死神警官〜バグ大の極道たちに振り回される警察   作:書庫・ラ・オランジュ

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久我が血ダルマ・闇の蛇、反町(そりまち)恩朗智(おろち)

 

 

─────俺の名前は久我虎徹。

 

 

「どうなってんだ…………これ、」

 

 

一人で暗闇の中に取り残された武闘派の極道だ。

 

 

俺は六車の兄貴、それから菊理巡査と司馬巡査部長の4人で、この街を荒らす半グレ組織を襲撃した。

下離羅と名乗るそのグループを撃破した直後のことだった。

 

 

 

「─────馬鹿もここに極まったな。なぜ昨日あのような目に遭ってなお、この街の夜を歩く、」

 

 

暗闇の中には、六車の兄貴も、2人の警官の声もしないし、姿も見えねぇ。

ただ、俺の身体と、暗闇の中に反響する誰かの声だけがある。

なんだ…………この魔法みてぇな術は。

 

急に周囲が暗闇に落ちて、見えなくなった。

そうだ、昨日もそんな事があったんだ。

 

 

「……………………隠れてねぇで出てこい。それとも、ビビってんのか?」

 

 

俺は敵の姿を見るために挑発してみせる。

 

 

「別におれは、お前に臆病者と思われようがどうでもよい。今のおれには、剣士の誇りなど無い…………目の前にある獲物を狩る、ただの剣だ」

 

 

チッ、あくまでも隠れやがるな。

 

 

「この街の夜は危険だ…………素人は、外を出歩くな」

 

「なんだとコラ………」

 

 

俺はこの街でどんだけやってきたと思ってんだ。

テメェなんかに、素人呼ばわりされる筋合いはねぇぞ。

 

 

「テメェ、何しにここへ来た」

 

「知れた事。この街に蔓延る外道を討つ為に来た。邪魔をするな」

 

「なんだと…………?」

 

 

外道を殺しに来た?

まさかコイツも下離羅をやろうとしてたってのか?完全に俺らの敵ってわけではねぇのか。

 

 

 

 

 

だが、そんな俺の予想とは真逆の出来事が起きた。

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「いだい!いだいよぉぉっ!!!」

 

 

なんと、暗闇の向こうから子供の泣き叫ぶ声が聞こえてきたのだ。

俺は何が起きているのか一声で悟った。

 

 

「や、やめろ!!!子供たちは関係ねぇ!」

 

 

子供たちが、傷つけられてる…………!

 

 

「馬鹿が…………外道に大人も子供もない。我欲で人々の平穏を脅かし、その生活を侵す悪党は言うまでもなく。また、自らの意思を持たず、物事の善悪もつかない、ただひたすら悪党共に言われるがままに悪を成す子供もまた死ぬべきだ、」

 

 

向こうから壮絶な肉斬り音がする。

 

 

「や、やめろ…………!!!ふざけんじゃねぇ!!!そいつらは、騙されただけだ!罪のねぇ子供を利用する、あの外道共に使われただけだ!本当は、罪を犯すことなんてしねぇんだよ!」

 

 

俺は子供を襲う男を止めるために暗闇の中を駆ける。

子供の悲鳴はあっちから聞こえる。

 

 

「ふん、罪の意識も持てない程度の知能だろう。騙されたからなんだ。罪を犯した事実は消えないし変わりない。そうして少年だから………立場のある者だからと………罪を見過ごされた者が新たな悲劇を生み出す瞬間をおれは見てきた。おれが成すのは、法の闇に潜む犯罪者を一匹残らず駆逐する事だ。邪魔をするな、」

 

「うるせぇよ……………」

 

 

俺はチャカを抜き、暗闇に向けて発砲する。

 

向こうから金属の音が響く。

火花で周囲がわずかに明るくなったが…………

 

 

(チッ、暗いなおい…………誰がどこにいるのか分からねぇし、音も反響してるせいで敵の位置が掴めねぇ、)

 

 

……………それと同時に、凄まじい重圧が周囲に立ち込める。

 

 

「邪魔をするな…………と言った筈だが?」

 

 

俺の周囲から反響する声が聞こえてくる、

 

 

 

 

───────次の瞬間、

 

 

「闇に足を踏み入れた時点で、貴様の運命()は確定している………!」

 

「ぐぅぅぉ………!!!」

 

 

声の主が背後から俺を攻撃してきた。

 

背中を一直線に鋭い痛みが駆け巡る。

臓腑には届いていないが傷は決して浅くない。

 

 

(この感触………刃物で斬られたか………!)

 

 

そして、俺のスーツを、まるで糸を解くように切り裂いたその切れ味、日本刀か………!!!

 

ナイフで斬られりゃもっと荒い切り傷がつく。

だが、それはまるで肉を断つというより裂くような痛みだった。

 

 

「このスーツ結構するんだわ…………!!!」

 

 

俺は背後に向き直り、素早いバックステップで飛び退きながら発砲する!

 

チャカの銃口から散る火花が暗闇を照らす。

 

その光の先から──────

 

 

「なんなんだお前は、お前も死にたいのか?」

 

 

低い姿勢で俺の銃撃を躱して迫ってくる男の姿だった!

 

その動きはまさに蛇。

群青の髪、藍色の着物がその動きに流れている。

 

それによって奴の手元は見えにくいが、確かに何かを握っているのを俺は確認した。

刀…………かとも思ったが、刃が見えない…………なんだ、ありゃあ。

 

 

「ちっ!」

 

 

いや、考えてる暇なんてない。こいつの地面を這うその速度は目で見切るのは困難。

見えない速さじゃあねぇが、その体勢でできる速度じゃねぇ。

 

うねるような動きのせいで狙いがつけづらい。

しかも、敵の攻撃がどこから飛んでくるかもわからねぇ。

 

 

「お前に用はない三下。何もなさずに死ね」

 

 

うねるような動きで俺の足元に迫った瞬間に、やつは打ち上げられた魚のように跳ねやがった。

そのまま敵は俺の首根っこに肉薄し、俺の首を米稲のように刈り取ろうとしてきた。

 

 

「うおォォォァッ!!!」

 

 

それを俺は皮一枚、ナイフで受けた。

まさか初見で受けれるとは思ってなかったが奇跡的に凌げた。

 

 

「どうだコラ!」

 

「ふん、」

 

 

やつは俺の首から離れると闇の中に溶けて消えた。

いい感じに奴にプレッシャーを与えられたようだ。

 

だが…………六車の兄貴たちはどこに行ったんだ?

これだけの物音を立てておいて、気づかないなんてありえない。

 

 

「虎徹!!!どこにいる!!!」

 

 

闇の奥、俺の背後から六車の兄貴の声がした。

 

 

「六車の兄貴!!!」

 

 

俺は反射的にそっちを向いた。

 

だがそれと同時に、

 

 

「舐めるな。余所見するほどの余裕が貴様にあるか素人め」

 

 

六車の兄貴の声の反対側から和服の男の一閃が奔る。

 

 

「ぐがぁぁっ!!!」

 

 

俺は反応できずに背中を深く斬り裂かれた。

クソが、俺の反射神経じゃ捉えられねぇ………!

 

気配がまるでないせいで、近づいてくる感覚がしないんだ。

無駄話で位置を掴もうとしても、闇に反響する声のせいでやつのいる場所もわからない。

 

何より……………何も見えねぇ。

 

 

「この闇の中にいるおれの姿が見えないお前が、どうやっておれに打ち勝つつもりだ?否………不可能だ、」

 

 

気がついたら敵はもう俺の眼前にいた。

奥から迫ってきたわけでも、横から現れたわけでもない。

少なくとも俺には、闇の中に突如として、瞬間移動したかのように見えたんだ。

 

 

永久(とこしえ)の闇に眠れ………四流チンピラ、」

 

 

俺の首筋めがけて冷たい温度が迫る。

俺には見えていなかったが、そこには刀の刃があったのだ。

 

暗闇に溶け込み、全く見えない刃が。

そうだ、ヤツは明らかに何か握っているのに、姿が見えなかった。

その正体がコレだった。

暗闇に溶け込む黒塗りの太刀。それこそが、ヤツの見えない斬撃の正体だった。

 

 

 

だが次の瞬間──────

 

 

 

 

「虎徹ぅぅぅぅぅ!!!!!」

 

 

俺たちの間に割って入った六車の兄貴が、二本の太刀を一斉に振り下ろしその一撃を破ったんだ!

 

 

「六車の兄貴!!」

 

「チッ、邪魔が入ったか…………」

 

 

すんでのところでヤツの一撃は遮られた。

 

 

「カァァァァァッ!!!!」

 

 

続けざまに六車の兄貴の横薙ぎが炸裂する!

 

敵は身体を低くしてそれを躱した!

 

 

「剣士か……………ふむ、」

 

 

暗闇で何か軽い金属のような物を構える音がする。

 

 

「がっ!!!」

 

 

俺の両足から、何か細長いものに穿たれた痛みと音がする。

 

敵はこの暗闇の中、六車の兄貴の太刀をしゃがんで躱したあと、黒塗りの六角を俺の脚に向かって投げつけたんだ。

 

 

そこから間髪入れず、

 

 

「ハッ!!!」

 

「なにぃぃぃっ!!!」

 

 

兄貴の横薙ぎの終わり際を狙い、敵は低い体勢から斬り上げに繋げやがった!

 

 

「バカな…………弾かれただと!?」

 

 

六車の兄貴の腕の筋肉は京極組でも最強だ。

動かすことなんて絶対にできない。

だが、コイツが兄貴の太刀を弾いた時、その太刀のふっとびに兄貴の腕が持っていかれたんだ。

 

 

「くそっ…………」

(なんつーバケモンだよ…………兄貴の斬撃を躱して、しかも暗闇で俺の両足に正確に六角を投げつけてから兄貴の太刀を返すほどのスピードが残ってやがるのかよ………!)

 

 

「テメェごときに…………虎徹と子供たちはやらせねぇ。罪なき子供を斬るクソ外道が…………!膾斬りにしてくれる………!」

 

 

六車の兄貴にも、あの子たちの声は響いていた。

 

 

「お前も四流か。こいつと同じ事を言うんだな………そうか………子供に外道は居ないと主張するのか………」

 

 

敵は暗闇の中で刀の刃を向ける。

 

 

「やはり、うわべだけの善悪に踊らされるお前たちのような愚か者こそ、真っ先に死ぬべきだ………金や権力に逆らわない国家の犬どもも、女子供とあらば全てに罪をないと決めつける猿どもも、全員死ぬがいい………!」

 

 

男の声に震えが滲み始める。

そこにあるのは兄貴への恐れではなく、強い怒りのようなものだった。

 

 

「必要なのは、悪を一つ残らず滅する修羅の心のみ。お前たちのような、義理だの人情だの、その時その時での気分で手を汚して、さも自分らが善をなすかのような顔をしているだけの四流など………要らん!!!」

 

 

敵は蛇のように体勢を低くし、六車の兄貴に迫る。

 

 

「来るか…………!!!」

 

 

六車の兄貴は両足を開き、腰を落とす。

 

 

 

だが────────

 

 

「シュゥゥゥ!」

 

 

「なんだとォォ!?」

 

 

奴は六車の兄貴を相手にしないどころか、その股下を通り抜けて背後にいる俺を狙いやがった!!!

 

 

「まずい…………!」

 

 

俺は両足を貫かれている。今ここで襲われても、戦えねぇ…………!

 

 

 

 

だが俺に対する現実は容赦ない。

敵と俺との、一方的な斬り合いを強制された!

 

 

「まずは貴様からだ…………!死ね、」

 

「オオォォォォォォォォ!!!!」

 

 

脚使えなくても腕ならなんとかなるだろと思っていたが全然そんなことねぇ。

俺の斬撃はかすりもしねぇ。

そればかりか、敵の攻撃も次々と俺に当たる。敵の動きにまったく追いついていない………そりゃそうだ、こんな真っ暗闇でそんなスピードで真っ黒の刀振り回されて、誰が防げるんだよチクショウ!!!

 

 

「次はいつ行くか、」

 

 

敵は左手の指で4本の六角を挟む。

次、いつ投げられるかわからない。

敵は完全に俺を揺さぶろうとしている。流れはすべて持っていかれた。

 

 

「そこだ、」

 

「ゴァォォォッ!!!」

 

 

敵の投げた六角のうちの3本が、俺の脇腹を打つ。寸前で身体をずらしたおかげで一本外した。

脚をやられてる以上何度もできる芸当じゃねぇが………

 

 

(いや、大丈夫だ…………脇腹ならまだイケる、)

 

 

 

だが、敵は俺の予想を超えている強敵だった。

 

 

「何を棒立ちしている素人め」

 

 

なんと、敵が六角を俺の頭めがけて突き出してきた。

敵が投げた六角は最初から3本。うち一本がまだ手元に残ってやがったんだ!

 

 

「ぐぅぅぅぅぅぅ!!!!」

 

 

眼球を貫かれようとしていた俺は顔を避ける。

六角は俺の額を割って突き刺さった。

 

 

(くそ、外しきれねぇ………!!!)

 

「フン、」

 

 

さらに刀の柄が俺の右腕の二の腕を叩いた。

二の腕の内側の筋肉は、人体の急所だ。

激烈な痛みが全身を駆け巡る。

 

 

「グゥゥ………オォォォァァァ!!!!!」

 

 

痛みでナイフを手放しそうな右手を、なんとか気合で握りしめる。

 

だが、

 

 

「やるな………どうやら痛みには強いようだな。ならば、これならどうだ」

 

 

俺の右手が瞬時に敵の左脇に挟まれ、同時に膝蹴りが炸裂した。

 

 

俺の右手の指は膝蹴りで完全にへし折られ、さらにそのまま膝が俺の脇腹に突き刺さった六角をさらに深く押し込んだ。

 

 

「うガッ……………!!!」

 

 

口から血が逆流し、ナイフが地面に落ちる。

 

 

「闘いは圧倒的なものだ、先に動いたほうが動かなかったほうを蹂躙する………そういうものだ、」

 

 

さらに追撃の一閃が俺の胸を深く切り裂いた。

 

 

「うォッ…………!!!」

 

 

常人ならもうとっくに死んでる。こいつはこの暗闇の中でも、さも明るい場所と同じように立ち回る。視界を奪われて満足に動けないこちらを、有利な土俵で圧倒しやがる。

認めたかねぇが…………この暗闇で、俺がこいつに勝てる可能性はゼロだな。

 

だがな………………

 

 

「初めっからゼロな事柄なんてねぇんだわ………!」

 

 

だったらそのゼロをイチに引き上げんだよ!

1%でも可能性が残ってりゃあそれで十分だ!

 

 

胸を裂かれた俺は後退ではなく、敵に向かって一直線に走る!

そのまま敵の身体を、抱きしめるようにして捉えた。

 

 

「今だ………!!!六車の兄貴ぃぃぃ!!!!!」

 

 

アイツじゃねぇが………根性論なんだよ!!!

この命がある限り、俺は負けてねぇ!!!

 

 

「なにぃ………………」

 

 

まさか俺が前に出るとは思っていなかったのか、敵が意外そうな言葉を口にする。

 

 

「虎徹ぅぅぅぅぅ!!!!!」

 

 

俺が奴を足止めしている間に、六車の兄貴が二本の刀を手に、奴に飛びかかった。

 

次の瞬間、兄貴の落雷のような両断が空気を斬り裂いた!

 

 

「チェェェェァァァァリャァァァァ!!!」

 

「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!!!!!」

 

 

大岩でも落ちてきたのかってぐらいのけたたましい音が鳴り響いた。

 

奴は兄貴の一撃を刀で受け止めていた。

 

 

「……………なんだ貴様は、(ひぐま)か」

 

 

だが兄貴の一撃があまりにも強烈過ぎた。

ヤツの刀は完全にその勢いを押し切ることができず、刀の峰が側頭部を直撃し、割れて流血していた。

両手ならもしかしたら受けれたかもしれねぇが、俺が左腕を拘束していたからそれはできなかったのさ。

 

 

(流石に多対一では分が悪いか。納得は行かんが、すべき事はした。ここは退く、)

 

 

すると奴はぬるりと俺の拘束から難なく逃れ、バックステップで距離を取る。

 

 

「待ちやがれ!!!」

 

 

俺は全力ダッシュでそれを追う。

 

 

「やめろ虎徹!!!迂闊に近づくな!!!」

 

 

兄貴の叫びももう遅い。

 

 

「いや、もう遅い!!!」

 

 

次の瞬間、理解できない現象が起きた。

 

 

「ぐ………うぉぉぉぉぉっ!?」

 

 

なんと、俺はありえない距離から胸を切り裂かれたんだ。

暗闇に消えゆくヤツと俺の距離は相当離れているはずだ。普通、刀でこんな遠くまで攻撃できるはずがねぇ。薙刀でも握ってやがったのか?

 

 

「バカが。近づくほど貴様が不利になることがまだわからんのか」

 

 

そして瞬時に六角…………!!!

 

 

「ぐ…………うぅぅぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

俺の首に六角が突き刺さる。

 

 

「六車…………だったか?貴様の名前を覚えておいてやる。おれの名は恩郎智(おろち)。次に貴様を見た時は…………今度こそ本気で仕合ってやる」

 

 

そしてオロチと名乗った男はまた絶対に届かないだろう距離から刀を降ろしてきた。

俺は勝手に、敵が日本刀を使っているもんだと思っていた。だが、そんなのは最初から分からなかった。

こんな暗闇の中で、アイツの身体は見えても武器が闇に溶け込んでいて見えなかった。六車の兄貴は、視認できない刃と切り合っていたんだ。

 

そして、視認できなかった刃の正体を俺は身を以て知ることになる。

 

 

「では、さらばだ貴様の事は死ぬべき犯罪者としてではなく、剣を極めた者として知っておくぞ!」

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

闇に溶けた不可視の刃が俺の肩をバッサリと切った。刃は内臓に届かないギリギリのところで止まった。これが、兄貴の剛剣を止められるほどの腕力だったら俺の身体は間違いなく真っ二つだった。

 

振り抜かれた刃は俺の肩の肉を完全に切り落とし、工場の床を叩きつけて爆発のような音を巻き起こしていった。

 

 

その一撃で俺は流石に限界だった。

勝てるとは思ってねぇよ。どうせ勝てる可能性はゼロなんだ。

ゼロをイチに引き上げるために、そして兄貴のターンをサポートするために。色々やってみたんだが……………

 

 

「虎徹ぅぅぅぅぅ!!!!」

 

 

俺が倒れ伏した時、すでにオロチの影は消えていた。

オロチが去ったことにより、工場には明かりが取り戻される。

 

 

 

 

 

「久我!六車!どこへ行っていた!」

 

「ちょっとシバさん!!!久我さん死にかけじゃないですか!!!闇医者、闇医者!!!」

 

「何があった、なぜこんな事になっている!なぜ牢の中に囚われていた子供たちが全員死んでいるんだ!!!誰がやった!!!」

 

「なん…………だと…………?」

 

 

司馬巡査部長と菊理は、俺たちのやり取りに気がついていなかったようだ。

あの闇の中は、外からも見ることができないようだ。

だがそれより……………罪のない子供たちは、全員殺されてしまったようだ。

それと同時に、下離羅の連中も全員死んでいた。

 

オロチ……………あの剣士がやったんだ。

 

 

あの子供たちは違うってのに………何も知らねぇ無垢な子供が………クソ外道に騙されて、脅迫されて………利用されてるだけだってのに………

 

アイツは事情なんて無視して、子供だろうが見境なく…………

 

 

「…………………………クソッ!!!!」

 

 

 

俺の中には怪我の痛みなんかより、どうしようもねぇ無力感だけがあった。

 

 

 

そしてこの直後にも、さらなる戦いが俺たちを待ち受けていたんだ──────

 

 

 

 

 

 

 

次回『決戦・恩郎智VS司馬』

 

 

 

 

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