死神警官〜バグ大の極道たちに振り回される警察   作:書庫・ラ・オランジュ

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外道の衆、新生下離羅(ゲリラ)・忍び寄る大蛇(オロチ)の影

 

俺の名前は司馬喬皇平。

 

 

「むぅぅぅぅ………おのれ外道どもめ………ナマス斬りにしてくれるわ………」

 

 

幼なじみに外道の話をした特殊犯罪対策課の警官だ。

俺の旧知、六車は半グレ組織下離羅の話を聞くと腸煮えくり返ったりといった鬼の形相を構えた。

ただでさえ強面な顔面に血管が隆起し、怪物のような様相になっている。

 

 

「未来をある若者を攫うどころか、暴力で脅迫して犯罪の道具にするなどもっての外………虎徹、一刻も早く潰すぞ」

 

「はい。俺も、話聞いててマジで胸糞悪くなりましたんでやらせてください」

 

 

京極組は天羽組にも勝るとも劣らない血の気の多さだ。こうブチギレたらブレーキが折れた車のように暴走する。

 

 

「待てお前ら。無策で挑むというのか」

 

「フン、この六車謙信を甘く見るなよ司馬。それに虎徹も実に多くの修羅場を潜り抜けて成長を遂げた。今更半グレ外道組織の一つに敗れ去ることはねぇ」

 

 

六車の兄貴からは力への自信ではなく、努力を重ねる久我への信頼の気持ちの方を感じ取った。

 

 

「六車の兄貴………俺のことを見てくれて………」

 

 

久我が何やら嬉しそうに胸を押さえている。

 

 

「…………そういうことではない。どこにいるかもわからん連中を、どう捕まえるというのだ」

 

「あの子たちに訊いてみてはどうでしょう」

 

 

半グレに連れられていた子どもたちか。情報としては有力かもしれないな。

だが、

 

 

「あの子供らか?キクリがどっかに連れて行ったぞ。スイーツをご馳走するとか言ってたな」

 

「何やってんだあの人…………」

 

 

 

 

「ただいま~」

 

 

すると、子供たちを連れたキクリが帰ってきた。

 

 

「キクリどこへ行ってた。勝手な事をするなといつもいつも………」

 

「ちょっとそこのコンビニでシュークリーム奢ってあげてました。お土産に缶ビール持ってきたんで、皆さんもどうです?」

 

 

ビニール袋に4本の缶ビールが入っている。

 

 

「ほう、気の利く部下じゃねぇか。大事にしろよ」

 

「よその街で猫被ってるだけだ」

 

「こっから事務所までは少し距離ありますから、いっそここで飲んでしまうってのはどうですか?」

 

 

久我…………この辺の条例見た上でそれ言ってんのか。

自治体によっては条例で路上飲みが禁止されている場合がある。

車両や一般人の通行妨害で道交法違反となることもしばしばある。

 

 

「今日はもう夜遅いし、俺らもここまでは走ってきた。車やバイクに乗る予定もないし今日はもう飲んでしまうか…………」

 

 

警官ともあろう者が飲酒運転は論外だが今日に限って走ってここまで来た。

なら、多少は良いか。

 

 

 

 

 

 

 

「……………つぅわけだ!虎徹も成長したもんだぜ!それもこれも、俺が面倒見てやったおかげっつぅわけだ!」

 

 

俺らは路地裏の壁に背中を預けてキクリが持ってきた缶ビールを飲んで話していた。

俺は六車から、これまでに彼と久我の繰り広げてきた戦いの話を聞かされていた。

 

 

(シバさん………この人、話長くないですか………?)

 

(静かにしろ。いま機嫌良いところなんだからな)

 

 

六車は酒に弱い。しかも酔うとテンションのアップダウンが凄まじいのがたち悪い。

六車が極道になってからもよく会って飲むのだが、そのたびに酔いつぶれて面倒くさいったらありゃしねぇ。

 

 

「ところで、この子たちどうしましょう?」

 

「ウチでは預かれんぞ。ただでさえでっかい居候が1人いるのに」

 

「おーそんなもん俺に任しとけ!京極組が責任持って預かってやる!」

 

「言ったな?」

 

「おーう!この六車謙信に、二言はない、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで六車の兄貴がこの5人の保護担当となりました」

 

「なんだと…………俺が…………子守…………しかも、5人!?」

 

「自分で言ったんじゃないですか…………」

 

 

六車が久我によって京極組の事務所に搬送されて数分後、爆睡していた六車が目覚めた。

酔ってる間の記憶がないのか、この話を聞いて狼狽えている。

 

 

「よろしくおねがいします、六車のおじさん!」

 

「「「よろしくおねがいします!」」」

 

 

しかし、子供たちが天使の笑みでそう言うと、六車は頬を緩ませて少年たちを抱きしめた。

 

 

「任せておけ、この俺が、お前たちを引き取ってくれる方を見つけるまでの間、あらゆる脅威から死守すると約束しよう」

 

「重いですって兄貴…………」

 

「虎徹、お前も手伝ってくれるか?この5人を、施設のもとへ返す」

 

「しかし、もう一度施設に送り届けてしまえば、彼らを操っていた下離羅から新たな手がやってくるのでは…………」

 

 

その様子を見ていた子供たちは、沈黙する。

 

 

「君たち、親はどこにいるんだい?」

 

 

久我は子供たちに問いを投げかける。

しかし、子供たちは静かに首を振った。

 

 

「ぼくたち………お母さんどこかわからないんだ」

 

「ずっとむかしに、捨てられて…………」

 

「そうか…………」

 

 

なんと、彼らは発達障害を理由に親に捨てられていた孤児だったのだ。

 

 

「親はいない、施設は危険…………いったいどうしたら…………」

 

「司馬か。さっきはすまなかった。この子たちは家族もおらず、施設に帰ることもできない。そこでお前に引き取─────」

 

『馬鹿言ってんじゃねぇぞお前が言い出したんだろ』

 

 

電話越しに俺の声が六車を突き刺す。

 

 

「そこをなんとかできねぇか………この通りだ、」

 

(六車の兄貴が親っさん以外に頭を下げるなんて…………)

 

 

 

『ハァ…………俺と友人で良かったな。2人までなら預かってやる、後はそっちでどうにかしろ』

 

「すまん、助かった!」

 

 

ったく……………コイツに酒飲ませるもんじゃねぇな。

 

 

 

 

 

 

 

そして俺は事務所へ帰ってきた。

 

キクリは先に返しておいたので今頃呑気に留守番でもしているはずだ。

俺がいない間にまた変なことしてないと助かるのだが…………

 

 

 

「で、で、これツインテールにするでしょ〜。銀髪とツインテの親和性は卵かけご飯にかける醤油に匹敵するらしいぞ!さぁ、それでツンデレキャラやってくれ!絶対にッ、伸びるッ!」

 

 

帰ってきた途端、スマホのカメラを木ノ葉に向けるキクリと、なぜか髪を2本結っている木ノ葉がいた。

 

木ノ葉は辺りを見渡すと、机においてあったペン立てを掴み、両手でキクリの方に向かって差し出した。

 

 

「べ、べつに………あんたの事おもって作ってないから!勘違いしないでよねっ!たまたま食材が余っちゃったから………テキトーに作っただけなんだから………!」

 

 

ぷいっ、とあっちを向きながらくっそノリノリの木ノ葉。

おい、なんだこれは。

 

 

「あと………購買の焼きそばパンばっか食べたら………お腹壊すでしょ…………」

 

 

恥ずかしそうに髪をいじる木ノ葉。

 

 

「うぉぉぉぁぁぁぁ!!!!可愛い!!!ちょべりぐなんですけどー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何してんじゃお前らぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

俺は近くにおいてあった椅子をぶん投げた。

 

 

「ふっ、」

 

 

さすがの反応速度。木ノ葉は見事にそれを飛び退いて躱して見せた。

 

 

「ごはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

しかし、木ノ葉が椅子を避けたせいでキクリの顔面に椅子が直撃した。

 

 

 

 

 

「オイコラ、テメェら…………警察の部署でそういうの撮るなってなんべん言ったら分かるんじゃコラ…………」

 

「おかえりなさいませ、司馬さま」

 

「シバさーん、空気読んでくださいよ…………若者がイチャイチャしているのを「尊いなー、邪魔するのは野暮だなー」とか思わないんですか!?」

 

 

キクリは起き上がって非難のまなざしを向けてきた。

 

 

 

「は? (思うわけねぇだろバカなのかお前?)」

「は? (私が誰とイチャイチャしてるって?)」

 

 

俺と木ノ葉は同時に色を消した顔でキクリを見下ろす。

 

 

「ごめんなさい」

 

 

「あぁそうだ。連絡があるんだったな、キクリには伝わると思うが、しばらくの間、あの子供たちのうち2人をこちらで保護することにした」

 

「ほう。さすがの六車さんにも5人は難しかったか」

 

「京極組の組事務所も結構な警備だが、それでも公共機関(ここ)のほうが安全だろう」

 

 

俺は唯一経緯が分からない木ノ葉に子供たちの事情を説明した。

 

 

「つまり、司馬さまと菊理くんが巡回や捜査の際は、私が保護すれば良いのですね。かしこまりました」

 

「すまないな木ノ葉。迷惑をかける」

 

「いえ。私は司馬さまの従者です。主の要望に応えるのは当然の仕事です。それに…………」

 

 

木ノ葉は続ける。

 

 

「私情ですが………お子様を育てるのは私の夢ですから」

 

「…………そうだな。頼んだぞ」

 

「はい」

 

 

木ノ葉は少しテンションが高いようだ。

子供と自分だけの空間というのは、木ノ葉にとっては夢のような世界。

あくまで俺の頼みという体だが、彼女の要望も兼ねて承諾してくれたようだ。

 

 

「木ノ葉ちゃん、子育てするの夢なの?」

 

「まぁ、そんなところよ。あっ、そうだったわ。司馬さま、黒焉街の半グレ組織についてですね?」

 

「さすがにエスパーだな。どうして俺がその情報欲しいと分かった」

 

「回転寿司店でのお電話。黒焉街で強盗と聞いていたので。帰還後に独自で調べてみましたら下離羅という組織が出てきましたので」

 

 

流石に有能すぎるなこのメイド。

一大財閥のメイド長代行をしていたとなればこれくらいの能力はあるものなのだろうか。

 

 

「キクリ、こういうことだぞ。こういう細かいところに気を配る事が一人前の巡査への道だ」

 

「今日はもう夜遅いですし、捜査は明日に回すのですね?」

 

「あぁ。その予定だ」

 

「そうでしたら、情報は明日にお伝えいたしますから、本日はごゆっくりお休みください。私は今から京極組で預けられているお子様を迎えに行ってきます」

 

 

木ノ葉はエプロンを外すと、鞄を持って事務所の玄関へ向かう。

 

 

「木ノ葉ちゃん、気をつけてね?あっちは半グレいっぱいいるから」

 

「半グレの一匹二匹、敵にならないわ。それに、そんなものこの辺でもよく見かけるでしょう」

 

 

木ノ葉は足早に事務所を出た。

 

…………とことん仕事のできる娘だ。

俺でも驚きを隠せない。しかもこの女一般人だと言うのに。

 

彼女も相当な修羅場を潜り抜けてきている。

今更半グレの一匹二匹に危険を晒すような娘ではないが、流石に芯があるな。

 

 

 

なっ………しまった。

そういえば彼女にオロチのことを説明するのを忘れていた……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇー、お姉さんはあのおまわりさんの仲間なんだ」

 

「ごめんね、平太くん、恵くん。疲れているでしょうに、こんなにあちこち歩かせることになってしまって」

 

「ううん。おまわりさんは僕たちを助けてくれたんだ。今までよりずっと楽だよ」

 

 

木ノ葉は京極組から2人の子供を預かった。

 

 

 

 

 

 

その時、木ノ葉たちの向かう道の先に、和服の男が、民家の壁を背に立っていた。

 

 

「……………………こっちの道に行きましょ」

 

 

木ノ葉は子供たちを連れてすぐに角を曲がり、視界からその男を消した。

 

 

「お姉さん?顔が………こわいよ………?」

 

「あら。ごめんなさい」

 

 

そう、木ノ葉はあの距離から見抜いていたのだ。

あの男の異常性を。

 

 

(なんてとてつもない闘気…………司馬さまや菊理くん、それから天羽組の武闘派にも匹敵するほどの重圧。私では到底、勝ち目がないわね)

 

 

木ノ葉は平太くんを抱きかかえ、恵くんを背中に背負うと全速力でその場を走り去る。

 

 

 

 

 

そして、この直後、とんでもない事態が発展する事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回『久我VS木ノ葉・最悪の邂逅』

 

 

 




司馬喬皇平
Shiba Kyohei

薬物売買や暴力団などの反社組織を取り締まる特殊犯罪対策課の巡査部長。
『裏社会の凶星』と称され、『死神警官・死刃』と恐れられる男。
上の指示よりも住民の「平和に過ごしたい」という集合的無意識を優先するためまっとうな警官ではない。
しかしその献身的な行為と覚悟と決意の強さを任侠者には慕われており、多くの極道がその存在を知っている。
京極組の武闘派、六車謙信とは幼なじみ。
めったに笑わない鋼のような男だが、ごくまれにド天然ぶりを見せることがある。



菊理弥二郎
Kikuri Yajiro

司馬の部署に勤める金髪の若き見習い巡査。
警察とは思えないひょうきん者ぶりを発揮し、周囲の空気を和ませる天才。
その雰囲気とは真逆に、一流の国立大学出身の優れた頭脳と豊富な知識量で司馬をサポートする、部署のブレイン。
特殊な条件が揃った場合を除いて、基本的に戦闘はできないが、修羅場は乗り越えているのか無駄に生存能力に長けている。
明らかに裏社会に漬け込んだだけの一般警官のような存在でありながら、明らかに人外な部分を垣間見せる姿から司馬からは『逸般人』という二つ名を勝手につけられている。
司馬がつけた肩書は『ガチ無能クソ四流巡査』。
壮絶なパワハラを受けても全く気に病まないくらいには司馬を尊敬している。
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