今回はヴィクトリア・フォン・ノイエブランデンブルクの即位から帝国側の対応を見ていきます。
前回に皇帝では無いことで出来なかった帝国軍の召集や帝国政府の人事などといったことが今回皇帝に即位したことで始められます。
恒例(?)の特記事項
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ディヴィヌス暦1861年3月4日、ノイエラント・ライヒ帝国の首都ノイエラントシュタットの大聖堂広場。新大陸の政治的中心であるこの都市は、春の冷たい風が石畳を吹き抜ける中、北部諸侯や市民、そして帝国軍の砲兵隊で埋め尽くされている。大聖堂のバルコニーには、皇帝即位を祝う緋色の旗が掲げられ、その下にヴィクトリア・フォン・ノイエブランデンブルクが立つ。20歳の若き皇帝は、砲兵科の制服を基調とした簡素ながら威厳ある装いに身を包み、肩にはノイエブランデンブルク家の紋章が刻まれたマントが翻っている。彼女の背後には、最新の野砲が象徴的に配置され、技術による帝国の未来を暗示している。
広場に響く喇叭の音が収まると、ヴィクトリアは一歩前に進み、澄んだ声で宣言する。
「我、ヴィクトリア・フォン・ノイエブランデンブルク、ディヴィヌス暦1861年3月4日をもって、帝国皇帝の座に即位する。この若き身に課せられた重責を、技術と決意をもって果たすことをここに誓う」
その言葉に、広場が静寂に包まれる。彼女の若さにもかかわらず、その瞳にはクリーミャー戦争の戦場を視察し、砲煙の中で未来を見据えた経験が宿っている。群衆の中からは、感嘆の声と拍手が徐々に広がる。ヴィクトリアの心の奥には、南部諸侯がこの声に応じないかもしれないという予感がよぎるが、彼女はそれを顔に出さず、演説を始める。原稿は持たず、全てを記憶に刻み込んでいる。
「帝国の諸侯、将兵、そして我が愛する民よ。
我々が今、立っているこの瞬間は、帝国の歴史において試練の時である。南部の諸侯が帝国から離れ、新たなる道を歩もうとしていることは、誰の目にも明らかだ。しかし、私はここで宣言する。帝国は一つであり、分裂してはならぬ。南部なくして北部は成り立たず、北部なくして南部もまた完全ではない。我々は、同じ血と歴史を共有する家族なのだ。
南部の諸侯よ、シュピールカルテン公フォントルロイ、アドマイヤー女侯爵、そして全ての離脱した指導者たちに呼びかける。貴君らの誇りと伝統は、帝国の礎である。貴君らが離れることは、帝国の心臓を引き裂くに等しい。私は貴君らに手を差し伸べる。戻ってほしい。対話と協力によって、我々の間に横たわる溝を埋める道がある。私は貴君らの声に耳を傾け、共に未来を築く用意がある。帝国は貴君らを必要としている。
私の志は、技術によってこの帝国を統一し、強くすることだ。私の領地ノイエブランデンブルクの工場から、サンガモン川の流域まで、帝国全土を一つの意志の下に動かす。野砲の集中砲撃が敵を壊滅させるように、工業の力と知識の光が我々を未来へと導く。私は議院内閣制を確立し、政治を諸侯と民に委ねることで、人民主権への道を開く。分裂は我々の力を削ぎ、進歩を阻む。統一こそが、我々の未来を切り開く鍵である。
この即位の日、私は誓う。帝国を一つにまとめ、技術と決意で新たな時代を築くことを。そして、南部の諸侯が再び帝国の旗の下に立つ日を、私は信じ、待ち続ける」
演説が終わり、ヴィクトリアが一礼すると、広場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれる。砲兵隊が敬礼として空砲を放ち、その轟音がノイエラントシュタットの空に響き渡る。彼女の瞳には、希望と一抹の不安が交錯している。南部諸侯が応じるかどうかは分からないが、帝国統一への決意は揺るがない。その未来がどのような試練を彼女に課すのか、それはまだ、誰にも分からない。
即位式後、
新皇帝ヴィクトリアはマリア女選帝侯を呼び出す。
皇帝ヴィクトリアは「マリア、説得の首尾はどうなっていますか?」と尋ねるとマリア女選帝侯は「陛下、残念ながら芳しいものではありません。何しろ応答すらありませんので。」と答えると、
皇帝ヴィクトリアは「引き続き、離脱諸侯の説得にあたって。平和的に離脱諸侯を呼び戻せるのはあなただけです。」とマリア女選帝侯に南部の離脱諸侯の帰参説得を命じる。マリア女選帝侯は「わかりました。引き続き説得にあたります。」と
皇帝ヴィクトリア初の勅命を承って退出する。
そして
皇帝ヴィクトリアはヘルマン宰相とハンス選帝侯を呼び出すと「ヘルマン、ハンス、帝国軍を召集する。」と告げ、「予てヘルマンに伝えた通り東部戦線で帝都ノイエラントシュタットを死守しながらミシシッピ川を制圧、海上封鎖も併せて叛乱を潰す。悩ましいことに、多くの我が軍の陸軍将校が離叛して叛乱に加担している。しかし帝都ノイエラントシュタットを中心に野戦築城を行い籠城に徹すれば如何に優秀な将帥と云えども帝都ノイエラントシュタットを抜くことは出来ないだろう。」と基本方針を伝える。ヘルマン宰相は「容易整ってございます。陸軍省には事務員が2名しかおりませんでしたので、臨時に帝国宰相府から手伝いを送っております。」と答えると、「陛下が御即位なされましたから新たな事務員を募集することも出来ますが、募集なさいますか?」と尋ねる。
皇帝ヴィクトリアは「頼む。」と答えて「戦時体制を構築する。陸軍省と海軍省の事務員を増員するように。それから病院をフローレンス・スミス基準*1に沿っているか点検、適合していなければ改築しろ。あと各年度内に6歳〜15歳となる帝国人民の子女に普通教育を受けさせろ*2。」と戦時体制への移行準備を命令する。ヘルマン宰相は「承知致しました。陸軍省と海軍省の事務員を増員して病院をフローレンス・スミス基準に沿っているか点検、適合していなければ改築させます。各年度内に6歳〜15歳となる帝国人民の子女に文字の読み書きと計算が出来るようになる教育を受けさせます。」と言って
皇帝ヴィクトリア二番目の勅命を承る。そして「陛下、御命令を。」と
皇帝ヴィクトリアに動員令を促すと、「うむ。帝国軍の召集を命じる。召集した帝国軍の訓練を怠るなよ。」と
皇帝ヴィクトリアは帝国軍の動員令を発令する。
そして
皇帝ヴィクトリアの勅令は電信により帝国各地へと伝わっていく。
ディヴィヌス暦1861年3月4日、エイセル子爵領、領主館の執務室。石造りの壁には古びた戦旗が飾られ、窓からは境界州の荒々しい丘陵が望める。エイセル子爵ヨルクは重厚な木製の机に座り、地図を広げて南部の地形を睨んでいる。電信担当の側近が息を切らせて部屋に入り、電信文が記された紙を手にしている。副官と数人の家臣が周囲に控えている。
紙を手に、やや緊張した声で側近が「閣下、皇帝陛下より電信にて急ぎの勅命です! 南部の叛乱に備え、エイセル子爵領に対し、動員令が発せられました。速やかに軍を整え、討伐に備えるよう命じられています。ただし、これは討伐命令ではなく、あくまで動員の準備を求めるものです。」とエイセル子爵に報告する。
エイセル子爵は地図から目を上げ、側近を鋭く見据える。側近から紙を受け取りながら「動員令、だと? 討伐命令ではない…ふん、技術狂の陛下らしい回りくどさだな。電信でこんな急ぎの知らせとは、さぞ陛下のお気に入りの機械が唸ったんだろう。」と言って紙を一瞥し、唇に皮肉な笑みを浮かべる。そして「まあ、南部の奴隷追跡者の依頼人どもを叩く好機だ。せっかく仕事教えた奴隷を拉致られたケジメ、動員が済めば戦場でつけさせてもらうぞ。」と宣言する。
すると副官は「閣下、動員令は急を要するものの、討伐命令が未発令なのは気になります。陛下が奴隷制廃止を口にしていないとはいえ、噂では状況次第で廃止令を出す可能性も…。我が領の経済は奴隷労働に依存しています。動員に応じつつ、陛下の次の動きに備えるべきかと。」とエイセル子爵に対して慎重に進言する。
側近の慎重な進言にエイセル子爵は電信文を机に叩きつけると目を細めて「奴隷制廃止か。陛下がそんな気まぐれを起こせば、帝国は混乱する。だが、俺の信念は揺るがん。帝国に弓引く者は全て打ち倒す。それがエイセル家の務めだ。動員令なら、まずは軍を整える。廃止令が出るなら、その時に考える。…それに、この電信も陛下の玩具だ。奴隷がいなくなれば、機械で領地を回せとでも言うつもりか?」と問う。
そこに家臣の一人が「閣下、動員の規模はいかほどに? 南部の地形は平地もあれば森も多い。戦列射撃が活きる場所は限られるやもしれません。突撃戦術を重視するか、戦列歩兵を主力とするか…。」と質問する。
その質問に対してエイセル子爵は立ち上がり、壁の戦旗を指すと「戦列射撃で敵を圧倒し、隙を見せたところを突撃で仕留める。それがエイセル家の戦い方だ。南部の奴隷追跡者どもは烏合の衆。整然とした射撃で怯ませ、密集隊形で蹴散らす準備をしろ。動員は領内の歩兵を総動員だ。標準歩兵800、軽歩兵200。予備に民兵100を用意しろ。」と命じる。
電信文を手に取った側近は「閣下、電信には技術兵科の投入も示唆されています。陛下の蒸気機関や新型火砲が動員に含まれるやもしれません。戦列射撃や突撃戦術との相性はどうなりますか?」とエイセル子爵に尋ねる。
エイセル子爵は鼻を鳴らして「陛下の玩具か。火砲が吠えようが、戦場を決めるのは兵の統率と勇気だ。技術に頼る前に、俺の戦列歩兵が敵を粉砕してやる。…だが、技術兵科の動きは逐一報告しろ。電信でこんな勅命をよこす陛下だ。動員令の裏に何を企もうと、エイセル家は帝国の盾だ。叛乱軍を討つ準備を整え、奴隷追跡者の首魁を戦場で吊るしてやる。」と言ってのける。
家臣の一人がやや躊躇しながら「閣下、もし奴隷制廃止が現実となれば、領内の労働力は…。動員後の対応をどうされますか?」と尋ねる。
その問いにエイセル子爵は鋭い目で家臣を睨み、声を低くして「その時が来れば、考える。」と答える。そして「今は動員令に従い、敵を倒す準備だけを考えろ。帝国に弓引く者は、奴隷だろうが自由民だろうが、容赦せん。準備を急げ。陛下の電信に応じ、エイセル家の旗を戦場に掲げるぞ!」と発破をかける。
側近は電信文を手に、小声でエイセル子爵に「閣下、陛下に電信で返信を? 動員準備の報告を…。」と尋ねる。
エイセル子爵は一瞬考えると頷いて「送れ。『エイセル子爵、勅命を承り、速やかに動員を整える。叛乱討伐に備え、帝国の栄光を示す』。簡潔にしろ。陛下の電信機が喜ぶだろう。」と答える。
そうしてヨルクは執務室を出て、訓練場へ向かう。遠くで戦列歩兵の訓練の号令が響き、皇帝の電信による動員令に応える準備が急ピッチで進む。執務室には電信文の紙が残され、皇帝の技術狂としての評判と奴隷制廃止の可能性が、エイセル子爵の心に微かな不穏な影を落としている。
ディヴィヌス暦1861年3月5日、帝国宰相府の執務室で、ヘルマン宰相は書類の山に囲まれている。陸軍省と海軍省の事務員増員、病院のフローレンス・スミス基準に合わせての改築、そしてヴィクトリアの命じた6~15歳の子女への普通教育の準備。戦時体制の名の下、急ピッチで進む課題だ。ヘルマンは疲れた目をこすり、「陛下は長期戦を見据えておられる。だが、帝国の懐と民の覚悟は、果たして…」と呟く。そこに若い書記官が駆け込んできた。「閣下、サンガモン川流域の工場主から軍需生産増強の陳情です。鉄鋼と火薬が不足し、資金援助を求めています。」と若い書記官は報告する。
報告を受けたヘルマン宰相は陳情書に目を通し、眉をひそめる。「野砲と弾薬の増産は急務だが、予算は逼迫している。陛下の教育と病院改築を優先しつつ、軍需生産の投資も確保せねば。」そう言って彼は決断する。
「財務省と協議し、予算を再配分しろ。長期戦に備え、補給線と生産基盤の強化を怠るな。」ヘルマン宰相から指示を受けた書記官が退出すると、ヘルマンは窓の外を見やる。煙突の煙と帝国軍の喊声が響く中、「ハンス選帝侯や将校たちは、短期決戦で南部の反乱を鎮圧できると楽観している。だが、陛下と私は、帝国の試練が長引くことを知っている。この試練、一筋縄ではいかぬな。」彼は独りごちる。
ディヴィヌス暦1861年3月10日、マリア女選帝侯は南部諸侯への説得工作を続けている。
皇帝ヴィクトリアの命を受け、シュピールカルテン公フォントルロイやアドマイヤー女侯爵に書簡と電信で接触を試みるが、返答は冷淡であった。エルツェンベルクの居城で側近たちと協議するマリアの表情は厳しい。
「フォントルロイ公は『帝国の干渉を拒む』と繰り返すだけのようです。アドマイヤー女侯爵は書簡を開封すらしていない由。」側近の報告に、マリアは地図を広げた。「フォントルロイ公には、帝国との貿易協定で経済的利益を保証する案を再提案します。アドマイヤー女侯爵には、帝国の歴史と結束を訴える手紙を私が直筆で送ることと致しましょう。」
すると側近が懸念を口にする。「女選帝侯、時間は少なく、南部は武装を進めています。短期決戦を望む声が軍部で強い中、対話は…」
マリアは側近の懸念を静かに遮ると、「短期決戦は幻想です。陛下は長期戦を覚悟しておられます。私が対話の道を繋ぐことで、せめて流血を最小限に抑えたい。」そう言って彼女は夜遅くまで、彼女は書簡を書き続ける。
ディヴィヌス暦1861年3月20日、ノイエラントシュタット郊外の訓練場では帝国軍の新兵が野砲の操作訓練に汗を流している。ハンス選帝侯は視察に訪れると、将校に「 南部の反乱は一撃で潰せる。奴等の本拠地を潰すのに半年もかからん!」と豪語する。
ハンス選帝侯の自信は、将兵にも伝染していた。訓練場では「南部の離脱派は烏合の衆」「帝国軍の火力で一掃だ」と楽観的な声が飛び交う。だが、帝都防衛の野戦築城を監督する帝国軍の工兵将校は、設計図を手に慎重だった。「防壁の第一段階は4月10日までに完成しますが、資材と熟練工が不足しています。短期決戦なら十分ですが、長期戦となれば…」
ハンス選帝侯は「長期戦? 南部の貴族どもにそんな戦力はない。本来ならこんな防壁など要らん。一気に叩く。それで終わりだ。」と笑い飛ばす。
しかしながら
皇帝ヴィクトリアの勅命もあり工兵将校たちは防壁、監視塔、重砲配置。ノイエラントシュタットは要塞都市への変貌を急いでいる。
ディヴィヌス暦1861年4月1日、
皇帝ヴィクトリアは中央広場で民衆向けの公開演説を行った。市民、農民、労働者が集まる中、彼女は軍服姿で壇上に立つと原稿なしで語る。
「我が民よ。帝国は試練の時だ。南部の離脱は我々の心を裂く。だが、技術と団結で、帝国は一つになれる。工場で鉄を鍛える者、農場で作物を育てる者、子らに知恵を授ける者。諸君の力が帝国の未来だ。私は諸君と共に戦う。たとえ道が長くとも、帝国の旗の下で未来を切り開く!」
歓声と拍手に包まれる中、
皇帝ヴィクトリアは南部出身の労働者たちの複雑な表情に気づく。演説後、側近に囁く。「民の心は動いた。だが、南部の諸侯の心は遠い。戦いは短く済まぬかもしれない。」彼女の言葉には、長期戦への覚悟が滲んでいる。
ディヴィヌス暦1861年4月7日、ノイエブランデンブルク選帝侯領のノイエヨルク海軍工廠は春の陽気に包まれ、鉄と木の匂いが混じる中、最新鋭フリゲート「リリー・マルレーン」の艤装作業が急ピッチで進んでいる。甲板には職人たちが忙しく動き回り、帆布を張る音やハンマーの響きが絶え間なく響く。
皇帝ヴィクトリア・フォン・ノイエブランデンブルクは、黒と金の装飾が施された軍服に身を包み、工廠の視察に臨んでいた。20歳の若さながら、その鋭い眼光と堂々とした立ち振る舞いは、帝国の頂点に立つ者の風格を漂わせている。
彼女の隣には、ノイエエンゲラント女選帝侯にして艤装員長であり「リリー・マルレーン」の艦長に任命されたシーマ・ガラハウ*3海尉艦長が立っている。44歳のシーマ・ガラハウ海尉艦長は、ノイエラント・ライヒ帝国海軍の伝説的存在だ。海賊姫の異名を持ち、若い頃は快速フリゲートを駆り、敵を翻弄してきた。灰色の髪を短く切り揃え、濃紺の海軍服に身を包んだ彼女は、
皇帝ヴィクトリアとは対照的に、どこか飄々とした雰囲気を漂わせている。だが、その目には海の荒々しさと狡猾さが宿っていた。
二人は「リリー・マルレーン」の甲板に上がり、主砲の11インチライット前装ライフル砲を視察しながら会話を始める。
皇帝ヴィクトリアは砲身に手を触れて、「見事なものだ、シーマ。この『リリー・マルレーン』は、帝国海軍の新たな矛となる。技術の粋を集めたこの艦は、単なる軍艦ではない。私の中央集権の理念を体現する象徴だ。」と感嘆の声を漏らす。
艤装員長のシーマ・ガラハウ海尉艦長はニヤリと笑い、砲身を軽く叩いて「へえ、皇帝陛下らしい大仰な言い回しだね。まあ、この娘は確かにいい仕事してるよ。11インチの主砲は、敵の装甲艦だろうが木っ端微塵さ。スクリュー蒸気と帆のハイブリッドも、風向き次第で神出鬼没に動ける。アタシ好みの艦だ。」と答える。
シーマ艤装員長の答えに皇帝ヴィクトリアは微笑みつつ、シーマ艤装員長をチラリと見て「神出鬼没、か。貴女の海賊姫の異名にふさわしいな。だが、この艦の真価は、貴女の戦術にかかっている。この艦をどう活かすつもりだ?」と問う。
するとシーマ艤装員長は甲板の端に寄り、海の方を眺めながら「ふん、戦術なんてのは海の匂いと敵の動き次第さ。この艦の速さなら、敵の補給線をちょっかい出して攪乱するのもいい。商船をバッタバッタ沈めて、敵の経済を締め上げる。で、敵がキレて追いかけてきたら、こいつの主砲でドカン! 接近戦が必要なら、アタシの海兵隊が敵艦に飛び込んで皆殺しって寸法さ。」と不敵な笑みを浮かべて答える。
その答えに
皇帝ヴィクトリアは眉を少し上げ、冷静に「大胆だな。だが、帝国の海軍は単なる略奪者ではない。私の目指すのは、技術と規律で統一された帝国だ。貴女の戦術は有効だが、統制を欠けば、ただの海賊行為と変わらない。貴女の経験は認めるが、統率力をどう担保する。」とさらに問う。
シーマ艤装員長は肩をすくめ、
皇帝ヴィクトリアを振り返ると「おっと、陛下の理想主義が顔を出したね。いいかい、アタシは海で育った。海の男たちは、規律なんちゃらより、信頼で動く。艦長が先頭に立って、敵の首を取る姿を見せりゃ、部下は命を賭けてついてくる。アタシの海兵隊は、そうやって鍛えてきたんだ。統制? そんな堅苦しいもんより、腹の底からの忠誠心の方がよっぽど強いぜ。」と不敵に答える。
皇帝ヴィクトリアは一瞬黙り、シーマの言葉を吟味する。そして「…忠誠心、か。確かに、貴女の部下たちが貴女を『海賊姫』と慕う理由はそこにあるのだろう。だが、帝国の未来は、個人のカリスマだけでは保てない。貴女のような女傑がいてこそ、技術と理想が結びつく。シーマ、私は貴女に期待している。この艦を、帝国の誇りとして欲しい。」と告げる。
シーマ艤装員長はふっと笑い、ヴィクトリアの肩を軽く叩くと「おやおや、20歳の小娘にこんなこと言われちまうなんて、アタシも歳を取ったもんだ。いいよ、ヴィクトリア。この『リリー・マルレーン』は、アタシが預かる。帝国の誇りかどうかは知らねえが、少なくとも海の敵はビビって逃げ出すくらいの艦にしてやるさ。それでいいだろ?」と聞くと、
皇帝ヴィクトリアは小さく頷き、視線を海へ向けて「それでいい。貴女に任せる。だが、シーマ…私の理想を笑うのは構わないが、帝国の海を守るのは貴女の役目だ。部外者には、決して渡すな。」と命じる。
シーマ艤装員長は目を細め、「部外者なんざ、アタシの海じゃ一歩も踏み込めねえよ。安心しな、陛下。この海は、帝国の海だ。」力強く答える。二人の会話は、工廠の喧騒に混じりながらも、互いの信念と信頼を確かめるものだった。
皇帝ヴィクトリアの理想とシーマ艤装員長の現実主義が交錯する中、「リリー・マルレーン」は静かにその出番を待っていた。やがて、この艦が帝国の海でどのような伝説を紡ぐのか、それはまだ誰にもわからない。
ディヴィヌス暦1861年4月10日、ノイエラントシュタットは曇天に覆われていた。
皇帝ヴィクトリアは大聖堂のバルコニーから、要塞化が進む帝都と訓練中の将兵を見下ろす。マリア女選帝侯からの報告では、シュピールカルテン公らが領域内の要塞を接収し南部諸侯の武装が加速。対話の望みは薄れているとのことだ。
作戦会議で、「マリア女選帝侯の説得は成果を上げていない。南部は武力による離脱を決意した。短期決戦を望む声は強いが、私は長期戦を覚悟している。」と
皇帝ヴィクトリアはヘルマン宰相とハンス選帝侯に告げる。
それに対してハンス選帝侯は「陛下、南部の軍は寄せ集めです。ミシシッピ川を制圧して海上封鎖で締め上げるなどという回りくどいことをせずとも、ただの一蹴りで叛乱は崩れ去ることでしょう、腐った納屋のように。」などと楽観的に応じる。
一方ヘルマン宰相は慎重だ。「ハンス殿の言う通り、短期決戦の可能性はあります。ですが、離叛将校が南部を率いて補給線を維持すれば戦いは長引くことでしょう。陛下の命じた生産基盤と教育の強化は長期戦に備えた賢明な策です。陸軍省と海軍省の増員、病院改築、教育準備は順調に進んでいます。」と報告する。
皇帝ヴィクトリアはヘルマン宰相の言に頷くや、「ハンス、帝国軍の動員と訓練を加速しろ。ヘルマン、予算の再配分を急げ。マリアには最後まで対話を続けさせる。だが、戦端が開かれれば帝国の統一のために戦うことになるだろう。短期か長期かは分からんが、試練は必ず来る。」と告げる。
会議後、
皇帝ヴィクトリアはバルコニーに立ち、地平線を見つめる。緊張が高まる中、彼女の心には希望と重い覚悟が交錯している。「帝国は一つでなければならない。たとえ長き戦いとなろうとも、私は退かぬ。」
遂に帝国軍の召集が始まりました。
この時の帝国軍ですが、常時帝国軍として活動する帝国正規軍と帝国に従う諸侯が連れて来る諸侯軍とに分かれています。また、諸侯軍も帝国軍として活動することを想定した編制となっているか帝国軍として活動することを想定して編成された志願兵聯隊と領の防衛や治安維持を想定した編制となっているか領の防衛や治安維持を想定して編成された領軍に分かれます。
そして基本編制は聯隊という10個中隊で構成される人員1,000名の部隊となっています。
ます帝国正規軍ですが、ディヴィヌス歴1861年3月時点での
歩兵10個聯隊
騎兵5個聯隊
砲兵4個聯隊
という、
次に志願兵聯隊ですが、出身諸侯領ごとにまとめられて編成された同郷聯隊であり、領主が集めて領主が選んだ将校に率いられて各領の軍旗を掲げて参戦する部隊であり、少なくとも序盤のうちは数的主力を務めます。
それでは用語解説です。
シーマ・ガラハウ
シーマ・フォン・ノイエエンゲラント女選帝侯の海軍将校としての名前。その高い実力により密輸業者たちから海賊呼ばわりされている。詳細は第三話にて。
作成者は谷津田殿。
ヨルク・フォン・エイセル
作成者: 谷津田殿
名前:ヨルク・フォン・エイセル
地位: 領主/子爵
年齢: 35
所属: 帝国
信念:帝国に弓引く者は全て打ち倒す
兵科:標準歩兵 / 戦列歩兵
使用戦術:
戦列射撃: 整然と並んだ歩兵が一斉射撃で敵を圧倒。統率力と火力を重視。
突撃戦術: 密集隊形で敵陣に突入し、白兵戦で決着をつける。勇猛さが求められる。
背景:
帝国(北部)に属する帝国子爵。独立した南部(叛乱軍)と比較的近くの郡を領有している。
南部の奴隷追跡者には何度も自分の奴隷を拉致されているので、今回の叛乱で南部の奴隷追跡者の依頼人を遠慮なく殴れるのを楽しみにしている。「せっかく仕事教えた奴隷を拉致って行ったケジメは取ってもらうぞ」
ノイエラントシュタット
ノイエラント・ライヒ帝国の帝都。
モデルはワシントンD.C.。
リリー・マルレーン
ノイエラント・ライヒ帝国海軍の最新鋭汽帆装フリゲート。
但しHMSウォーリア以前の設計であるため装甲が存在せず、そのため就役して僅か数箇月で旧式艦となってしまう。しかしながら艦長のシーマ・ガラハウの指揮下で海上封鎖を突破した封鎖突破船を拿捕或いは撃沈したり叛乱勢力の私掠船を撃沈したりと大活躍する。中でも叛乱勢力がブリタニア連合王国に発注した高速装甲艦ペガサスを拿捕するという功績は指揮していたシーマ・ガラハウ海尉艦長を勅任艦長に昇進させるだけの価値を有している。
ノイエラント・ライヒ帝国海軍 快速フリゲート「リリー・マルレーン」諸元
基本情報
艦種: 無装甲汽帆装快速フリゲート
就役予定: ディヴィヌス暦1861年6月
造船所: ノイエヨルク海軍工廠(ノイエ・ブランデンブルク選帝侯領内)
設計理念: 高速性、火力、機動性を重視。帝国東海岸の防衛、通商破壊、私掠船戦術を想定し、敵装甲艦に対抗可能な火力を確保。
寸法・重量
全長: 128.3m(420フィート)
全幅: 16.8m(55フィート)
喫水: 7.9m(26フィート)
排水量: 約6,200トン(満載時)
推進機関
主機: 単膨張式蒸気機関(2基、4気筒、出力約5,500馬力)
プロペラ: 単軸スクリュー(直径5.5m、材質:青銅)
帆装: 3本マスト、バーク型帆装(総帆面積約3,200㎡)
最大速力
蒸気推進:14.5ノット(約26.9km/h)
帆走時:12ノット(約22.2km/h、風向きによる)
航続距離: 約2,500海里(10ノット巡航時、蒸気推進)
燃料: 石炭(搭載量:約800トン)
装甲: なし(無装甲フリゲート)
船体材質: 木材(オーク材主体、鉄でフレームを補強)
砲門数: 44門(HMSウォーリアの40門よりやや多め)
備砲構成
主砲: 11インチライット前装ライフル砲 × 12門(舷側装備、各舷6門)
口径:279mm
砲弾重量:約243kg(徹甲弾)
射程:約5,500m(有効射程)
特徴:装甲艦対応の強力な貫通力。精密射撃に適す。
副砲: 9インチライット前装ライフル砲 × 28門(舷側装備、各舷14門)
口径:229mm
砲弾重量:約116kg(榴弾/徹甲弾)
射程:約4,800m
特徴:対艦・対地攻撃に柔軟。高速装填が可能。
追撃砲: 7インチライット前装ライフル砲 × 4門(艦首2門、艦尾2門)
口径:178mm
砲弾重量:約51kg
射程:約4,000m
特徴:追撃戦や逃走時の火力投射用。ピボット式砲架。
その他武装:32ポンドダールグレン砲 × 8門(甲板上、近距離白兵戦用)
口径:約160mm
砲弾重量:約14.5kg(球形弾)
射程:約1,800m
特徴:1861年当時の米国海軍で標準的な滑腔砲。信頼性が高く、近距離で効果を発揮。
弾薬搭載量: 約4,000発(主砲・副砲・追撃砲合計、徹甲弾と榴弾の比率1:2)、32ポンド滑腔砲用球形弾約800発
乗員
総員: 約580名
士官:32名
下士官・水兵:480名
海兵隊:68名(アボルダージュおよび上陸戦闘用)
指揮官: シーマ・ガラハウ海尉艦長
搭載艇
カッター艇 × 4隻
救命ボート × 2隻
偵察用スループ × 1隻
特徴・運用
高速性と機動性: スクリュー蒸気と帆装の併用で、風向きや燃料状況に応じた柔軟な航行。シーマの私掠船戦術に最適。
火力: ライット前装ライフル砲による強力な遠距離火力と、32ポンド滑腔砲による近距離戦闘力の組み合わせ。敵装甲艦への対抗と通商破壊に特化。
アボルダージュ対応: 精強な海兵隊を活用した接近戦能力。
弱点: 装甲がないため、敵重砲や装甲艦との正面戦闘では脆弱。速力と戦術で優位性を確保する。
最後に幾つか。
キャラはhttps://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=324705&uid=358199より受付しております。
次回、いよいよ開戦です。
本作最新話の次の主要な地上戦闘の戦闘序列はコチラから確認出来ます。https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=325078&uid=358199但し開戦初頭の主要地上戦闘はキャラが充足しているので次回公開前に更新される見込みです。