成功報酬−弾薬費−修理費+(特別加算−特別減算)= 作:万年赤字一般傭兵
総監督マシーン改に勝てないので初投稿です
前回のあらすじ
遂にACに乗れるようになった主人公
更に良いことに
素晴らしく有能なオペレーターもついた
「…すまない、遅れたな。
ジャック・Oという、これから宜しく頼む」
[それでは早速ですがシミュレータに行きましょう。
貴方の手腕…是非とも見せて頂きたい]
かなり聞き覚えがある声に一瞬思考が停止したが
わざわざ言うのは無粋という物だろう。
"彼女"がいつも通りサポートしてくれる
そう解釈し、一瞬の驚きの後はそれ以上に新しいACの乗り心地が気になり始めていた
「シミュレータ起動…そちらの映像に問題ないか?」
[ええ、大丈夫です。]
長い間使っていないのに体は覚えているようで、スムーズに起動とチューニングが済んだ
「じゃあ、早速動かすか…」
[了解致しました。仮想空間は何に致しますか?]
「最初は障害物がないヤツで頼む」
とはいえAC自体は新しい物だ。
慣れるまでは時間がかかるだろう
広い空間でACを動かすこと10分…
「ふむ…」
[いかがでしょうか]
少し、困った事が起こっていた
「エネルギーの回復が遅い…それに、ブースターの推力がかなり低いな」
元の機体との差異である
(当たり前だが、これまでとは違う戦いになるか)
元々は推力に物を言わせた高速機動やQB。
これらに休憩を挟む事でエネルギーを維持しつつ、相手を速さで圧倒できたのだが
[なるほど…BASHOとEPHEMERA。
どちらも同じACですが設計思想が異なりますからね]
この機体BASHOは違う。
通常ブーストを使った機動やQB、AB…同じことはできるが、質が違った
「戦法を変えるしかないか…
MTを出現させてくれ。実際にやって調整する」
いくら悩んでも正答はわからない。
こうなれば実戦しかないだろう
[3.2.1…敵機体出現]
(
彼女の返答と共に、懐かしい逆関節MT2体が目の前に出現
すぐさまABを起動。近づきながら右腕のライフルを連射し、続けてロックが完了したミサイルを放つ
(ん…この辺は変わらないな)
FCSは十分働いておりミサイルは完璧。
右腕部の動きはぎこちなく、発射時の反動を吸収しきれていないが…接近している分なら問題ない
(回避は…)
次に機関砲の攻撃の回避を試みる。
QBと同時に左フットペダルを踏み込んで、跳躍。
鈍重に思えた機体は、しかし重さを忘れたように素早くステップ
(なるほど…)
ブースター自体は推力が低いが、その分脚部の跳躍性能が高いようだ。被弾することはなかった
同様に近中距離で射撃と回避を繰り返すこと三回。
遂に、問題に直面した
ブースタ消費ENがかなり低いBASHOだが…コアによるジェネレータ出力の増幅はそこまでだ。そうなるとEN回復は緩やかに追いつかなくなり
エネルギー不足だ
(こうなるとなぁ…)
ここまで来ると回避を最小限にしないといけない。
ACの機動力を上手く活かせなくなった結果、先ほどまで避けられた敵弾が当たり始め
[…敵MT全滅、素晴らしい手腕でした]
「確かに、勝てたがな」
(ACに乗ってこれでは…)
MT相手なのに、かなりAPを減らされてしまった
[そこまで落ち込む事はありません。
貴方の実力は事実、独立傭兵の平均を超えています]
[また、実際の依頼では様々な要素が混在します。
ここでの結果が全てではありませんよ]
「そうか、そうだな…」
少しネガティブに思いすぎたらしい。
彼女の言う通りだ、これから確立していけばいい
「もう一回だ、頼む」
[AP、弾薬補充…完了。10秒後に再出現します]
『今度はブレード………っ!!!』
[ご無事ですか?]
『何とかな、しかしとんでもない加速だ。
QB、ABとは別の…』
『よし、次は市街地再現の仮想空間にしてくれ。
コイツの制御を練習したい』
[了解致しました]
「今日は、ここまでにしておく。
…どうだった?」
[以前の動きと比べますと問題は無いように感じます。しかし機体が変わる以上、何かしらの変化が必要ですね]
「そうか…」
遅い通常ブースト、跳躍能力に裏付けされる回避性能、回復しにくいエネルギー、凄まじい近接推力…
(課題は山盛りだな…)
シミュレータの電源を切り、病室に戻る。
窓から入っていた光は殆ど無くなっており、いつの間にか夜になっていたようだ
「そういえば、何で病院にシミュレータが…?」
ACの操縦を終えて落ち着くと、明らかな疑問が頭の中から浮かんだ。
ここは、ただの病院では…?
[ああ、それはですね。
貴方のために、ですよ。]
「どういうことだ?」
(私の、為に…?)
[ここは確かに病院ですが…
今まで他の人を見ましたか?]
「い、いや無いが…」
[そうですよね。ここは隔離病棟…
その様な扱いになっており、貴方を除けば他に人はいません]
[貴方の存在を隠し切るために作られた
いわば、貴方専用の病棟なのです]
「だから、シミュレータもあると…」
[そういう事です]
隊長は"上が私を気に入っている"と言っていた。
まさか、ここまでとは正直思わなかった
[…それと、貴方の身分がようやく出来ました。
タブレットに送信しますね]
私の身分、パイロットネームならもう入力したが
「もう登録したはずだが…」
[それは傭兵支援システムで使われる身分です。
一般人としての身分にはなりません]
[ACに乗らない時に使う身分の方です]
「つまり、本名か」
"ジョシュア・オブライエン"
父母から授けられた良い名前だったのだが
[そうですね。…送信完了しました、どうですか?]
新しい名前、だがそれ以上に
「地球……!」
懐かしき第一の故郷に驚きを隠せない
[何か問題でもありましたか?]
「何で、ここじゃなくて地球なんだ…?」
[簡潔にいえば、作りやすいからですね]
「作りやすい…?」
[地球は昔からの資源を巡る戦争で荒廃が酷く、身分の確認はほぼ取れないのですよ]
[かく言う私も地球を出身星にしています。
Jane Doe も John Doe*1 も作り放題ですからね]
AC世界における地球はよくボロボロになるが…
かつての故郷が酷い状況なのは何処か胸が痛んだ
「そうか…」
その後は送られてきた身分の確認を進め、11時を回った頃には部屋の電灯を消し眠りにつく
かつて常に共にあった月光はない。
人工の灯りだけが僅かに夜に光をもたらしている。
独立傭兵としての新しい自分の始まり。
新しい区切りから、ふと振り返ると今までの繋がりが無くなっていくようにも思えて…湧き出した寂しさが夜闇と共に私を包みこんでいった
ここまで読んで頂きありがとうございます
総監督マシーン改に空中月光を決められたら続き書きます