出されていた。
「――――き、
猛火に吞み込まれた鉄の巨人が火の中から姿を現したのと同時に、驚愕に目を見開くミドリ。
それは、彼女と同じ光景を目にした少女達も同じ反応であった。
彼女達が目にしたのは、AMASを一蹴した炎を物ともせずに、悠然と佇む鉄の巨人。
圧倒的な防御力を示すかのように、鋼鉄のボディには焦げ跡さえも付いておらず。
そして、お返しだ、と云わんばかりに3種の重火器を乱射。
とめどなく放たれた銃弾とロケット弾による弾幕が、無慈悲にカービィを襲う。
まともに当たればタダでは済まないであろう猛攻を、目の当たりにしたモモイ達が気圧される中、狙われた本人は軽やかな動きで弾幕を躱し続け――ふたたび、敵の背後へ。
それから先程の繰り返しのように火を吐いて攻撃するが、やはり効いている様子は無く。
その間に相手を補足した”アヴァンギャルド君”が、更に激しさを増した攻撃をピンクボールへと向ける。
「外見からは想像つかない火力してるね……」
そんな暴れ狂うような相手の猛攻を目にしたヒビキが、冷や汗を搔きながら呟く。
実際、相手の猛攻に巻き込まれ呆気なく半壊してしまった複数のビルの存在が、火力の高さを物語っている。
「見た目はすっごくダサいのにめっちゃ強いよ!? どうしよう!?」
「で、でも、カービィの攻撃が効いてないのに、私たちの武器じゃどうしようも……!」
さり気無く製作者の感性をディスりつつ、俄かに焦燥感を顕わにするモモイ。
その矛先が彼女にとって大事なトモダチに向けられている以上、気が気ではないのも仕方のないことではある。
しかし、彼女と同じく焦りを募らせるミドリの言葉通り、彼女達の手持ちの武器では火力不足。
装甲を貫くどころか、傷跡さえ付けられないことは、火を見るよりも明らかであった。
カレが頑張っているというのに、自分達では力になれない。
覆しようのない現実を突きつけられたモモイ達は、悔しさのあまり表情を歪ませ――
「――……わたしたちでもやれることは、ある、と思う」
それに待ったを掛けたのは、今まで沈黙していた花岡ユズの、一言。
小さい声量でありながらも、芯が通った声を耳にした一同は、彼女の方へと視線を向ける。
「……何か、考えがあるのかい?」
予想だにしていなかった言葉に少し驚いた様子で問いかけるウタハに対し、「上手くいくかはわからない、ですけど」と少し逡巡しながらも応じたユズは、今までの状況を鑑みて自身が思い付いた考えを述べる。
「あのロボット、態々カービィを
「め、目で追ってる、って……」
「それは、当然のことだと思うけど……」
言葉の意図が汲み取れず、困惑した表情を浮かべるモモイとミドリ。
普通であれば、相手を目で追うのは当たり前のことだと認識している2人がそのような反応を示すのも、ある意味自然なことである。
一方、工学分野に長けている3人は今の指摘で何か気付いたのか、ハッとした表情を浮かべてはある方へと視線を移し――ちょこまかと動き回るピンクボールを、顔面に備え付けられていたアイカメラで追う”アヴァンギャルド君”の姿が視界に入ってきた。
「……あの会長が作ったのなら、各種のセンサーを設けているハズ」
「ですがソレらを活用している様子は見受けられません! であれば考えられる可能性としては――」
「――――
後輩2人が呟いた言葉を引き継ぐ形でウタハが口にした推察に、「あっ」と声を漏らした姉妹は同時に理解する。相手は目で追っていたのではなく、目で追わざるを得なかったということに。
謎に満ち溢れた存在であるカービィについて、彼女達が知る数少ない特徴のひとつ。
それは、エンジニア部が製作したセンサーでさえも認識されない、という特異性。
そしてそれは、ミレニアム生徒会長であるリオの傑作であっても例に漏れず。
搭載されていた高性能の検知器の類いは用をなさず、原始的とも云える目視に頼る他に相手を補足する手段はなかった。
「けど、それがわかったとしても、私たちの攻撃じゃ……」
「うん。多分……というより、まちがいなく通用しないと思う」
敵の行動の意図が分かったとして攻撃が通らない以上、状況を打破するには至らず。
そう言外に告げたミドリの指摘について、意外なことにユズはあっさりと肯定を返す。
そんな予想外の返答に戸惑う一同に対し、だけど、と当人は言葉を紡ぐ。
「――――通用はしなくても、
避ける、避ける、避ける。
銃弾を、ロケット弾を、突進を――ただひたすら躱し続ける。
傍から見れば怒涛とも言える波状攻撃ではあるものの、カレからすれば特段厳しいモノではない。持ち前の直感と、培ってきた経験が、決して避け切れぬほどではない、と身体に教えてくれていた。
とはいえ、現状攻めあぐねているのも事実。
先程までは隙を突いて後ろに回り込むことができていたが、徐々にこちらの動きを学習してきたのか、今ではそうもいかず接近さえも許してくれない状況。
このまま時間を掛け続ければ、トモダチの救出に間に合わなくなるかもしれない。
そう考えたカービィは回避を止め、弾幕を掻い潜ってでも接近し、敵の
必然的に被弾する可能性は高くなるが、似たような状況を経験をしてきた自負からか、なんとかなるさの精神で実行に移すことに。即断即決はカレの持ち味である。
そうして、弾幕の中を無理やり突っ切ろうと――――
――――その直前、椅子の体を成していない特徴的な
「いやはや、本当にキミは勇敢というか、怖いもの知らずというか!」
「ですがその判断は少しばかり待っていただけますでしょうか!」
何時ぞやの時を思い出させるように、盾となった”雷ちゃん”の登場に目をまあるくするカービィ。その際、傍から見れば無茶としか思えない行動をしようとした場面を目撃したウタハとコトリが、冷や汗を掻きながらもカレの元へ駆けつけた。
そんな予想していなかった援護に、思わずカービィが目をパチクリさせる――その、次の瞬間。
遥か頭上を越えながら飛来した榴弾が、”アヴァンギャルド君”の
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
16-3
「一体、何のつもり……?」
送られてきた映像を目にしていたリオが、思わず声を漏らす。
冷静沈着な彼女にしては珍しく、戸惑いの色を覗かせながら。
先程映し出されたのは、数発の榴弾が”アヴァンギャルド君”のアイカメラに迫りくる映像。
そして次の瞬間には、榴弾の爆発により生じた爆煙で、一時的に視界が妨げられてしまう。
しかしその程度では破壊するまで至らず、圧倒的に火力不足。
カメラ部分なら脆い、と踏んだのだろうが、それさえも考慮して作り上げたのがあのロボットであり、リオからすれば見通しが甘いとしか言う他なかった。
(やぶれかぶれの行動……と、考えるのは些か楽観的ね)
補充がままならない敵地に侵入する以上、弾薬には限りがある。
それを理解してなお、考えなしに減らすような真似をするはずがない、と彼女は睨んだ。
そうして思考を巡らせていた一方、”アヴァンギャルド君”は爆煙から免れるためその場から移動し、一先ず視界を確保する――と思いきや、またしても顔面に榴弾が直撃し、再び
その執拗とも思える攻撃を目にしたリオが、ある可能性に思い至る。
(……まさか、アレを離脱させるための時間稼ぎ?)
視界を妨げる行為も、センサーの類いに反応しないカービィを逃がす為であり、そのままタワーへ向かわせてアリスの救出を図る作戦、と考えれば辻褄が合うと、彼女は推測を重ねた。
事実、カレの攻撃は”アヴァンギャルド君”には通用しておらず。
であれば無理な戦闘は避け、当初の目的を最優先させようとするのは、ある意味自然な判断。
そう結論付けたリオが、すぐさま”アヴァンギャルド君”へと指示を送る。
「直ちにタワーの方へと向かいなさい。すでにあの異種生命体はその場には――」
いない、と言い掛けた彼女の口が、不意に止まる。
突如として画面に映し出された、警告を目にしてしまったがゆえに。
――――”
つい先刻ほどユズが提案した作戦は、至ってシンプル。
その内容は、アイカメラ部分に榴弾や銃弾を直撃させて敵の視界を妨げる、というものだった。
センサーが使えない相手がカービィを補足する手段は、目視のみ。
ならば、それさえ遮ってしまえば、一瞬でもカレを見失う筈。
そう語られた説明について、一応の理解を示す一同。
しかしカービィの攻撃も通用していない以上、悪戯に弾数と時間を費やすだけなのではないかという懸念の声も挙がった。
それに対し、『わたしは、そう思わない』とユズは異を唱える。
普段の彼女からすれば珍しく、語気を強めながら。
『きっと、わたしたちが気付けていない何かを、カービィは気付けているんだと思う』
理屈を超えた直感と優れた洞察力を持つカレだからこそ、何か考えがあるはずだと。
だから、それを信じたい――今も身を挺して戦っているカレの助けになりたい、と彼女はハッキリと告げる。
――その瞳には、今まで自分達を支えて続けてくれたカレへの強い想いが、込められていた。
そんな、決意表明とも云える発言を耳にした少女達は――
『……うん、ならそれでいこうっ!』
『それで、少しでもカービィの助けになるなら……!』
と、躍起になる姉妹を筆頭に、一同は賛同の意を示す。
それから各々の役割を決めた後、彼女達はすぐさま行動に移すのであった。
その後、迫撃砲を扱うヒビキと、グレネードランチャーを所持するユズが目くらましを担当。
そして、ウタハとコトリから説明を受けたカービィは作戦通り、相手が見失っている間に背後に回り込み、猛火を浴びせるのであった。
それを、次弾を装填していたユズが目撃すると同時に、彼女は確信を抱く。
常にカレの一挙一動を観察していたからこそ思い浮かんだ、ある予感に。
(やっぱり、
最初こそ、反撃されないことを考慮した立ち回りだと考えていた。
しかし先程のように、危険を冒してでも回り込もうとするのであれば、それには別の意味を持つ。
すなわち、
「ユズちゃん、相手がこっちを狙ってるっ!」
「いったん、ここから離れようっ!」
その時、行動を共にしていたミドリが慌てた様子で呼びかけ、急くようにモモイがユズの手を取る。それに驚きつつ、手を引かれるまま彼女は2人と共に駆け出し――少し遅れる形で、先程まで立っていた場所に激しい銃撃が襲った。
少しでも出遅れていたら無事では済まなかったことに冷や汗を掻きながらも、
――それを阻むかの如く、炎の噴流が”アヴァンギャルド君”の背後を襲った。
先程よりも苛烈さを増した攻撃を流石に放置できないと判断したのか、巨人は狙いを変更。
器用にサイドターンを決めて振り返れば、今の攻撃を放ったであろうピンクボールが頭の炎を揺らめかせつつ、毅然とした様子で身構えていた。
それから、”アヴァンギャルド君”の猛攻が始まる――
そう予想していたユズ達は、息を呑んで相手の動向を注視した。
――突如として、
ユズが思い浮かべていた予感は、正しい。
この場においてただ1人、カービィだけがあることを見抜いていた。
切っ掛けは、”火ふき攻撃”を背面――具体的に云えば、点検用に備え付けられていたパネルに当てた時。その刹那、
それが如何なる理由でそうなっていたのかを、カービィは知る由もない。
ちょうど機体内部の冷却を担う
そこが”
作物を荒らし回る白き翼の怪鳥と対峙した時や、密林の奥深くの遺跡で大蛇の像と相対した時のような、一部分にしか有効打が通じない相手。逆にそれさえ分かってしまえば、これまで打倒してきた相手となんら変わりない。
ゆえに、カレは背面への攻撃を繰り返した。
いずれ
今までも、そうやって幾多の困難を乗り越えてきたのだから。
――そうして、仲間の助力もあり、何度も攻撃を続けた結果。
機体の至る所から白煙を燻らせていた鉄の巨人は、油の切れたブリキ人形の様な、ギクシャクとした動きを晒す羽目となるのであった。
思いもよらない光景に、思わず唖然としてしまう一同。
しかし同時に、知らず知らずのうちに抱いていた期待に、彼女達は無意識に胸を高鳴らせる。
そんな中、
『――――迎撃しなさい、”アヴァンギャルド君”ッ!』
次の瞬間、1人の少女の鋭い声がその場に響く。
普段の彼女からは想像できない、焦りの感情を滲ませながら。
それに応じるかの如く、ぎこちない動きでありながらも”アヴァンギャルド君”は3種の重火器を構える。狙いは当然、宙高く跳び上がった未確認生命。
まさかあの状態から動けると思いもよらなかったモモイ達の顔に、焦りの色が浮かぶ。
流石のカレでも、あれだけの銃撃が放たれればホバリングでは躱しきれない――そう考えていた時だった。
――宙に浮かんだカービィが、
――まるで、
その瞬間、カレの姿に目を奪われた少女達は、どこからともなく声を聴いた気がした。
しかし、それが
――――バーニングアタック!!――――
時間を要する必要は、なかった。
火の玉と化したカービィは”アヴァンギャルド君”に目掛け、一直線に突進。
一方、相手を迎え撃つべくして、弾薬すべてを使い切る勢いで弾幕が放たれた。
その圧倒的な物量を前にしたカレは――なんと、軌道を変えず真正面から突破。
飛来してきた銃弾を悉く弾き飛ばし、被弾したロケット弾さえも物ともせず、弾幕の中を突っ切った。
そして、そのまま弾幕を切り抜け、勢いのまま突き進んでいくカービィ。
すると、湧き上がる高揚感を抑えきれなくなったのか、
「—―――いっけぇーっ!! カービィーっ!!」
と、成り行きを見守っていたモモイが、高々と声を上げた。
己が感情のままに、空を駆け抜けるカレへ向けて。
その懸命な声援に応えるべくして、火の玉は夜空を切り裂く勢いで飛ぶ。
片や、今の相手は
そうして防御はおろか、碌に動くことさえできない状態で、炎の突進が顔面に的中。
小さな見た目から想像できない、凄まじい威力を伴った攻撃をまともに受けた巨人は、その身をぐらつかせ、
やがて轟音と振動を発しながら、大地へと倒れ伏すのであった――――
【 つ づ く 】
●タメになる☆TIPS集
【物質超圧縮
→ようは、持ち運べるコピー能力のもと。
デラックスと違って1回きりでござい。
【火ふきこうげき】
→汚物は消毒だ~~‼
SDXの片足だけ上げて吹くのが地味に好き。
【ヒットストップ】
→攻撃あてると、自キャラや相手の動きが一瞬だけ止まるアレ。
良くも悪くも操作に影響する困ったちゃん。
【バーニングアタック】
→両手をバババッと高速で動かしてからエネルギー弾を放つ技ではない
みんなだいすき無敵移動技。
ものっそい悩んだけど、ワザ名だけ喋らせる方針で行きます。
テレパシーみたく、頭の中に響いてるみたいなイメージでよろしくです。