死神警官〜バグ大の極道たちに振り回される警察   作:書庫・ラ・オランジュ

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第一章『暗夜を駆る轍』
新任務・黒焉街の【救済】が始まる


 

この世にはありとあらゆる犯罪が存在している。

 

 

「ちょっと!その子に何をするんだ!?」

 

「うるせぇ黙っとけ!テメェの女はオレらがもらってくぜ、オラ来いよ女!」

 

「テメェスタイルいいねェ、テメェは俺たちと一緒に山奥へゴーだ!」

 

 

そして、そいつらはロクでもないことばかりやり、人々を困らせる。

この国はスマートフォンなどの電子機器や移動手段、そしてネットワークの普及により犯罪の種類も増え、発生率も急上昇している。

ネットで仲間を集めて一斉にカップル狩りをする、なんてこともあるものだ。

 

 

 

────────それを根絶やしにする為に、

 

 

「やめろーっ!僕の彼女に指一本触れるな犯罪者がー!超電圧電気警棒でビッリビリのボッコボコにしてやる!」

 

「ごぎやぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「あげぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 

俺たち「警察」という、脅威から国民を守るための組織があるのだ。

 

 

「誰が貴方の彼女よ!今すぐに訂正しなさいキクリくん!」

 

「ごはぁぁぁぁぁぁぁぁぁなんで僕ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」

 

 

時には頭をひねり、時には体当たり。

またある時にはこのようにして潜入をすることもある。

あらゆる手を尽くして国民を守るのだ。

 

 

「…………なんで僕が殴られるの、しかも元々カップルになりすますって打ち合わせなのに」

 

「ごめんなさい。つい、」

 

「つい、じゃないよ。つい、じゃ」

 

 

俺の部下である菊理弥二郎とメイドの石長木ノ葉には、最近この街で発生しつつある「カップル狩り」………よりにもよって大切な人に愛を誓い合った二人を重点的に襲い、男の方は殺し、女の方は尊厳を踏みにじるというあまりにも完璧すぎる外道が湧き始めていた。

そこで、キクリと木ノ葉にはカップルのに扮して街を歩かせ、そいつらをおびき出して逮捕するという作戦だった。

 

 

「しかしカップルになれ、とは言われたけど木ノ葉ちゃん、僕のためにそーんな可愛い格好してやってきてくれるなんて嬉しいなぁ〜」

 

 

もちろん、警官の制服とメイド服の若い男女二人組がカップルで並んでいたら世紀末なので私服で捜査をやらせた。

こういう潜入捜査のために一般人に扮して捜査する私服警官というものも存在しているのだ。

 

 

「僕は私服捜査中の衣装を着ただけだけど、木ノ葉ちゃん警察じゃないから、自分で今日のためにおめかししてきたんでしょ?すでに世界一魅力的だというのに、これ以上着飾ってどこまで綺麗になるつもりなんだい?」

 

「司馬さまからお電話よ」

 

「せめて何か辛辣なツッコミくらいはして」

 

 

キクリは携帯電話を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の名前は司馬喬皇平。

 

 

『お疲れ様ですシバさーん!こっちは任務完了ですよ!』

 

「そうか、こちらも今とっちめた所だ」

 

「ごぺぇ……………」

 

 

目的の犯人を逮捕し、部下と連絡を取る特殊犯罪対策課の警官だ。

キクリたちが性犯罪者を追いかけていた頃、俺は旧車會を捕まえていた。

 

旧車會というのは集団型暴走族のことだ。

サイレンサーの取り付けやライトの色の変更などの改造を施した車両で公道を大勢で横に並んで走行したりあるいはレースのようにスピードを超過していたり。

当然ながら公道でそれを行うことは紛れもない一般人への車両妨害であると同時に交通事故も起こしかねない。

 

…………俺もこんなのはよく潰してきたが、酷いところだと無灯火走行したりするケースもあるからな。

警察がパトカーや白バイで追跡している最中に、逃走するために無灯火走行といって、ライトを一切つけずに走行する非常に危険な運転をしてくることもある。

 

久しぶりにデカい暴走集団が現れたのでたった今潰してきたところだ。

 

 

『暴走族なんてよくとっちめましたね………何人ですか?』

 

「何人?俺ひとりだ。………いや、族の人数の事を言ってるのか?人数にしちゃせいぜい34人程度だな。そこまで大きくはないが放っておける人数でもなかった」

 

「バイクで走る34人の人間ひとりで全部捕まえるって三国志の武将ですかシバさん」

 

 

何言ってるのかわからんが、たぶん騎馬兵のことでも言ってるのか。だが別に大したことはない。

 

 

「おいお前ら、暇か?そんな事してる暇があるなら帰って勉強するか大人しくゲームでもしてろ。馬鹿な真似して人に迷惑かけるなら許さんぞ今すぐやめろ」

 

「なんだアイツ?サツか?」

 

「おい、後ろに指示出せよ!ライト消しちまえよ」

 

「おうよ、オラオラコイツでどうだ、偉そうなケーサツさんよぉ!?」

 

 

俺が白バイで近づいたら無灯火走行しだしやがった。普通の人間なら追いかけられないが俺にとってはむしろ好都合だ。

 

 

「よっしゃ!これで俺たちのことは見えねぇはずだ、あとはいつものルートで撒くだけだぜ?」

 

 

「ぐぎゃぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「なんだ!?ウォァァァァァァァ」

 

「おげぇっ!」

 

「今すぐにやめなかったからな、どうなっても良いという解釈で問題ないな?」

 

「うぎぁぁぁぁぁッ!!!!!」

 

 

逆にコイツらも俺を視認できないのを利用し、見えない角度から接近して刀の鞘でバイクもろとも薙ぎ倒して足止めした。

二輪車の辛いところだな。

 

 

 

『いたそう』

 

「全ての車両は刀で切断粉砕したのでもう逃げる手段も暴走する車両もない。全員にワッパもかけたしあとは連行するだけだ。一仕事した後で悪いが、あとでこっちも手伝ってくれ」

 

『了解〜』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして俺たち3人は犯人たちを連行し終えた。

これにて任務は完了となる。

 

 

「んーっ!おわったー!どっか飲みに行きましょー!」

 

「何言ってんだ。緊急で現場急行の際に飲酒運転なるぞ。寿司ぐらいは奢ってやるから酒は控えておけ」

 

「はーい。あっ!僕、回るお寿司が良い!」

 

「言われなくてもそのつもりだ」

 

 

コイツが子供で助かった。

打ち上げでもないのだから、ただの夕食にガチの寿司になんて行かないからな。

 

 

「あっ!今日はアサリのお味噌汁が一杯タダのクーポンありますよ!シバさんも欲しいです?」

 

「そうか、なら俺の分も頼んだ」

 

 

たまにはこういう日もあっていいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぅ…………おいひぃ…………」

 

「木ノ葉…………あん肝何皿目だそれで。7皿はあるぞ、しかも渋いな」

 

「シバさん、知ってます?回転寿司のレーンの回転方向って決まってるんですよ。人間は右利きの率が圧倒的に高いので右利きでお皿を簡単に取れるようにしているんですよ!」

 

 

キクリはどこ行っても雑学をひけらかす癖がある。まぁ…………興味深い話が多いから退屈はせんがな。

 

 

「だがテーブル向かい合って座れば必ず左腕がレーンの側に向く場合もあるだろう」

 

「ふふっ。そうですよ。だからこういう、いわゆるテーブル席のお寿司屋さんでは、右腕がレーンの位置にある席にお醤油が置いてあるんです。ほら、シバさんの右手にレーンありますけどそこにお醤油あるじゃないですか」

 

「確かに」

 

「お醤油はよく使うものなのでそれも取りやすいように右手側に置くようにしている店舗が多いんですよ。会社によってはルール付けされている場合なんかもあって…………おっ、僕のシメサバだ!」

 

 

お前ら………内面が子供なくせに食べ物の好みだけは異様に渋いな。

 

 

「シバさんは好きなネタなんですか?」

 

「俺か?俺は穴子だが」

 

「あー…………そうなんですか…………それ?」

 

 

キクリが珍しく訝しげな目で穴子を見つめている。

なんだ、苦手なのか?

 

 

「これとか見てみろ。この穴子は脂も乗っているし、店に置いてある濃口醤油が良く合うんだ。…………うむ、歯ごたえも良いしな」

 

「そうですか…………そりゃ良かったです…………」

 

 

キクリはやれやれ、と呆れたような様子を見せる。

 

 

「キクリ。言いたいことがあるならハッキリ言わんか、」

 

 

キクリはずっと黙っている。

言いたいことがあるのだろうが、どうもそれを言い出せずに居るらしい。

 

木ノ葉がキクリの顔を見つめたあとに俺の穴子を見る。そしてキクリの言いたいことがわかったと言わんばかりに俺から見えないように顔を反らした後に小さく口を開いた。

 

 

「あの…………僭越ながら司馬さま…………穴子にかけるのは醤油ではなく甘ダレかと存じ上げます」

 

「なっ………………」

 

 

 

 

 

その時、俺の電話に着信が届いた。

 

 

「むっ?」

 

 

俺は応答する。

そして俺はすぐに箸を置いて席を立った。

 

 

「すまんキクリ、緊急の連絡だ。街で宝石商強盗が発生した」

 

「えー行かないとダメ?」

 

「はぁ…………どこかで埋め合わせする。だから来い」

 

「やった!じゃあ埋め合わせは中華バイキングでお願いします!レバニラ炒めがあるやつ!」

 

「そんなんどこでもあるだろ。中華でもイタリアンでもなんでもいい、早くこい」

 

 

俺は座席から飛び降りると、急いで店を出る。

 

 

「はいはい行きますよっと!木ノ葉ちゃん、お会計は頼むね!僕のカード預けとくから!」

 

「ちょっと!それ私のあん肝とお稲荷さん!」

 

「そんなの後からでも頼めるでしょー?僕今から出勤だもん、食べれるだけ食べて出るもん!…………むじゃ、あぼばぼおひぅ(あとはよろしく)ー!」

 

「こらー!私のお稲荷さんー!」

 

 

 

 

 

 

俺とキクリは店の外に出ると、そのまま現場へ向かって走り出した。

 

 

「距離は遠くない。車出すより走ったほうが早い」

 

 

俺の走る速度はおおよそ自転車と同等。

この速度で走り続ければ確実に間に合う。

 

 

「宝石商強盗なんて、こんな堂々と!アレですかね!?闇バイトってやつですか!?それより僕食べ足りないー!」

 

「帰りにコンビニで巻物でも買ってやるからそれで我慢しろ!頼むから今は真面目に任務やれ!」

 

「はいッ!それじゃ僕、お先に失礼しまーす!」

 

 

キクリは急激に走る速度を上げると、あっという間に俺を追い抜いて先に行ってしまった。

 

 

「おいキクリ!!!  チッ………あの野郎………また勝手に行動しやがって!」

 

 

野郎は後で絶対に長説教してやるからな。

 

 

そして、束の間の休息を襲った此度の事が、このあとに巻き起こる大事件への誘いになることを俺たちはまだ知る由もない。

 

 

 

 

次回『新章・新たな闇に呑まれる黒焉街』

 

 

 

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