「こ、これは・・・・? 生き物なのだろうか?」
そこに居合わせたコルベールが、思わず、といったように呟く。だが、それは図らずもその場にいた全員の感想と同じだった。しかし、その問いかけに答えられる者はいない。この場にいる者はその正体に皆目見当もつかないのだ。
――ただ分かるのは、『それ』があまりにも『ちがう』ということだけ。
体のバランスや色だけを見ても、到底まともな生き物であるとは思えない。それに加えて、顔の大きさに比べあまりに大きな目、横に大きく裂けた口が、その奇態さをさらに強く印象づけている。・・・・・・知能はあるのだろうか。突如周りの状況に気づいたかのようにそいつは動きを止め、用心深く周りを見渡し始めた。そしてきちんとした人間の言葉ではっきりとこう口にしたのだ。
「やあやあ。こんにちわ。ボク、ドラえもんです!」
――と。
ドラえもんはみんなのぽかんとした顔を見て、首をかしげた。
「・・・・・・・?」
それから一拍遅れ、ようやく事態を把握した見物人たちが騒ぎ出した。
「た、タヌキがしゃべった!」
「いや!しゃべる青ビョウタンだ!」
それで呪縛が解けたかのようにみんな三々五々、好き勝手にしゃべり出し、それを聞いたドラえもんがなぜか表情を変え、必死に怒りを抑えようとしている様子なのにも気づかない。
「ぼくはタヌキじゃ・・・」
絶叫を上げようとしたドラえもんにティファニアはゆっくりと近づき、
「大丈夫ですか、猫さん?」
と優しく声をかけた。その瞬間ドラえもんの全身を稲むらのような衝撃が走る。そして目から涙がこぼれ落ちる。
「う〜、狸じゃなくて猫って言ってくれた。う〜〜〜〜っ。」
ドラえもんは感激のあまりその場に泣き出してしまった。
「その、君、ドラえもんとやら。とにかく君は、一体どこから来たんだい?」
そうコルベールが尋ねると、急にドラえもんは飛び上がった。
「そ、そうだっ!僕は、穴に飛び込んで・・・・・そうだ!みんな!?みんなは!!」
狼狽したドラえもんは、すぐに辺りを見渡すが見知った仲間が誰もいない。
「・・・・機械?」
「そう、22世紀のひみつ道具でみんなの夢をかなえる未来のネコ型ロボット!それがぼくなんだ!!」
たかが子守りロボットが、胸を張ってそう宣言するが、
「『「『「ぜんっぜん、わからない。」』」』」
その場にいた全員がそう呟いた。
「ここはまだ機械文明が発たつしていないみたいだね。かんたんに言えば、動くカラクリ人形だよ。」
「カラクリ人形?! つまり、魔法を使わないゴーレムみたいな物ってこと?」
「そう。」
「『「『「ぜんっぜん、わからない。」』」』」
その場にいた全員が再びそう呟き、哀れみの視線をドラえもんに向ける。その視線にドラえもんの怒りは極限に達し、自分の腹に手を伸ばした。
と、その時。
どこからか呪文が聞こえたかと思うと、強力な風の衝撃がドラえもんを吹き飛ばした。見ると、長い黒髪に漆黒のマントといった黒ずくめの男が杖を構えている。名前は確か、ギドーだ。
ドラえもんは地面へ仰向けに叩きつけられ、頭でも打ったのかそれきり動かなくなった。事態が収まったと見たコルベール先生が、ひとまず生徒たちに学院内へ戻るよう指示する。
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