幽鬼の処刑人。葉巻きの吸い過ぎによる匂いを香水で誤魔化しがち。
・『ハンス』
イエルスの機工兵。自分の事を常識人だと思っているが別にそんな事はない。
・『マリアンヌ』
エウダーナの魔法戦士。おっとりしているが誰に対しても遠慮がなくたまに酷い事を言う。
・『ドット』
ジューアの遺跡荒らし。遵法意識が限りなく低く、インコグニートの巻物が手放せない。
パルミアから西南西方向に存在するダルフィは、所謂ならず者の巣窟である。倫理観の欠如した犯罪者でもこの町では歓迎される……町を仕切る盗賊ギルドに歯向かわなければ、だが。
そんなダルフィのような無法地帯だが、エレナはあまりこの町が気に食わなかった。エレナは倫理観が欠落した危険人物だが、同時に彼女なりの誇りがある。ダルフィは文明の端にしがみつく、テーブルクロスの隅の汚れのような町だとエレナは思っていた。犯罪を犯したからとこんな町にしがみつくような人間は、みっともないと、エレナはそう考えていた。
まあ、そんなエレナも指名手配されてダルフィに逃亡してきたのだが。
「エレナさんは何してここに来たんですか?」
「猫蹴り飛ばして殺しただけよ」
「はえ〜極悪人ですね」
「わざとじゃないのよ、走ろうとしたらたまたま足元にいたの!」
酒場で出会った3人組に愚痴りながら、エレナは露骨になりすぎない程度に彼らを見る。イエルスの機工兵、エウダーナの魔法戦士、ジューアの遺跡荒らしの3人組だ。
3人は数分ほど前に、酒を飲んだくれているエレナに話しかけてきたのだ。ハンス、マリアンヌ、ドットと名乗った奇妙な3人組も冒険者のようで、幽鬼が珍しくて話しかけてきたらしかった。
「あんた達は何かやらかしたわけ?」
「こいつが盗みをやらかしたんですよ。んで、目撃者も殺しちゃったんです。それで僕もマリアンヌも巻き添えってわけですよ」
「仕方ないじゃん!攻撃してきたんだよあいつ!」
ドットの返答に呆れたような目をしているハンス。マリアンヌはというと、優雅にカクテルを飲んでいる。我関せず、といった風だ。だがハンスの言う通りなら、彼女もまた巻き添えを食らったのだろう。それでもこんなに堂々としているなんてかなりの胆力があるようだ。
「それでインコグニートをいくつか買って、それから依頼をいくらかこなして、そしたらまた旅に出る予定です」
「そうそう!ポート・カプールで今出前がアツいらしいんだよ。あそこって魚も美味いし、次行くならそこにしようって皆で話しててさ」
「ええ。それにこの時期は死者祭もやってますから……指名手配が解除されるのが早ければ参加できますのよ」
死者祭……確かヤカシャ様を祀る祭りだったなとエレナは思い出す。そしてふと、気が付いた。
そういえば、祭りでは免罪符が売られる事が多い。ここダルフィに留まらずとも、インコグニートの巻物をいくつか使って免罪符を購入すれば良いのではないか?
「へぇ、良い事を聞いたわ……あたしは明日には旅立つけど、あんた達はいつ頃ここを出るつもり?」
「うーん、まあそこまで重い罪を背負ってるわけでもないし……1ヶ月もすれば許されるでしょうから、そのくらいですかね。まあドットが追加で変な事をしない事が前提ですが」
「うへぇ……しないしない、しないって。もう懲りました」
「だけど、貴方……さっき娼婦の奉仕が気に入らないからって殴ってたりしてたじゃありませんの?」
マリアンヌの言葉にドットは目を逸らす。そんなドットをジト目で睨むハンス。彼等がここを出るにはかなり時間がかかりそうだとエレナは思った。