死神警官〜バグ大の極道たちに振り回される警察   作:書庫・ラ・オランジュ

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六車の兄貴とオロチが対峙……六車本気のブチギレ

 

 

大学の講堂内で、俺は史上最悪の敵と相まみえる。

 

 

「久我ァ………オメェのそのイカしたツラ、この俺がぶっ潰してやるぜ………!!」

 

「顔が潰れちまったら女の子に顔向けできなくなっちまうだろうが」

 

 

俺の前に立ちはだかるこの男が、今回の事件におけるラスボス、ってやつになるんだ─────

 

 

 

 

 

 

 

─────俺の名前は久我虎徹。

 

 

「六車の兄貴!まもなく講堂前に着きます!」

 

「あぁ。敵はどこから出てくるかわからん、最大に警戒しとけ虎徹!」

 

 

六車の兄貴と一緒に、今世紀最大のクソ外道を叩き潰すべく、大学内でバイクを飛ばす武闘派の極道だ。

 

 

 

 

今、俺たちは、司馬巡査部長と菊理巡査の2人の警官と協力し、この黒焉街の子どもをさらって犯罪の道具に仕立て上げるクソ外道、佐志原を追っている。

 

 

「ぐがあああああああああああああっ!!!!」

 

 

しかし、その一大決戦の最中に、菊理巡査は爆発に巻き込まれた。

 

 

 

 

 

原因になったのは、さらった子供だった。

アイツはどうやって手懐けたのかは知らねぇが、子どもたちに自分を守らせるように仕向けていた。

 

 

「ぼくたちが、おじさんを守るよ!」

 

「おじさんは僕たちのことを守ってくれたんだ。それに、おじさんのお手伝いをしたら、たくさんほめてくれるし、やさしいし、ごほうびもくれるんだ!」

 

 

幸運を一つ上げるとするなら、アイツは日頃からはどうやら子供に酷い仕打ちはしていなかったみてぇだ。

むしろ、手厚く保護していたようだな。

だが、そんなのもうどうでもいいし、なによりもうそんな事はありえなくなった。

 

アイツは…………女の子が首に巻いていたチョーカーを爆弾とすり替えていた。

それで、女の子もろとも、菊理巡査を爆死させた。

菊理巡査は見るも無残な姿に変えられ、そのまんま目を覚まさなくなった。

 

そして俺たちは菊理巡査が最期に伝えてくれた佐志原の名だけを頼りに、今敵の本拠地へと突入してるってのが事のあらましだ。

 

 

 

 

 

六車の兄貴と二人乗りした俺のバイクが、ついに講堂の目の前まで着けた。

 

 

「オイ、来やがったぞ!!」

 

「あれ京極組じゃねぇか!?」

 

「関係ねぇ!俺たちの仲間じゃねぇなら、全員やっちまえ!!」

 

 

講堂の前にはバリケードを張って、多くの武装した半グレたちが集まっていた。

 

 

 

 

だがな─────今の俺は過去イチブチギレてるんだわ。

 

 

「六車の兄貴!このまま突っ切るっすよ!」

 

「応!この程度の雑魚共、一瞬で蹴散らしてくれる!」

 

 

 

俺はバリケードを前にして、むしろ昂りすら覚えてバイクのスピードを上げる。

 

 

 

「マックススピードでぶっちぎってやる…………」

 

 

大事なバイクだが、今はバイクの修理費用よりも、黒幕をブッ飛ばす事のほうがずっと重てぇ事なんだよ!!!

 

 

「お、おい!止まれ!止まりやがれ!!!」

 

「だ、誰かアイツを止めろ!!!」

 

 

半グレたちは止まらねぇ俺のバイクに怯えて慌ててチャカをぶっ放す。

だがもう完全に手遅れだよボケが!!!!

 

 

 

 

「ドリフトで……カッコよく着けてやらァ!!!」

 

 

「ごぎゃぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「かぱぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

俺はぶつかる直前に車体を横に向けて倒し、バリケードを突き破り、正面にいた半グレたちを勢いよく跳ね飛ばしてやった。

 

 

「ぐぅぅぅぁっ!!!」

 

「むぉぉぉっ!!!」

 

 

バイクはそのまま壁にぶつかり大破。

俺と六車の兄貴は地面に投げ出される。

 

 

「────京極組だ!ここにいる全員、今すぐ全員ブチのめしてやるから、腰抜かしてねぇで………さっさとかかってきやがれ!!!」

 

「こっちは既に血ィ流してるがな、テメェらみてぇな下衆共が心配するようなダメージになってねぇ!」

 

 

 

 

そっから先というのは、マジで単純で呆気なかった。

 

 

「テメェらいったいどういう神経で佐志原の味方をしていやがるんだ、この外道が!!!輪切りになれ!!!」

 

 

「タコォォォッ!!!」

 

「イカァァァァッ!!」

 

 

 

 

「テメェらのせいで、罪のねぇ女の子一人が犠牲になったんだ!テメェら全員の命があっても代えられねぇ尊い笑顔がよ!せめて死んでからあの子の眼の前で地獄に落ちやがれ!!!」

 

「ぐぎゃぇぁぁぁ!!」

 

 

俺と六車の兄貴の力で、講堂の前に集まった半グレたちは全員紙くず同然に消え去った。

 

 

 

そして俺は最後に一人だけ残しておいた。

 

 

「オイ。今すぐ佐志原のことについて知ってることぜんぶ吐きやがれ。あのクズはどこにいる」

 

「し、しししし知りません!!!で、でも………大学のどっかには…………!!!」

 

 

親切に親切に、しーんせつに聞き出してやった所、最後の一人は素直に答えてくれた。

 

 

「そうかよ、ならテメェは用済みだ」

 

「ぶぎゃぁぁぁぁっ!!!」

 

 

俺は渾身のブチギレパンチで顔面を陥没させた。

 

 

 

 

「大学のどっかにいるって、大雑把すぎんだろ………ここ結構広いんだぞ」

 

「仕方あるまい。手分けして探すぞ。この大学は東棟と西棟に分かれている。東棟は教室棟で、西棟は食堂や事務室などがある。俺は西棟を、虎徹は東棟を探すぞ。モタモタしていると佐志原に逃げられるかもしれんからな」

 

「了解です兄貴!」

 

 

俺と兄貴は二手に分かれて佐志原を探すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、西棟の4階では予想外の客人が紛れていた。

 

 

「な、何をする………!離せ!離さぬか………!」

 

「………………………………………」

 

 

なんと、腰に刀を差した和服の男が一般人男性の襟を掴んでいたのだ。

その姿…………もはや見間違うはずもない。

 

 

──────辻斬りオロチ…………反町恩郎智だ。

 

 

「先生………!今警察を呼びますから………!」

 

 

部屋の隅には、大学の事務員たちが膝をついていた。

そう…………捕まっていたのは、なんと大学の教授だったのだ。

授業は終わったが、この時間まで仕事をしていた所を襲われたのだ。

 

 

「サツを呼ぶだぁ?何考えてんだクソアマ!ぶっ殺すぞ!!!」

 

「舐めてんじゃねぇぞボケナスが!!!」

 

 

部屋には三人の半グレがいた。

半グレは通報しようとした事務員の女性に襲いかかった。

 

 

「よせ、」

 

 

しかし、和服の男が彼らを制止した。

低く重く、聞き取りにくい声だが、半グレたちは止まった。

 

 

「あぁ?何言ってんだよ!テメェはアホなのか?」

 

「通報なんてさせるわけねぇだろうが!それともなんだ、テメェはサツの世話になるのが好きだってか、あぁ?」

 

「女相手だからってカッコつけようとして調子に乗ってっと、テメェからボコしちまうぜ?」

 

 

オロチはもはや半グレたちの相手もしようとしない。

彼らのくだらん挑発にマトモに乗る気はないようだ。

 

 

「…………おれは悪人以外を殺すつもりはない。おまえらの方こそ勘違いするなよ、おまえらを斬れば、『奴』との関係に亀裂が入り、おれの本来の目的から遠のくから放置しているだけだ。それに、わざわざ今から呼ばぬでも警察はすぐに来る」

 

「は?何言ってんだテメェ?」

 

「直ぐに解る。おまえらの方こそ命が惜しければ調子に乗るのはやめて早くこの建物を出ることだな。おれは忠告しておいたぞ」

 

「わ、私はどうなる…………!私をどうする気だ………!?」

 

「騒ぐな。おれがそこの馬鹿共とどういう立場関係であったとしても、おまえは結局今ここで死ぬ。学長と共謀して不正を働いた事がバレていないとでも思っていたか………?」

 

「な、ななななななさ何の話をしている!証拠はあるのか!」

 

「証拠か?要らん。おまえの眼を見れば分かる。醜い欲を抱える獣を死ぬほど見てきたが、おまえの眼は相当の濁り方だ」

 

「しょ、証拠がないではないかぁぁぁっ!?」

 

 

 

 

「おいコラ下衆共!!!この京極組のシマで何を勝手な事しとるんじゃあ!!!」

 

 

そこへ六車の兄貴が扉を蹴破って現れた。

 

 

「な、なんだテメェ!」

 

「貴様ぁ…………勝手に入ってきてんじゃねぇ!」

 

 

半グレたちは六車に対して噛み付こうとする。

 

 

「勝手に入ってるのはテメェらだろボケが…………未来を担う若者だけでなく、大学の罪のねぇ人々まで巻き込むテメェらは正真正銘の外道だ。全員まとめてこの六車が地獄に送ってくれる…………」

 

 

六車が半グレたちを牽制している間に、事務員たちは逃げ出す。

 

 

オロチは罪なき彼らを追わなかった。

 

 

「─────やはり忠告した通りだったな。では、調子乗りのおれはこの場をデキる人間に任せるとするか」

 

 

オロチは教授の身柄を抱えたまま、階段を登ってさらに上の階へと消えていった。

 

 

「あの野郎……………」

 

 

六車の兄貴が3人の半グレと対峙する。

 

 

 

 

「死ねやおっさん!」

 

「3対1だ、一方的にやっちまうぜ!」

 

「俺たちに一斉に噛みつくからだバカが!」

 

 

3人が一斉にチャカを弾いた。

 

 

 

「テメェらの小汚ねぇ弾なんて、本能的に勝手に避けんだよ」

 

「え、はやっ………!?」

 

 

しかし六車の兄貴に素人の射撃なんて当たるわけがない。

 

 

「二つに分かれとけぇぇぇぇ!!!」

 

 

「ごぎゃぁぁぁぁっ!!!」

「ワカッツ!!!」

「ぐぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

3人まとめて上下に真っ二つだ。

六車の兄貴は白兵戦の鬼と呼ばれる最強の剣豪。

この程度の相手、100人でかかったってかなわねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして六車の兄貴は上の階に登り、オロチを追跡する。

 

 

5階の部屋にはテーブルや椅子がたくさん並んでいて、壁際にはテラスへと続く扉があった。

 

六車の兄貴は扉をぶち破って迷わずテラスに出る。

 

 

「高級ホテルみてぇな食堂してんな………外にはこんな洒落た噴水までついていやがる。久しぶりに見たぞ、この間欠泉みてぇなヤツ」

 

 

六車の兄貴がテラスを少し進んだ先に………………

 

 

 

 

「──────おまえは神を信じるか?おれは信じない。だが………おれは運命というものはこの世にあると思っている」

 

 

 

 

───────その男は立っていた。

 

 

その掴みどころのないような、まるで実態がないような不気味さ…………

青の着物。だが、鮮やかな青のはずが顔色のせいで一気に全身がやつれた青灰になったかのように見えるこの立ち姿。

 

 

「…………運命とは、在るものを在るべき場所へと導く事だ。おまえとこうして再び相間見えたのは、それこそ運命というものだろうな………」

 

 

これは完璧に、本物の辻斬りオロチだ。

 

 

「テメェみてぇな色男に運命なんて感じたかねぇな。だが、運命を信じるのは同意してやる。テメェは今から、この六車謙信によって、首を落とされる運命にあるんだからな」

 

「おまえが…………おまえ如きが…………落とす?おれの、この首をか?」

 

 

オロチはフン、と鼻で笑った。

鼻で笑ったが、口元はやはり緩まなかった。

 

 

「……………黒焉街には二刀流の剣豪がいるらしい。だが、その剣豪とやらは剣の技量はともかく、自身の力量を過信しているらしい」

 

 

それは驕りでも侮りでも蔑みでもない。

むしろオロチは苛立ちすら覚えているように見えた。

それは、オロチが六車の兄貴の力量が、自身のはるか下にいるということへの確信…………

 

自身の実力への過信でもなく、六車の兄貴を過小に見たわけじゃない。

奴が今まで対峙してきた数多の猛者たちと比較した時の、闘気の違いがあるだけの事だった。

 

 

「誰もテメェに勝てるかどうかなんて言ってねぇ。仮にテメェが俺より上だったとしても、死んでも俺はテメェを叩っ斬る!!!」

 

 

六車の兄貴は強烈な圧をぶちかます。

普通は正面からこれ受けるだけでも余裕でタマ抜けるもんだ。

 

 

「くだらん…………戦いの世界とは実力こそが全て。漫画じゃあるまいし、根性による補正などおれの前では全て無効だ」

 

 

しかし、オロチは涼しい風のごとくその重圧を無視した。

この男だって本物の天才剣士だ、嘘はない。

六車の兄貴だろうと、コイツに完封で勝てるかどうかはまだわからない。

なにより、それは六車の兄貴がわかっている。

 

 

(勢い良く啖呵切ったが…………コイツの闘気は過去に見てきたどんな奴よりも強大だ。…………天羽組の最強剣士・和中蒼一郎のような、こちらを萎縮させるほどの重圧というよりかは…………逆に圧力がないと言ったらいいか。そもそも全く相手にされてねぇような気分がする)

 

 

オロチは六車の兄貴の圧を耐えたというより、全く気にしていなかったのだ。

子猫の威嚇なら可愛いで済むが、そういった感想すらない。

この男は相手の気配の変化に対してまったく反応を示さない。オロチは何が起きても無感情。揺るがない精神性を持っているんだ。

 

 

「い、いいから………は、はやく私を離せ!!」

 

 

まだオロチに捕まったままの教授がもがき始める。

 

 

「とにかく、その者を離さんか!!指一本触れれば、この二刀がお前の身体を二つにする!!」

 

 

六車の兄貴が教授を守るためにオロチに脅しをかける。

 

 

「─────────フン」

 

 

オロチは少しの沈黙もせず、すぐに行動した。

 

 

「か、ぁ…………、っ、」

 

 

なんと、オロチは迷う事なく教授の首を斬り落としたのだ。

床に教授の切り落とされた頭部が転がる。

 

 

「…………………そら、」

 

 

そしてオロチは、転がった教授の頭をサッカーボールみてぇに蹴っとばしやがった!!!

教授の頭部は5階のテラスから落下していった。

ついでに首から下を掴むと、それもテラスの下に投げ捨てたのだ。

 

オロチは不快そうに手を払ったあと、六車の兄貴の方向を向き…………やはり、一笑もせず睨みつけたんだ。

 

 

「──────で?今、なんて言ったんだ?」

 

 

 

 

次の瞬間─────!!!

 

 

「この………腐れ外道がぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

六車の兄貴が床を蹴って容赦ないスタートを切った!!!

 

オロチはまるで六車の兄貴を挑発するかのように無慈悲に命を切り捨て、挙句その亡骸に人とは思えないような仕打ちをしやがったんだ。

こんなの、任侠の塊たる兄貴が許すはずがない。

 

 

「チャァリャァァァァァ!!!」

 

 

六車の兄貴の一太刀が勢いよく空を切り裂く。

 

 

「今のところ時間には余裕がある。土産に黒焉街の剣豪を破ってやろう」

 

 

オロチが六車の兄貴を挑発した理由………それは、

 

 

(二刀流の剣士…………今の時代に珍しい相手だが…………故にこそ、挑む価値がある)

 

 

単に六車の兄貴が剣士だったというだけの理由だったんだ。

オロチは六車の兄貴と戦うつもりすらなかった。そんな価値もないと思っていたからだ。兄貴はただ、暇つぶしに使われただけだったんだ。

 

 

「チェストォォォォォ!!!」

 

「二刀流の流派は絶滅危惧種だからな。我流になるのも仕方がないが………いや、それにしても雑すぎるな」

 

 

しかし、六車の兄貴の2発の先制攻撃はオロチには全く届かなかった。

 

 

「大木のような太腕は興味深いがな。ただ筋力で鉄塊を振り回すだけならば熊の方がまだ強い、」

 

「むぅ……っ!」

 

 

そればかりか、オロチは回避の折に、六車の兄貴の腹に浅い裂傷を残していきやがった。

 

 

「最近は意味のない殺し合いばかりだったために、試合をするなんて久しぶりに感じる。義理の妹の鍛錬に付き合ってやった時と同じ気分だ」

 

「その小せぇ口を閉じろ!!テメェにとっては遊びなんだろうが、こっちとしちゃ組のメンツと街の人々の事がかかっとるんじゃ!!!」

 

 

六車の兄貴と辻斬りオロチ……………

 

最強の剣豪2人がついに遭遇しちまった。

 

 

「辻斬りオロチつったな…………人の命を紙くずのような軽さで扱うテメェみてぇな下衆は………この六車の剣の錆にしてやらぁ………!!!」

 

「勝てない相手に可能性を見出そうとするその姿勢、気に食わんな…………一度、徹底的に斬り刻んだほうが、おまえのような阿呆(おとこ)には解り易いか?」

 

 

そして、この戦いはこんなもんでは済まされないほどの大きな戦いに発展しちまうんだ…………

 

 

 

 

 

 

 

一方の俺は、片っ端からドアを開けて行っていたが、教室棟に佐志原どころか人影も見なかった。

 

 

残るは…………そこの時計塔…………?

 

看板を見る限り、どうやら図書館などがあるらしい。

俺は3階の渡り廊下を伝い、塔のラウンジに入った。

 

 

「…………あ?」

 

 

ラウンジは綺麗に整頓されていたが、中央の机になぜか1枚の紙が敷いてあった。

 

俺は後ろ手で扉を閉め、不思議に思ったその髪にゆっくりと近寄る。

 

 

 

「──────────────」

 

 

机まであと5歩くらいか。

あの紙はなんだ、こんなわざとらしく置いてんならなんか意味があるはずだ。

まさか、佐志原のメッセージ………?

 

 

「ウラァッ!!!」

 

「なに…………ぐぉあっ!?」

 

 

直後、俺は背後から頭をフルスイングされちまった。

 

 

声に気づいて後ろを振り向いたのが噛み合い、後頭部ではなく側頭部を行かれた。

 

これが後頭部だったら失神していたかもしれねぇ。

 

 

「ぐぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

俺はラウンジの机と椅子をぶっ飛ばしながら床に転がされる。

 

 

「おうおう!イカした吹っ飛び方だったぜ!」

 

 

その男は、桃色の髪をした異様な空気の男だった。

手に持ってたのは、ラウンジに置いてあったパソコンのキーボードだ!

俺の頭に当たってキーボードは粉々に砕けちまったみてぇだがな。

 

 

「っぐ…テメェ…っ、背後から卑怯だとか……思わねぇのか………!」

 

「卑怯、だぁ?気が付かなかったのはオメェだろぅ?扉空けた時点で、最初から扉の真横に俺は居たんだよ。まぁもっとも、開いた扉が裏に居た俺を隠しちまったみてぇだがなぁ、」

 

 

そう言って、男はニヤついた。

 

 

「…………おいお前、佐志原ってクソ野郎を追ってんだ。アイツはどこにいる」

 

「ファーザーか?ファーザーならこのラウンジのもうちょい奥にいるぜ。この時計塔の上の方にな、」

 

 

意外にも男はすんなり答えてくれた。

 

 

「そうかよ、じゃあお前にもう用はない。ここの学徒じゃねぇならさっさと帰れ」

 

 

俺は黙って男の真横を横切る。

 

 

「まぁ待てよ、そんなイケてねぇこと言わねぇでくれよ」

 

 

しかし、男はわざわざ避けてやった俺の前に踊り出てきたんだ。

 

 

「何がしてぇ」

 

「…………………………ヘッ、」

 

 

次の瞬間、

男は俺の胸ぐらを掴み、そのまま勢いよく突き飛ばしてきやがった。

 

 

「俺だってこれでも仕事してんだよ。ファーザーから言われてんだよな、『オレのもとに、仲間以外の誰も近寄らせんな』………とさぁ、」

 

 

男と俺の距離は5メートルほど離れた。

 

 

「なるほどな…………そういう事かよ、」

 

 

俺は怒りに震える拳を握りしめ、佐志原のために残しておいたブチギレパワーを引っさげて、目の前に立ちはだかる男に向かって走り出す!!

 

 

「だったら、テメェをぶっ飛ばして先に行くだけのことだ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「オォォォラぁぁッ!!!」

 

 

先手を切った俺の拳は空気を薙ぐ。

敵は背中を反らし、俺の拳を紙一重で躱した。

 

 

「………っぱ、そう来なくっちゃあな!!!さすがは京極組のスピードスター・久我虎徹!!!」

 

 

飛び退いた男はラウンジのソファに飛び乗った。

 

 

「せっかく乗ってやったってのに、逃げてんじゃねぇ!!!」

 

 

俺はソファの上に乗る男に向かって飛び蹴りを食らわせようとした。

 

 

「やっぱオメェも、最高にイカしてるぜ久我ぁぁッ!!!」

 

 

だが奴はギリギリでソファを倒して、飛びかかる俺の真下を潜り抜けた。

 

 

「ぐおわっ!?」

 

 

攻撃を外した俺はソファの先にあったテーブルの上に倒れた後、背中を翻してもう一度突進!!!

 

 

「オォォォォッ!!!」

 

「ドラぁぁッ!!!」

 

 

だが、目の前から椅子と机が吹っ飛んできやがった!!

 

 

「ぐぉぉっ!!!」

 

 

俺は自分の自慢のスピードのままに飛んでくる障害物に突っ込んでいっちまった。

アイツが蹴っ飛ばした机と椅子に身体中をぶつけながら俺は転倒する。

 

 

「んじゃ、まぁ…………始めようぜ久我…………俺は斑鳩亥億(がいお)だ。病院のベッドで思い出せるように覚えときな、」

 

 

斑鳩と名乗った男は壁に向かって走り、そのまま壁を駆け上がる。

 

そのまま真後ろに宙返りし、振り上げた脚で、立てかけてあった水道管を蹴り飛ばす!!

 

 

俺に背を向けて着地した奴の右手には、その水道管が握られていた。

 

 

 

「───────────」

 

「───────────」

 

 

俺と斑鳩は正面から向き直り、睨みながら互いの間合いに歩み寄る。

 

 

 

「イカした勝負にしようぜ…………久我、」

 

「チッ───────」

 

 

 

武闘派半グレ────斑鳩亥億。

 

俺の前に現れたこの男の力が、ついに明らかになる…………!

 

 

 

 

 

 

次回『ジェスター・斑鳩亥億………久我の全力発揮。』

 

 

 

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