トントン
王室の扉がノックされた。こんな夜遅くに何の用事であろうか、また面倒なことが起こったのであろうか、億劫だが無視することもできない、万一アルビオンが再び艦隊を送り込んできていたらそれこそ事である。アンリエッタは内心面倒くさそうに顔を上げた。
「誰ですか? こんな夜中に、ラ・ポルト? それとも枢機卿かしら?」
「ぼくだ。ウェールズ・テューダーだ。」
アンリエッタは扉へと駆け寄った。
「ウェールズ様?貴方はアルビオンで命を落としたはず・・・・・」
唖然としながらそんな事を言う。
「それは間違いだ、ぼくはこうしてここにいる。」
アンリエッタは、ドアを開ける。以前と変わらぬ笑顔がそこにあった。
「ウェールズ様・・・・。」
「久しぶりだね、アンリエッタ!」
ウェールズは人懐っこい笑みを浮かべると、アンリエッタに駆け寄り、抱きしめる。だがアンリエッタはすぐさまウェールズから離れた。抱きつかれた瞬間に、少女は本能的に身の危険を感じたのだ。
「結婚するそうだね、おめでとう。」
「それは・・・・・ありがとうございます。」
ウェールズの声に、悲しいものをアンリエッタも感じたのか、沈んだ声だった。
「君が嫁がれる幸運な相手は誰だい?もしかして君がいつも話していた例の彼かい?」
アンリエッタは小さな溜め息と共に答えた。
「ウェールズ様、この城にいらしてくださいな。今のアルビオンにはこちらへ攻め込む力はありません。この城はハルケギニアのどこよりも安全です。敵はウェールズさまに指一本触れることはできませんわ。」
「そういうわけにはいかないんだ。」
ウェールズはにっこりと笑う。
「どうなさるおつもりなの?」
「ぼくはアルビオンへ戻らなくてはならない。」
「何を仰るのですか!? 今の命を捨てるだけではないですか!」
「それでも、行かなくちゃならないんだ。アルビオンを、レコン・キスタの手から解放しなくちゃならないんだ。」
「ご冗談を!」
「冗談なんかじゃない。そのために今日きみを迎えに来たんだ。」
「わたし・・・・・を?」
「そうだ。アルビオンを解放するにはきみの力が必要なんだ。国内には仲間がいるが・・・・、やはり信頼できる人が少ない。いっしょに来てくれるかね?」
「それは・・・・できることならそうしたいのですが、わたくしはもうこの国の女王なのです。国と民が肩にのっているのです、無理を仰らないでくださいまし。」
しかしウェールズはあきらめない、さらに熱心な言葉でアンリエッタを説き伏せにかかる。
「無理は承知さ、でも、勝利にはきみが必要なんだ。敗戦の中で気付いた。アルビオンとぼくには『聖女』が必要なんだ! 」
かなり情熱的なウェールズの態度に、アンリエッタは戸惑う。
「こ、これ以上私を困らせないでくださいまし、今、人をやってお部屋を用意いたしますわ。このことは明日また、ゆっくり・・・・・」
ウェールズは首を振る。
「明日じゃ、間に合わない。愛している、アンリエッタ、だからぼくと一緒に来てくれ。」
ウェールズはアンリエッタに近づいて、唇を合わせようとした。アンリエッタの体が一瞬、こわばり、ウェールズを押し戻した。
「ごめんなさい、ウェールズ様。私にはまだやるべき事があります。」
今度はアンリエッタの肩を掴むウェールズ。表情は冷たく、双眸が鋭さを増した。
「世界だアンリエッタ。僕は世界を手に入れる! そのために君が必要なんだ!」
豹変したウェールズに戸惑うアンリエッタ。しかし構わずウェールズは興奮した口調で続ける。
「僕には君が必要なんだ! 君の『立場』が! 『王女』の君がッ!」
恐ろしい、とアンリエッタは思った。これが、あの優しかったウェールズなの?違う。アンリエッタが知っているウェールズは『彼』ではない。肩を握り潰されるほどの痛みに表情を歪めながら、アンリエッタははっきりと理解した。
―こいつはウェールズではない・・・・
だから心から拒絶する。本心本音の奥底から。
「あなたは・・・・ウェールズ様ではありません・・・・。あなたは私の王女としての地位を利用しょうとしているにすぎません。・・・・酷い・・・・・こんな侮辱・・・・最低だわ・・・・・」
アンリエッタは暴れてウェールズから逃れようとした。
「こうまで僕が言ってもダメかい? アンリエッタ。僕のアンリエッタ。」
「誰があなたとなんか・・・・!」
アンリエッタは力一杯ウェールズを突き飛ばした。
「そうか・・・・仕方ない。こうなっては・・目的を変更しょう。」
「目的?」
さっぱり意味が解らないというようにアンリエッタは呟いた。
「そう。僕の目的は君だアンリエッタ。君を手に入れる事だった・・・・だが手に入らないのなら、ここで死んでもらう。」
ウェールズは杖を取り出し、魔法を詠唱する。
「エアハンマー」
魔法が何かに当たったようで、破壊音と共に物が壁にブッ飛んでいくッ!
「キャアァァァッ!」
魔法の余波で軽く吹き飛ばされた。バラバラと何かの砕けた破片のようなものがアンリエッタの体を打ち据える。鞭打つような痛みに顔が歪み、頬を涙がこぼれた。
「う・・・・・・う・・・う・・・」
痛みを抱え、動揺しながらアンリエッタは考える。何が起こったのか。何をされたのか。何をしなければならないのか。今、何をするべきなのかと思ったときにハッと自らの杖のことを考える。杖。水の力を蓄えられた自分の杖。力を発揮するための自分の武器。混乱したままだが思いついた行動をとろうと頭を働かせる。こんな轟音がすれば誰かが様子を見に来てくれる。
今は身を守らなくてはならないッ!
戦うことでは勝ち目はないッ!
ただ自分の身を守り、亀のよーに首を縮めて甲羅に閉じこもらなくてはッ!!
杖を掴むために周りを見回すが杖は見当たらない。急がなければ。今は魔法の風で見えにくくなっていますが見つかればもうツギはないッ!そうだ、テーブル。杖はテーブルに置いたのだ。テーブルは部屋の中心付近。ここからなら二歩でつかめるハズッ!
「そ、そんなッ!」
しかしアンリエッタは絶句してしまった。なぜならアンリエッタはとてもツイていなかったからだ。先ほどの風の魔法でテーブルごと、杖は壁ぎわまで「吹き飛んで」破壊されたテーブルの瓦礫に埋もれていたのだからッ!
「ハッ!」
顔を向けたアンリエッタの視線の先。自分に襲い掛かったメイジと目があってしまった。自分が絶句したときのこぼれた声。その声を耳で拾ったメイジがこちらを見つめていた。誰も来ない。こんな轟音が自分の部屋から聞こえてきたら誰かしら様子を見に来るだろう。
「少し細工をしておいた。待っていても誰もここには来ない。」
ウェールズはのそりと杖を構えた。この距離では魔法をよけることは出来ない。逃げるにはドアを出なければならないが、その間にはメイジがいる。頼みの杖は、手に取る前に呪文を唱えきられて終わりだ。杖に魔力が満ちてきた。終わりだと、アンリエッタは思った。もう終わりだと誰もが思う瞬間・・・・・・
ドシュッ!
王室の扉が吹き飛ばされた。放たれた衝撃波の一閃。あまりの威力に扉を背に立っていたウェールズも吹き飛ばされる。
「君・・・・なぜここに・・・・・」
メイジが問う。だが少年はそれを無視し、アンリエッタに駆け寄る。
「大丈夫、アンリエッタ!?」
「の、のび太さん!」
勇者の登場に、姫は喜びの涙を零した。
この小説の結末は・・・・・・・
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鬱エンド
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バウムクーヘンエンド
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デッドエンド
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メリーバッドエンド
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寝取られエンド