死神警官〜バグ大の極道たちに振り回される警察   作:書庫・ラ・オランジュ

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外道の衆・日滅軍

 

 

俺の名は司馬喬皇平。

 

 

「おぉ!よくおいでなすった司馬さん!」

 

 

 

天羽組の事務所を訪れた特殊犯罪対策課の警官だ。

俺たちが天羽組事務所を訪れて、その人物に会った時、天羽組事務所には漢の甲高い歓迎の叫びが響いた。

 

 

「ご無沙汰しております、天羽組長」

 

「お久しぶりです〜!」

 

 

老齢丸刈りで着流しの、いかにも任侠者といった風体の親父が一人。

この方は天羽組の組長、天羽桂司(あもうけいじ)だ。

 

 

「おぉー、サツの兄ちゃんじゃねーかー。久しぶりだなー、元気にしてたかー?」

 

 

背後から紫色の髪をした、目が完全にイッている男が菊理にヘッドロックを仕掛けてきた。

 

 

「うぃでででででででー!!!小林さんもお久しぶりです!!!」

 

「小林ぃ、ほどほどにしてやるんだぞ?」

 

 

組長が笑って看過するほどだ、友好のサインだろう。外国人が友人にハグする感覚なのだろうな。

菊理には申し訳ないが相手してもらおう。

 

 

「はぁい、命の危機を感じたらやめまーす」

 

 

それじゃ駄目だろう。

小林幸真(こばやしゆきさだ)………天羽組においてはマスコット級の武闘派極道。

その恐るべき戦闘能力は天羽組の最高戦力として数えられるほどであり、その狂気的な見た目と必殺の攻撃からついた通称は「悪魔と餓鬼のハーフ」。

 

 

「親父ぃ、なんでサツがここにいるんですかぁ」

 

 

…………また一人ややこしいのがやって来たな。

 

 

「げェッ!誰かと思ったら極道と手を組んで日本征服を図ろうとする絶対に曲がらない信念持ってるタイプの鬼教官!」

 

「なんだそれは。あと俺は教官ではなく警官だ」

 

 

須永陽咲也(すながひさや)………またもや天羽組の狂人組だ。

やれやれ、組長と話をしなければならないのにちょっかいかけが増えていく一方だ。

 

 

シバシ(司馬氏)、誕生日はいつでしたっけ」

 

「また星占いか?俺は4月7日生まれだ」

 

「出た!学生の頃、学年で一番歳上で先輩気取りできるからみんなから憧れていたタイプのヤツッ!!!ちなみに今日の星占いで牡羊座は1位!!!須永にタッチすると電子マネーが2%還元されます」

 

「それはお前を殴れと?」

 

 

俺はいい加減うるさい須永に、見える程度の優しい拳を食らわせる。

 

 

「いでぇぇぇぇぇぇー!!!!ジュラシック・パークの丸い乗り物恐竜にぶち壊される時ぐらいのスリルゥ!!!」

 

 

不意打ちなのに須永は見事防いでみせた。

 

 

「相変わらず戦闘用だな、身体は」

 

「なにすんだシバシあんた人の心ォォ!!」

 

「それで天羽組長、ぜひお話したいことがあるのだが一つ聞いていただけないか」

 

 

 

 

 

 

空龍街で突如として爆発事件が発生したことを天羽組長に伝えた。

そういえば、小峠たちとも出会っていたんだが、やつらは怪我していたので病院に押し込んだ。

病院といっても市民病院では拘束時間は長くなるだろうしムダにタフなあの連中は言っても聞かないだけだからテキトーな闇医者に預けているだけだ。応急処置を終えたらすぐにここへ来る。

 

 

「うぅむ……………」

 

 

話を聞いているうちに天羽組長の顔はどんどん険しくなっていく。

普段は義理人情あふれる優しい漢だが、愛する街を傷つけられてその逆鱗に触れればたちまち冷酷な形相へと変わる。

まさに天羽組という組織の擬人化ともいえる男だ。

 

 

「ウチのシマである空龍街を爆破させる不届き者がいるとはな………」

 

「もちろん、貴方達がこれを見逃すことはないだろうと確信した上でこの話を持ち出したのだが、目の前で起きたこととなれば当然我々にもこの地を表から守る者としての意地がある。そこで天羽組と我々警察とで手を組み、共に今回のことの犯人を探し出したいと思っている。犯人の身柄は喜んでそちらに預けて可能な限りの地獄を以て始末していただきたい」

 

 

天羽組長は俺の顔を見て頷いた。

 

 

「相分かった、我々の手でこの空龍街に手を出した外道に、必ずや制裁を加えよう!!!」

 

「ご協力、感謝いたします」

 

「小林、須永。他の組員にも伝えるんだ。天羽組の総力をあげてケジメをつけさせる」

 

「ハイ、シバシにパンチされたお手々が治ったらすぐに知らせまぁす」

 

「おー、よっしゃあ暴れる時間だぞー!」

 

「いだだだだだだだ!!!!もう小林さん、離してくださぁぁぁい!!!!」

 

 

こうして、天羽組と俺たち警官とでの協力関係が結ばれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天羽組事務所に寄ったあと、俺たちは自分たちの部署のある拠点へと戻っていた。

別にこれと言って語ることのない、質素な事務所である。

 

 

 

「ただいまー!」

 

「今戻った。木ノ葉はいるか?」

 

「木ノ葉でしたら、ここに」

 

 

天井のダクトから白髪の人影がシュタッ、と降ってきた。

いつも思うが動作のキレが凄まじい。

 

 

「ただいま木ノ葉ちゃーん!なになに、今日のメイド服は藍色にしたの?いいよねその色〜」

 

「えぇ、私自身も気に入っているの」

 

 

それは華奢な体型をした、白髪碧眼の可憐な若い女だった。

そこのメイドは趣味と習慣により日頃からメイド服を着る。

気が散るので俺もできることなら止めさせたいんだが、なにしろ彼女本人の趣味なのだからどうしようもない。

エプロン部分は毎回同じなのだが、下に着るワンピースの色や模様を毎日変えてお洒落を楽しんでいるらしい。

ま、警官服で毎日色変わりのない俺たちの事務所にも、模様替え要素はあってもいいか…………と思って今はノーコメントである。

 

 

彼女の名前は石長木ノ葉(いわながこのは)

特殊犯罪対策課の警官…………ではない。

色々とややこしい事情があって、今はここで面倒を見る事になっているが悪人ではないし、頼りになる女だ。

 

 

「見回りにしてはお帰りが遅かったようですね。昼間の爆破事件の調査に、天羽様の所をお尋ねになっていた、といったところでしょうか」

 

 

この通り、警察関係者でもなければ現場に居合わせたわけでもないのに街の様子と警察の動向を余裕で見破れるほどのアンテナの強さを持っている。

 

 

「あぁ。天羽組も今回の件を追っているそうで、手を組むことになった。犯人はまだ分かっていないようだがな」

 

「木ノ葉ちゃーん、お茶とお菓子出して〜。お茶はいつもの感じでいいからさぁ」

 

「承知しました。司馬さまはいかがいたしましょう」

 

「できる限り甘ったるくないもので頼む」

 

「はい、ただいま淹れて参ります」

 

 

木ノ葉は一礼してお茶を淹れに行った。

 

 

「お前はもう少し緊張感を持て」

 

「えー、ヤですよー。勤務中ならともかく、帰ってきた時ぐらいはゆっくりしたいじゃないですかー………」

 

「お前、別に勤務中も気張ってないだろ」

 

 

しくしく、と泣いてるフリをするキクリに呆れて言葉もない。

 

 

「あっ、そういえばシバさん」

 

「なんだ」

 

「さっきの、犯人に心当たりがあるのかって話あったじゃないですか。あれ、今思うとちょっとだけ気になるのがあるんですよね」

 

「気になるものだと?」

 

「えぇ。どうも最近、ある左翼系の組織が幅を利かせてるみたいなんです」

 

「左翼組織?どこで聞いた」

 

「この前スマホいじまってたらSNSでちょっと見かけたんですよね。最初はスパムとか荒らしとか、そういうやつなのかなーなんて思ってたりもしたんですが、もしそういう左翼系でマジもんだったりとかしたら爆破ぐらいしそうじゃないです?」

 

 

ヘラヘラと笑いながらキクリは言うが、俺はそれを天羽組長と一緒にいる時に言うべきだったのではないかと言うほどの重要な情報だと思った。

俺はキクリと比べると世俗には疎い。SNSは業務で閲覧する程度で、こいつのように勤務中に触ったりするようなことはないし興味もない。

だが、そういう場所にアンテナを張っている彼らからすればそういう違和感もまた一つの手がかりとして見えてくるのか。

 

極左の組織というのはまったく何をしでかすか分かったもんではない。

時に暴走しようものなら警察でも抑えるのが困難な厄介者になる。

あの爆破がもしキクリの見解のとおりに極左組織のテロ行為だったとしたら、これはかなり近づくための鍵となりそうだ。

 

 

「それは日滅軍の事?菊理くん」

 

「そうそうそれそれ!…………それってなに?」

 

 

てめぇ、知ってねぇに頷くなよ………!!!

 

 

「日滅軍?初めて聞いたぞ。木ノ葉、なぜその名を知っている」

 

「この前、私のSNSアカウントにそのような名前の組織の構成員からダイレクトメッセージが届いたんです」

 

 

なに…………?

 

 

「ダイレクトメッセージ?たしか、アレか。SNS上で知り合った者が一対一で話せるやつか?」

 

「まぁ、概ねそんなところですね。木ノ葉ちゃんは可愛いから、知らない男からのDMなんて、毎日たくさん来ちゃうでしょ」

 

「組織に属しておきながら一般人女性をこんな詰めの甘い方法で勧誘するような不用心さはおそらく一般構成員のすることでしょう。今のところは無視していますが、司馬さま。いかがいたしましょう。私が連絡を取れば、あるいは接近できる可能性もありますが」

 

 

うむ…………左翼組織そのものには社会への害となる要素はない。だが極左となるとやり口が汚くなってくる。どのような事をしてでも自分たちの正しさを証明しようとしてくることがある。

ここはどうしたものか…………慎重に出るべきではあるのだろうが。

 

 

「おぉー!すごいね!3000いいね、400リプぐらい来てるじゃんその写真!」

 

「お前ら…………」

 

「シバさんも見てくださいよ!この写真の木ノ葉ちゃん、めちゃ可愛くないですか!?」

 

「人が考えてる時にスマホの画面を押し付けるなバカタレ………!」

 

 

見れば木ノ葉が今日のメイド服姿で、トレイにお茶を乗せた姿を映した写真が見えた。

たしかにその姿は二十歳なって間もない年頃の乙女らしい可憐さだが…………

 

 

「……………ちょっ、おい待て!てめぇこれ、ここの事務所じゃねぇか!!!」

 

 

背後に写ってる部屋が完全にここだった。

 

 

「はい。周辺の景観を映すわけにも行きませんので」

 

「何言ってんだてめぇは!?普通に警察の機密情報だぞこれ!!!」

 

「私、警察ではありませんので」

 

「バカか!違う所でやらんか!」

 

「えーでも、ここスタジオみたいな感じなんですよー………いつもここで木ノ葉ちゃんと僕で写真撮ってるんですよ、こんなふうに」

 

 

また別の写真を見せてきた。

 

 

「おいキクリなんでお前も一緒に映ってるんだよ!!!しかもてめぇらこれ2週間前の写真じゃねぇか!」

 

「いぇーい。若手部員のツーショット〜」

 

「イェーイです」

 

 

俺が見てない所でコイツらどんだけ好き勝手なコトしてるんだ…………!

一見すると生真面目なように見える木ノ葉だが、彼女は礼節こそわきまえているものの、中身はけっこうはっちゃけている…………というか、あるいはキクリよりも陽気な心を持っているのではないかと思う。

まぁ、実際ここの3人の中で特に一番若いので年頃の娘らしいところではあるのだろうか。

 

 

「それでシバさん、どうします?」

 

「うーむ…………一旦その策、乗ってやろう」

 

「おぉー!これは面白いことになりそー!」

 

「だがキクリに関しては特に気を配り続けろ。日滅軍とやらの情報を聞き出すための手段にすぎない。普通にコミュニケーションを楽しむんじゃないぞ。お前に言っているんだぞ、木ノ葉」

 

「はい。重々承知しております」

 

 

それ誰が信じていると思う?

 

 

 

 

 

 

そして、その後はキクリの指示のもと、木ノ葉はネットのメールのやりとりで日滅軍の構成員と関係を築いていくことになる。

今のところ、勧誘に乗るような方針でいる。

 

キクリの救える部分と言えば、切り替えが遅いもののやる時はやれるという点だ。

 

そして万が一に備えて、上には捜査の一環として接触するにあたって同意のもとで木ノ葉の力を借りるという形で報告をしておいた。

木ノ葉の存在の説明をせるのは困難極まりないが何とかなったようで良かった。

 

 

 

 

 

 

 

─────そんな事があってから数日後、

 

事態は急変する。

 

 

「シバさん!!!シバさーん!!!」

 

「──────ん、なんだ、」

 

 

キクリにしては、らしくない慌てぶりで事務所の扉をこじ開けて飛び込んできた。

なにか急ぎの事態があったと見た。しかも、キクリが慌てるとなるとかなりのものだ。

 

 

「何があった、」

 

「大速報ですよ、シバさん!木ノ葉ちゃんと連絡を取っていた日滅軍の構成員が、「先日の爆破事件の犯人は自分たちだ」って自慢してきましたよ!」

 

 

キクリの裏返った声から出てきたのは衝撃の事実。

突拍子もない、けれど非常に重要な報告だ。

 

 

「なんだと…………!あの爆発事件は、日滅軍の犯行か!」

 

 

悔しいことに、キクリの勘は見事的中していたのだ。

 

 

「また、今朝の朝刊にもいま申し上げた内容が書かれております。日滅軍のトップと思われる人物が、自分たちの犯行を大々的に公表しているそうです」

 

 

木ノ葉も新聞を一束。そこには先日空龍街を襲った爆破テロについての記事が。

 

 

 

日滅軍は武闘派の極左団体。

日本の企業の海外進出や国家のグローバル化を否定し、日本国の完全共産国家化を推進しようと画策している過激派団体。

 

先日の爆破テロは空龍街で開催されるシンポジウムを狙ったものだった。

空龍市が海外進出しようとしている日本企業に援助金を提供しようと、その資金提供に関する会議だったのだ。

それを連中は「企業の海外進出をうたった帝国時代の植民地支配の再建、それを助長するための資金提供である」と解釈したようで、それを阻止しようと今回のようなことを引き起こしたらしい。

 

 

 

「ちなみにたぶんリーダーと思う人はこんな面白い声明を出したんですよ、見てくださいこれ、ひどくないですか?」

 

 

 

 

 

「近年この国にはグローバル化などと偽りの言葉などを掲げ、国外進出を図る企業がある」

 

「だがしかし、その実態は日本による海外侵略行為であり、第二次世界大戦時の植民地支配を復活させようとするもの。その侵略行為を我々は実力行使によって阻止することに成功した」

 

 

 

 

 

「これはひどいわ。罪のない人々を巻き込んでおいてよく言えた口ね」

 

「ちなみに、先日の爆破事件で300名以上が重軽傷、残念なことに死者が7人出ているって聞きましたよ」

 

「───────率直に言うと、救う価値はない」

 

「はい、木ノ葉もそう思います」

 

「えぇ。僕もこれにはプチッと来ましたよ!」

 

 

歪み腐ったその思想による軽い気持ちの行動で、罪のない空龍街の人々を数多と傷つけ命を奪い、そしてそれを誇るように公表する…………か。

頭が悪いのか肝が据わっているのか。どちらにせよその自信は大したものだが、それとこれとは別問題だ。

 

 

「奴らはこの国の暴走を止めようとしている正義の味方を気取っているようだが…………それは大きな間違いだ」

 

 

なぜなら、奴らこそがこの国の癌のようなものなのだからな。

 

 

 

 

「癌は切り捨てるに限る。もはや一切の同情の余地はない。キクリ!!、木ノ葉!!!俺たちの総力を挙げて、日滅軍これを叩き潰す!!!それこそ実力行使でな…………」

 

「ハイッ!!!」

 

 

シュバッと敬礼するキクリ。

 

 

「承知、」

 

 

スカートの端を持ち一礼する木ノ葉。

俺たちの決意は決まった。

 

話を聞く限り、この外道どもに生きる資格のないと判断した。

奴らを野放しにすればもっと多くの国民たちが巻き込まれることになるだろう。

挙げ句日本国を飲み込もうとは、許す余地はまったくない。日本国全国の国民を守るためならば、俺はいかなる犠牲をも厭わない。

 

それがたとえ、人の命を奪う事になってもだ。

 

 

 

「害獣に人権などない!!!これは殺人ではなくれっきとした害獣駆除…………よって俺たちは天羽組と共に、日滅軍の完全破壊を行う。蟻一匹逃さずこの世から消し去ってくれる…………」

 

 

これを消し飛ばせずして、誰が死神警官の異名を名乗れようか。

この名に愛着もなにもないが、そうであったとしても、警官としてはこのような悪魔の所業など、両目が潰れても見逃すまい。

 

 

 

「キクリ、天羽組に繋げ。俺は準備を整える。木ノ葉は奴らの話をもっと聞き出せ。団体であれば会議招集が行われるはずだ。その日程と開催予定地を聞き出せ。その日を狙ってひねり潰す」

 

「わかりました、」

 

「了解です!それじゃ僕、天羽さんに電話しますね!」

 

 

 

こうして、各自俺たちは準備を進めることになった。

 

 

 

 

 

準備を進めていくうちに俺は街へ行って不審な人物がいなかったかの聞き込み、

 

キクリは俺について行きながら時々必要とあらば天羽組へ向かって情報共有、

 

木ノ葉は引き続きバカ構成員との連絡を取り内部情報を探り出していた。

 

 

──────そうして1週間。

ついに事態は動きだした。

 

 

 

「天羽さーん!!!天羽さーん!!!」

 

「誰が天羽だ!!!」

 

「あっ、間違えたシバさーん!!!天羽組のみなさんが敵の情報を掴めたみたいですよ!幹部のヤサを見つけて、さっそく粛清してくれたみたいです!しかもやったのは青山さんです!」

 

「そうか、ならばこっちも負けてられないな」

 

 

 

青山、ここからでは聞こえんだろうが、ナイスだ。

おかげでこっちもやる気が湧いてきた。1週間も怒りを溜めていれば、そろそろ本気でキクリをブチ殺していたかもしれない。

 

 

『司馬さま。構成員から、天羽組の討伐したものとは別の部隊に関する情報を聞き出すことに成功しました。今夜22:00から、村雨町付近の下水道で、日滅軍の部隊の一角が秘密の会合を行うとのことです』

 

「今夜か。命拾いしたなキクリ。もし明日だったら俺の怒りは抑えられずお前が先に犠牲になっていた」

 

「え?え?え?え?え?」

 

 

俺が真顔で冗談を言うなんて珍しいからな。

さすがのキクリも一瞬だけ笑顔を消した。

 

 

「さて………今夜は、久しぶりに警察らしい仕事ができるんじゃないか?」

 

「おー!やっぱ捜査は体当たりが一番気持ちいいですよね!」

 

 

キクリは飛び上がって嬉しそうにする。

 

 

「キクリ。勘違いするな、遊びに行くわけじゃない。これは国民を救うための業務だ。真面目にやらんか」

 

「は、はい!戦闘狂しちゃダメってことですね!了解!」

 

「いや、戦闘狂はしろ。全滅させろ。一人も残すな」

 

「マジっすか僕来たやつだけやっつけるつもりだったのに」

 

「害獣駆除は全頭駆除するに決まってるだろう。なぜスズメバチの巣だけ撤去して肝心のスズメバチを回収しない」

 

 

お前は俺のもとで何を学んできた。

俺は顔を近づけてキクリに強烈な圧をかける。

 

 

「さ、流石は執念の死神警官……………」

 

「分かったらさっさと準備をし…………いや、お前に準備するものはないか」

 

「えぇ。若者は身体1つとスマホ1台あれば何でもできますので!」

 

 

やれやれ…………その余裕ぶりと現場の信頼感あるだけ、つね日頃から信用できる警官であってほしいのにそれがなぜできないのか。

 

 

 

 

さて……………日滅軍、お前らの国家転覆ごっこも終わりだ。

ごっこ遊びまでなら許されたが、本物の国民の命を奪ったのなら、ここからは本物の戦争だ。

奇しくも目的は同じだな。俺たちもこの国をより良くするために働いている職業だ。

だがな……………俺たちは正義と秩序と、何より国民の命を背負っている。

 

甘ったれた考えで調子に乗って、目立ちたがろうとする子供のままごととは別だ。

 

本物がどういうものなのか、改めて教えてやらねばなるまい。

 

 

 

俺はこの国の警官が大嫌いだ。

 

人権だのなんだの、余計なありもしない幻想に縛られて、けっきょく真実にたどり着けない。

裁くべきものを裁くこともできず、殺すべきものを殺すこともしない。

 

 

 

ならば、貴様らが手に持つその拳銃は何のためにある?

臆病な犯人を怖がらせるためか?

 

この拳銃は、我欲に他人を巻き込み支配し、その命に危害を加えるような、生きる資格のない外道から国民を守るために、これを射殺するための道具だ。

 

 

 

そんなことも分からない、決断力もない、信念のない警官など、キクリにも劣るほどの無能だ、ゴミだ。

 

俺は違う。俺は撃てる。命の選別をわきまえている。

 

俺は国民のために修羅となる覚悟がある。

 

守るべきものだけを守る、警官に必要な感情はそれだけだ。

それ以外を守る、生かす理由など………毛ほどもない。

 

 

そのために、俺は死神に魂を売った。

 

 

 

日滅軍。お前らはこの国の警察が撃てないと知ってそのように調子づいているのだろう。

 

なら…………俺が今行ってやろう。

警察のあるべき姿を、警察のかつての姿を。

 

 

 

この俺のやり方を……………お前らに見せてやる。

 

 

 

お前たちの過ちに気づいたその瞬間こそが、お前たちの最期だ。

 

 

 

死神警官・死刃に目をつけられて、生き延びられた罪人は一人もいない。

 

 

 

俺は警察だ。守るべきもののためならば、

 

 

 

 

 

野獣を殺すことぐらい、喜んでしてやる。

 

 

 




石長 木ノ葉
Iwanaga Konoha

司馬の事務所に居候中の見た目二十歳前後の娘。
司馬や菊理と比べて大きく歳の離れた若さでありながら、彼の元へ来る前はある名家の護衛兼給仕を務めていた。
普段は事務所の掃除やお茶汲みなどの雑用を任されているが、時に任務に協力してくれることもある。
ボブカットに左右の房をつけた白髪に碧眼という、一目見てしまえば魅了されそうな整った容姿で、かつての習慣から屋内外問わずメイド服を着用するようにしている。
言動から機械的な印象を漂わせるが、菊理のように陽気に世俗を満喫したり、洋服が好きという年頃の娘らしさも秘めている。
司馬のもとへ来る前の経歴については半分以上謎に包まれている。
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