ISに告白された少年   作:二重世界

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第45話 亡国機業

「妙にツヤツヤした顔をしているな?」

風呂から出て部屋にシャルの様子を見に来ると刹那っちが幸せそうにしていた。

 

「おいしくいただきました」

手を合わせながら言う。

 

「いただく?寝ている相手をか?」

 

「深夜くんが遅いから我慢できなくて。睡姦って初めてだったけど気持ち良かった」

マジでか!?気絶している相手に何をやってんだよ!

て言うか、俺が風呂に入っていたのは三十分ぐらいなのに。手が速いな。

 

「いや、普通、途中で起きるだろ」

 

「起きそうになったら睡眠薬を使って眠らせたわ。裏でも中々手に入らない強力なヤツよ」

 

「……それって、普通に犯罪だろ。後で処分されないのか?」

て言うか、シャルにはどうやって説明しようか。いや、しなくていいな。

 

「大丈夫でしょ。身内のことだし、言わなければ問題なし」

物凄く肝が座ってるな。

 

「今度からはこの方法でヤろうと思うの。て言うか、今まで何で思い付かなかったのか不思議」

 

「IS学園ではやめろよ。俺だけじゃなくて魔王も敵に回すぞ」

 

「う~ん……」

本格的に考え込む刹那っち。普通、悩むか?

 

「仕方ない。今度から仕事をする時は殺す前にヤることで妥協しよう」

そんな妥協があるわけねぇだろ!ヤりたければ恋人を作れよ。

まぁ、刹那っちには何を言っても無駄か。

 

「そうだ、戻って来る時に見付けたんだが卓球しないか?」

 

「別にいいよ」

そして俺は鞄からマイラケットを出して卓球場に移動した。

 

 

 

卓球室に着くと先客が二人いた。金髪と乱暴そうな女がベンチに座って飲み物を飲んでいる。

 

「あ、スコールさんとオータムさんだ」

 

「知り合いか?」

 

「うん」

刹那っちは意外と顔が広いな。

 

「お久しぶりです」

 

「あら、貴女は誰かしら?オータムは覚えてる?」

 

「覚えてねぇ」

二人は刹那っちのことを覚えていなのか。

 

「ごめんなさい。私達は貴女のことを覚えてないわ」

 

「二人が覚えてないのも無理はありません。二年ぐらい前にウチに依頼に来た時に少し会っただけですから」

 

「依頼?」

 

「はい、私は天吹です」

さっきから刹那っちが二人に尊敬の眼差しを送っているのが気になる。

 

「……天吹。ああ、思い出したわ。確かお母さんの後ろで頑張ってた女の子よね?大きくなったわね」

何か見た目以上に発言が年寄り臭いな。

 

「で、そっちの男の子は?もしかして恋人かしら?」

 

「ふざけたこと言ってんじゃないわよ、オバサン。深夜は私の恋人よ」

 

「お、オバサン……」

 

「あぁ?てめぇ、舐めた口、聞いてんじゃねぇぞ」

このオータムって女、ガラが悪いな。いきなり立ち上がって、こっちを威嚇してきた。

 

「やめなさい、オータム」

 

「ち!分かったよ」

そう言うとオータムは渋々、ベンチに座った。

 

「じゃあ、自己紹介しておこうか。俺は飛原深夜だ。よろしく」

黒は不愉快そうにして挨拶をしない。

 

「私はスコールよ。こちらこそ、よろしくね」

 

「オータムだ。てめぇなんかと、よろしくするつもりはない」

ここまで偉そうにされるとムカつくな。

 

「深夜くん、この二人は亡国機業よ」

 

「亡国機業?じゃあ、ウサギが言ってた、ISを作れってうるさい金髪のオバサンってスコールのことだったのか」

確か、いっくんを拉致った組織でもあるな。

 

「貴女、私達のことを知っているのかしら?」

 

「篠ノ之束に少し聞いただけだ」

 

「!?貴方、篠ノ之博士の知り合いなの?」

いやぁ、良い感じに驚いた顔だな。こんな感じに分かりやすい奴ばかりだったら俺も苦労しないのに。まぁ、こんな奴ばかりというのもつまらないが。

 

「友達だ」

 

「あら、そうなの。だったら貴方から篠ノ之博士に頼んでくれないかしら?」

 

「ISの提供をか?しかもコアごと」

 

「ええ、話が早くて助かるわ」

あ、良いこと思い付いた。

 

「そうだな、せっかく卓球場にいるんだ。俺と卓球で勝負しないか?俺に勝ったら頼んでやるよ。その代わり、あんた達が負けたら俺の言うことを聞いてもらう。どうだ?」

 

「……内容によるわね」

分かりやすいぐらい警戒してるな。まぁ、いきなりこんな賭けを持ち掛けられたら普通は誰でも警戒するよな。

 

「俺が勝ったらカジノに招待してもらう」

 

「は?」

 

「だからカジノだよ。未成年だけじゃ入れないだろ。だから、あんたに招待してもらいたいんだよ」

デバイスを使うのはいいが、バレた場合めんどくさいことになるからな。

 

「ええ、それぐらいならいいわよ。ルールはどうするの?」

 

「そっちは二人だしダブルスにしよう。俺は黒とやる」

そういや、ダブルスは初めてだな。確かパートナーと交互に打つんだよな。

 

「ええ、いいわよ」

 

「てめぇみたいな生意気なガキに大人の力を教えてやるよ」

卓球でかよ。

 

「深夜、私はラケット持ってないんだけど」

 

「あそこの受付で借りてこい」

黒がラケットを借りてきて試合が開始した。

スコールが中陣ドライブ型、オータムが前陣速攻型。両方、攻撃的なプレイスタイルだ。カウンターが得意な俺にとってはやりやすい。

そして、試合は俺達の快勝で終わった。

 

「ゲームセット、俺達の勝ちだな」

 

「あぁん!てめぇ、舐めんじゃねぇぞ!」

 

「何か負け犬みたいで憐れだな」

あ、しまった。思ったことを、そのまま口に出してしまった。

 

「てめぇ、ぶっ殺す!」

 

「やめなさい、オータム!」

 

「で、でもよ……スコール」

オータムはスコールに弱いんだな。どうでもいいが。

 

「私達の負けよ」

 

「ちっ!」

そう言うとオータムはラケットを床に叩き付けて、どこかに行ってしまった。道具は大事にしろよ。

 

「オータムが失礼な態度を取ってごめんね。恋人として謝るわ」

俺を利用してウサギに取り入ろうという考えだな。

て言うか、何か変な単語が聞こえたが。

 

「え~と、二人は恋人なんですか?」

驚いて、つい敬語になってしまった。

 

「ええ、そうよ。言ってなかったかしら?」

聞いてない。と言うか予想外すぎる。

 

「……刹那っちが二人に尊敬の眼差しを向けていたのは、こういうことだったのか?」

 

「そういうこと。二人がレズカップルだからよ。私も早くそうなりたいわ。具体的に言うとクロエちゃんか簪ちゃんあたりと」

適当にクロエあたりを狙ってくれ。

 

「ところで、どうするのかしら?今すぐ行く?」

 

「恋人は追わなくていいのか?」

 

「ええ、大丈夫よ。こういう時は放っておくのが一番」

なるほど、これが大人の余裕か。

 

「じゃあ、行くか」

 

 

 

 

「ああ、くそっ!あの占い師の女。思い出しただけで腹が立つ!」

カジノから戻ってきて皆で夕食を食べている。旅館ではなく俺が町で見かけた焼肉屋に来ている。

 

「どうした?お兄ちゃんが苛立っているとは珍しい。というよりも初めて見たな」

 

「ああ、カジノでちょっとあってな。あ、刹那っち。その肉、焦げそうだぞ」

あんな人を苛立たせる天才には会ったことがない。的確に人の嫌がることだけを言うとは。それに、あそこまで感情の読めない相手は初めてだ。

 

「私は焦げかけが好きなのよ。深夜くんのことは気にしなくていいわよ。カジノでぼろ負けしただけだから」

 

「深夜が負けたの?想像できないけど。その肉、私が育てたのに」

 

「へへぇ~、焼肉はサバイバルだよ、かんちゃん」

のほほんさんはあれだけお菓子を食べておいて、よく肉なんて食べれるな。しかも、それで太らないんだから不思議だ。

 

「で、何があったの、深夜」

シャルは肉よりも野菜を食べてるな。

 

「超能力者を名乗る酒臭いオバサンに儲けのほとんどをポーカーでむしりとられたんだよ。後、ラウラ。肉だけじゃなくて野菜もちゃんと食べろよ」

俺はラウラの皿に野菜を入れる。

 

「……ちゃんと分かっている。ところで、どれくらいむしりとられたのだ?」

 

「最大の時は百万ぐらい稼いでいたが最終的に残った稼ぎは五万ぐらいだ」

後でまた稼ぎにいくか。夏コミと今回の旅行で結構な額を使ったし。

 

「それでもマイナスになって借金を背負うよりもはいいよ」

 

「俺がマイナスになる前に自分で引いたんだよ。ギャンブルは引き際が大事だからな」

 

「うんうん、その通りだよ。ギャンブルは引き際が大事だね。ところで束さんも肉、食べていいかな?」

 

「うわっ!」

気付いたらウサギが俺に抱き付いていた。

 

「いつから、いたんだ?」

 

「今、来たところだよ。しっくんが人の気配に気付かないなんて珍しいね。あ、店員さん。ビールを注文」

 

「あと、Aセットも追加で」

俺が注文している間にウサギが勝手に俺の肉を食べた。

 

「こら、ウサギ。そこは私の特等席よ。どきなさい」

黒が人型になると同時にウサギの頭を掴む。最初は避けられていたのに黒も成長したな。

 

「痛い痛い!黒ちゃん、この町では暴力は禁止されているんだよ!」

 

「知らないわよ。このウサギはドMの変態だから、こうすれば喜ぶとか言えば大丈夫でしょ」

大丈夫だとは思えないが。まぁ、身内同士のじゃれあいぐらいなら問題ないか。

それよりもウサギが黒に抵抗しているせいで、さらに首が絞まってヤバい。

 

「よっと」

俺は箸でウサギの額を突いた。

 

「イタッ!」

ウサギが俺から離れた。これで肉が食えるな。

 

「酷いよ、しっくん」

 

「食い物の恨みは恐ろしいんだよ」

とりあえず俺は次の肉をいれる。

 

「じゃあウサギがまた変なことをしないうちに」

そう言うと今度は黒が抱き付いてきた。

 

「黒は食べれないから食事中は指輪になってるんじゃなかったのか?」

 

「深夜に抱き付いているだけで幸せだから問題なしよ」

食べるのに少し邪魔だが仕方ないか。

 

「あ、のほほんさん。その肉、まだ焼けてないぞ」

 

「少しぐらい赤いところが残ってる方がおいしいんだよ~」

ここで店員が追加の肉とウサギのビールを持ってきた。

 

「よし、ビールが来たところで束さんも肉争奪戦に参加するよ」

 

「争奪戦なんかしてねぇよ。て言うか、何でここにいるんだよ?」

ウサギに旅行をするなんて言った覚えはないぞ。

 

「束さんだから」

説明になってないが妙な説得力があるな。

 

その後の旅行はウサギも交えてすることになった。夜は部屋にウサギが乗り込んできて大変だった。刹那っちが昼のことで満足していたのが不幸中の幸いだったな。

翌日はカジノでリベンジしようと思ったら刹那っちの叔父である生涯無敗がやって来て、また稼げなかった。生涯無敗の名は伊達じゃないな。その後も色々な裏の住人と出会ったり、亡国機業にスカウトされたりした。返事はまだしていないが。楽しい旅行だったな。

また来年も来よう。いや、冬休みにするか。カジノでリベンジしてやる。




ついに最終回です。飽き性の自分がここまでやれたことに驚いています。
やりたいことの大半は出来て個人的には満足しています。一つやり残したことをあげるとしたマドカを出し損ねたことですね。もしかしたら気が向いたり、何か思い付いたりしたら復活するかもしれません。

では次回作にご期待ください。まだ完結させていない作品があるけど。

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