死神警官〜バグ大の極道たちに振り回される警察   作:書庫・ラ・オランジュ

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この物語はヒューマンバグ大学様の二次創作であり、またフィクションです。

本作に登場する人物、企業、宗派、団体は実在のものとは一切関わりがありません。







序章『誠実たる死神』
死神警官・死刃(しば)


 

 

この世にはありとあらゆる犯罪が蔓延っている。

 

 

暴力、薬物、強盗、強姦、国家転覆、あるいは殺人。

そうした犯罪を阻止するために「警察」という職業が存在している。

 

だが─────この国の警察はこの国の人権に対する厳しい考え方によってその行動を縛られていた。

 

最も問題なのは、それによって本来の目的を見失って、警察のあるべき機能を失ったことにある………

 

 

俺たち警官のすべきことは犯罪者を捕まえることではない。

事件を解決に導くことではない。

 

 

俺たちの目的は…………そう、はじめから、明治時代に警察部隊が設立されたときから何一つとあるべき本質は変わっていない。変えてはいけない。

 

俺は、警官としての責務を果たすためなら何でもする。

なんだって行う。

 

俺の信念の前には、道徳も、人情も、法律も存在しない。

 

全ては、守るべきものを守るためなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の午前、空龍街は地獄と化していた。

 

暮らす人々が昼間のお出かけを満喫している最中に、町中に設置された爆弾が爆発し、多数の死傷者が発生した。

爆発に巻き込まれた者、爆風に焼かれた者、散乱したらガラス片に切り裂かれた者、瓦礫に押しつぶされた者。

 

 

 

「あぁぁぁぁぁぁ!!助けてくれぇぇぇ!!」

 

「だ、誰か助けて…………!!!」

 

「おかあ………さ…………」

 

 

 

苦しむ人々に女子供は関係ない。

無差別に爆破された建物の内外付近にいた住人たちはその犠牲となっていく。

 

 

「重症人を優先して救出せぇぇぇぇッ!!!」

 

「安心しろ、すぐに病院へ連れていってやるから!」

 

「ウラァァ、みんな大丈夫か!しっかりしろぉ」

 

 

軽症を負いながらも重症者の救助にあたる屈強な男たちの姿。

 

 

 

 

 

 

 

 

その中、一人の若い男が手ぶらで走り回っている。

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!助けてー!!!」

 

 

紺色の制服。警官だ。金髪に黒のメッシュが刻まれた色白で艶ある顔の若い美少年が、警察とは思えない情けない声を上げながら、あろうことか重症者をほったらかしにして爆破現場からの逃亡を図る。

 

 

(やだやだやだやだやだー、死にたくないー!)

 

 

しかし、アスリートのような全力疾走を見せつける少年の身体は途中で停止した。

脚だけは回転し続けているが、制服の襟を誰かに掴まれていたので前に進むことができなかった。

 

 

「げっ……………!!!」

 

 

そこで少年は青ざめた顔でぐぐぐ………と背後を向くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………俺の名は司馬喬皇平(しばきょうへい)

 

国民を守るために全国の犯罪組織を根絶やしにするべく活動している特殊犯罪対策課の警官…………連中が言うところのマル暴だ。

 

この爆発が発生したのは、俺ともう一人がこの国でも有数の繁華街である空龍街の様子をパトロールしていた時の事だった。

 

 

白昼堂々と、罪なき人々を巻き込む爆破か。

愉快犯、あるいは過激思想団体の活動か。

いずれにしても、俺の目の前で人が倒れた時点で許すつもりもない。

 

 

 

「──────行くぞ、」

 

 

俺は同行する助手に呼びかけようと首を右に向けてそう言った。

 

しかし、ヤツの姿が消えていた。

 

 

「……………………は?」

 

 

俺は急いで辺りを見渡す。

すると、向こうの方で何やら騒ぎ立てながら走り回る警官を見つけた。

 

あの野郎…………と思いながら俺は走り回るバカの背中を追う。

あっという間に追いつき、襟後ろをつかんで確保した。

 

 

「げ……………」

 

 

バカはぐぐぐ、と背後で鬼の形相で佇む俺に顔面を見る。

 

 

「何をしているキクリ、」

 

「ぎゃー!!!シバさん!?なんでここに!?」

 

 

垂直3メートル近くのそこそこ高い跳躍を俺に見せつけて驚いてくる。

よし、気分が悪いのかと一瞬心配したがこれだけ元気なら問題ないな。

 

 

「逃げ出すてめぇを追いかけてきたからに決まってんだろ」

 

 

この若い少年は菊理弥二郎(きくりやじろう)

いちおう、俺の助手のようなやつだ。

臆病で不真面目で頼りなくてそして無能だ。

 

 

「いいか、俺の部下である以上、お前には悩める住民から逃げるという選択肢は絶対に取れないようになっている。あとちゃんと帽子被れ」

 

「さーせん!えっと、帽子ですか!帽子なら、今日は自室に置いてきちゃいました!青空の綺麗な日なもので、全身で日差しを浴びたかったです!」

 

「舐めてるのかお前」

 

 

この男は警官とは思えないほどに自分勝手で気まぐれな男だ。警帽も被らなければ舐めた髪色して、挙げ句に勤務態度はぞんざい。

 

……………だがこれでもヤツは警察学校をトップクラスの成績で合格している。

それに、勤務態度は最悪だが彼の警官として人を守りたいというその情熱だけは俺も買っている。

だから根っからの無能というより、頑張れる意識と秘めた才能だけはあるのに実際の能力がことごとく見合っていないだけだ。

 

優秀なだけに安々とはクビを切れない。

 

 

「でー、えっと、僕は何をしたら良いですかね………?」

 

 

バカかこいつは。

 

 

「いつも言っているだろうキクリ。俺たち警官の仕事はなんだ」

 

「えっーと、犯罪者を捕まえること、ですかね?僕らだったら暴力団や麻薬組織とか」

 

「お前、曲がりなりにも警察2年やってるだろ、しかも俺のもとで。それでまだ理解できないのか?」

 

 

2年も一緒にいてまだ分かっていないとは。

こいつを連れて、俺はいつも同じことを言っているだろう。

 

 

「いいかキクリ、俺たちが働くのは犯罪者を捕まえることじゃない。そんなものは二の次だし、俺たちの真っ当な仕事じゃない。俺らの真の使命は『住民を守ること』だ」

 

「はい!住民を守るために!」

 

「そのためには今、この瞬間、何をしなければならないと思う。それが今お前のすべきことだ」

 

「えっと、怪我を負っている住民を救出することですか?」

 

「そうだ。お前はその義務から逃げようとしていた。そんなんでは1人前の警官は程遠いぞ」

 

「す、すみません………忘れてましたよ………僕もまだまだ勉強が足りてないですね………」

 

 

そうこの男の数少ない長所と言ったら、非常に素直なところにある。

普通の人間なら警察学校だなんていう魔境で成績優秀者を張れたのなら少しぐらいは自惚れてもおかしくない。しかしこの男はそんな事はせず、上司の説教を真摯に聞き入れて改善に努めようとするその生真面目さがある。

だからミスばかりの仕事においても俺たち上司から見捨てられることがないのだ。

「あの菊理だし仕方ないか」と魔法をかけたように見逃してもらえるわけだ。

 

 

「さぁ、住民を救いに行くぞ。早急に交通規制を行う。救急車の通る道を最大限に確保するんだ」

 

「僕らは重症患者を助けに行かなくていいんですか?」

 

 

そうしたいのは山々だが肝心の救急車が駆けつけれないのなら元も子もない。

この被害の大きさでは交番からの人出では足りないし間に合わない。

最も近い俺たちが動かなければ…………

 

 

「俺らには医療技術はない。よって救急車の導線確保が最優先だ。大通りや交差点の交通規制を行う!」

 

「はい!了解です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、

 

 

「救急車が通りますよー!車の皆さんは道路の脇に車を下げてくださーい!」

 

「そこ、逃げるのに道路を広がって横断するな!最大2列に並べ!」

 

 

俺とキクリの素早い対応の結果、

 

 

「シバさん!救急車ですよ!うっわぁ、すごい!救急車の行進みたい!」

 

 

交通整理を行ったたことで救急車の到着が早くなった。

病院や消防署からの緊急出動にしても距離からして推定で10分近くは要するはずだが、予定より3分近くは縮められたようだ。

 

怪我人の生死は一分一秒が分ける。素早く、そして多くの救急車を駆けつけさせることが俺らにできる、そして俺らにしかできない最善の行いだ。

 

 

「さすがシバさんですね!」

 

「………………だが、これで助かったとは言えない」

 

 

救急車が来たところで、怪我人は出ている。

どれだけ時間に間に合ったとしても怪我の具合によっては為す術がない者も溢れているわけだ。

これだけの爆発…………死人が出るのはおかしいことではないな…………

 

 

「キクリ。今回のこと、何か心当たりはないか」

 

「心当たり?犯人ですか?」

 

「そうだ」

 

 

救急車が来ても、全員を運ぶことはできない。

それゆえあたりには怪我人の苦しむ声が四方八方から聞こえてくる。

 

 

「痛いよぉ…………」

 

「どうしてこんな事に…………」 

 

「誰か、誰か俺の娘を…………!!!」

 

「うぐっ…………」

 

「お母さんしっかりして!!」

 

 

 

その無数の悲鳴が俺の中に眠っている鬼に訴えかけてくる。

悲鳴、血の匂い、叫び、悲しみ、涙、苦しみ、憎しみ、別れ、理不尽、渇き、死……………

 

 

 

「もうこの街もおしまいだ…………」

 

 

 

怪我人のうちの誰かが言った。

 

 

「終わりだと?この街がか…………?」

 

 

いや、そうはさせない。空龍街は終わらない。

 

俺たち警官は、街を、人々を守るためにある。

 

それが守れなくて、俺らに生きる資格などない………

 

俺は文字通り人々を守ることだけを目的とする。

 

だから俺の信念には、道徳も、人情も…………法律すらも不要。

人々を守るためならば、俺は死神にだってなってやる。

 

 

俺は特殊犯罪対策課・司馬───人呼んで、

 

 

 

 

 

 

  死神警官・死刃(しば)─────

 

 

 

 

 

 

「キクリ!!!!!」

 

「ハイッ!!!」

 

「犯人を探し出すぞ。そして必ずや捕らえ、これを粛清する」

 

「おっ!出ましたねー!シバさんの死神警官!その軍刀も、そしてその制服色のマントもカッコいいです!」

 

 

こんな状況でも手を叩いてはしゃぐこの男は本気でブチ殺してやりたいところだが、仕事をやる気になってくれるのなら不問とするか。

はぁ。ひとまず状況を調査するしかあるまい………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シバさんシバさんー、あれ、」

 

 

キクリが俺のマントをぐいぐいと引っ張ってきた。

 

 

「なんだ、」

 

 

キクリがこうやって呼んでくるときは何か買って欲しい食いもんを見つけた時とか、自販機で珍しい飲み物を見つけたとか、カラスが捨てられているグミやガムをつついてる姿とかばっかりだ。

 

反応するのもダルいが、今の俺は勤務中の俺ではなく死神状態のため、僅かなものにも反応してしまう。

 

 

「あそこにいるのってもしかして…………」

 

「…………………ぁ!!!」

 

 

俺が視線を向けた先にいたのは…………

 

 

 

「チクショウ、なんだってこんな………誰がやりやがった………!」

 

「野郎………絶対に許さねぇ………」

 

「空龍街をこんなんにした連中、一刻も早く見つけ出してぶち殺してやる………!」

 

 

身体中にガラス片の刺さった3人組だった。

一人は白いスーツに身を包み、

もう一人は白シャツに青いベスト。

あと一人は黄色いジャケット。

 

 

「あーっ!あれってもしかして天羽組の人たちじゃないですか?やっほー!元気にしてますかー!」

 

「なん、バカ!おいやめろ!」

 

 

俺の静止も聞かず、この怖いもの知らずなキクリという男は、ただならぬ空気を醸し出す3人に対してなんの恐れもなく、

なんと目の前から接近していったのだ。

 

 

「どーもー!みなさん元気にしてましたかー?いやぁ、大変でしたね!3人ともとてもご無事そうに見えないのに平気で歩いてますけど、大丈夫ですか?」

 

 

そしてこの笑顔である。

 

 

「馬鹿野郎!!!てめぇ勝手に単独行動取るんじゃねぇ!!!」

 

「おげぇぇぇぇッ!!!」

 

 

俺の飛び蹴りを食らってキクリは8メートルほど吹っ飛んで地面に倒れる。

 

 

「おおっ…………相変わらず凄いな…………」

 

 

白スーツの男が目を丸くしながら吹っ飛んでいったキクリを見つめている。

この男たちのことは俺とキクリはよく知っている。だからとはいえ親しき仲にも礼儀あり。なぜこの手の人種に向かっても恐れをなさずに吶喊できるのか。

この男には昔から対人への恐れといったものが著しく足りてない。

分かりやすく言うと、普段から調子に乗りすぎ。

 

 

「お疲れさまです司馬巡査部長!いつもいつも、世話んなってます!」

 

 

白スーツは深々と礼をする。

 

 

「ははっ。相変わらず、にぎやかな助手だな」

 

 

高笑いする白シャツ。

 

 

「…………助手ではない」

 

 

そして淡白に返す警官(俺)。

 

 

「ちょっと待ってくださーい!!!僕はシバさんの頼れる相棒じゃないですかー!!!」

 

「二度と俺の相棒とか勝手に名乗るな!!!」

 

 

お前は俺の荷物持ちだ。というより、この男が俺にとっての最大のお荷物だ。

 

 

「そうか小峠。お前ももう兄貴なのか………」

 

「はい、お陰様で良い仲間たちに恵まれました」

 

「あはは!すごいですね!もう小峠さんも立派なアニキだ!もうこうなったらお若のお頭目指して頑張ってくださいよ〜!」

 

「いえいえとんでもない、俺にはまだ兄貴たちの領域は早いですよ………」

 

 

この男は小峠華太(ことうげかぶと)

空龍街を拠点とする古くよりこの地を護る任侠集団、天羽組の構成員だ。

言ってしまえば極道であり、俺らのお上からすれば取り締まりの対象としてカウントされるのだが、俺はそうはしない。

 

 

 

「こ、小峠の兄貴。この人たちは…………」

 

「お前も頭下げるんだ飯豊。この2人は俺ら天羽組の縁の下の力持ちってやつだからな」

 

「えっ?天羽組(ウチ)の?」

 

 

どうりで俺たちも見ない顔なわけだ。そこの黄色は新入りか。

 

 

「なるほどなぁ。トヨ、まだこの2人の説明聞かされてなかったわけだ。なら俺が教えてやる、この2人は特殊犯罪対策課の司馬クンと菊理クンだ。ウチ、たまにシマ荒らしするような外道をハジいたりするだろう?そういったものの後始末をしたりしてくれているんだよ。要は天羽組のスーパーサブ………最後の裏方さ」

 

 

そしてこの白シャツは青山流己(あおやまるき)

天羽組の武闘派、小峠の一個上の立場の兄貴分か。

属性で言ったら、もう少し飄々としたキクリといったところか。人とコミュニケーションを取る能力が飛び抜けて高い。

 

 

「そ、そんな凄い人たちだったんすか!?しかも、めちゃくちゃお世話になってるじゃないですか!」

 

「あぁ。だから俺たちはもちろん、カシラや親父だって頭を下げるくらいの偉い人たちだ」

 

「マジですか………!!!す、すんません!なんも知らなくて………!俺、元暴走族の飯豊朔太郎(いいとよさくたろう)って言います!えっと………世話んなります!司馬さん!菊理さん!」

 

 

見た目は一世代前のヤンキーのようだが、思ったよりしっかり者だな。

おそらく組で礼儀作法を叩き込まれてきたのだろうな。

天羽組はよくあるヤクザものや半グレとは大きく異なる、善人の集まりだ。礼儀と作法を重んじ、隣人愛を忘れない、近所の頼れる怒ったら怖いおじさん集団だ。その中で過ごしていれば必然、どんな元暴走族でも丸くなるだろう。

 

 

「ご丁寧にどうもありがとうございます!飯豊くん、僕と歳そんなに離れてなさそうですし、青山さんみたいに菊理クンって呼んでくれていいんですよー。なんなら司馬さんのことも司馬クンでいいですかr」

 

 

その鳩尾を肘で貫いた。

キクリは口を押さえながら苦悶の声をあげてくずおれた。

 

 

「それでお前たちはそんな傷だらけでどうした。お前らは病院へ行かんのか」

 

 

3人とも明らかにガラス片を浴びたような裂傷を身体中におびていた。

爆発の近くにいたのだろう。流石は天下の天羽組。爆発しても死なんか。

 

 

「えぇ。俺らは大丈夫です。まだまだ動けますし、カタギの人々の方が優先に決まっとりますので」

 

「大丈夫、か。お前ほどの捨て身野郎が言うなら説得力があるな」

 

 

小峠はただの若衆から捨て身で中堅まで成り上がってきた極道だ。ガラス片を浴びる程度、怪我の範疇に入らないのだろう。

 

 

「俺たちは今からこの爆破事件の犯人を調べ上げます」

 

「こんな事してカタギの皆さんに危害を加えたんだ。相応の対価は支払ってもらわなくちゃ困るんでな…………」

 

「奴らが誰にケンカ売ったのか分かるように丁寧に一人一人ブチ殺してやりたいと思います」

 

 

やれやれ、相変わらず血の気の多い連中だ。

『コロシの天羽組』は健在だな。

 

 

「お前ら。守り神するのは結構だが、警察の前で堂々と殺害予告をするな」

 

「ははっ!こりゃ一本取られたなぁ!」

 

「青山の兄貴…………笑い事じゃないです…………」

 

「す、すみません………癖でつい、」

 

 

すぐに直せよその癖。

俺らじゃなかったら即・逮捕だったからな。

まぁただの警官で捕まえれるような天羽組ではないのだが。

 

 

「それはそれとして、奇遇なこともあるんだな。俺らもその爆破事件の事について調べていた。何か俺たちに手伝わせて欲しい。もちろん主犯たちの処分はお前たちに任せる」

 

 

俺は出来る限り痛めつけて殺すという技術は存在しないのでおそらく即死させる。

拷問が大得意な天羽組になら主犯の始末も楽に任せられるだろう。

上への報告なんて敵対組織による射殺みたいなのでどうにかできる。

 

 

「すんません、また仕事増やしちまって………ありがとうございます!」

 

「いや、礼には及ばん。俺たちもお前たちも………この空龍街を守るためにここに居るからな。俺らの愛するこの街を荒らすような連中は………今日以上の地獄を見せてやる」

 

「シバさーん…………あなたが一番殺意出してますよー…………」

 

「むッ…………ちっ、いまのは忘れろ、」

 

 

しまったな、つい街や人々のことになると本気が…………

さて、とりあえずするべきことは決まったな。

天羽組と協力して犯人の正体を突き止め、これを袋叩きにする。

それが、俺たちが守ってやれなかった人々への弔い………にはならないが、なんだ。俺らなりの意地というものだ。

 

借りを返した所で被害に遭った人々が元に戻ることはない。

俺たちは今日のことを糧に、より一層街を守ろうという意識を固めるのだった。

天羽組と警察。本来ならば相容れざるはずの2つの力は、空龍街とそこに住まう人々を守りたいという強き意志によってここに深く結ばれるのだった。

 

 

「そういえば小峠の兄貴。司馬さんたちはなんで俺ら極道を取り締まろうとしないんですか」

 

 

飯豊がちょっとした質問を投げかけた。

 

 

「トヨ、司馬クンは極道を見逃すわけじゃあない。誰でもじゃないさ」

 

 

「そうだ。俺は人々を守りたいというだけだ。人々に害を及ぼさないのなら俺が取り締まる理由はない。まして古くからこの地を守ってきた任侠団に手錠(ワッパ)なんてもってのほかだ」

 

「えぇ。天羽組のみなさんがいてこそ、この空龍街は守られているんですからね!」

 

「……………行くぞ、キクリ。まずは天羽組長に話をつけて、そして3人の応急手当だ。調査はそれからだ」

 

 

 

俺は背中を翻して3人を先導して組事務所へと向かう。

一瞬、キクリのクスッとした笑い声が聞こえた。

突然として張り切る俺を滑稽だと思ったのだろう。

 

 

「はいッ!!!シバさん!!!」

 

 

元気の良い返事とともにキクリも後ろからついてくる。

これが、俺らの仕事。守るべきもののためなら、なんだってする。

俺らは警官であり、秩序を守り正義を執行し、民を護る。

そのためには、善悪の判断をつける必要がある。

相手が極道だからといって、何も知らずに敵対するのではなく、彼らの正義を知り、信頼すること。それこそが、真に俺たちが力を合わせてこの国を守るための道だ。

俺らは、この国を平和にするために戦う。

 

俺たち警官は、この国に住まう人々を守ることが最大の使命である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、小峠の兄貴…………」

 

「どうした?飯豊、」

 

「俺、暴走族やってた時、サツは俺たちの邪魔ばっかりしてくる面倒くせぇやつばっかりだと思ってたけど…………」

 

 

俯きながらに口を開いていた飯豊は明るい顔を上げる。

 

 

「警察ってのは、カッコいいっすね!!!」

 

「そうだろう?カタギの身でカタギを守る、そんな本物のヒーローがあの2人なんだよ」

 

「そしてそれを当たり前だと思い、見返りを求めない…………だから俺たちからしても憧れの存在なんだよ、あの2人は…………」

 

 

 

 

 

 

 

「……………何をしている、もたもたしていると俺らの手で犯人を瞬殺するぞ」

 

 

「おう!今行くぞ!」

 

「行きましょう、兄貴!」

 

「…………あぁ、行こう。空龍街のためにな、」

 

 

 

 

 

2人の警官の背中を追って、3人の極道は血まみれの身体でまた一歩、歩き始めた。

守るべきもののためならば、その傷を抱えて歩くのはなんの痛みにもなりはしなかった。

 

それでこそ、天下の天羽組である。

 

 

 

 

 

 




司馬 喬皇平
Shiba Kyohei

極道や麻薬組織を取り締まる特殊犯罪対策課の警官。
「人々を守る」という事に何よりも重きを置く堅物な物腰の男。
警官らしい制服に背広と同じ色のマントを羽織り、腰のベルトからは時代錯誤な軍刀を吊るしている。
己の警官としての信念のためならば、人の心や法律すらも捨てて修羅と化すその冷徹さから「死神警官・死刃」という異名で裏社会に知られている。
悪人に対しては一切の容赦をしない一方で分別のある人間でもあり、本来は警官として取り締まるべき極道でも、人々を守ろうとする信頼に足る任侠者であれば手を貸すほど。
そのせいか彼を深く知る一部の極道たちからは慕われている。
めったに笑顔を見せないのには何か理由があるのだろうか。




菊理 弥二郎
Kikuri Yajirou

司馬の忠実な部下。
警察学校をトップクラスの成績で卒業した優秀な若手警官。
なのだが…………生まれ持った茶目っ気が暴走してたびたび司馬を困らせている。秘めた才能と仕事への情熱は本物だが、いかんせん問題児がすぎるために司馬からは煙たがられている。
制服は着るが帽子は被らず、金髪に一条の黒のメッシュというなかなかチャラチャラとした出で立ちであり、言動の一つ一つからも胡散臭さを感じさせるがコミュニケーション能力は司馬よりも遥かに高く、明朗快活な正直者のため、どこか憎めない。
仕事でミスをするたびに司馬から仕置きを受けたりひどく叱られたりするが、それでも自分を見限る事はしない司馬のことを信頼し、深く尊敬している。
12月25日に自分を産んだ母親を自慢に思っているらしい。
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