シャングリラ・フロンティア作品増えてくれ!!
「レベルは関係なく、とにかくプレイヤースキルがある奴か……。それなら丁度いい奴がいるな」
「うん? 何々? サンラク君の知り合い?」
「サンラクがそんなこと言うなんて珍しいじゃん。それって、俺が知ってる奴?」
鉛筆戦士から齎された「シャングリラ・フロンティア」のユニークモンスター、「墓守のウェザエモン」の情報に俺は一人の人物を思い浮かべた。
そして、そんな俺の言葉に顔をずいっと近寄らせて聞いてくる鉛筆戦士と頭の後ろで腕を組みながらも、何か珍しいものを見たような目でこちらを見てくるカッツォ。
「いや、お前らの知ってる奴じゃない。あいつのことを説明するには長くなるんだが、まぁ……一言で言えば「超人」かな」
「超人?」
「あぁ、忘れもしないあの衝撃……」
「なんか、長くなるって言って一言でまとめた癖に、いきなり説明モードに入ったんだけど」
「前言撤回が早いねぇ。流石はサンラク君」
煩い二人を無視してあの日の事を……クソゲーハンターたる俺がクソゲー攻略を諦めた、辛苦の日々を思い出す。
「あれは、俺が……俺が初めて攻略を諦めたクソゲーでの出来事だ」
「え!!? サンラクがクソゲーを諦めたのか!!?」
「少なくないクソゲーを攻略してきた俺を完全に打ち砕いたクソゲーの名前は「リアル・ライブ・オンライン」。クソゲーなんてモンじゃない。あれは、ただの無理ゲーだ」
「リアル・ライブ・オンライン? 聞いた事ないね」
「俺は噂だけ聞いたことがあるなぁ。なんでも全てが
そう、そうなのだ。あれは知る人ぞ知る幻のゲーム。
クソゲーハンターの同志である武田氏から譲り受けた貴重すぎるゲームだ。
「パッケージのみ限定生産の上、とある事情で製品回収されたことで、今現在世の中にどれだけ残っているか分からない位には貴重なゲームだ」
「ふーん……、でもそれならサーバー自体閉鎖されて今はないんでしょ?」
「それがまた、このゲームの特殊なところでな? 今現在、リアル・ライブ・オンライン、通称「超人オンライン」は個人がサーバーを運営して動いている」
「は? そんなこと出来んの?」
「その今の運営者があの手この手を使って、サーバーを残したみたいだな」
「へぇ、よっぽどそのゲームが好きだったんだね」
あの手この手ってのが恐ろしくて詳しいことは聞けなかったが、そう話してきた奴の爛爛と輝く目に恐怖を感じたのは覚えている。
「なんで通称が「超人オンライン」なんだ? 全く掛かってないでしょ」
「そうだな……まず、超人オンラインは完璧な物理エンジンをコンセプトに作られたゲームなんだ。そして、どこかの天才の手によって、あの世界には実際に地球とほぼ同じだけの物理法則が敷かれていた」
そう口に出してから、シャングリラ・フロンティアの変態的な物理エンジンと似ていることに気づいた。
「次にあの世界は剣あり銃あり魔物ありのゴリゴリの狩ゲーだ」
魔法はないものの、多種多様な武器種で強大な魔物達を倒していく典型的な狩ゲーである。
クソゲー特有のクソみたいなシナリオもなく、一見すると悪いところがないように見えるが、その全てを覆して余りある特大のクソ要素。
「そしてここからが特大のクソゲーポイント! プレイヤーには一切のステータス補正も感覚の補正もなく、反対に痛覚は100パーセントの違法仕様!」
つまり。
「現実世界と同じ肉体、同じ感覚、同じ痛覚、同じ物理法則で山のようにデカい化け物を倒さにゃならんのよ。……やってられっか! 現実でドラゴンと戦うようなもんじゃねぇか!!」
「あー、それは流石にゲームとしてのバランスもクソもないねぇ……」
「なんだよそれ、めっちゃ面白そうじゃん!」
目を輝かせてこちらを見てくるカッツォだが、実際やってみたら自信とか色々なものが打ち砕かれるからやめておいた方がいいと思うぞ?
俺は二度とやらない。
「うん? なら、「超人オンライン」ってのは……」
「そう。超人ってのは、あの世界に順応し、現実世界と全く変わらない肉体で魔物達を倒す怪物のことだ」
あいつらはマジでヤバい。同じ人間か疑うくらいには。
「ちょっとサンラク君、嘘つかないでよ。それが本当なら現実でドラゴンが現れても倒せるってことだよ?」
「クソゲーのやり過ぎで頭おかしくなったんじゃないの?」
「おいこら、カッツォ。誰が脳みそまでクソゲーだ!」
「やーい、脳みそクソゲー男!!」
煽ってくるカッツォに腹立った俺はその顔に拳を叩き込むべく踊りかかる。
あいつらマジヤバいから、オレウソツカナイ。
「……ふーん。まあ、話半分に聞くとしても、サンラク君がなんでそんなこと知ってるのさ? そのゲームは諦めて辞めたんじゃないの?」
「たまたま、その超人の一人と知り合ってさ、少し一緒に行動したことがあるんだ」
「へぇ? なら、どんな奴だったんだよ? 本当にドラゴンでも倒したっての?」
「マジもマジ。山のように巨大なドラゴンが一撃だぜ? それ見て、俺はついていけないって思ったね」
思い出すのは山のような巨体のドラゴンが拳の一振りで大地に沈む光景。
「なんだよその化け物。お前のその話が本当なら、現実にそんな化け物が存在してるってことじゃないか」
「びっくりだよなぁ……。世界は広いよなぁ……」
「……おいおい、びっくり箱もびっくりなあのサンラクが遠い目してるぞ」
「……あのあたおか代表のサンラク君がねぇ」
二人の失礼な言葉を無視して結論を言う。
「そういうことで、そいつとは今でもたまに連絡を取っているんだ。たまに別ゲーを一緒にやることもあるし、シャングリラ・フロンティアも誘えば始めてくれると思うぞ」
「ふーん。まあ、そういうことならお願いしてみても良いかもねぇ。でも今から始めても「墓守のウェザエモン」攻略本番は二週間後だよ? それまでにレベル上げ間に合う?」
「ま、それは大丈夫だと思うぜ?」
なんたって。
「あいつは、マジもんの怪物だからな」
▪️
果てしなく続く蒼穹。上には燦々と輝く太陽、下には小さく見える山々と街並み。
そして、眼前には悠々と羽ばたく漆黒の人型の竜。
竜としては極端に小柄な体躯のそいつは、しかしその身に内包する力は他の竜種を軽く凌駕している。
暴力的なまでの威圧感を放つその竜は、空に立つ私を視界に入れると、その金色の瞳に怒気を乗せ咆哮した。
ビリビリと震える大気と、その影響で掻き消える眼下の雲海。
「ふふふ、同じ目線に立たれるのがそんなに気に入らないのかい?」
私のその言葉に凶悪な顔を歪ませた黒竜、ネームドエネミー、表示名「魔竜エンド」が口を大きく開けると、そこから特大の炎を吐き出した。
凄まじい速度で私に迫るその炎は、空気を焼いているのか異様な音と光を発していて、それを見た私は思わず笑ってしまった。
「まだ私の知らない魔物がいるとは思わなかったよ。後でサンラク君にも教えてあげようっと」
迫り来る豪炎へと拳を振るう。
空中戦の基本である「天歩」で空を踏み締め、跳ね返ってきた力を肉体で増大させて拳から放つ。
大気を弾く音と共に衝撃が指向性をもって豪炎へと直撃し対消滅させた。
自慢の一撃を防がれた驚きなのか一瞬動きを止めたエンドへ一瞬で肉薄し、その土手っ腹へと拳を叩き付ける。
「でもやっぱり相手にならないなぁ。もっと血湧き肉躍るような戦いがしたいなぁ」
吹き飛んでいくエンドを見ながらそう呟く。
鉄をも溶かす炎のブレスにも鋼よりも硬い鱗にももはや心躍らない。
殴った感触も硬いことは間違いないのだが、もう少し力を入れてしまえば何の抵抗にもならないだろう。
このゲームは現実世界と全く同じ物理法則で動いている。
それは想像上の生き物であるドラゴンでも物理法則の枠組みを出ない。
魔法のような超常の力もなく、決して壊れない物質もない。
故に強さには必ず上限が存在している。
目の前で体勢を整えているエンドもそうだ。
確かに強い。
こんな生物が現実の地球にいたならば、人類は滅亡の一途を辿るかもしれない。
強固な鱗は既存の兵器では傷を付けられず、先のブレスなど都市に甚大な被害を齎すだろう。
だが、その程度だ。
私を含めたこの世界の住人にとって、この程度の敵では心躍らない。何の障害にもならない。
猛烈なスピードで迫り来るエンドの腹を今度こそ私はぶち抜いた。
「あ〜あ、やっぱり弱かったなぁ。サンラク君に聞いて何か別のゲームでもやろうかなぁ……。ん、言ってたら丁度サンラク君からメッセージ……」
ゲーム友達からのメッセージを読んだ私はとびっきりの笑顔を浮かべた。
「ふふ、あのサンラク君が神ゲーねぇ……。楽しくなりそうだ」
ここ最近で一番のワクワク感に私はログアウトするべく急いで街へと向かった。
武神りりぃ、神ゲーに挑みます!