Fate/ZERO for   作:仮定X=ジル×ジャン

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ACT3

 

 

巨大な化け物に押しつぶされた。

化け物の頭には正義の二文字が刻まれていて、それは自身の清純を叫びながら悪を軽蔑する人々を細胞とし生きていたのだ。

おぞましい、おぞましい。

 

あの場で、"そうあれかし"の彼女は邪と断じられたのだ。

 

おぞましい、おぞましい。

 

彼女を見る視線が。

 

おぞましい、おぞましい。

 

彼女を蔑む精神が。

 

 

 

おぞましい、おぞましい。

 

真を知りながら尚と叫ぶ己が

 

 

 

あの輝きを見て、望まれなくとも。沸き立つ心は収まらず。それでもと望み続ける自身を。

そうあるべきだ。そうキャスターは、望むのだ。

 

 

 

そう言ってくれ、と()()()()()()()は、望むのだ。

 

 

 

 

 

 

 

空の下、肌の上に垂れる不快な汗を拭う男を照らすのは日輪か、それとも...

 

「精度が足らんな」

 

未だ文句をつける男か。

龍之介は安請け合いしていたことを後悔していた。子供の自転車は作業が早く終わったこともあり、僅かに伸びていた鼻を否定はできない。

 

だが、如何に進めようと、済ませようと、足らぬ足らぬと叫ぶ男は鬼だった。

 

「貴様が疲労に呻き、滑稽に這い蹲ろうと我は止めんぞ。手を止めようと我の為に我の使う時間だが、貴様が投げ出せばこの時間は無駄と化すのだ。貴重な我の時間を割かれて、結果を出さぬ事は許さん。」

 

励ますように、こちらの尻を蹴飛ばすように放った言葉であれば名言だったろうか。その言葉に龍之介を推す意図は無かった。

 

さて、そんな作業もまた数度目の佳境を迎えていた。

具合は十分。だが満足いかない仕上がりである。些かその容姿に粗が立つのだ。

 

そも修理ではなく改良。所詮自転車を専門とする職に就いている訳でも無く、これをどうこうとする能力もまたなかった。改善点、改善点と斜体へ穴を開けるように覗き込むが。

 

「どうしようか。」

 

この土壇場へ入って、行き詰まる。

公園の喧騒を遠くへ投げるようにしていた集中がほろりと崩れ、ほどけた。

 

「失せよ。我が良いと言うまで立ち入ることを禁ずる。」

その時、そんな声が後ろで聞こえた。

振り返ってみればギルガメシュ。彼が後ろへ何事かを話している様子だ。ただその可笑しさへ言及するなら、彼の話す姿、雰囲気は重々しく、また堂々たる物だが声を向ける先に誰もいない点である。

 

独り言を言い始めるにしても、といったところ。訝しみつつも流すか、と考えたところで向けた視線に気づかれた。

 

「余所見とは言い度胸ではないか。雑種」

 

雑種。二人称として不適格なのではないだろうか。あまりに人を、自身を見下すような態度に龍之介は心配をおぼえた。コミュニケーション方法は人との付き合いで修正していくものだが...態々こちらが指摘することでもない。

 

「すみません。───何か...誰かと話されてました?」

 

「───ふむ?」

 

一瞬の逡巡の後、ギルガメッシュは得心がいったような表情となる。

 

「あぁ。虫ケラとは言え、と思ったが...見えた訳では無いか。気にする事では無い。王として、招いた客への手出しを咎めたまでだ。」

 

言い切った金髪の青年へ、龍之介はなんと言えばいいのか。黙ってしまった龍之介へギルガメッシュは不快そうに促す。

 

「手を止めるな 」

 

 

作業を進める男と、その後ろへ腰掛け眺めるばかりの男を見て通りがかる人々は特に何も思うことは無かった。

当たり前だ。関係がなければ、そも興味もない。

一部ちらりと視線を投げるものも居れど、極小数の上直ぐに興味も移り目を離す。

 

街と街を隔てる大きな水路を跨ぐ大橋。

その傍に沿うようにある公園で、未だ作業を続けている龍之介を、だがギルガメッシュはどこかへ行くでもなく律儀に待っていた。

 

聞けば"どこも同じ様なものとは言え、居なくなった我の私物を貴様らの拠点へと運ばれる訳にはいかん"との事。

 

冬木の街は綺麗な方であると思っているため、龍之介は自身の拠点と並べるギルガメッシュの口ぶりに違和感を抱いた。だが黙殺され作業が続く一幕が存在する。

 

一度休憩の許可を貰う。一段落で区切らなければ作業効率が下がるばかり。快く、とは言わないが拝する事が出来た。水を補給しながら龍之介が考えることは拠点にいるキャスターの事である。

 

曰く彼には霊体化と言う力もあるそうだが今は勧告が来たばかり。例の遠見の力で地形への理解でも深めているのだろうか。

 

戦況の把握か、何かほかの事を?彼の考えることへ察を広げんとしてみた龍之介だが、やはりと言うか想像もつかない。

否、正確に言えば想像がつかないのでは無い。想像こそできてもそれをキャスターの考えと行動であるとするには些か無理を感じるのだ。

 

七人居るという英霊の何れかに共闘を、もしくはその全てに対し休戦を申しかけているのか?

 

無為な、益体の無い考えを振る。キャスターが龍之介へ思考を求めた訳では無いのだ。ならば自身が行うべきは真摯に今の親切を遂行することだろう。

 

その着地点を得た龍之介の意識は、陽光に照らされ...そしてそれ以上に跳ね返す、眩いばかりの金ピカ自転車へと移る。工具を手にタオルを首へ巻いて取り掛かれば、ギルガメッシュが語り掛けてきた。

 

「知っているか?今ここでは失踪事件が続いているのだと。」

 

もちろん知っていた。龍之介の習慣もあり、実感の籠ったタイムリーな由々しき事態だからだ。

思い出されるのは冬木市へ来てから、夜に会った子供たち。出歩く姿、それを送り返した顛末は先日も続いている。

 

だが男の口ぶりはおかしかった。失踪などが続いて居たのは龍之介が来る以前、また龍之介が来て少しの間ではなかったか?未だ続いてると?

 

「そうなんです?まぁ不用心な家庭が多いとは思いますからね。」

 

「続いているのだ、今も。」

 

そんな状況を憂いているのか、いやその側面もあるのだろう。だが読み取れる姿はこちらへ意地の悪い笑みを浮かべている様のみ。

 

「...なんです。何か言いたげですか?」

 

「いや?含むものは無いがな。知らぬ存ぜぬでは居れぬ時もあろう。」

 

続いているならキャスターと出会った夜に同じく、聖杯戦争へ参加したマスターの誰かが行っているのか。

純粋にただ現れた悪人とも取れるが...何にしろ、である。犯人の参加、それは重要事項ではないのだ。

 

「不用心な家庭が多いと言ったな?何故そう思う。」

 

何故かと問われれば、先日、そのまた前からの出来事を交えて話す。夜中に出歩く人間、それも幼い子供含めた数の多いこと。胸の裡で燻っていたそれらを吐き出した龍之介、ギルガメッシュは細めたその赤眼で見据えながら。

 

「何故、年端のいかない者が一人で歩くのか。その理由は聞いたか?おかしいとは?」

 

龍之介はそれを本人達へ聞いても、イマイチ要領を得なかった事を回想した。

 

「なぜそやつらがお前の歩む先へいたのだと思う?」

 

...偶然だろう、と返す。知った事では無い...いや違う。知ったところで、というだけなのだ。

 

「待ってくれ、ギルガメッシュさんの言う事が分からない。俺に何を考えさせようとしているんです?」

 

「分からんか?」

 

世間話か、にしては意図が分からない質問が続いた。

龍之介を笑い話を続ける、その絡めとろうとする蛇のような視線に嫌気がさす。

 

「分かりませんね。」

 

()()()()。」

 

想定していた、と言ったのか。

管を回し、ピンを捻って。ねじった先で止める。

具合はこんなところだろう、龍之介の指勘だが、これ以上を求めれば安全面で問題が生まれる。

 

「なぜならそれは貴様の肉の裡で、だが貴様を縛る。気付かぬように、見えぬように。それは貴様を...ふむ、良い例えだ。天秤へと乗せんとする巨大な自意識なのだから。」

 

「哲学ですか?」

 

「いいや?」

 

既視感、それはいつぞや見た捕食している蛇か。蛇に睨まれた蛙は未だ自身が蛙である事を知らず...蛇に投げられた雑をこなしている。

 

堕落へ導く悪魔か、ギルガメッシュが囁く。

 

 

「キャスター。貴様の知らぬところで動き回っているようだな。ここ数日、一連の"不用心な家庭"は奴によるものだ」

 

地面が柔らかく質も良い土で、金属のぶつかる音はしなかった。手からこぼれおちた工具が地面へそれとなく型を残して、居座る。

何を言っているのか。理解出来ない。キャスターと言ったのか、それは"青髭"さんのことか、龍之介の事をキャスターのマスターと認識しているのなら聖杯戦争の。

 

「出来ないのではなく、しないのだろう?」

 

「お前の根本は大きな、それでいて矮小で、些細に過ぎない事柄によって矛盾を内包している。」

 

「現に今、貴様は話の流れからずらした思考へと逃げた。」

 

 

「...キャスターは、そんなことはしませんよ。」

 

「なぜ言い切れる?」

 

「それは、約束をしたから。」

 

「何の?」

 

「...俺を、聖杯戦争に勝たせるって。悪いヤツの手に聖杯が渡らないように。」

 

「ふむ。奴の聖杯にかける願いは?」

 

「...」

 

「では、貴様は?」

 

「無いです。そんな胡乱な物に頼る程、願いの成就へ困窮していま「嘘だな」は?」

 

「貴様に夢はなく、また奴にもというのなら道理が通らん。貴様は確かに大筋に選ばれたのかもしれん、その側面もあろうとも。だが、あの薄汚れた盃はそれだけでは選ばん。」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。貴様の姿、見ていたとも。あくせくと人へ尽くして、滑稽に走り回り"安心"を探す姿を。」

 

「お前が過去に犯した大罪。それは貴様が自身へ貸した罪状、刑罰で。貴様はそれを多数の他人へ犠牲を押し付け続ける事で生きんとしている。」

 

「一つ教えてやる。はなから貴様は道化だ。滑稽で、醜く。そして貴様の望む清廉潔白とやらは既に埃をかぶっている。」

 

 

 

 

 

ギルガメッシュは工程の完了した自転車へ乗って、何処ぞへと消えていった。ここへ在ったはずの大きすぎる存在感はいつの間にか消え失せて、輝ける金髪は既にその一抹も無し。

 

未だ公園は喧騒に包まれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめろ、キャスターッ!」

 

止めること能わずと知りながら、叫び静止することをやめられなかった少女の声が響く。

 

その視線の先、水晶に写るのは先日訪れた怪人。キャスターのクラスへ座る"ジル・ド・レェ泊"を名乗る者だった。

10人あまりの子供を連れ森を歩き、セイバーの陣営...()()()()()()()が拠点を構え、張り詰めた結界へ進み出た。

 

魔術師という名やゆったりとしたローブに見合わず、ぬろりと現れた筋肉質な腕が幼子の頭蓋を握り、打ち砕くまでの数分。

 

その暴虐を見てセイバーの激情は収まるところを忘れた。

 

『さァお逃げなさい。百を数えたら追いかけますよ?ねぇジャンヌ。私が全員捕まえるまでにどのくらいかかりますかねェ?』

 

その言葉を聞いたアイリスフィールの判断は速い。

セイバーへ一言促し、それにセイバーも短く応じた。

声がアイリスフィールを認識した時既にそこに姿は無く、風と化したセイバーは樹間を駆け抜けキャスターを目指した。

 

今まさにキャスターの術中へ策も無く飛び入ろうとしていることを感じながら、だがその逆鱗に触れた烈火のような怒りはセイバーの頭からマスターとの確執やその他の悶濁とした物を取り除き、一切の翳りも無いは剣へと変えた。

 

分余りの時間で辿り着いたセイバーを迎えたのは赤々しく染まった雑草。それを鮮血である、連れられた子の散らされた証左であると認識してセイバーはついに上がり続けたメーターの周り切る姿を見た。

 

 

それを迎えたキャスターの脳には、今目の前に立つ想い人の姿と、それへ抱く郷愁のみである。

希ったそれを聖杯はいとも容易くと実現した。

 

悲劇に殺された聖人の復活、書にコレを記さずして何を記す?嗚呼知れるや此処に至るまでの幾星霜!

キャスターの頭蓋を雷鳴のように駆け巡る積歴が打ち砕かんとする痛みを伝えていた。

 

「ようこそジャンヌ。待ち侘びましたよ」

 

「如何です?痛ましい姿でしょう?嘆かわしい惨状でしょう?この無垢なる子供たちの最後に味わった苦痛、悲劇。でもねジャンヌ。この程度...この程度など、ですよ。」

 

 

 

 

 

 

拠点へ戻れば、そこにキャスターの姿は無かった。

何も考えず、話したくない気分だと自身を分析しながら、だがキャスターという知人との繋がりを求める自身も居ることを認知し、龍之介は顔を顰めた。

 

居ないキャスターの姿は探せど気配も感じない。

であれば、今日を過ごすため持ち込んだ食事を済ませて置くべきか?スムースに1日を進める為、出来ることは今のうちに。そう考える龍之介を淡く照らす光源が生まれた。

化け物の垂涎か。透き通る液体から、されど気色の悪い気配を感じて浮かんだ例えばそれだった。歪な雰囲気を醸しながらボンヤリ光るそれへ龍之介は目を向けた。

 

遠見である。キャスターが聖杯戦争の進行を確認する時に使うというそれが、主人が居ないそこへ一人でに浮かび上がった。

 

『──────っ!』

『───。────?』

 

 

深さ知れる森の明けに、宙に踊る金色の光が目を引いた。

水晶を介して尚その拠点を照らす光量は暴力的で、だが高潔で。龍之介を支えてくれている彼の魔術師を思い起こすように誠実だった。

 

輝きを喰らい飲み込まんと蠢く魔物を弾き、吹き飛ばし。

その魔力放出の迸りが龍之介の目を灼いたから、龍之介の目はそこへ向いた。

 

「あ、...は?」

 

驚愕か。衝撃に目がくらみ頭痛を起こすようだ。

彼の人の手にはいつかに見た事のある赤い"それ"が付着していて、その所有権を有していたであろう骸が。いや骸ですらない散塊の一つを信じれない。

 

龍之介は自身の正気を疑い、次に目の錯覚を疑った。最後に頬を抓ってタチの悪い夢でないことを認識した後、水晶を机の下へ突き落とした。

 

自身の内側の、魂か、起源とも言えるそれが悪を糾弾する。許してはいけないその罪へ怒りを叫ぶ。

 

「───言えるか俺が」

 

罪なき幼子へ危害を加えて、夢や未来や宝を奪って、蔑むような仕打ちは許してはならない悪徳である。

 

「───言うのか俺が」

 

抱いた罪など何も無い、ただその時を生きていた子供から発展性全てを奪った。

 

「───言えるのか、この俺が。」

 

キャスターの腕に握られた■の頭が脳漿が頭蓋の破片が血液が汁が...

 

違う。

■じゃない。

命に優劣は付けず、だから今すべきことは...

 

 

 

 

 

 

 

 

魔術師は怒り狂っていた。

自身の逢瀬を、再開の宴を、忌まわしき槍兵に妨げられたからだ。ぁあ苛立つ、苛立つと頭を掻きむしり血を鳴らして、拠点とする下水道へと辿り着いた。

 

錯乱してしまった聖女を、如何にして引き戻すか。死んだ後も尚、恥知らずの神によって辱められ続ける醜態を何とするか。頭を占めるその内容に決着はつかず、ただ重ね続ける憎悪の枚数へ指を這う。

 

闇をかきわけ進んでみれば、キャスターのマスターが設置したランタンが煌々と光を放っていた。

それは機械の持つ、無機質で、神聖の気配などかずみもない光源だったが。

まるで求道者に与えられた救いのような、水浴びもできない行脚の末の泥を流す打ち水のような。雰囲気として纏うキャスターの翳りを払った。

 

キャスターは目を見開き、また何事かを飲み込んで、自身のマスターへ声をかけた。

 

「リュウノスケ。どうしたのです?いつもなら出掛けているか、床へついている筈では?」

 

「"キャスター"...」

 

キャスターが先ず違和感を覚えたのは呼び方。そして目が流れて気づいたのは破片たち。魔術によって構成された水晶は既に気化して大半が消えてこそいたが、それを作った張本人にこそ気づくことが出来た。

 

キャスターは思い当たった。外出の前に用意し、そして処分し忘れた遠見があったことに。律儀な事に戦闘の最中でそれは維持され続け、セイ女を捉えた玉はその様子を余すことなく。キャスターのマスターへ伝えたことだろう。

 

「リュウノスケ、それはは。つまり...」

 

「...」

 

キャスターは唇をかみしめて、ついに、と考えた。それは後悔か、恐れか、安堵か?自身のそれは、マスターの知る所となったのだ。気まずげに目を逸らし続ける龍之介へ、キャスターはこれまでの自身を吐露した。

 

「マスター、先ずは聞いていただきたい。罪深く、自己中心的でヒロイズムに酔った私の話を。」

 

堪え続けたダムが決壊するように零れ出した懺悔は留まることを知らなかった。慟哭にも似たそれを、龍之介はとめなかった。

 

「私の名前はジル・ド・レェ。キャスターとして限界した私の生前は、"青髭"という名の童話に語られた男の()()()()。輝きを見ながら、照らされながらそれへ縋り、醜く残り続ける影法師でございます。」

 

「私の栄光は彼の聖女と共にあり、この身に宿るのは醜悪な罪のみでした。」

 

 

 

 

長くなる、という前置きの後に語ったキャスターは自身の生前を。13世紀から14世紀を跨ぐ己の軌跡を吐き出した。

 

歴史に伝わる百年戦争の情景は知るよりおぞましく、聞くより耐え難く。そしてそれを駆け抜けた英雄は、"悲劇の"という枕詞を必要とする最後を迎えた。

その後の転落。重ね続けた涜神がいつぞやそ叶うものと願って死に絶え、今ここに立つ。

 

「キャスター、ジル・ド・レェには精神汚染というスキルがあります。言語を介した言葉のやりとりに難を持つスキルです。これは後世に伝わる私の側面、青髭の部分が取れるからです。」

 

「私は世界に降りた奇跡をみて座へ着いた男ですが、この死後に置いてもまた奇跡を見ることが出来た。貴方へ逢えたのは正しくそれです。」

 

「そのおかげで、私は今限りなくセイバーの、そしてふたつの側面を持った単一の"ジル・ド・レェ"として在る。」

 

「キャスターの私は、聖女を求めて走り続けます。どこまででも。その道筋には犠牲が広がるでしょう、それを是として進むのが、私と私の大きな違いです。」

 

口をとめず、舌に猶予も与えず。滔々と語り続ける口は止まらない。

 

ジル・ド・レェはキャスターと、セイバーに分かれた。

そのふたつは時間のみの差で、だが全盛期へ切り捨てられるのではなく、別の座へと進み出た英霊。

ジル・ド・レェには、それを割り切れなかった。

 

キャスターはジル・ド・レェの悪性が出た。堕ちた。違う。キャスターは歪み、怨霊であって、ジル・ド・レェでは無い。違うのだ。

 

キャスターは"青髭"ではない。"ジル・ド・レェ"なのだ。

 

セイバーとしての、百年戦争を駆け抜けた聖女へ仕える騎士としての側面があれこそ、それを強く感じる。

 

キャスターという切り身が思ったのでは無い。紛うことなき"ジル・ド・レェ"が。

 

フランスという国を憎み、呪ったのだ

 

 

快楽殺人者としての面を強く出した純粋なキャスターならどんなに楽を感じだろうか?

 

騎士としての任に殉じるのみの純粋なセイバーなら。どんなに簡単だろうか?

 

ジル・ド・レェは口を閉じて。自身のマスターを見据えた。

 

 

雨生龍之介。()()()()()()()()()()()()()を持つ男がマスターとなった。そこからジル・ド・レェの苦悩は始まったのだ。

 

 

 

 

滝のように話し切ったジル・ド・レェは龍之介の反応を待つ。糾弾される覚悟があった。彼女は何があろうと自身のような背徳を許さないだろう。もしくは彼女はそれでも、というのかもしれない。

 

 

龍之介の反応はそのどれとも違う。

 

「あぁ...はは。仕方ないよ...キャスターだからね。勝つためには...」

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

龍之介はジル・ド・レェを見据えてはいなかった。

気まずげに。目を逸らして...目を、逸らして?

許されざる悪からジャンヌ・ダルクは()()()()()()

 

龍之介は仕方ない、仕方ないと慰めるか、諦めるか。

 

ジル・ド・レェは許せなかった。

 

そのザマは何だ。

 

 

 

 

ジル・ド・レェは、罪深き自身へと怒りを覚えず、かと言って赦す訳でもない龍之介を前に怒りを顕にした。

 

その輝きを持つ龍之介の欠けを、ジル・ド・レェは許せなかったのだ。




AUO「オモロ」
リュウノスケ「は?」
ジル「推しはそんな事言わない!!」←今ここ



読み取りづらくなった気がするので、判明次第この話は書き直します。
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