ドラえもん のび太の魔法世界物語   作:雛月 加代

64 / 64
14

その夜、のび太は一人部屋の隅で体育座りをしていた。

 

「・・・・・・・・・。」

 

考えていたのは勿論先程のやり取りだ。ワルド子爵、カトレアの元婚約者。魔法衛士隊、グリフォン隊の隊長にして、相当な実力者。彼が本気になれば、自分とは比べようにもない戦闘力を発揮するだろう。

 

「のび太さん・・・・・。」

 

顔を上げると、そこにアンリエッタが立っていた。どうやら考え事をしていて、扉のノックに気がつかなかった。

 

「その・・・・ごめんなさい。」

 

どうやらのび太が、ワルドに叱られた事を気にして、落ち込んでいるのではないかと心配してくれたらしい。

 

「別に落ち込んでるわけじゃないよ!」

 

のび太は力強く答えた。

 

「ただ、ボクもまだまだだなって思ってただけさ。」

 

だがそれが彼の強がりだという事は、アンリエッタは理解していた。

 

「子爵様がいれば、この任務も心配ないね。」

 

のび太の何気ないその言葉に、アンリエッタはゆっくりと口を開く。

 

「・・・・・・のび太さん。」

 

「僕は君が思っている程立派な人間じゃないよ。いつも遅刻するし、勉強や運動はいつもビリ、外を歩けば災難だらけ。」

 

のび太はその場で深いため息をつく。するとアンリエッタは何かを決心したかのように口を開いた。

 

「・・・・・のび太さん、私と一緒に逃げませんか?」

 

「え?」

 

「どこか遠い場所・・・・・誰もいない場所へ・・・・・・そこで私と一緒に暮らしませんか?」

 

突然の事にのび太は目を見開く。

 

「そんな・・・・冗談・・・・」

 

「冗談なんかじゃありません。」

 

「それは・・・・できることならそうしたいんだけど・・・・・・・」

 

「のび太さん、この任務が終わったら結婚しましよう。」

 

「え・・・・・」

 

いきなりのプロポーズに、のび太は驚いた。

 

「で、でも、僕。まだ・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「のび太さん・・・・・・。」

 

アンリエッタは、のび太の顔を覗き込んだ。真剣な瞳で、潤んだ瞳で。彼女とのび太との間が、すすっと狭まる。

 

「・・・・・・好きです。大好きです。のび太さんにだったら、この国を捨てることだって出来ます。」

 

恥じらいと、熱を帯びた表情で。

 

「のび太さんは、わたしのこと、好きですか?」

 

じっとのび太を見る。少し不安そうな表情。そんな表情をしていても、アンリエッタは輝いていた。トクン、と心臓が跳ねる。

 

「好き、だと思う。」

 

こんなにも心臓がドキドキしているんだから。好きって言われて、こんなにも嬉しいんだから。なんせこの国の女王だ。アンリエッタのことが好きだって言う男連中は、それこそ星の数ほどいる。そして、そんなアンリエッタが自分のことを好きだと言ってくれた。だけどーー、もうひとり、大切な人の笑顔が脳裏に浮かんだ。多分、アンリエッタと同じくらいに好きだと思える人。

 

「・・・・・そっか。」

 

「え?」

 

「好きな人が、いるんですね?」

 

「あ。え、えっと・・・・・」

 

なんで、わかったんだ?

 

「顔に書いてありますよ。好きな人がいるって。」

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

「でも、わたしのことも同じくらい好きって思ってくれてるんでしょ?」

 

「ど、どうして?」

 

「それも顔に書いてあります。」

 

そして、にっこりと笑みを浮かべる。

 

「わたしが単独一番じゃなくて少し残念ですけど・・・・・・それなら・・・・・・実力行使。」

 

アンリエッタがぽつりと呟いて。

 

「・・・・・ちゅ。」

 

唇が重なった。

 

「ん、んんんっ。」

 

アンリエッタの柔らかい唇が、のび太の唇に重なっている。鼻からこぼれる熱い息。とろけそうなくらい、柔らかい感触。あの、アンリエッタと、キスをしている。甘い、アンリエッタの唇。それは一瞬のような、永遠のような。

 

「んふ、ん、んん。」

 

甘美な感触を残したまま、

 

「・・・・・・んふぅ。」

 

アンリエッターの唇が離れた。顔はすぐ近くにあって、ほんの少し動かせば、もう一度キスの出来る距離。そんな距離で、

 

「えへへ、キス、してみました。」

 

少しおどけた様に、アンリエッタが笑った。悔しいけど、その表情に完全にときめいてしまった。可愛いと、抱きしめたいと思った。

 

「今、のび太さん、わたしのことがもっと好きになったでしょ?」

 

「うぅ。」

 

なんかもう、完全にアンリエッタにコントロールされていて、

 

「それじゃあ、もう一回。もっとのび太がわたしのことを好きになりますように。」

 

アンリエッタがはにかんだ様に笑みを浮かべて、

 

「ん、んん。んんっ・・・・ちゅ、んふぅ・・・・・」

 

さっきよりもちょっとだけ深く、のび太とアンリエッタの唇が合わさった。

この小説は続けた方がいい?

  • 続けた方がいい
  • やめた方がいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:50文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。