Spring Sky StarS! 作:笹ピー
9-1
光の残滓が完全に霧散した後、先程の喧騒が嘘のように静まり返る一帯。
砲撃による一撃はウタハ達を煙で完全に覆い隠してしまっていた。
手応えはあった――砲撃を撃ち放った本人であるアリスはそう確信している。
しかしウタハ達はその後何の反応も見せず、沈黙を続けている。立ち込める煙の中で気を失っている可能性も考えられるがこちらの隙を伺っている可能性も十分あり得る。
相手の不意を突くことを前提にした作戦である以上、二度目は通じない。
これが最後のチャンスと云っても過言ではない。
結局のところ彼女達ができることは、立ち込める土煙が収まるのを黙って見ていることだけだった。
そんな、各々が緊張を張り詰める中――
「……素晴らしい」
呟きと共に拍手を鳴らし、煙の中から姿を現した一人の少女。
相手の正体がわかるや否や、4人は警戒を露わにする。
それに対し警戒の視線を向けられた少女――白石ウタハは困ったように苦笑いを浮かべ、抵抗の意思がないことを伝えるように両手を上げる。よく見れば彼女の服には所々煤汚れが目立つ。
「警戒しなくてもいい。既に勝敗は決した」
そう言いながら、彼女は視線を横へ向ける。
すると晴れてきた煙から徐々に姿を現したのは、半壊し横倒れになったままピクリと動かない状態の”雷ちゃん”と、その隣でグルグルと目を回しながら同じく倒れたままのコトリ。
少し離れた場所では、やや気落ちした表情を浮かべるヒビキが両手を上げて、お手上げ、と云わんばかりのポーズをしている。
そんな彼女達の状況を把握した4人は互いに見合わせてから、期待に満ちた表情を浮かべたモモイが「じゃ、じゃあ……」と声を震わせながら問いかける。
その言葉にウタハが微笑むと、アリスの方へとまっすぐ視線を向けたまましっかりと頷く。
「認めよう、アリス――今日から”光の剣:スーパーノヴァ”は君のモノだ」
その言葉を耳に入れた瞬間。
4人から今までの疲れを感じさせない程の歓声が、湧き上がるのであった。
「――――というわけで、これで堂々と私たちの部員として認められるってわけ!」
それから光の剣の細かい調整を終えてから、自分達の部室に戻ってきたモモイ達は――”先生”はシャーレの仕事があるからということで途中で別れていた――エンジニア部の訪問から今までの経緯を、部室で留守番をしていたユズに説明をしていた。
ニコニコと笑みを浮かべていたモモイの一言が話の区切りとなったのか、今まで静聴に徹していたユズが目をパチクリさせながら、アリスとカービィの方へ視線を向ける。
「アリスちゃんもそうだけど……カービィも戦えたんだね……」
「うん、私達も最初はびっくりしちゃった」
意外そうに呟くユズの言葉にミドリが共感するようにウンウンと頷く。
ユズは勿論、ミドリ達も実際に目で見るまではこの見た目から戦闘をこなす姿を想像だにしていなかったのだろう。それに加え”すいこんで、はきだす”という戦闘スタイルはキヴォトスでも極めて奇抜であり、間違いなくカレにしかできない”能力”である。
新たにカービィの不可思議な点が増えてしまい考え込むモモイ達だったが、考えても埒が明かないと考えたモモイが「ま、ともかくっ」と、話を切り替える。
「廃部問題も解決したし――今日はパーッと二人の歓迎会も兼ねてお祝いでもしよっか!」
明るい声で提唱するモモイの言葉におおー、と感嘆の声を上げるミドリとユズ。
片や、言葉の意味をよく理解していないアリスとカービィは、キョトンとした表情を浮かべるのみ。
「歓迎会……?」
「あ、えっとね……簡単に言うと……パーティー、かな」
アリスの疑問にユズがわかりやすいように例えてみるが、それでもアリスはピンと来ない様子なのか首を傾げるばかり。
一方、”パーティー”と聞いた途端、目をキラキラと輝かせたカービィは喜びを表すかのようにその場でぴょんぴょんと小さく飛び跳ねる。
その正直な反応に気を良くしたモモイが、フフフと笑みを浮かべては立て続けに告げる。
「どうせならこの近くに最近出来た回転寿司にしよっか! 安くておいしいって噂だし!」
その発言に益々喜んだカービィがニコニコと笑みを浮かべながら嬉しさを表すかのように先程より大きくピョンピョンと飛び跳ねる。
その率直な反応に調子に乗ったモモイがフフンと鼻を鳴らして、続けて口にする。
「しかも今回は私の奢りだァーーーーッ!」
「えっ」
徐々に奇妙なテンションとなっていくモモイの発言に、呆けた声を上げていち早く反応したのは妹のミドリ。それほどまでに彼女にとって今の発言が意外すぎた模様。
「珍しいね、お姉ちゃんがゴハン奢るなんて」
「まっ、たまにはねー。二人のおかげで廃部が免れたわけだしさっ」
得意げな表情を浮かべながら太っ腹なことを言うモモイに対し、”いつもはアイス奢るだけでもブーブー言うのに”と思うミドリだったが、口には出さずに心の中だけに留めておくことにした。この姉は拗ねると面倒なのだ。
とはいえモモイの気持ちもわからなくはない、と共感するミドリ。
部員として入部してくれたアリスは勿論のこと、彼女の武器を入手するため文字通り体を張って貢献してくれたカービィは、ゲーム開発部存続の功労者といっても過言ではない。
そんな2人にモモイは本当に感謝しているのだろう。
なぜなら、ミドリも同じ気持ちなのだから。
それを汲んで、流石に姉ばかりに負担させるのも悪いと思ったミドリは、半分ぐらいは肩代わりしてあげよう、と考え、預金を確認しようとスマホのアプリを立ち上げた――
その時である。
偶然目に映った、未だはじゃいでるカービィを見たミドリに、電流走る――!
昨日、ゲーム機を食べようとした蛮行。
今日、エンジニア部との対決で見せた吸い込み能力。
現在、パーティーや寿司という単語に喜ぶ反応。
脳裏に浮かぶ、今までのカービィの行動。それと同時に咄嗟に彼女はある部分へと視線を向けた。
彼女の視線の先にあるのは、部員の為の”お菓子”が入っている段ボール箱。
――いつもより、明らかに消費が早すぎる……!
普段よりお菓子袋の数が減っていることに気づいたミドリ。
そんな彼女の脳裏にある光景が過る。
それはアリスのゲームプレイを皆で見守っていた時の事。
よくよく思い返してみれば、常にカービィの手にはスナック菓子の袋があったような――――
その事実を踏まえ、ミドリにある推測を立てる。
――もしかしてこの子、めちゃくちゃ食べるのでは?
――そうだった場合、一体食事代はいくら掛かるのか?
「あ、あのお姉ちゃん、やっぱり外食じゃない方が……」
「へーきへーきっ! 1万ぐらいなら余裕だって!」
妹の忠告に全く気にも留めない姉。
それを見たミドリは「あ、これ調子に乗ってるときのヤツだ」と、彼女に何を言っても無駄だということを悟った。
呑気な姉に頭を抱えるミドリ。彼女も5,000円までなら出してもいいと考えていたが、いくら嵩むのかが予想できない故に、下手な事は言えない様子。
そして――――彼女は決断する。
今回は姉自らが器量の大きいところを見せたのだ。
そもそもこの推察に確証はない。
第一、この雰囲気に水差す真似はできない。
――それになによりも。
(来週、欲しかったゲーム出るし)
フッと静かに笑うミドリは、流れるような動作でスマホをポケットに戻した。
預金は見てなかったし見る必要も無かった。
そして、ちょっとでもお姉ちゃんにとって良い結末になりますように――そんなことを白々しく祈りながら。
はしゃぐカービィを持ち上げて楽しそうに笑うモモイを、瞑目するのであった。
――その後、多くを語ることは無い。
外へ出ると聞き挙動不審になるユズを宥めたり、アリスが店を見て道具屋と言ってはしゃぎまわったり――といったことは有れど、特筆するような話ではない。
強いて、述べるとするのであれば――
ミドリの危惧した予感は見度に的中し、
モモイは有り金を全部溶かした人のような表情を浮かべ、
皿のタワーを3つ程積み上げ、満足げな表情を浮かべていたピンクボールがいたとかなんとか。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
9-2
ピンクボールの暴食を目の当たりにしてから、しばらくして。
人としての感情を失ってしまったモモイを引き摺るように連れて帰ったミドリと、解散宣言を聞くや否や部室へと一目散に戻ってしまったユズを見送った後、アリスはカービィを抱き抱えたまま、用意してもらった一室の扉の前に立っていた。
何故、2人に住居が宛がわれたのか――時はエンジニア部へと伺うより前までに遡る。
最初こそ今のユズと同じようにアリスには部室で寝泊まりしてもらおうと考えていたが、その場合2人共同で部室に住むことになる。その際、ユズの心労が増えるのでは――という心配の声がモモイとミドリからあがった。
それに対して当人は”ロッカーがあれば大丈夫”、と気にしていない素振りを見せていたが、今後を考えると互いに落ち着けるパーソナルスペースは必要だろう、ということで話は纏まる。
とはいえ戸籍は偽造――もとい作成できても、流石に住居についてすぐには用意できない。
仕方なくしばらくは部室で暮らしてもらおう――と思いきや、思いがけないところから助け舟が出る。
それはエンジニア部との一戦後、アリスやカービィについて詳しく問い詰められたモモイ達が仕方なく――見つけた場所等はぼかしつつ――事情を大まかに説明した。住居がまだ決まっていないことも含めて。
それを聞いたウタハが、ある提案をアリス達に持ちかける。
『なら、ウチが所有する仮設住居を使うといい。仮眠や休憩の為に備え付けたモノだから必要最低限の生活はできるはずさ』
まさかの提案に目を丸くするモモイ達。
願っても無い話に喜ぶモモイに対し、都合のいい話に戸惑うミドリが『いいんですか?』再確認の意味合いも兼ねて訊き返すと、ウタハが頷いた。
『私たちにとっても、間近であのレールガンのデータが取れるのはありがたい話でね。こちらにとっても有益な取引――というワケさ』
つまり、住処を用意する代わりにデータを取らせて欲しい――と言ったところだった。
とはいえ彼女曰く、データ収集もレールガンの調整も兼ねた試射実験のようなモノ。
なので週に一、二回ぐらいの頻度であるとのこと――もちろん、危険なことはさせない、と補足を付け加えながら。
ともあれ、その説明に納得したミドリが『どうする、アリスちゃん?』と、尋ねるとアリスはこれを承諾。これにより一先ず、住居問題も解決したと言っていいだろう。
そのついでに、カービィは何処で住んでもらおうか――という話になったのだが。
『アリスは、アリスのホームポイントが良いと提言します!』
モモイとミドリの自宅。ユズのいる部室。”先生”の所属するシャーレの施設――等々の候補が上がる中、同行を賛成したときの様に、手を上げたアリスが目を輝かせながら提案する。
それに対し、少し前まではゲームすら知らなかったアリスに面倒見切れるのか、という懸念から少々不安げな様子を見せるモモイとミドリ。一方で、”カービィはどうかな”と、優しく問いかけた”先生”は本人の自由意志に委ねることにした。
その言葉にカービィは特段悩むこと無く、アリスの方へと向き合うと笑顔を浮かべながら大きく頷く。するとアリスは嬉しそうに頬を緩ませ『パンパカパーン! カービィが住民になりました!』と、弾んだ声で告げた。
こうなっては反対するのは野暮だろう――と考えた”先生”は勿論のこと、モモイとミドリは肩を竦めながらも承諾。一先ず様子を見て、その時また決めれば良い、という結論に至ったのだった。
そうした経緯を得て今に至り、早速玄関の扉を開け室内に入るアリス。
そのまま短い廊下を通り抜けリビングへと足を運ばせたアリスはカービィと共にリビング内を物珍しそうにキョロキョロと見渡し――部屋の鍵を受け取る際、何故か意気揚々に表情を輝かせていたコトリの説明を思い返していた。
『部屋の間取りは1LDKのLDK11帖と洋室6.7帖にその他洗面・脱衣所と浴室とトイレを兼ね備えています! 加えて床材は耐久性や保温・保湿性を考慮して複合フローリングを採用し更にテレビは勿論、エアコン、洗濯機、乾燥機、冷蔵庫は完備のうえに我がエンジニア部の手掛けた高性能ハイテク家電気を採用し――』
等々、頼んでもいないことまで説明するコトリに、終始首を傾げるばかりのアリス。
その隣でモモイが『めっちゃ充実してるじゃん! もう一部屋欲しい!』 と期待に満ちた表情で詰め寄ったり――といった出来事こそあったが、アリスとしては十分に生活できる設備が備わっている程度の認識で落ち着いた。
ちなみにモモイの要望は断られた。
アリスが見る限り、リビングには少し大きめのダイニングテーブル一式。
やや大きめのソファーと収納スペースを兼ね備えたローボートの上に32インチ型のプラズマテレビ。
それから、隣へ繋がっている洋室には少し広めのローテーブルとシングルベットが確認できた。
1人暮らしならば十分すぎる空間。モモイが羨ましがるのも頷ける程の設備。
しかし、アリスにとって一番大事なものが欠けていた。
「……ゲームがありません」
せっかくの環境だというのに、ゲームができないことに落胆するアリス。
当然のことながら昨日その存在を知った彼女はソレを保有していない。
部室にあるゲーム機はモモイ達の私物である以上持ってくることはできない。エンジニア部もこれ以上の支給は難しいと述べていたので、用意してもらうことはできないだろう。
仕方ないとはいえ、やはりゲームができないのは彼女にとって由々しき事態である。
早急に対処しなければ、と1人決意を固めていた――その一方、彼女の腕から抜け出していたカービィは、興味本位からか部屋のあっちこっちをポヨポヨうろついていた。
すると何か見つけたのか、明かりが点いていない洋室の方へと向かっていくと、ベットの上へと跳び上がり身を乗り出すように窓のケーシングに手を掛ける。
そのまま窓の外を眺めていたカービィは、唐突にアリスの方へと体を向くと急かす様に両手いっぱいに振りながら、彼女を呼んだ。
その行動に気付いた彼女は、首を傾げながらも近づいていく。
そして、並ぶように窓の傍に近づいてきたアリスにカービィは再び窓の外――夜空の方へ顔を向ける。
それにつられるように彼女も空の方へ視線を向け――――思わず目を見開く。
瞳に映るは、夜空に浮かぶ満天の星々。
まるで星が瞬くかのように、キラキラと煌きを魅せる。
幻想的な光景に釘付けになるかのように、空へと目を向けたまま言葉を失うアリス。
隣のカービィも満天の星空を楽しそうに見上げている。
アリスからしてみればこの光景は、知識として知っている光景である。
遠く、遠くの星々が輝きを放ち、太陽が沈み、暗闇の中ようやく観える現象。
何も珍しいことでなく、自然の摂理により生み出される一種の現象。ありふれた事象。
――――それなのに。
「――――……綺麗」
思考回路を廻すことなく出てきた言葉に、彼女は疑問を感じることは無かった。
ただ、この光景を表すのに相応しい言葉が口に出てきた。
それだけだった。
それからしばらく、並んで星空を眺めていた2人。
すると突然、アリスが「カービィ」と静かな声で呼びかけた。
満面の星空に夢中になっていたカレはその声に反応し、彼女の方へと体を向ける。
そんなカレの目に、珍しく沈んだ表情を浮かべる彼女の姿が入ってきた。
「……アリスは嘘をついてしまいました。あの時”必ず守る”と言ったのに……」
何処となく落ち込んだ様子のアリスから零れた呟きに、キョトンと体を傾げるカービィ。
”あの時”とは一体いつの事だろう、と考え――彼女の言った”守る”という言葉がある出来事を思い出させた。
――アリスが必ず守ります!――
それはエンジニア部と”光の剣”を賭けて勝負を挑むことになった時。
カービィの参戦を認めたアリスの宣誓。
しかし、不慮の事故とは言え初っ端からカレは敵陣へと突っ走り、最終的には守られるどころか作戦のために体を張る結果となった。
もっとも、カレとしてはそれぐらいの危険は承知の上。
それどころかアリス達がフォローしてくれたおかげで無傷の状態で終えたこともあり、彼女が嘘をついたとは微塵も思っていない。感謝こそあれ、恨むなど以ての外であった。
それでも、アリスはあの時のことについて悔やむ様子を見せつつ、口を開く。
「アリスはまだまだレベル1の見習い勇者のままです……これではスライムにも勝てないどころか仲間を守ることも、できません」
沈んだ表情で自分を卑下するアリスに、心配になるカービィ。
とりあえず、何か元気になるような美味しいものでも持ってこよう、と冷蔵庫へと向かおうとする――その前に、急にアリスが勢いよく顔を上げた。
「けど、これからはもっとレベルアップします! そして、仲間を守れる”勇者”になってみせます!」
先程の雰囲気とは一転。
宣誓するかの如く、意気込みをみせるアリス。
一方、相手の急な変化に、目をまあるくするカービィ。
そんなカレを見つめていたアリスは、「だから」と緊張した様子で問いかける。
「――――これからも、アリスのパーティーで……アリスの仲間でいてくれますか?」
確かめるような問いかけ――或いは懇願と言うべきだろうか。
あの時”自分を信じてくれるか”という問いかけの時と同じく、不安と微かな期待が織り交ざった視線を向けつつ、相手の反応を待つアリス。
それに対して、カレもジッと彼女の瞳を見つめ返す。
それから程なくして、口元に弧を描くと、あの時と同じようにしっかりと頷いた。
それを見た彼女もまた、やはりあの時と同じような満面の笑みを浮かべ、口を開く。
心から湧き上がる、喜びを胸に抱きながら。
「これからもよろしくお願いします、カービィ!」
――それは、星が綺麗な夜の出来事であった。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
9-3
時刻は深夜。
連邦捜査部”シャーレ”の部室。
その室内で1人、”先生”はある映像――今日行われたゲーム開発部とエンジニア部の対抗戦の映像記録を静かに見つめていた。
モニターに映し出されているのは”光の剣”を構えるアリスと、迫撃砲の弾を吐き出すカービィの姿。その映像を眺めながら”先生”は、ウタハとの会話を思い返す。
『彼女……アリスは間違いなく戦闘用に造られたアンドロイドだ。それも、高度な技術力を内包した、ね』
アリスとカービィの住居問題が解決した後、喜び合うモモイ達には聞こえないよう少し離れたところでウタハが”先生”にだけ告げた事実。
それは”先生”も薄々予想していたことであり、あの怪力も戦闘用ということなら納得できる。
問題は誰が造りあげたのか。
その力は一体、何を成す為のモノなのか。
一方、カービィについてウタハ達も知りえない存在だったようで。
目を輝かせた彼女達から質問攻めにあったのはさておき、キヴォトス内であのような能力を持つ生命体はやはり存在していないようだ。
今回の件で謎が増えた2人であるが――ともあれ、アリスはゲーム開発部の部員として必要な条件を揃えることはできた。
部活の存続に必要な部員を確保できた為、これでモモイ達から受けた依頼は一応は完了というわけなのだが、もう少しだけ様子を見ていた方がいいかもしれないと、”先生”は考え込む。
――そんな時、”先生”の携帯端末から着信音が鳴り響く。
こんな時間に? と疑問を抱きながら携帯に表示された画面を見ると、”非通知”の表示。
見知らぬ相手からの電話に一瞬応答するか迷う”先生”だったが、ある”心当たり”が頭に過り、着信に応じることに。
”……もしもし?”
『――ああ良かった。もしかしたら既に就寝中ではないかと不安だったのですが……杞憂でしたね』
携帯から伝わる鈴のような声には仄かに嬉しそうな感情が込められていた。とはいえ、わざわざ夜遅くに電話を掛けてきたことから”先生”の行動をある程度予想していたと、考えるべきだろう。
電話の向こうにいる人物を”先生”は当然知らない。
しかし、”その声”には聞き覚えがあった。
”アナタは……あの時の?”
”先生”の問いかけに対し、相手は隠す様子も無く『その通りです』と、あっさりと答える。
まるで、隠す気などさらさらない、と云わんばかりに。
あの時――それはカービィが単身で相手に突撃し、カレの能力を初めて見せた後。
モモイ達が敵の布陣を打倒した時と同じくして、今と同じような非通知の着信が”先生”の元に届いた。
謎の人物からの、着信。
それに加え、カレが見せた能力。
偶然にしては出来すぎている、と考えた”先生”は訝しみながらも応答。
電話に応じた相手は正体こそわからないが、声からして少女と思われる人物。自身の素性を明かさないものの、丁重かつ丁寧な言葉遣いから十分な教養と育ちの良さが伝わってきた。
そんな相手から、1つの要望が舞い込んできた。
――カレの能力を、最大限に活かせるようにしていただけませんか?
つまり、カービィの吸い込みを活かせる布陣――例えば前衛において欲しいと要求した。
それに対し、”いくらなんでも危険だよ”とは反対する”先生”。
実弾ではないにしろ、いくらなんでも負傷の可能性が高い前線に置くべきではない、とカレが”生徒”では無いが為の配慮であった。
一方、電話先の人物はこう返した。
――果たして、カレは危険だと感じているのでしょうか?
その言葉に、”先生”はすぐに返答できず口籠ってしまう。
”先生”の目から見ても――否、”先生”だからこそ、わかってしまった。
あの見た目に反して、カービィは明らかに戦い慣れていた。
そもそも指示が通じていなかったために起きた突撃だったが、普通ならば周りに誰も居ない状況に疑問と不安を覚え足を止めるのが大部分。
そうしなかったのは1人でもなんとかなる、という確信と自負――そして”慣れ”があったためだと”先生”は考えてしまった。
とはいえ危険ではあることに変わりはない、そう言葉を返した”先生”に、相手は『それなら――』と、ひとつ提案を挙げる。
――カレに決めていただきましょう。カレが拒絶したのなら、この話は無かったことにして下さい。
その提案に対し、”先生”はやや渋ったものの最終的に受け入れた。
本人の自由意志に委ねる――というのは『自分のやりたいことをやらせる』ことを信条としている”先生”にとって、断りにくい提案だった。
結果的にカレは自信満々に前線に出ることを承諾。
相手の思惑通り、その能力を発揮させたのだった。
『――あの時は、”先生”に多大な心労をお掛けし、誠に申し訳ありませんでした』
その時のことを思い返していた”先生”だったが、電話先の申し訳なさそうな声色と謝罪の言葉によって我に返る。電話越しのため当然相手の表情を伺うことはできないが、それでも誠実さが十分に伝わるほどだった。
正体こそ未だ不明ではあるが、少なくとも悪意ある人物ではない――と再認識し”気にしなくていいよ”と、”先生”は落ち着いた物腰で告げた。
その言葉に安心したのか、幾分張り詰めていた緊張を緩ませながら『ありがとうございます』と少女は感謝の言葉を返した。
少しばかり和やかな雰囲気になりつつあるが――意を決して、”先生”が本題へと話を切り出す。
”……あの時は、どうしてあんなことを?”
当然、カービィを前線に置くようにと指示を出した時である。
当然の疑問を、率直に投げかける”先生”。その問い掛けに対しすぐに応答せず、間を置いた後に返事が返ってきた。
『ミレニアム……ひいてはキヴォトスの為、ということにしておきましょうか』
返ってきた答えは答えになっているようでなっていない、明らかにはぐらかしているとわかる答え。
とはいえ意図的に話さないのであれば、これ以上望んだ答えは返ってこないだろう――と判断した”先生”は別の質問を投げかける。
”カレのことは、何処で知ったの?”
『最初から知っていたわけではありません。強いて言えば、あの時でしょうか』
今度は間を置かず質問にすぐ応じた少女に対して、”あの時?”と”先生”が首を傾げる。
するとその反応に、クスリと微笑みながら彼女は補足するかのように口を開く。
『彼女たちが”アリス”と呼ぶ少女を部室に招き入れた時、でしょうか』
その言葉を受け、成程、と”先生”は納得する。
何故、あの時、狙ったかのように電話してきたのか。
何故、ここまで事細かに把握しているのか。
”――視ていたんだね”
『ご明察です』
”先生”の問いに対して、悪びれる様子も無く、何故か得意げに声を弾ませながら答える少女。
恐らく監視システムを利用し昨日からのゲーム開発部――というよりアリスとカービィの動向を見張っていたのだろう。でなければ、ここまで情報を把握することは不可能である。
証拠があるわけではないが、ほぼ間違いないだろうと”先生”は断ずる。
――そして、彼女は”アリス”について知っている様子だった。
”アリスのことを知ってるの?”
彼女は”アリスと呼ぶ少女”、と回りくどい言い方をした。
その言葉の裏を返せば、本来”アリス”という名前ではない、或いは偽りの名前であることを理解している――とも言える。
ならば彼女は”アリス”という少女について何か知っているのでは、そう考えた故に出た質問に対して、最初の質問の時と同じくして口を閉ざす少女。
答えるか否かを迷っているのか。それとも別の思惑を考えているのか――
”先生”はただ、静かに相手の応答を待つ。
先程よりも長く時間を置いてから、スピーカーから声が響く。
『――……”先生”は、あの子がどう視えますか?』
返ってきた言葉は先の質問に対する答えではなく、”先生”に対する問いかけ。
思わぬ質問に”先生”は虚を突かれたような表情を浮かべるが彼女の声が真剣味に帯びていた為、改めてアリスと出会ってからの今日までの二日間を思い返す。
立入禁止の廃墟で眠っていた彼女。
自身の事を何も憶えておらず、世間はおろか、常識も知らなかった彼女。
高すぎる性能と技術力を秘めた彼女。
彼女についての謎は尽きない。その存在に何らかの意図が存在しているのは、間違いない。
それでも――
『今日からアリスは――――”勇者”になります!』
憧れに、夢に向かってひたむきに目指すまっすぐな姿勢。
最初のときとは一転して、感情豊かになった表情。
様々なことを知って、少しづつ成長していく姿。
――彼女と同じくして、”未知の存在”と楽し気に戯れていたあの光景。
ソレを観た”先生”の答えは、決まっている。
”――ミレニアムの、ゲーム開発部所属の、大切な『生徒』だよ”
それが”先生”から観た、アリスという少女である。
それ以上でもそれ以下でもない、と本心に偽りない言葉でそう伝えた。
『――――……そうですか』
一言だけの淡白な返事が返ってきたが、その声色には何処となく喜々とした感情が秘められているように”先生”は感じられた。
そして、彼女が再び口を開く。
『……彼女について、まだ確証を得られていません。不確かな情報を提供するのはこちらとしても好ましいものではありません』
『余計な混乱を招く恐れがありますから』と、説明に言葉を継ぎ足しながら答える少女。
その答えに対し”先生”も特に落胆する様子を見せず、”そっか、わかったよ”と納得の意を返した。改めてアリスに対しての意識が固まった今、然したる問題ではないと思ったゆえの反応だった。
寧ろ、今のやり取りで気になったのは電話先の相手はどう思っているかである。
”アナタは、どう視ているの?”
”先生”の問いに、『そうですね……』と呟き、少し考え込むようにして、それから返事が返ってくる。
『――可愛い後輩になってくれればよい、かと♪』
茶目っ気を醸し出す言い方に”そっか”と、”先生”も微笑む。
今のやり取りで彼女はアリスに対して敵意を持っているわけではない、と確信を得る”先生”。
ならばきっと、カービィに対してもそのような感情を持っているわけではないだろう。あくまでもカレがどういった存在なのかを見極めようとしたが故の行動だったのだろう――盗撮は、ややプライバシーに欠けた行為にも見えるが。
そんな風に考えていた”先生”に、少女は先程とは打って変わった真面目な声色で語り掛ける。
『……ですが、”先生”。周りがアナタのように考えているわけではありません』
警告するかのような発言に”先生”は気を引き締め直し、言葉の続きを待つ。
『”未知の存在”の捉え方は人それぞれです。興味、期待、不安、恐怖、危険性の有無、実益性の有無――良い方に捉える方もいればその真逆もあり得るでしょう』
『それ故に人はその存在を知ろうと躍起になります』と、続けた少女の言葉に”先生”も同意するように頷く。実際、昨日カービィやアリスについて調べていたのだから。
『――問題は、捉え方によって”認識”が固定されてしまうことです』
”認識……?”
相手の言葉に首を傾げる”先生”に対して、彼女は話を続ける。
『アナタの様に、彼女達の善性を重んじるのであれば友好的な関係を築くことを選ぶでしょう――……ですが危険性を重視する者が、結果的に危険性が高いと見做した場合は――』
”……排除も辞さない、ってことかな”
”先生”が苦々しく呟いた声に、『その通りです』と少女は肯定の意を示す。
そして意味も無くこんな話をするとは考えにくい――と疑問を感じた”先生”が思い浮かんだ推測を口に出す。
”そう考えている人がいる――ってことかな”
『……まだ確定ではありませんが、ほぼ間違いないかと』
どこか嫌悪感を滲ませながら呟く少女の言葉に眉を顰める”先生”。
絶対ではないが可能性は高い、という少々曖昧な答え。しかしその目的が排除、となれば傍観はできない。
これはしばらくゲーム開発部に付きっ切りになる必要があるかもしれないな、と考えを改め直し、彼女へ今後の方針を告げる。
”――もう少しあの子達の様子を見ることにするね”
『……わかりました、くれぐれも無理をなさらないで下さいね』
心配そうに呟く少女に”大丈夫だよ”と”先生”は安心させるかのように優しい声色で返す。その言葉に蝕されたのか、クスリとした笑い声が零れた。
何はともあれ少女から伝えたいことは以上らしい。
用件を済ませたであろう彼女はこれ以上”先生”の時間を取らせるわけにはいかない、と通話を切ろうとする――その前に”先生”が待ったを掛けた。
”それで、アナタは何者なの?”
最後の最後に問いかける”先生”。今更な質問である、と本人も重々承知だったが聞いておきたかったのも事実である。
それに対して、彼女は少し考えるような素振りを見せ――
『――超天才清楚系病弱美少女ハッカー……とでもいっておきましょうか』
何故か自慢げに――そして誇らしげに言い放った発言に、疑問符を浮かべっぱなしの”先生”であったとかなんとか。
【 つ づ く 】
●タメになる☆TIPS集
【回転寿司】
→儲かりそうだからやりまっす~☆
【ミドリに、電流走る――!】
→本人より有名なんじゃないだろうかへぇい
【しかも今回は私の奢りだァーーーーッ!】
→ドギャァーーーz__ンッッ
【来週、欲しかったゲームでるし】
→最近のゲーム高いよね
【皿のタワーを3つ程積み上げ、満足そうな表情を浮かべていたピンクボールがいたとかなんとか】
→皿一枚の高さを約0.04mと仮定しなおかつモモイ達から見てもタワーと形容できる大きさを予測すると皿タワーを約2.00mと仮定し2.00/0.04=皿の枚数と計算式が立てることができつまり1皿タワー=50枚と予想できそれが3タワー存在するため50*3=150枚ほど食べた計算となり回転ずしのネタ一つの平均価格をなんちゃって計算で求めた結果約300円程度と仮定しつまり300*150がピンクボールの食べた総金額と推定できるので結果として45,000円の費用が掛かったとみて間違いないっていうかもう書き疲れたから二度とやらねえわこの書き方。
【Q.覚醒二日目にして家持とかこマ?】
→今後の展開を配慮して家を上げることにしましたエンジニア部ならなんとかしてくれるやろ
【超天才清楚系病弱美少女ハッカー】
→一体何星ヒマ者なんだ……
【次はユウカちゃんでますよね絶対に出ますよねああああああユウカユウカユウカユウカ!!!!】
→ハイ