嫌だ嫌だ嫌だ、何で私がこんな目に、ふざけるな!殺してやる!憎い!
声が聞こえる。水のように透き通った優しい声。
『じぁあ、殺してみる?』
「どこ....?」
目を覚ますと、少女は檻に閉じ込められていた。薄暗く、光が一筋差し込んでくる。昨日の記憶が曖昧だ。
徐に外を見てみると、田んぼで農作業をしている男と、道端で踊っている幼い少年3人がいた。
「いいな....」
その細い手で檻に手をかける。羨ましそうに見つめていると、少年たちは不思議そうに少女を見る。するとこっちを見てきた農作業をしていた親が少年を連れて行く。
「お父さん!邪魔しないでよ!」
「そうだよ!」
「むー!」
少年たちが父親に文句を言ってくるが、お構いなしに怒鳴る。
「馬鹿者!あのガキは化け物なんだぞ!」
「そうなの!?」
「そうだ!だから見るんじゃない!」
少女にそんな会話は聞こえなかったが、少年たちが去っていった事により残念そうにする。
「あーあ、踊りもう少し見たかったのに......」
両親は彼女が生まれた数日後、謎の変死を遂げている。更に彼女を引き取った者も次々と変死を遂げていき、彼女は化け物と呼ばれる事になった。
人々は彼女を殺そうとした。だが殺せなかった。どうしても死なない為、閉じ込める事にした。
「........少ないなぁ」
食事は茶碗の半分程度の雑穀米、一切れの漬物だけを1日一回提供された。当然足りるわけもなく、どんどん衰弱いていった。
「お腹......空いたな.......」
空腹を紛らわす為に少年たちの踊りを見ている日々。だがそれも終わりを迎えた。
突然檻の扉が開かれた。光が一気に流れてきて眩しく感じる。
「おい、こい!」
「......何なの..........?」
「黙らっしゃい!」
既に踊りを見る余裕もなく横たわっている少女の髪を掴み無理やり立たせ、身体中に縄を縛ってどこかに連れて行く。
♦︎♦︎♢♢♦︎♦︎
気がつくと井戸が見える。顔を井戸に押し付けられる。
「.......どこ.....?」
掠れた声で言葉を発す。無駄に着飾った太ったババアが近づいてくる。
「さっさとしなさいよ、このガキの首を井戸に落としてちょうだい」
「承知いたしました、オババ様。お前、剣を構えろー!」
農民の男は剣を構えて彼女の横につく。彼女は心底このババア共に恐怖したと同時に、憎悪の感情が芽生える。
(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!なんで、私がこんな目に!)
彼女がどれだけ願っても、無情にも剣が振り落とされ、彼女の首は飛ぶ。
井戸に落ちていく時、ババア共の喜んだ顔が見える。
(ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!!!!殺してやる!!憎い憎い憎い憎い!!!)
『じゃあ、殺してみる?』
声が聞こえる。水のように透き通った優しい声。
『だれ?』
『私は貴方の味方。常に貴方を守ってきた』
彼女は思い出す。両親、自分を引き取った者たちの暴力から守ってきた存在。
『だけど、無駄に着飾った女がいるだろ?あいつのせいで君を守れなかった』
『.....どうすればいいの?』
『簡単さ、強く思いを念じればいいのさ』
殺す、私を害する者も、自分勝手な者も、全部殺す。私は静かに暮らしたかったんだ。
"それ"は、狂気的な笑みを浮かべる。
『やろうか、みんな殺そう!』
♦︎♦︎♢♢♦︎♦︎
「今回も成功したね、これで村は安泰だ」
「ありがとうございます、オババ様」
全員はババアにお辞儀をする。ババアは呆れた声でこう言う。
「さっさとこれ捨てちまいな、あるだけ無駄なんだよ」
「承知しました」
ババアの指示に従い、男たちは彼女の遺体に触れようとする。
だがその瞬間、男たちは風船のように爆散し死んだ。
「なっ!?何だい!?」
1人になったババアは狼狽える。彼女の遺体は痙攣し笑い声が聞こえる。
『ふふふふふふふっふふっふふふふふふっ!!!!!!!ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ!!!!!!!!!!』
「何だい!?何が起こっているんだい!?」
事態が飲み込めず恐怖するババアだが、恐怖は終わらない。ババアは恐怖を押し殺し必死に命乞いをする笑。
「分かった、分かった!!望みは何だ!」
『そうねぇ......』
ババアは答えを聞く間も無く頭が爆散する。
『貴方の命♡』
......その後、この風習の関係者は彼女によって皆殺しにされ、村の人々は恐怖した。風習は廃れ、彼女と祓除師は数百年も戦っていく事となった。
♦︎♦︎♢♢♦︎♦︎
「「「................」」」
「資料を読めば読むほど、ドン引きレベルの内容しか書いていない。というか、当時がおかしい。」
「奏お前ナレーションの真似すんなよ」
真似すんなよ。そんな事はいいとして、どうするか考える。
「しかしどうしますか?」
「ん?あぁ、多分祓除するなら学校を閉鎖するしかないな」
『そんな必要は無いわよ」
全員が"それ"に気づく。いつの間にか世界が白黒になっており、"それ"は巨大で歪んだ顔で3人を見つめる。
「よう、初めましてだな」
「怨霊か、どしたー?」
『どうしたも何も、個人情報読まれてんだからブチブチキレたわよ』
2人は余裕で怨霊に話しかけるが、帆夏はその圧に昏倒しそうになったが、護が結界で帆夏を包む。
「大丈夫か嬢ちゃん?これで楽になったぞ」
「あっ、ありがとうございます......」
『結界術ね、めんどくさいわぁ』
すると、怨霊はニヤリと笑う。
『2日後、私は近くの山で待っている。150年ぶりに暴れることができるんだもの、また殺せるなんて楽しみだわあんたたちの次は神楽家を潰してあげる』
そう言うと怨霊は消えた。結界も解き緊張が消える。
「大丈夫でしょうか?」
「何がだ?」
「危険ってことじゃないですか?」
帆夏は恩人である奏が傷ついてしまうことを心配しているが、奏は笑う。
「いや、あの程度、余裕で倒せるさ」
「それに、対処法はあるからなぁ」
「そうですか、少し安心しました」
帆夏の表情が和らぐところ、ジジイが部屋に来やがった。来るや否や、馬鹿でかい声をだす。
「おい!大丈夫か!?」
「勘弁してくれよ親父、女の子の前でんなデカい声出すんじゃねぇよ」
「あぁすまんかった、所でさっきの」
「あぁ、本丸から親切にきた」
予想通りというべきか、ジジイは頭を抱える。だが数秒もしたらどこかに電話をかける。
「ん?」
「どこにかけてんだジジイ?」
困惑するとジジイはスマホをしまう。
「流星を呼んだ、あいつの強さも試してみたいでの」
「流星って、奏に弟子入りした奴のことかよ」
「そんな人いたんですか......」
護と帆夏は呆れてしまう。だが奏はやる気だった。
「よし、あいつには実践で強さを見極めるか」
「やる気ですね.......」
「一応師匠だからな」
「では、私も連れてきてくれませんか?」
「「「え?」」」
男三人衆が呆けた声を出すが、帆夏は構わず続ける。
「私も、何となく放っておけなくて」
「いや、危険だぞ?」
「そこは皆さんが守ってくれるでしょう」
「「「.......」」」
何という面の皮の厚さ。思わず呆れてしまうが、どうしてもということで連れていった。
♦︎♦︎♢♢♦︎♦︎
近くの山に登れば登るほどその気配は巨大化していく。常人ならとっくに心臓発作を起こしている。
「どうだ嬢ちゃん、何にも感じないだろ」
「はい、おかげさまで。凄いですね、お札を持っているだけで平気なんて」
今回、帆夏には護特製の札を持たせ、洗礼と言わんばかりの圧を防いでいる。
「護はこう見えて優しグエッ!」
「名前で呼ぶな、叔父さんと呼べ」
「検討に検討を加速しとくわ」
「.........」
そんな事を話しているうちに、木が生えていない原っぱに来てしまった。
「これは.....」
「雑草がやべー色してんな」
雑草が紫どころか虹色に変色している。しかも現在進行形で周りの木も枯れまくって変色している。
「あー完全にいるな」
「まだかの」
護とジジイが呑気にそんな事を話していると、見えない何かが突然飛んできた。
「おっと」
「挨拶だな」
2人は拳で迎撃する。奏は非戦闘員の帆夏を守るように渦を生成し防ぐ。
すると、空間を破るように現れたのは怨霊。全身は綺麗な純白のワンピースを着ているが、体は全身火傷をしているように見え、長い髪はボサボサ、顔は常に引き攣っている。
『あらぁ?防いじゃったのぉ?塞がれちゃったぉ?』
「出たなババア」
3人は余裕で怨霊を見つめるが、帆夏は守られているとはいえ若干の緊張をする。
「まぁお前さんを相手するのは」
その時、大量のデカいトンボが現れる。
「俺の孫の弟子だが」
トンボたちは一斉に怨霊に群がり、体が見えなくなる。
『邪魔ね』
苛立ちながらトンボたちを吹き飛ばし、トンボたちを粉々にするが、更に増えて怨霊に群がる。
『鬱陶しいわね!』
吹き飛ばすけど更に増えて群がられる。その間に流星が現れる。
「師匠!お久しぶりです!」
「お、おう久しぶり。所であの式神は?」
「
「出すコスト自体は少なそうだな」
2人は会話をしているが、帆夏は不思議そうに見つめる。
(彼が、奏くんが言っていた弟子......)
「君が上杉帆夏さんか、同い年だしよろしく!」
「はっ、はい、よろしくお願いします」
帆夏と流星は握手をする。だが帆夏の胸はモヤっとした。
(......?なんだろう)
『あ"あ"あ"あ"!!!鬱陶しいわね!!イライラさせるのだけは一丁前ね!!』
怨霊は右手に印を組むと、八つ目に四つ足の黒い怪鳥を出現させ、こっちに突進させる。
「させるかよ!大猩久!」
札で出現させたゴリラが怪鳥を全身で受け止め押さえてしまった。だがその間に怨霊は左手を振るい、また見えない何かを大量に飛ばしてくる。
「やれやれ、あんま仕事したくないのに」
護に飛んできた何かは結界で包み爆散させる。
「おい護、ワシも守ってくれよ」
「やだよ親父、強いんだから別にいいだろ」
「全く、年寄りをこき使いよって」
そんな事を言ってるが、護の方を向いて拳で迎撃している。
流星は奏に何か渡している。それに疑問を持った帆夏が問い掛ける。
「それは何ですか?」
「流星と護が作った札、これで一つ、芸をしようと思って」
「?」
何を言っているか分からない帆夏だったが、怨霊が攻撃を仕掛ける。
『人間ぶっ殺しパンチ!!!』
「っ!危ない!」
帆夏が悲鳴をあげる。流星は依然怪鳥と戦闘中だが、その他は奏を守ろうとしない。
「?何が?」
その拳を受け止めてしまう。片手で余裕で。
「『えっ』」
帆夏と怨霊から呆けた声が出る。その衝撃で奏の下の地面や周りの木々が吹っ飛ばされる。
「えっえええっええ???」
もう何も言えなくなって「え」としか言えない。
『何で受け止めるのよおおぉ!!ふっざけんじゃないわよおぉ!!!』
思わず怨霊もブチギレてしまった。
『人間が何でこんなに強いのよぉ!このまま喰ってやるるるるる!!』
体を変形させ奏を食べようとするが、カウンターパンチをくらい、木々を巻き込んで吹っ飛んでいく。
「ふぅ、ふぅ、あれ?式神が消えた」
流星と怪鳥の戦闘はかなりギリギリだったが、怨霊がダメージを喰らったことにより、維持できずに消滅した。
奏は吹っ飛んでいった怨霊に向かう。
「あの、奏くんは何をしようとしているのですか?」
「さっき札渡されただろ、式神化だ」
「式神化?」
「そうだ、何度も祓除しようとしたのに結局倒せていない。だからいっその事、札に封印し式神にしようって話だ」
怨霊の式神化はすることは出来るが、式神術と、過去何百年も現れなかった護ほどの結界術があって初めて出来る。
『ふっざけんじゃないわよ.......』
「意識が残るだけいいだろ」
ペタッと、怨霊の頭に札が貼られる。すると苦しみ出す。
『ぎぁあああああああああああ!!!!!があああああああ!!!!』
「大丈夫ですか?あれ」
「大丈夫、多分」
「えぇ......」
護が適当言ってるがその内怨霊の体が光だし、札に吸い込まれ、怨霊の体が消え、札は宙に舞う。
「よし、怨霊、ゲットだぜ」
宙に舞った札を受け止め、ようやく何百年も続いた戦いは終わった。
「何で早く祓除しないの?」という人向けに
何度も言っていますが、怨霊の祓除はすっげーむずいです。式神にするにも、現代最高峰って言われてる(作中でも後々言います)護と、式神使いが協力しないと出来ません。
式神化するにあたって、式神術の難易度は普通ですが、結界術は護レベルじゃないと出来ません。また怨霊についての情報を札に組み込むという、クソむず技術なのでその技術が失われかけましたが、ジジイがその事を思い出し、今回の作戦に出れたのです。(過去、護ほどの結界術師がいなかったのも原因。最後の式神化は1400年前くらいです)
怨霊の情報を札に組み込むプロセスを書くのを忘れてしまいました(汗)