スネイプは溜息をついた。
「兄弟仲は良好なようだな」
「……スネイプ先生、これは進路面談では?」
ドラコはわずかに眉を寄せた。
「君の進路希望は就職ではないと聞いている」
「そうですね」
もともと兄に家督を継ぐ気がおおよそ(だいぶかなり全く)なく、加えてうっかり昏睡していたこともあり、マルフォイ家次期当主は実質ドラコで確定している。ドラコとしても異存はない。というか兄に当主業を任せたが最後どうなるかわからない。
レグルス・マルフォイは純血主義者ではないがかなり極端な能力主義者なので、継いだが最後血筋だけに胡座をかく人々に嫌気がさす——だけならまだいいが、嫌気がさした結果財力と権力を駆使して貴族制度ごと取り潰しにかかりかねないとは、ドラコ含めた家族の総意である。レイシストとして純血主義者の方がまだましとかそんなことあるんだ。
「であればO.W.L.後になにを取るかはもはや趣味の領域になる」
「そうですかね」
それはちょっと違うような気がするな、を強く込めた声色だった。
「魔法薬学の成績は優れている。他はむらがあるな。魔法史は——取り続けたければもはや君の兄に習うべきかもしれぬ」
「O.W.L.を越えても魔法史を取り続けるのは兄上ぐらいのものですよ」
「むべなるかな」
スネイプは強く頷いた。
「レイブンクローには例年二、三出る、その他、十二科目の履修を目指す諸君は義務として続けるが——私が寮監に就任してからというもの、スリザリンでは彼が未だに一例目で総数は一のままだ」
「……。教授、確か、寮監に就任されてから十年が過ぎていらっしゃいましたよね——」
「今年で十一年目だな」
ホグワーツにおいて、各寮一学年につき三十人前後の人数がいる。単純計算で三三〇人のうち一人である。約〇.三%。ドラコはちょっと引いた。必修授業でありながらそこまで不人気で、しかしビンズ教授が解雇されない謎。
「クィディッチを続けるならば——」
「続けます」
「——六年以後は授業も高難易度に上がる。取らなくなった科目のぶんを換算しても、学習効率を上げられるよう、工夫を執り行うべきだろう」
スネイプはぱたんと成績簿を閉じた。もはや見る気がなさそうである。
これ本当に進路面談なんですよね? ドラコは訝しんだ。期せずして一昨年の兄とほとんど同じ感想であった。
「闇の帝王につくつもりは?」
ドラコは瞬きした。
「——あると思っていらっしゃるんですか」
「ないのであれば、よろしい。そういうふうに取り計らっておく」
スネイプはすげなく言った。