「そ、そういえばワルド、アルビオン行きの船はどうでした?」
そんな険悪な空気を感じたのかアンリエッタが話題を切り出す。その声に我に返ったのか、ワルドは少し困った顔をして切り出した。
「アルビオンに渡る船は明後日にならないと、出ないそうです。」
「どうして明日は船が出ないんですか?」
「明日の夜は月が重なる 『スヴェル』の夜です。その翌日の朝、アルビオンが最も、ラ・ロシェールに近づきます。船は限りある風石を使っていまして。最も近い距離で翌日飛べるのに、早くに飛んで無駄にしたがる船乗りはおりません。」
ワルドがアンリエッタの問いかけに答えた後、のび太に視線を向けた。
「急ぎの任務なのに・・・・とんだ迸りだ。」
ワルドが口を尖らせながら呟く。険悪だった空気がさらに悪化する。
「えっ・・・どういうこと?」
「わからないのか?だとしたら想像以上に無能だな。」
「わ・・・ワルド!何を・・・!」
アンリエッタは顔を青くしてのび太とワルドを見比べる。ワルドは呆れたような表情でのび太を見て、続ける。
「言葉の通りさ、学院から馬で二日の距離、予定通りなら『スヴェル』で足が止まらず先に進めただろう。なのに君が着いてきたせいで、ここで足を止める結果を作った。貴族派に襲ってくださいと言っているようなものだ。わかるか?君が足並みを乱したんだ。」
強烈な皮肉と挑発、しかも事実だ、ぐうの音も出ないほどの。のび太の額に青筋が浮かぶ。
ワルドは相変わらず氷のように無表情だ。
「ごめんなさい・・・・・。」
言葉こそ穏やかだが、のび太は泣き出しそうな衝撃にかられていた。
「フン・・・、婚約者の前で舞い上がっているのか知らんが、その程度は考えるんだな。」
「ワルド!!言いすぎですよ。」
アンリエッタがあまりのワルドのいいようにたしなめるように言うがそれでもあまり効果がないようだ。ワルドの中でのび太という人物は当初からいい印象がなかったのに拍車をかけるように先日の一件があり、ますますこじれていた。
「姫様、僕はあくまで事実を言ったまでです。彼のような平民はこの国にふさわしくありません。」
そんなのび太をさらに挑発し、ワルドは目を瞑る。言うまでもなく場の空気は最悪だ。
「とっ・・・とりあえず、もう寝ましょう?もう遅い時間ですし。」
アンリエッタが耐えられないといった悲痛な声で提案する。
「はい・・・そうしましょう・・・部屋は取っておきました。」
ワルドは鍵束を机の上に置いた。
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