長くはならない短編集   作:ニンカタ

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一応ヤンデレになるのか?これは…。


不思議な力で宗教建てようとしたら第1信者が重かった話

 

 転生しました。死亡理由は簡単に言いますと過労死です。

 そこそこの大学出たのは良かったけど、それからは働き詰めに働き詰め。休暇を取れるとテンション上げた辺りで記憶無いから其処で死んだと思う。

 

 亡くなって目が覚めるとばぶぅと新たなボディ。思い出の中には居ない両親に抱かれて、2度目の人生がスタートした訳なんです。

 

 けれどもう頑張りたくないっていうのが本音なんだよね。

 一度目に頑張ったせいで、そのまま死まで一直線だった訳ですから。

 せめて2度目の人生は楽して働きたくないなーと思う所存。

 

 「宿題終わらせなさい!」

 

 はい。義務教育からは逃げられないってね。もう一度やったしスルーしても良いですかとは言えない。傍から見たらただの小学生です。辞めても学歴の内容がスカスカになるだけで、利が無いのが辛い所。

 

 「ワンッ!」

 「次は気を付けろよ〜」

 

 こうして2度目も頑張んなきゃいけないのかなと軽く絶望してた時。夜寝てたら手が光ったんです。何事かと思いましたがこの光を当てるとあら不思議。

 今し方乗用車に轢き逃げされたワンちゃんも元通りです。

 

 「くぅ~ん」

 「はいはい、飼い主さんも探しますよ」

 「ワンッ!」

 

 目の前でボンッと轢かれて足が変な方向に曲がり。それを見付けた自分が力を試したという経緯。死にそうな状態でもイケるんだな、そんな事を考えながら飼い主の元まで死にかけだった子も引き渡しました。

 

 さて。こうなると本格的に楽する為に動いても良いのではと思います。恐らくですがこの手で触れると対象の傷やら病気が治ります。前に風邪っぽかった時も効いたし。

 他にも力はありましたが使えるのは何方かというとこっち。

 

 「教祖になろう」

 

 この癒やしパワーで宗教立ち上げれば楽出来るのでは?我ながら安直な考えではありましたが、面倒臭い事から逃げるには挑戦あるのみです。

 

 「あっち向いてホイ!」

 「あ!また負けたー!」

 「つえー」

 

 という訳で新たに本を買いました。力はあっても上手く信者を作らないと宗教は出来ない。勉学は程々に、大半の時間を心理学系の本に費やす。その成果を少し出しつつ日常生活を送っていました。

 

 将来楽する為にと知識を取り入れて、あれよあれよと小学校生活は終わりを告げます。中学生になった辺りではそろそろ本格的に楽したいな欲が強まってきたので動く事に。

 

 「ねぇ、あんな若いのに…」

 「でも治せないものは仕方ないでしょ」

 

 幸い記念すべき第1ターゲットは決まっている。

 癒やしの力を手に入れれば病院にも用は無いと思ったが、流石に親の前や人の前で怪我した傷を治すのはNG。信者以外には隠していきたいからね。

 なので前に骨を折った時に来た病院。其処である噂を聞いたのだ。

 

 この病院にも関わりの深い一家のご令嬢。年齢は今の自分と同じくらいだったか。そのお方が小学生高学年から体調を崩し、今では一歩も歩けないくらいに病状が悪化しているとか。

 この話を聞いた時には渡りに船だと思いましたよ。家柄的にも状況的にも充分過ぎる。

 宗教の立ち上げにはこういった権力者の方々のお力も欲しいのだ。此処で恩を売ってあわよくば信者化する。この日ばかりは腕を折る原因になったピッチャーに感謝だ。

 

 (流石に居るよな)

 

 病室自体は直ぐに見つかった。しかしご令嬢様という立場からか警備が厚いのだ。真正面から行くと本人に会う前にお縄についてしまう。この身がまだ中学生だから裁判沙汰にはならない可能性もあるが、リスキーな手は取りたくない。

 

 「ん?今誰か…」

 「気の所為だろ」

 「そっかな…」

 

 と、此処で出るのがもう一つの力となります。気配を薄くする力。大声とか出すと気付かれる。なので使う時は慎重に、物音を立てないようにして使いましょう。

 交代の時間になると1人が残りもう1人がその場を去るのは調査済み。そしたら適当に物を投げて注意を逸らします。

 視線が外れる場所を通って後はすいすいーっと。

 

 (いたいた)

 

 そーっと中に入ればお目当ての人物は居ました。動けないという噂通りならば居ない方が可怪しいんですがね。

 扉を閉めると部屋の中には自分と彼女だけ。名前は確か藤司綾香(とうじあやか)だったかな、部屋前のプレートにもそう書いてあった気がするし。

 

 「………」

 

 目は開かず閉じられたまま。顔色は悪く土気色。息は辛うじてしている状態から、まだ生きているのは分かる。けれどそれが無ければ死人に見える様な生気の無さだ。

 

 「こんばんは」

 「……?」

 「お邪魔しています」

 「………」

 

 ふむ。反応が薄いな。騒がれても困るが、これは興味が無いのかそれともそれすらも難しいだけなのか。判断に困る。

 なるべく穏やかで紳士的なイメージで話しているが、これだと伝わっているのかも分からないな。

 

 「だ……れ……」

 (反応した)

 「貴方の手助けをしにきました」

 「て…だす…け…」

 

 目が少し動いて自分を見る。反応された事に少しホッとしつつ、不思議な雰囲気の少年としてイメージを崩さないように心掛ける。

 

 「君は、まだ生きたいかな?」

 「……」

 「実は、君の運命は本来ならば此処では途絶えないんだ。けれどどういう訳かこうなってしまっていてね…」

 

 胡散臭ぇと自分で思いつつロールは続ける。まだ死ぬ運命に無い彼女藤司綾香。それを知ったから自分は助けに来たという設定で話を続けていく。

 

 「…少し話し辛そうだ。ちょっと失礼」

 

 困惑と訝しみ。説明途中だがその雰囲気を感じ取ったので少し力を使う。論よりも証拠。これで少しは話を聞いてくれると良いが。

 

 「体…が…?」

 「楽になったと思うが、どうだい?」

 「ど…どうして…?」

 

 出力を増やしたり減らしたりは練習したので出来る。治し過ぎると警備員呼ばれるかもだし抑えめに。すると楽になってきたのか彼女は目を開いて、手の指を動かす。

 

 「お医者様でも…駄目って…」

 「君は呪われていたからだね。普通の人では無理なんだ、治すのはさ」

 「呪い…?」

 

 宗教テクニック。取り敢えず呪いとかのせいにする。ぶっちゃけよく知らない。彼女がどんな病気なのかは。でも医者でも匙を投げたのなら多少嘘付いても大丈夫でしょ。

 

 「そう。呪いだ」

 「……だから…私は今…」

 「そう、君は聡いね。大体君が考えている通りだよ」

 「そう…なんですね…」

 

 これも知らない。何考えてるのかとか全然分からない。だけど否定しないで肯定される方が人間気持ち良いんだ。なので先ずは肯定して、話は合わせていくのがコツ。

 

 「何故…私を…?」

 「1つは先程の通りまだ死ぬ運命には無かったから。もう一つはまあ…僕の自己満足かな」

 「………」

 「この力を授かってから何時も考えていたんだ…。この力は誰かを助ける為に頂いた貰い物。だから…君を助けたいなって…ハハ、ごめんね。急に」

 

 そんな事は全く思っていない。けれどそう思い込んで演技はした。嘘には真実を混ぜるのが効果的。ならば誰かを助けたいんだと此処最近は自己暗示してたし多少効果はあるだろう。

 

 (こんな凄い力を持ちながら…)

 「いえ…その想いで現に私を救おうとして行動したのなら…それは立派な事だと…」

 「ありがとう…君は…優しいね」

 「……いえ…そんな事は…」

 

 今の自分鏡で見たくないな。見たら恥ずかしさと気持ち悪さで悶えるわ。何か気持ち悪くなってきたしそろそろ終わらせよう。

 

 「…もう一度聞くよ。君はまだ、生きたいかな?」

 (…この人なら…)

 「……はい…生きたい…です…!」

 「分かった。君の意思は決まったようだ。なら…」

 

 必要は無いが大袈裟に手を開いてからあわせる。そして両手に灯った淡い光を彼女の丹田辺りに翳した。検証の結果何処でも良いんだけど、丹田辺りが良いかなって。

 すると見る見る間に彼女の顔色が良くなっていく。今度は出力全開。治れ治れーと思いつつ表面上は真剣な顔で手を翳した。

 

 「す…凄い…体が…!」

 「君に着いた穢れも祓った。これでもう大丈夫だよ」

 「あ…ありがとうございます…!!」

 「君はこれから、その両足で歩いて行くんだ」

 

 上体を起こして、腕を動かし顔を触り、信じられないといった様子で自分を見る彼女。治ったみたいで良かったーと思いつつ、適当に決め台詞もその場の勢いで言っておく。

 するとそれが効いたのか彼女は口を手で覆い、その場に泣き崩れた。

 

 「…少し離れようか?」

 「いえ…!いえ…!お近くに…お近くに居てください…!」

 (そろそろ帰りたいんだけどな…)

 

 気遣いから離れてそのままフェードアウト。そう考えたが流れ的に無理そう。プランとしてはこの後特に要求する事もないから、本当にもうやる事無いんだよね。

 

 「…おっと、もうこんな時間か。そろそろ行かないとね」

 

 何だか一向に泣き止まないし。何なら泣き止んでも服の裾を掴んだまま何も言わないし。しょうがないから此方から別れを切り出した。

 

 「え!?お、お帰りになるのですか!?」

 「そうだね。あまり遅いと今世の両親にも迷惑をかける」

 「ご両親様…それは確かに…」

 

 門限過ぎてるから確実に怒られるよな。けどこれからの人生設計の為にも仕方ないしな。

 マジで全然離す気のない指をチラリと見ながらそろそろ帰るよオーラを全開にする。

 

 「…お名前を…お聞きしても良いでしょうか…?」

 

 最後に聞かれた質問。これは名乗った方が良いのかそれとも名乗らない方が神秘的なのか。悩みはしたが面倒だから名乗っておいた。

 

 「……私の…神様…」

 

 スゥッ…と気配を薄める力で消えていく。とは言え綾香からは滅茶苦茶集中されていたので、少し影が薄くなったくらいしか効果が無い模様。

 貴方が去った後に貴方が居た場所を見つめて、ぼーっと綾香は貴方の名前を呟き続けるのだった。

 

 「あー疲れたー…」

 

 教祖ムーブを解いて素に戻る。練習と実戦だと精神的な削れ具合がかなり違う。自分自身に不快感を抱いたのはアレが始めてだ。

 これからもやるから慣れなくちゃ行けないのは分かるが辛いです。

 

 

 

 

 「こんにちは」

 

 今貴方の前には黒く長い髪を伸ばした藤司綾香が居る。始めて会った時には病気の影響か抜けきった髪も、最近では生えてきたらしい。

 今はウィッグを着けているので、直接見せられないのはご容赦くださいと言われた。

 

 「同い年だったのですね。何か運命的なものを感じます」

 「その様子だと経過は順調なのかな?」

 「はい!貴方様のお陰で!」

 

 藤司綾香の快復は正に青天の霹靂。娘の身を案じていた両親にもその報は直ぐに伝わり、まるで別人の状態の娘を見て共に驚愕したという。

 両親にだけは本当にあった事を言いはしたが、当然信じては貰えない。

 

 「なので自力でお探ししました」

 

 鬼気迫る努力でリハビリを早期に終わらせ、独自の調査網で貴方の情報を掻き集める。幸い名前は教えられた。それを頼りに藤司綾香は貴方を探し当てたのだ。

 

 (怖ぇー…)

 「ハハ、別に忘れてくれても構わなかったんだけどね」

 「そんな事あろう筈がありません!!私は貴方様に再び生を頂いたも同然なのですよ?!」

 (いい感じに恩は感じてくれてるみたいだな)

 

 公園で彼女と話す。見れば近くに護衛の様な方が居るが、綾香の指示だからか遠巻きに見ているだけだ。普通ならば雇い主の娘よりも雇い主の命令を優先しそうなものだが、今の彼女からは時々凄味の様なものを感じるしそれが理由かもしれない。

 

 「…貴方様はこれからもあの様な活動を成されるのですか?」

 「そうだね。君の様にまだ死ぬ運命に無い者。彼等を救いたいと思うんだ」

 「……嫌だなぁ…」

 

 最後はボソッと言ったので聞き取れなかった。でも一瞬見せた雰囲気から良くない言葉だったんだろうな。多分。

 何も求めずただ救いを与える。そのムーブのお陰か彼女からはかなりの好感度の高さを感じる。会話の節々から見える狂気性も信者っぽい。

 

 (これは一発目から大成功か?)

 

 思ったよりも上手くいったなとしみじみ思いながら話を合わせる。すると、

 

 「…貴方様にお願いがあるのです…」

 「ん?何かな?」

 「はい。私は貴方様に──」

 

 この時に聞いた言葉が、それからの方向を大きく決めたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 「新作何やろっかなー」

 

 あれから数年が経った。1人の部屋には余りにも豪華、それでいて広い部屋に自分は住んでいる。

 新しく出たゲーム機を使い、娯楽に埋もれる毎日。

 当初の目的である宗教立ち上げは実現出来なかったが、第一目標の働かない楽な生活は送れているので良しとする。

 

 「入って良いよー」

 「失礼致します」

 

 部屋の扉が外から叩かれる。この部屋に来るのは1人だけだ。確認もせずに入る事を許すと、あれから美しく成長した綾香が中へと入って来た。

 

 髪は自前のものを艷やかに伸ばし、スラリと伸びた手足にモデルの様な体型へと体を調整している。今では何個も事業を手掛け、この部屋と仕事場を行き来する毎日を送っていた。

 

 「今月のお布施で御座います。どうかご確認を…」

 「うん」

 

 ゲームを一時中断すると、渡されたタブレットに目を通す。その間も傅く様に目の前に膝をつき、次の言葉が来るまでそのまま待機する。

 

 (相変わらず凄え額)

 

 こうして働かずに悠々自適に過ごせるのも綾香の存在があるからだ。毎月毎月、最低限の生活費以外は全てを貴方に捧げる。

 あの日。自分だけの神様になって欲しいと提案した時から、貴方の望む全てを綾香は捧げ続ける。

 

 「神の愛が…私以外に向くのが許せないのです…!!」

 

 昔。何故其処までするのかと問うと、綾香はそう言った。

 綾香に取って人生とは諦める事だと思っていた。泣いても怒っても、定められた運命からは逃げられない。

 あの時、終わるまでの短い時間を待っていた綾香がどれだけ貴方に救われたか。

 綾香は貴方に2度目の生を貰ったのだ。その恩は計り知れない。

 

 (嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ)

 

 だからこそ綾香は自分以外の命も救おうとする貴方の行動に不満を抱いていた。

 救われるのは自分だけでいい。貴方(かみ)からの愛も、その御業も受け止めるのは自分だけが良い。

 生まれて始めて抱いた執着心と嫉妬心が綾香を突き動かした。

 

 「拝見しました。何時もありがとう」

 「勿体なきお言葉…」

 「でも無理に捧げなくてもいいからね?最低限あればいいし」

 「……!!」

 

 ゲームに使う娯楽代だけあれば他は食事も服も綾香が用意してくれる。となると本当に要らないのだ。生活を送れて日々を彩る娯楽が少々あれば貴方は満足だ。

 

 (何とお優しい…!)

 

 残念ながらその考えからの発言も、信者フィルターが掛かるとこうなる。最早何を言ってもやっても好感度が上がる音しかしない。それに長い付き合いから気付いた貴方も、振る舞いを少しづつ雑にしている。

 

 「ほら、おいで」

 「──!は、はい!!」

 

 こうして捧げるだけでも一種の喜びは得るが、それ以上に望んでいるものがある。何方からかは忘れたが、今では普通の光景。

 尻尾があればはち切れんばかりに振っているだろう心境で、綾香は自分だけの神の下へと近付いた。

 

 

 

 

 

 「…私は貴方様を愛しております…」

 「僕も君を愛しているよ、綾香」

 「私以外に愛を向けないでください。私以外にそのお力を振るわないでください。私は…私はそれを想像するだけで…」

 

 ()()の時間は終わり。2人は言葉を交わす。

 静かで閉じられた世界。窓もなく、光は天井にある灯火だけ。それも今は消されている。

 

 「…君の愛が向けられる限り、僕の愛は君だけの物だよ」

 「…!嬉しいです…!我が神よ…!!」

 

 不安そうな彼女を抱き寄せ、綾香が一番欲しいであろう言葉を返す。

 

 (今日の晩飯何にするかな…)

 

 神の御心は今も昔も変わらないままであった。




一話で終わらせるので過程はある程度飛ばしました。もう少しヒロインの心情書く為に入れても良かったかな?
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