死神警官〜バグ大の極道たちに振り回される警察 作:書庫・ラ・オランジュ
俺の名前は司馬喬皇平。
外道の魔の手から国民を守る特殊犯罪対策課の警官だ。
現在俺たちは極左組織日滅軍との徹底戦争状態だ。
空龍街の爆破、天羽組事務所の襲撃。度重なる悪行の末に俺たちの怒りは頂点に達し、今宵こそは日滅軍を完全に滅ぼすことになった。
そして俺とキクリ、そして木ノ葉は現在、日滅軍の本部の前にいる。
そこは以外にも洋館のような荘厳で綺麗な建物であった。
「きれいな建物ですねー」
「外道どもには勿体ない物件だ。さて木ノ葉、天羽組の動きは?」
「松村のヤサを襲撃するために小林さまと和中さま、それから青山さまが出撃しています」
「過剰戦力すぎないか…………」
「そりゃ組の威信に関わることですからね。奇襲とは言え一度ドローンの侵入を許してますし街を爆破されて組員まで病院送りになったんですからもう天羽組も後がないんですよ」
最強戦力ばかりを投入しているためどう考えてもオーバーキルだが、任侠集団というのは体面で食べていく職業だ。
組とシマがやられていて加減している場合でもないか。
「こちらには小峠さまともう一人助っ人が来てくださるようです」
「小峠ともう一人?なぜ名前を濁らせる」
「あれじゃないですか。僕らがバラさないにしても口にすれば壁と障子になんとやら、って感じで情報が漏れる可能性が1%でもついちゃうじゃないですか。ほら、潜入役とか女ヒットマンとかは事前に存在が予告されていたら何の役にも立ちませんからね」
キクリは仕事はできないがこういう時は無駄に頭が働く。
「そういう事です、菊理巡査、司馬巡査部長」
噂をすれば小峠と一人の美しい女性が背後からこちらへ歩み寄ってきた。
「あっ、小峠さーん!」
「小峠か。すまないな、こんなところまで手伝いに来てくれて」
「いえいえ。ご苦労さまです司馬巡査部長。石長さんもずいぶんとお久しぶりで」
「小峠さまもお久しぶりです。司馬さまがお世話になっております」
木ノ葉もペコリと一礼する。
「そういえば木ノ葉ちゃん、今夜は衣装気合はいってるんだね。髪は金髪だし、左右の房も編んでるなんて。やっぱ金髪に赤メイド服は合う!すごく、良い!僕の見込み通り!!!」
今日の木ノ葉は彼女が俺に拾われて間もない頃に、少し後に俺のところへ配属されたばかりのキクリがどこかから買ってきた赤い服にしていた。
「たまには昔を思い出すのも悪くはないかと思って、髪を染め直してきたの」
「そこのメイド。貴女、ものすごく可憐で素敵。どこかに仕えていたのかしら。風体と仕草からして相当に高貴な出のようね」
「あっ、ハイ…………ぇっと、そう言っていただけて木ノ葉はルンルンでございます、」
木ノ葉がそこまで照れるのも無理はない。
小峠が隣につれてきた女は茶髪に妖艶なドレスを身にまとった絶世の美女だった。
女の殺し屋…………変わったものを持ち出してきたな天羽組は。彼らはこんな所にもコネがあるのか。
「レディ、名前は何というんだ」
「あら、わたし?わたしのことはパールと呼んでちょうだい」
「いちいちポーズするのやめろ」
女の殺し屋、パール…………まるで聞いたことがない。
「彼女は女ヒットマンとして連れてきました。見た目はか弱い淑女ですが、戦闘能力においては射撃の名手であるのでそこはご心配なく」
「いや、べつに心配はしていないのだが」
「あら冷たいのね。でもわたし、クールな男性は好きよ」
「な、っ…………!?」
「シバさんを引き込むなんて凄いですね………シバさん、なんでもできるけど女事になると途端に不器用になるからそれを魅了できるなんて大した出来ですよ………ほんと美人だなぁ」
「逆にお前のような遊び人が冷静にいられるのが不思議だな」
「僕はこう見えても一途ですので。木ノ葉ちゃん以外の女の子は眼中にないです」
「安心してキクリくん。あなたが私の眼中にないから」
「今日で警察やめます僕」
「そしたらお前を射殺する」
「パワハラすぎないですかこの職場!?」
「パワハラに逃げるな甘ったれが」
無能ハラスメントとパワハラハラスメントでてめぇを訴えてやってもいいんだぞ。
正面に見張りはいなかった。
そのまま俺たちは建物へ入る。
─────すると、その先には先客がいた。
そこにいたのは、赤い長袖シャツの上から黒色の袖なしのコートを羽織った、いかにも他の外道とは空気感の大きく異なる男だった。
その周囲は血の海になっており、倒れている男たちで溢れかえっていた。
「おや。誰かと思えや、死神の」
その男は赤と白の髪をした顔でこちらを見て嗤ってきた。
「お前は誰だ。見た所空龍街の者ではないようだが…………」
「わえは
「烏丸で隈之城で和歌山って、なんだか難しい名前ですね」
「何を言ってんだお前は」
「えーっ!シバさん烏丸と隈之城知らないんです!?阪急京都本線の終点京都河原町駅の1個前と、JR鹿児島本線の終点
「そんな電車好きお前以外におるか!!!」
なんでお前というやつはこう、変な所で博識なんだ。
「烏丸、和歌山のお前がこの空龍街の敵を討つその目的はなんだ」
「そう身構えんなよ。わえはあんたらと戦う気はないんだからさ。遊びに来ただけだ。この先におるやつならお前にやるぞ」
そのまま烏丸は三脚を野球のバットのように担いで俺たちの方へ歩き、横を通り抜けて去っていった。
そして最後に、正面出入り口を抜ける直前で奴は俺たちに振り返り一つ告げてきた。
「そうそう。知っとったらすまなんだがここ、けっこう凄腕の殺し屋おるみたいだわ。やったろうか迷ったが…………もうなんだか、かぃたりぃわ。あんたらの顔並びじゃ負けんだろうて。わえは一足はやくに帰るぜ」
「かいたりぃ?」
「かいだるい。紀伊圏の方言でだるい、って意味ですよシバさん」
「菊理刑事、やはり頭が良いのでは」
「そりゃ学歴はあるからね。アホではないですよ」
キクリはこんなんだが、これでも警察学校に入る前は国立を代表する超有名な名門大学が出身だ。
中退せずに通い続け、まして警察になどならずにもっとコイツの能力に適性のある職場にに就けていたら、その年収は俺の倍以上はあっただろうに。
「なんだったんのかしらあの男は…………」
和歌山からわざわざここまで遊びに来るなど信じられるわけがない。
何か他の大きな目的があるに違いないが、帰ってしまった以上、奴の存在はいまの任務とは無関係だ。
他のことを考える必要はない。
「今は住民を救うためにここの外道どもを殲滅するという目の前の任務が最優先だ」
「ともあれ、雑魚処理を代わってくれたのであれば、こちらの仕事が減ったとして先に進みましょう。ここの主は奥にいるはずです」
「ポイプッステップジャンプ &
「ボンボンセ・シ・ボンイェイキラキラル〜♪」
「ウィスタート、スイーツターイム〜♪」
「シュトーレン、ガレット、どれどれも〜♪」
「キラキラ☆プr」
「黙れ殺すぞ!!!!!!!!!!!!」
「あらもぉぉぉぉどぉぉぉぉぉ!?!?!?」
俺は全力のパンチでキクリの腹を殴りつけた。
馬鹿野郎が、戦地で歌う警官がいるか。
「なんで僕だけぶん殴るんですか!木ノ葉ちゃん一緒に歌ってくれたのに!女の人にも容赦しないシバさんらしくない!男女差別だ!」
「お前は一旦口を縫いつけたほうが早いか?」
「ぐぇーっ!」
俺は鞘に納めた軍刀でキクリをぶん殴る。
ちなみにキクリだけ殴った理由だが、木ノ葉は仲間だが警察ではないためそもそも俺の部下ではないからだ。
「くっ、シバさんは5人組世代ではなかったか………!」
「そういう事じゃねぇよ」
なんならぜんぶ世代じゃねーわ。
だったとしても見んし。
「それにしても、やけに静かな建物ね」
パールが怪しげに感じたのか口を開いた。
彼女の言う通り、長い廊下は永遠と続くが敵が待ち構えていることもなく、大声で歌うキクリや木ノ葉に気づいて敵が襲ってきたわけでもない。
「本部というより、多くの支部の一斉会議で使われる溜まり場なのでしょうか」
小峠も考えるが、この様子のおかしさを説明できるような内容がそろわない。
「それか敵を作りすぎて人員を多く削られたか」
「玄関に敵がいた以上、あれだけなはずがない。間違いなくここは本部だ」
その時、俺たちの目の前で大きな破壊音が鳴り響いた。
「!?」
それは、上から降ってきたのか壺が割れる音。
俺たちの目の前でひとりでに壺が落下し、破砕したのだ。
「なんだ?」
俺たちは立ち止まって上を見上げた……………
───────次の瞬間、
「司馬さん!背後を!」
「まさか………!!!」
そして俺の背後から、何者かが武器を振り上げて俺に強烈な一撃を与えてきた。
「ぐおっ…………!!!」
俺は敵の攻撃に対してギリギリで反応し、刀を合わせる。
俺へと武器を振り下ろしのは────
「貴様……………!!!」
「今の受けんのか。ええ反応だ、」
そう、俺の前に現れたのは…………ついさっき遭遇したばかりの烏丸だった。
「何をしに来た…………」
「何って、死神警官の様子見に決まっとる!」
烏丸は手にした武器を振り上げて俺の刀を弾き返した。
「ふぅぅぅン!!!!」
俺の強烈な横薙ぎが炸裂したが、烏丸は飛び退いて難なくそれを外した。
そしてそのまま走り寄ってきた烏丸と俺の一対一で、強烈な撃ち合いに移行する!
「呵ッ呵ッ呵ッ呵ッ!!!どうしたどうした!ナメクジでもまだもっと粘れるぜ?」
「はぁぁッ!!!」
烏丸は手にした武器を自由自在に振り回し、俺の刀と互角に戦う。
(一撃一撃が非常に垂直平行的で、重い。受ければ腕や足は容易く切断されるだろう…………む?)
その時打ち合いの中で俺は、奴の異常性を察した。
なぜならその男が持っていた武器は、細長い鉄の三脚だったからだ。
三脚とはもちろん、ビデオカメラや天体望遠鏡を置くための、あの三脚だ。
このような道具を、奴は鈍器として振るっていた。
「俺の異名知ってるか?現役時代の二つ名は『ヤタガラス様』だぜ?」
「その凶暴性と三脚、まさしく三本脚の烏だな………」
(まるで意味不明な武器だが、技量は本物だ)
もちろん三脚など、過去に一度たりとも受けたことがない武器だが、それでも分かってしまうほどに奴の動作や技術は洗練されたものであった。
「だが…………至近距離で俺と戦闘をするのは愚の骨頂だ」
俺は撃ち合いの合間に素早く拳銃を握り、容赦なく烏丸へ向けて発砲した。
「おっとォ!警官が市民に向かってそんな発砲すんじゃねー。極道とはいえ、もう脚は3本とも洗ったぜ。ヤタガラスだけにな」
しかし、烏丸の三脚は一瞬にして魔法を使ったかのような素早い動きで三脚の脚を広げ、銃弾をはじき返した。
これがプラスチック性であれば破壊できたが、金属製………しかもおそらく特殊加工だ。
そうであるのならば簡単には武器を破損させられない。
(間違いない。この男…………強敵だ)
それを悟った俺はすぐさまキクリに指示を出す。
「キクリ!お前たちは先に行け!俺はこいつを無力化する!」
「は、はいーッ!」
「承知いたしました」
「小峠くん、司馬さんを頼んだわ!」
「えぇ、言われなくともそうするつもりです兄貴。司馬刑事、俺もご一緒します!」
「すまない小峠、手を借りるぞ」
キクリと木ノ葉とパールの3人は先に走り出し、俺たちより先に建物の奥を目指していく。
俺と小峠と烏丸は場に取り残された。
烏丸は3人を深追いしようとせず、その場で立ち止まっていた。
「ずいぶんと余裕のようだな。日滅軍を滅ぼすという思惑だけは同じなのか」
「あぁそうだな。わえが用あんのはあんただけだ、死刃。暴れるようなら、ここの下衆と並んで同じ血の海行ってもらうわ」
「司馬刑事は天羽組とも縁がある。司馬刑事の敵は俺の敵だ、今下がれば余所者をやる気はねぇ………だが、まだやるならその時は俺もやる」
「あんたもなかなかなもんだ小峠。天羽組の特攻隊長とはよく言うたもんだな。ほな、ガチ行くで?」
烏丸は余裕の笑顔で俺と小峠に手招きしてきた。
「そうかよ…………俺は今色々あってブチギレているんだ。悪ぃが八つ当たりついでにぶちのめさせてもらう………」
小峠はドスを引き抜く。
俺もコートを直して軍刀を向ける。
「数が増えたって遠慮はせんでええ。こちとら、脚三本あんでな………!」
突如として現れてはいきなり襲ってきた謎の元極道烏丸。
ヤツの目的は一体何だ、なぜ俺を付け狙う。
それも含めて、洗いざらい吐かせて貰うぞ!
次回『対決・元武闘派ヤタガラス様』