コルベールは出発するアンリエッタ一行を学院長室の窓から見つめていた。
「見送らないのですか? オールド・オスマン」
「ほほ、見ての通り、今鼻毛を抜いておるからのぉ。」
「トリステインの未来がかかっているのですよ? なぜそのような余裕の態度を・・・」
「既に杖は振られた。なに、彼ならば道中どんな困難に会おうと、やってくれる。」
「彼とは? ワルド子爵のことですか?」
オスマンは意味ありげに首を振る。
「まさか、あのミス・ウエストウッドの使い魔が? 彼は平民ではありませんか。」
「ほっほっほ、彼は只の平民ではないぞ。何しろ、異世界から来た少年だからのぅ。」
「異世界? そのような場所が・・・・・」
「ミスタ・コルベール、世界は広いぞ。ハルケギニアではない、どこか。『ここ』ではない、どこか。そういうものがあるのを頭越しに否定していては、いつまで経っても進歩はない。」
コルベールは遠くを見るような眼をした。
「ならば、祈りましょう。異世界から吹く風が、アルビオンに吹く風に負けぬことを!」
魔法学院を出発して半日、ワルドは止まることなくグリフォンを疾駆させていた。すでに後方からついて来ているであろうのび太の姿はもうみえなくなってしまっていた。
「ちょっと、ペースが速くありませんか? のび太さんもついてきてません。」
ワルドの前に跨ったアンリエッタが言う。
「ラ・ロシェールの港町まで、止まらずに行きたいんです。ついてこれないなら置いて行けばいい。」
「置いて行くなんて駄目よ。」
「何故です?」
「だって、仲間じゃない・・・・。それにのび太さんを置いていくなんて・・・・」
言い訳じみた口調でアンリエッタは言う。
「何故そこまであの少年にこだわるのですか?彼は平民ではありませんか。」
「それは関係ありません!」
怒ったアンリエッタが声を上げた。
「ワルド、強さと魔法が使えるかどうかは関係ありません。それにのび太さんには魔法よりも大事な物を持っているのです。」
「大事な物ですか・・・・・・・」
「一番大人しいって言っても・・・・・」
『君が借りれるのはこの馬しかない』ワルドの言葉にのび太は落ち込んだ。事実、馬の走るスピードは遅く、降りて走った方が早いぐらいだ。
「でもな・・・・・これじゃあ、追いつく前に日が暮れちゃうよ・・・・・」
そして四日後、無事のび太はラ・ロシェールへと辿りつくことができた。
「おや?平民君、ようやく到着かね?」
ワルドが入口から入ってくるなりのび太を見て言う。なぜか言葉は刺々しく、表情もどことなく険しい。
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