もしもあの決闘者達が現代のトレカショップを訪れたなら   作:葉隠 紅葉

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第6話

「これ…あのカードにそっくりだな」

 

 手にしたカードをじっと眺める。そのカードに描かれたイラストは、本田の友人が好んで使うあのモンスターにそっくりであった。

 

肌の色が違う

着ている衣服も違う

 

けれどなぜだかしっくりくる

 

 いや、どこかで会ったことがあるような気すらしてしまう…

 

 じっと腕を組みながら悩み、考える。このカードを手渡したら遊戯が喜びそうだな、そんな事を考え頷きながら、彼はこの二枚のカードをレジ籠へと入れるのであった。

 

 【()()()()()()()()】と【()()()()()()】と書かれたカードを傷つかないように丁重に扱いながら、彼はそそくさと隣へ移動する。

 

 隣接していたストレージボックスを引き出すと、そこにはぎっしりとまだ見ぬカード達が埋まっていた。

 

見る

眺める

 

 夢中になって読み込んでいく。彼には決闘者としての素質はない。けれどそんな自分でも眺めているだけで楽しいのだ。実に多種多様、あらゆるテーマ、見たことも無いモンスター達がそこにはいるのだ。

 

パワードスーツを身に着け立派な刀を携えた美少女

 

重機に手足が生え独自の姿をしたマシンナーズというロボット

 

ドラゴンとメイドを掛け合わせた美少女

 

あれ?

こうしてみると美少女キャラがやたら多くないか

 

 いつからこんなにも外見が可愛らしいカードが増えたのだろうか、と疑問に思う本田。最近のカードという奴をよく知らない彼は、そういう物なのだろうかと首をひねる。

 

 そんなカード達の間に、ある一枚のカードが挟まっているのを本田は見つけた。ふと気になって取り出してみると…これまでとは一風変わったカードがそこにはあるのであった。

 

「おっこれは…エラーカードって奴か?」

 

 手に持ったカードを手につぶやく。

 

 随分と珍しい。それはDM(デュエルモンスターズ)と関わって短くない年月を過ごしてきた彼にとっても、見たことも無いカードであった。

 

 なんとそのカード。下半分が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のデザインをしているのだ。

 

 それはなんとも愛らしい見た目をしたモンスターであった。火の妖精…ぬいぐるみであろうか?赤い体をしたデフォルメ調のそのモンスターは、下半分が魔法カードの色をしていた。

 

 可哀そうに、きっと元は只のモンスターカードだったのだろう。おそらくは印刷工場の人たちが間違って印刷したに違いない。

 

 初めて見るエラーカードという存在に、本田は少々興奮する。きっと親友であり悪友でもある城之内の奴に見せて自慢したら、飛び上がって驚くに違いない。

 

「珍しいからこれも買ってくか」

 

 E()m()()()()()と書かれたカードもレジ籠へ投入する本田。友人達はきっとこんなエラーカードを見たこともないに違いない。

 

 そうだ遊戯達にも見せて驚かせてやろう。そんな事を考えながらカード漁りを続けようとする本田に対して、先ほどまで居眠りをしていた店主が慌てて声をかけた。

 

「んがっ!い、いらっしゃいませ!」

 

「のわっ!」

 

 飛び上がって驚く本田。驚いて振り返るとそこには先ほどまで居眠りをしていた店長がいた。慌てて口元のよだれをぬぐった彼は、店内にいた客である本田に対して取り繕うように声をかけるのであった。

 

「て、店長さん?」

 

「ね、寝てませんよ!昨日買った本が面白くてつい徹夜してしまっただけで…」

 

「あー…カード見させてもらってます…」

 

「あはは…ごゆっくり…」

 

 苦笑する店主。なんとも気まずい空間だ。先ほどまで居眠りをしていた罪悪感からか、居心地悪そうにする店主に対して、本田もまたなんとも居心地悪い思いをしてしまう。

 

 幸か不幸か店内にいるのは今のところ二人だけである。本田は雑談程度に、店主に対して話題を振った。

 

「あー店長さん、相談なんだが」

 

「はいはい、本探しでしたらなんでもどうぞ!」

 

「そっちじゃなくて…レッドアイズってモンスターの関連カードってねーかな」

 

「レッドアイズ…?」

 

「あぁ俺の友達(ダチ)がな、そういうカードを持ってるんだよ」

 

「うーん…僕は生憎カードゲームに詳しくなくて…」

 

 困ったように頭をかく店主。困った。普通こういう店は多かれ少なかれ、カードに精通した人間が営んでいると無意識的に思い込んでしまっていた本田もまたどうしたものかとまいってしまう。

 

 最近の城之内は伸び悩んでいるのだ。親友でもある遊戯、そのライバルである海馬瀬人。

 

 彼らの背中はあまりに遠い。

 

 公式大会での戦績が最近伸び悩んでいる城之内をはげましてあげたい本田は、なんとかして彼の力になってやりたいのだ。

 

 仕方ない、あのストレージボックスの山から一枚一枚探してみるか。再びカード探しを続けようとする本田に対して店主が声をかけた。

 

「あっそうだ!奥のガラスケースにそんな名前のカードがあったかも」

 

「ほんとか!」

 

「えぇ、姪と一緒に値札を整理する時に見たような…」

 

「それって見せてもらっても…」

 

「勿論どうぞー」

 

 立ち上がる店主の後ろを、慌てて付いていく本田。店主のいう通り、レジ台の奥には別のケースがあるのが見て取れた。コレクションボックス…という奴だろうか。

 

 展示物というよりは個人のコレクションのようなその場所には、幾つもの煌びやかに光るDMカードが展示されているのであった。

 

「ここにあるのはレアカードらしいよ。ほら、ちょっとキラキラしているだろう?」

 

「確かに随分と奇麗なんだなぁ」

 

「その分値段がお高めらしいけどね。えーとレッドアイズ…レッドアイズ…」

 

そんな名前のカードを購入した男性が確か居たなぁ

 

 そんな独り言を呟きながら展示されているケースの上段から探し始める店主。そんな店主に呼応して本田もまた下段の列から探し始める。

 

 下段の端に展示されていた【()()()()()()()()()()()()()()()()】に視線を向けようとしたその瞬間、店主が本田に対して声をかけた。

 

「あぁあったよ。これじゃないかな」

 

「どれどれ?」

 

 25周年記念仕様の限定レア加工が施された【超魔導士(ちょうまどうし)-ブラック・マジシャンズ】のカードを見ることなく、店主のもとへと向かう本田。

 

 そこにはなるほど、確かにレッドアイズと書かれたモンスターが書かれていた。派生カード…というやつなのだろうか。

 

 これってレッドアイズ…だよなぁ?

 

 本来のレッドアイズよりも随分と禍々しくなったその黒竜を見て、満足げにうなずく本田。

 

 まぁよく分からんが買っておいて損はないだろう。本田はカードのそばに展示された値札を見つめながらつぶやいた。

 

「500円だ。確かにちょっとたけーな」

 

「確かに一枚のカードにしては高いよねぇ…どうします?」

 

「まぁ友達(ダチ)の為だ!買ってやるか!」

 

「おっ気前がいいね。毎度あり~」

 

 たかが玩具。たかが一枚のカードに500円も出すというのは常識的な大人を自負する店主にしては理解できないが…それでも友人の為にと購入を決意した彼の事を称賛する店主。

 

 願わくば、カードが好きだという彼の友人が喜んでくれると良いのだが…。まだ見ぬ彼の友人の姿を思い浮かべながら、店主はレジ台にて精算を行うのであった。

 




QCSE

QUARTER CENTURY
クォーターセンチュリー シークレットレア

 遊戯王OCGに登場するレアリティの1つ。25周年記念として生まれた非常に貴重なレアカード。

 2025/3/29現在、ネットで調べたら2,600円オーバーで取引されていました。素のブラックマジシャン/ブラックマジシャンガールが伝説扱いされているあの世界に持っていったらどうなるのでしょうか…
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