2日後、学校の井戸は閉鎖、すぐさま神楽家は調査にする事にした。
「どう思う?奏」
「どうって言われても、やばいの一言だよ」
奏は現在、コートを着た渋顔、無精髭が生えている叔父の神楽護と一緒に、井戸の怨霊を調べている。
「あぁ、分かってるとは思うが、怨霊は普通に祓除するだけでは倒せない」
「だから本人の未練を晴らして成仏させるのが最適解だろ?」
「その通りだ、祓除しても魂自体は現世に残る。成仏しない限り何度でも復活する」
奏の言う通り、怨霊という穢れは祓除が大変難しい。戦闘による祓除は一時的なその場しのぎ、怨霊はこの世に魂がある限り何度でも蘇る。
「.........」
「......だめだな」
護は覗いていた井戸から顔を出す。
「奏、刺激しない程度に俺の結界で調べた感想は、襲われるのには条件がある」
「あの馬鹿グループのか?」
「そうだ、こいつは自分の眠りを妨げられる事を嫌うって習性だな」
「あぁ、馬鹿達は禁忌を.....」
無知は罪とはよく言ったものだ。怨霊について正しい知識を持っていなかったとはいえ、怨霊を刺激してしまった。
「奏、とりまお前はこの井戸について色々調べてくれ。市長の娘と仲良いんだろ?俺は神楽家の本漁ってくるわ」
「仲が良いかは知らんが....分かった。後学校で煙草吸うな」
しれっと仮にも成長期の子供達がいるのに受動喫煙を実行しようとしている護に呆れてしまった。
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資料館が一般向けに見せていない、あるだけのあの井戸についての資料を、放課後だけ手伝ってくれる帆夏と共に漁ってみる事にした。
「.....なるほど」
「読めるのか。ただの嬢だと思っていたぜ」
「何か嫌な言い方ですね」
何か睨まれたが、漁っていると発見したものがある。
「何でしょうこれ?」
「何がだ?」
とりあえず帆夏から受け取ってそれを確認すると、『井霊物語』と書いてある絵巻物だった。
絵巻物には井戸と侍と祓除師が、井戸に住まい、人々に悪さをする怨霊を退治する物語になっている。
20分くらいかけて、帆夏と一緒に読む。
「凄いですね」
「あぁ、九瀬ノ国ってしっかり書いている。井戸もあるし、恐らく江戸の頃だな、当時の戦闘が描かれてる」
「この怨霊、髪が長いし櫛もつけている描写があったから女性でしょうか?」
まだまだ分からない事だらけだが、当時の事について情報が掴めただけでも大きな収穫だ。
「よし、次は当時の村の歴史について調べるか。風習や人口推移などの資料を徹底的に調べるぞ」
「.......」
丸々一週間調べ上げたが、結局何も分からなかった。
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「奏、まだ分からないのか」
5月8日の夜、一週間経ってもまだ情報が掴めていない奏に、護は苦言を呈す。
「仕方ねぇだろ。そもそも村についての風習を綴っている資料が少な過ぎる」
「俺も家中探したがほぼ何も書いていなかった。やっぱ記録破棄されてんな」
「だな。余程後世に残したくないほどの事だろーな」
もし資料がこれ以上見つからなかったら対処療法をせざるを得なくなる。市や学校からもこの代で終わらせてほしいと言われている為、神楽家としては何としても終わらせたいが。
(現に過去何度も何代も前の祖先が完全祓除を失敗しているからな)
怨霊関係は解決が難しい。仮に情報を完璧に抑えて挑んでも無視されるケースが殆どだ。結局普通に倒すしかないことが多い。
「聞き込み、いや最後に被害が出たのは150年も前だし.....」
そんな長寿の妖怪ジジババはいるわけがない。考え込んでいる奏に、護はある事を提案する。
「一条家に行くとか?」
「どうだろ、神楽家と関係性悪いからな.......」
「いや、安土桃山時代の時、井戸の怨霊祓除を協力してくれたから、ワンチャンいけるかもな」
江戸の初期、ゴタゴタがあり神楽家と一条家の関係はマイナスになってしまった。
「じゃあ、一筆書くかぁ......」
引け目はあるが、何もしないと始まらないので取り敢えずパソコンで嘆願書を書き、一条家に送った。
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令和7年5月11日
一条家様
天城中学校の古井戸に関する資料貸し出しを求める嘆願書
九瀬市立天城中学校での井戸の怨霊の祓除をする為に必要な資料の貸し出しを、もし所持しているならばお願いいたします。
資料については、明治維新以前の天城町の風土、怨霊の祓除の際の戦闘記録、怨霊の個人的な資料などの貸し出しをお願いいたします。
祓除を完了した次第、直ちに資料を返却いたします。
神楽家一同より
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「何だこれは!怨霊ごときに、神楽家に手を貸すだと!?」
「江戸の世で、神楽家に受けた屈辱を、当の神楽家は忘れたのか!」
この嘆願書、一条家で物凄く波紋が広がった。一方は「面の皮が厚い神楽家は怨霊ごときに手を貸せなんて、ふざけんな!」というジジイが殆どだ。
「だがこれはチャンスではないか?」
「これを機に神楽家との関係修復も出来るのではないか?」
もう一方は「昔は昔、もういがみ合いを終わらせた方が良いのでは?」という、関係修復を求めている若者の祓除師グループとジジイで争っていた。
「だがな!同じ帯状五家とはいえ、格下の神楽家ごときが要求してきたのだぞ!」
「そうだ!あの屈辱を忘れては、先代たちに示しがつかん!」
一条家はプライドが超天元突破をしている。一般人を猿と認識、祓除師も実力があっても家柄が自分たちより格下の家出身だと舐める。
家柄が良くても弱いなら更に舐める。それが彼らの生態だ。
「双方、落ち着きたまえ」
この一言により、ジジイと若者は黙り同じ方向を向く。左目に眼帯をつけている、30代の金髪の男がいた。
「私も彼らに同意だ。関係修復も悪くないだろう」
「ぐっ......承知しました、当主様」
ジジイから当主と呼ばれた男は会議が終わった後、従者に命令してありったけの資料を送りまくる。その夜、男は縁側で微笑む。
「面白いな、神楽奏は」
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14日、一条家から貰った資料を、学校帰りに帆夏を屋敷に招待した。
「ここが奏君のお家ですか、私の家より広いですね」
「そりゃあ、飛鳥時代から続く由緒正しい家柄だからな」
会話しながら廊下を歩いていると、肇に出くわしてしまった。
「おい奏、少しこい」
「?何で?俺は今から」
「いいから来い!」
「あー、少し待ってくれ」
「はっ、はぁ」
帆夏から少し遠くに行き、奏は肇に近づき文句を言う。
「おいジジイ、何だ突然、俺は任務だぞ」
「重要な事だ、聞け」
肇から「重要」と聞かれ、奏は何事かと身構える。そして肇は口を開く。
「お前、あの子と付き合ってんの?」
「雑巾見てーに搾り尽くすぞ」
「何故だ!?」
「えぇと......???」
肇が叫んだ大声に帆夏は困惑する。
「あー気にすんn」
「そうか!お前はオールラウンダーだったのか!!」
ブチッっと、帆夏は心なしか聞こえた。そして奏と肇は世界一不毛な言い争いを始めてしまう。
「気にすんな、5分も経てば終わる」
「ひゃっ!?て、貴方誰ですか??」
「奏の叔父だ。悪いな、あいつら仲が良くて」
家の中なのに煙草を吸っている護に言われて帆夏は口論している2人を見る。全くそんなふうには見えなかった。
「あいつ、両親がいないんだよ」
「えっ?そうなんですか?」
奏に両親がいない事に帆夏は驚いた。護は煙草を吸った後更に話す。
「まぁあいつの両親はゴミみてぇな奴だった。ド変態の父親はあいつの名前を勝手に決めやがった。まぁ俺は奏っていう名前を馬鹿にはしないが」
「.....」
「母親は家出してどっかに行っちまったし、どうしようもなかった」
何も言い返せない。世間一般は祓除師の家に生まれたらいい暮らしをできると思っている。何なら人生イージーだと思っている。
「......私は奏君のように強くないし、両親もいる。奏君の苦労を分かったつもりはありません。ですが、私は助けられました。だから、私も奏君を助けたいです」
「そうか、そりゃあ頼もしいな」
2人が会話を終えると、不毛な争いをしている奏と肇は取っ組み合っていた。
「おいジジイ、奏、いつまでそんな事してるんだ」
「「だまれ!!!!」」
「よーし殺す」
「待ってください!?」
今日は久々に面白い1日になるかもしれない。
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争いは終わり、護から若干説教を喰らったが、ジジイを除いた3人は資料の確認を始めた。
「マジか、まんま帆夏が言った事といっしょじゃねーか」
「ドン引きだわ、マジかよ」
「本当だったんですね......」
村の風習についての資料を見れば見るほど、読めば読むほど、この地が如何に異常だったかが分かってしまった。
「ですが......」
「これで分かったな、かなり正確な資料だな」
資料の正確さに感動していると、帆夏はある事に疑問を持つ。
「しかし、神楽家と一条家は仲が悪いと聞きましたが、よく資料を貸してくれましたね」
「どうやら一条家の新当主様が関係を修復したいらしいな」
「へーっ?」
そんな会話をしていると、3人はついに怨霊についての資料に手を出す。
もう少し穢れについて解説
人型の穢れは鬼含め全部鬼のランク付けになります
反対に動物みたい(人っぽくねぇよな)っていう穢れは狐タイプです
強い順に、
天狐→仙狐→空狐→気狐→野狐
って感じです。
強さは基本鬼型と同じ感じ。
例 黄鬼=空狐