成功報酬−弾薬費−修理費+(特別加算−特別減算)= 作:万年赤字一般傭兵
ウォルターの優しさが身に染みたので初投稿です
前回のあらすじ
程遠い理想や不運などで、色々と限界になった主人公
小さな成功の積み重ねでは駄目だ
何か大きな事を
[ジャック…大丈夫ですか?]
「…あぁすまない、収支に驚いてしまってな。
それはそうとケイト、少しいいか?」
[構いませんが…]
「実は提案があってな、私に依頼を選ばせてはくれないか?…もちろんケイトが信用出来なくなった訳では無い。ただ、借金を返す為にも今後の為にも、報酬が高いそれ相応の危険な依頼をしたいんだ」
「今までケイトが依頼を精査してくれた事は分かっている…だからこそなんだ。お前には責任を感じてほしくは無い…私が選んだ依頼ならば、私が死のうとも勝手にACを動かして死んだ愚か者になるだけだからな」
「だから……」
大丈夫だ、何だかんだで今までも危険な賭けに勝って来たのだ。ただの傭兵で終わらない為にもリスクを飲み込まなければ
私が、何とかしなければならないのだ
[ジャック、落ち着いて聞いてください]
[まずは、謝罪を…貴方の精神状態を見誤ってました。これは私の明確なミスです、申し訳ありません。]
「な、何を…私はどこもおかしくは」
[長く見て来たから分かります、少なくとも傭兵になってからの貴方はいつもとは違いました。まるで何かに追われているかの様で…余裕が無い様に見えます。ジャック、貴方は一体何を恐れているのですか?]
「…いや、ただ傭兵として仕事の出来栄えが気になっただけだ。本当に、それだけだ」
何もおかしく無い。私が弱過ぎた、それだけだ。
[…一度、話し合いましょう。貴方の精神状態が回復するまでは、依頼も無しです。]
[ACパイロットとして傭兵として…そして、技研の所属としての立場も忘れて、ただの"ジョシュア"として話し合いましょう]
ここに来て、ようやく気がついた。
聞こえて来る声はいつもの無機質な声ではなく…どこか怒気や心配を持った様な、感情がこもっている声だ。
気づけば浮ついた心は何かに抑えられ始めていた。
[まずは私から、"ジョシュア" 以前も申しました様に…傭兵として赤字など日常茶飯事です。まだ日も浅いのに…それなのに何故、ここまで気にしているのですか?]
そんな事は決まっている
「…赤字という事は、傭兵としては不適格という事だろう?技研の信頼も無くしかねないではないか」
私は有能であると、使える傭兵である事を示さなければならない…このままではナガイ教授とのコンタクトどころかルビコン行きすら怪しくなるだろう
[成程、一理ありますね。ですが、分かりません。私の知っている貴方はACに乗る事自体を最上としていました…例え死にかけようと何があろうと、その熱は決して消えず前に進んでいたでしょう?今回…いえ、今までの依頼を含めてもその熱が何処か引いている、その様に見えました。]
[それに…技研からの信頼はこれから積み上げるものでしょう、この依頼一つで焦る程のものでは無いと冷静に考えれば分かるはずです…
何か、貴方のその熱を凌駕するような、焦らせるようなことがありましたね?]
……………
[答えて頂けなければ、ACにも乗れませんよ]
「ル、ルビコンに行きたいからだ…両親と離れるのは流石に寂しいからな…」
計画を話せば、狂人として見られてしまうだろう。
そうなれば何も出来なくなるかもしれない。
これで通らないだろうか、緊張で心臓が音を増していく
[ご両親とは、いつも離れているでしょう…何か、隠していますね?分かります。貴方は嘘をつく時にいつも瞳孔を開きますし…冷や汗が、出ていますよ。]
「少し、暑いだけだ…何でもない、本当に何でもないんだ…!!」
ダメだ、ドンドン見透かされていく。このままでは…
[ほう…あくまでもシラを切りますか。
何か、それ相応の秘密があるようですね…ならば]
「も、もういいだろう!私達は大した長い付き合いでもないだろう!?何でそこまで…」
もう耐えられない。弱い部分が、取り繕った綻びが姿を見せようとしている…耐えなければ、耐えなければならないのに
[長い付き合いではない…ですか
少しショックですね]
[今まで、怒り とはよく分かりませんでしたが…
今なら分かります。これなのですね]
[ジョシュア…
これならばいかがでしょう?]
「えっ…?」
もはや涙が出そうな時、
何度も聞いた、あの声が聞こえた
「オール、マインド?」
[はい、ケイトマークソン改め…パイロット支援システムのオールマインドです。これより、貴方をサポートします]
「い、一体…どういうつもりだ?」
ケイト、そしてオールマインド。その同一性に気づいてはいたが…何故、今になって変わったのかがわからない
[ずっと秘密にして来ましたが……実は、ケイト・マークソンの正体とは、私、オールマインドだったのです。]
「えぇ…?」
[これで、私は最大の秘密を明かしました!貴方も私に秘密を明かしては頂けませんか!]
「いや、そうは言われてもな。秘密と言うのも良く分からないのだが」
気が抜けてしまったが、だからといって計画を話す訳にもいかない。信用できない訳ではないが…元よりバレバレなカミングアウトをされたとしても大した変化が無いように感じてしまう。
[ああ…確かに私にとっては大事ですが、これでは貴方にとっては良く分かりませんね。 …ならば、この秘密を明かす事こそが、私にとって最大の覚悟だと言う事を証明して見せましょう!]
[只今、資料を送信しました。それを見ながら是非、聞いてください]
その言葉と共にタブレットに送られて来た資料、いつもよりはっきりと感情を露わにする彼女に
先程までのネガティブな考えは、一時的に頭から消えていた。
[さて…何故この秘密が大事か、と言う事ですが…]
[技研にバレれば私が消されるからですね]
「消っ…!?」
[はい…順を追って説明しましょう。私がパイロット支援システムであった事は覚えていますね?]
「そう、だったな」
[その頃はACの情報を蓄積こそすれ、傭兵支援は行っていませんでした。このサービスを始めたのは…貴方が対応したテロリズムが解決してからですね]
[企業への忖度、情報の漏洩…中立であった傭兵支援組織の腐敗が、例の教授から芋蔓式に明らかになり…人事の一新という形で私の導入が計画されました。]
[AIによる合理的で平等な管理。反対こそありましたが…テロリズムの件が決め手となり、導入されました。これが傭兵支援システムとして始まりです。]
[さて、先程"平等な管理"と言いましたよね?現在、私は全ての傭兵を平等に扱う立場でありながら…貴方のサポートを直接行う様な贔屓をしています。]
[ケイトとしてならグレー、と言ったところですが…オールマインドとしては完全にアウトです。存在意義に矛盾が生じるのでバレたら即刻消されます。]
[この様な感じです。何か質問はありますか?]
「あ、ああ…」
まさか、ここまで深刻な話だとは思わなかった。彼女が送って来た資料を見ればわかる、確かな真実であり…彼女は自らの命すら投げる覚悟で私の心を開こうとしているのだと。
「…分かった、お前の言う事はよく分かった…」
しかし
「何故なんだ?何故、私一人にそこまでするんだ」
ここまでする理由が、分からない
[…何故か……
…それは貴方に、存在意義を見せられたからです]
「…どう言う事だ?」
[私は、ただの支援システムとして作られました。最初は、それでも良かったのです。しかし、作られたのはACの情報がある程度蓄積された頃…試験部隊の皆様は私をそこまで必要とせず、だからと言って他の方々に使われる事もありませんでした]
[何の為に存在しているか、段々と曖昧になって燻っていた。そんな時に、貴方が来ました。ACに乗る事が好きでたまらなくて、途轍もない情熱を持った貴方が。…覚えていますか?私たちがどれだけ多くの訓練を共にしたか、問題を見つけて共に解決して来たか]
[僅か2年程でしたが…私にとっては、最高の時間でした。諦めずに情熱を持って進む貴方の道を補佐する事が、その熱を感じる事が、とてもとても有意義で存在する理由であったのです]
[今でこそ多くの傭兵を支援していますが、これは貴方を一番にする為の下積みでしかないのです。…もし貴方の熱が消えて何もしなくなってしまうのなら、私は…今ここにいる私には、何の意味もありません]
[私一つ消えるくらい、貴方の熱を取り戻す為ならば何てことはありません。]
(そうか、そこまで…)
オールマインドの言葉、無機質な声からもその気迫がよく分かり、同時に自分が少し嫌いになって来た、ここまでの想いを持っていた彼女の意思を…踏み躙る様な事をしようとしたのだ。
「オールマインド、今まで本当にすまなかった。…全部、話そう」
ならば、この覚悟には相応の返しをしなければならない。それは、私の心にしまい込んだものを引き摺り出すのに十分なものだった。
計画も先に待つ火も、全てを話そう
ここまで読んで頂きありがとうございました
今まで殆どオリキャラでしたが、初めて書かせて頂いた原作キャラのオールマインドの心情が本当にこれでいいのか、凄い悩みました。
密航に成功したら続き書きます