成功報酬−弾薬費−修理費+(特別加算−特別減算)=   作:万年赤字一般傭兵

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壁越えを果たしたので初投稿です

前回のあらすじ
落とし前をつける準備が完了


Hunt You Down

 

 

 作戦開始前夜

 何度も読んだ作戦エリアの地図を流し見しながら寝ようとしたが…妙に気が立って眠れないので、気を紛らわそうとACだけでなくヘリの点検もしていたところ

 

「ん…?これは一体?」

 

 何やら物騒なものが見つかった。

 ACに対して遥かに小さいが…あらゆる部屋に自動小銃を取り付けた監視カメラが、ヘリの側面にはミニガンまで取り付けてある

 

 [気になりますか?]

 

「ああ…もしかして、ケイトが手配したものか?」

 

 [ええ、そうです。何者かに命を狙われている以上、この様な対策も必要かと思いまして…大丈夫です、私の資産から出してますから]

 

 盲点だった。明日には例の傭兵を撃破するが、私を殺す様に依頼した張本人を倒すわけではない。

それに、ACを狙わずとも直接パイロットを殺す事はできる

 

「やはり、私だけでは抜けが多いな」

 

 [その為の私です。貴方がACに専念できる様に精一杯サポートしますよ]

 

「…本当に、本当にありがとう。そうだな、ケイトが支えてくれるのだからな、不備などないか」

 

 [……そろそろ寝て下さい。明日は早いですよ]

 

 かつての敗北と赤字…この先の戦いに不安を感じさせそうだが、そうはならなかった。

何故ならケイトがいるからだ、彼女の完璧なサポートは私の及ばない所を全て補完している。

 

 不安も負ける予感も、感じさせる余地すらない

 

 

 


 

 

 

 第11区画 工場地帯のど真ん中、現在14時。

 空は、どんよりとした雲に覆われている

 

「…………」

 

 そんな雲に溶け込んでしまいそうな色のパイプと蒸留塔に囲まれた、迷宮の如きコンビナートの中で静かに待機する。

通信にレーダーすら切断し、今だに戦闘モードには移行していない。機体の発する信号を最小限にする事で発見される可能性を下げる為だ

 

(まだか、まだか……)

 

 ケイトからの情報によれば、そろそろこの辺りを通過する筈なのだが…通信も無く周囲の音も殆どない静寂に囲まれた中では、敵に相対した時のような高揚感は生じず孤独感に不安感が増してくる。

 

 そんな中でも、じいっと待っていると

 

(!来た…!!!)

 

 集音マイクが音を拾った。

 布を何度も何度も叩いているかのような重低音。

 ヘリコプターが発する、プロペラ音だ

 

 

 

 蔦のように絡み合った配管の隙間から見えたのは

 

 開けた上空で縦に並び横腹を見せる2機の輸送ヘリ

 

 

MAIN SYSTEM


COMBAT MODE ACTIVE

 

 スキャンを使いながら、すぐ様ABを起動。

 狭苦しい建物群を飛び出して、距離を詰めていき

 

(そっちか!!)

 

 先行している方に人型のシルエットを発見。

 すぐ様ブレードを起動し、薄い装甲ごと内部のAC目掛けて切り掛かった

 

 […!既に心折れたかと思ったが、そう来るか]

 

 確かな手応え、しかし側面を突き破るようにして敵AC・CORNELIUSが飛び出してくる。

 

(まだACに乗っていたか!

 だが、このまま押し切る!!)

 

 

 そのまま撃破とはならなかったが、戦闘モードに移行している間に直撃した。状況はこちらが有利だ

 

 バズーカを構える相手に臆さず、前QB。砲弾を掠めながら建物の屋上に脚を叩きつけて、ドリフトターン。ブレードはまだ冷却中だが…近接攻撃の手段ならまだある

 

 右トリガーを引き…

 

 殺人的な急加速、KIKAKU(ブースター)が本領を発揮した。多少離れた距離を一気に詰め切り

 

「イィィィヤアァァァーッ!!!」

 

右腕部の拳による、強力な殴打!

 

 

 

 

 [なっ…! 素手…!?]

 

「イヤーッ!」

 

 熟練の傭兵といえど、一瞬硬直。

 

 AC・BASHOは近接武器の適正がトップクラス。

そして極まった適正は、ただの拳すらも武器とする…

 

 故に、単純極まりない殴打は

 

 

「イィヤァァーッ!」

 

 

 

 

STAGGER

ACS LOAD LIMIT

 

 しかし装甲内部まで響く!!

 

「2撃目…!!」

右腕部の冷却が始まり、しめやかにブレードを起動。蒼光による一閃が貫くが…

 

 […成程な、以前殺した奴も良かったが…今回はそれ以上だ]

 

 

(流石に固いか…まぁいい!)

 

 追加装甲に覆われた巨体は、まだ倒せない

 

 勿論、勝負はここからだ。

 ブレードと腕部による攻撃手段以外の一切を持たない自機"ORACLE"は武装の冷却中により現在、何もできない。このまま張り付き続ける事は危険な上に見返りが殆どない為

 

「一旦、休戦と行こうか…逃げられると思うなよ」

 [クソ、面倒な…]

 

 

 硬直している敵機を脇目に降下、再度迷宮の如きコンビナートへと潜り込む。地の利は、私にあった。

相手と比べて小さい機体が故に、複雑な工場地帯を動きやすいという理由もあるが…それだけではない

 

 

 […そこか!]

 

 スキャンでこちらの位置を把握された。砲弾にライフル弾、ミサイルまで降りかかるが…

 

(このくらいなら!)

 

 QBもABも使わずに建物同士の隙間に入ってやり過ごす。こういう場所には、私も悩まされたものだ

 

 

 そう、私にはここの土地勘がある。

 テロリストが潜伏していた工場地帯…ここには、警備部隊との協働任務以外にも他任務のパトロールなどで、テロリズムが終わるまで何度も訪れていた。

故に、敵を追い込む地点や逃げられると面倒な場所、奇襲を仕掛けやすいポイントに加え、上空から見える場所…全て、頭の中に入っている。

 

 相手がいかに熟練の傭兵だとて、この場所ならば私が圧倒的に有利。敵は不利を悟って場所を変えようとするが…ここは工場のど真ん中、加えて機体の速度で勝っているから逃げ切ることも出来無い。

 

今、狩られるのは私では無く、彼の方だ

 

 

逃げの合間に発射されるミサイルに銃弾…建造物を盾にして防ぎながら距離を保って追跡しつつ、スキャンのクールタイムを待つ

 

 

 

(…よし、ここなら)

 クールタイム、一時的にだが自機を見失わせ…奇襲できるポイントで待機

 

 武装の冷却は全て完了、エネルギーも満タン。即座にABを起動して、スキャンをかけながら強襲を開始。

上空にいる敵機は工場の屋根に遮られており、白いシルエットになっているが…このタイプの屋根はABの突撃力だけで突き抜けられる

 

 だから

 

「もう一度だ!!」

 [なっ…!?どこから]

 

 意識外からの青い光は、空の巨人を貫いた

 

「まだ、まだぁ!!」

 

 続けて殴打を開始、苦し紛れのライフル弾を喰らおうと…実弾に強いBASHOにとっては大したダメージにはならない

 

 そのまま

 

「イャァーッ!!イャァーッ!!」

 

 

「イィィヤアアァァ!!」

 

 

STAGGER

ACS LOAD LIMIT

 

 […狙う相手が違えば、もう少し長生きできたか…]

 

 冷却完了、そしてブレードを起動

 

「3撃目めぇ!!」

 

 直撃。

 しかし、相手はまだ落ちない

 

(ここで焦るな…!)

 

 最後まで、何があるかは分からない。

 目指すは完封だ。再度、降下を開始。

 また、不意打ちを狙おうとしたところ…

 

 

 

 [待て、降参だ。以前の詫びを含めて送金もする…だから一旦、攻撃をやめてくれ]

 

(…何のつもりだ?)

 

 敵機も降下を開始、大きい機体を窮屈な地上へと降ろした。

 

(罠…いや流石にありえないか)

 

 敵武装は完全な射撃特化型、加えてあの図体だ。この様な場所では、奇襲された事を含めて、有効打など持てるわけがない

 

 

 

(このまま撃破してもいいが、どう考えても私の勝ちだ。恨みは十分に晴らせただろう、交渉次第では依頼主もわかるやもしれん…)

「…分かった。戦闘モードを切れ、まずはそれからだ」

 

 [わかったよ。…ほら、これでいいか?]

 

 敵機の反応が収まった。どうやら、本当に降参するつもりの様だ。

だとすればこれはチャンスだろう。金をせびって前回の分の赤字を取り戻すだけでなく、雇い主すら判明できる可能性が現実味を帯びてきた

 

「よし、それでいい。今から向かうから…動くなよ」

 

 頭の中に積み上がっていく皮算用、意外にも良い結果になりそうだが…油断だけはせずに近づく。

やがて、真後ろについた時に通信をもう一度かけ、交渉を開始

 

 

「降参だったな。殺しは好かないが、私自身、前回の依頼で かなりの 赤字を持ってしまったんだ…それ相応の金額でないと、恨みが勝ってしまうな」

 

 […降参だ。金は…そうだな、どのくらいがいい]

 

「取り敢えず 200,000 COAMくらいは出してもらおうか。…ああそれと、今回の修理費もな」

 

 まずは、大金をふっかける。こちらが優勢なのだから、初回の交渉で弱気になってはいけない

 

 

 [そんなには無理だ…まけてはくれないか?]

 

「無理だな。何せ、殺されかけたのだからな…」

 

 [75%ぐらいが限界だ]

 

「ほう…ならば雇い主を言え、そしたら考えよう」

 

 

 […降参だ。金は…そうだな、どのくらいがいい]

 

 

「あ?」

 

 話の流れを無視した言葉

 

 [そんなには無理だ…まけてはくれないか?]

 

「待て、一体何を言って…」

 

 [75%ぐらいが限界だ]

 

 それも、先程と同じ

 

(………まさか)

 

 違和感、近づいてコックピットのハッチを見ると…

 

 

「…録音か!! クッソ……やられた」

 

 そこは開きっぱなしで、中はもぬけの殻であった。通信からは、録音したであろう音声が流れ続ける。

 パイロットだけで脱出したのだとすれば…

 

(不味い、ここだと見つけられん…!)

 

 この複雑な工場地帯で、一人の人間を見つける事は困難であろう。いくら地理感があろうとも、それはACでの話。わざわざ録音まで持っていたのだ、この様な状況における逃走には向こうに利があるに違いない

 

 

「…………」

 

 もはや、どうしようもない。

 空のACを見て、思わず頭を抱える

 

 

 そんな時

 

 [ジャック、よくやりましたね]

 

「ケイト…?」

 彼女からの、通信が入った

 

「……すまない、取り逃した。ここだと、もう追えそうにない。すまない、本当にすまない!!」

(ここで、良い結果を報告する筈だったのに…愚か者が!!私の、愚か者が!!!)

 

もしもあの時、すぐさま殺しに掛かっていれば

もしもあの時、欲を出さなければ

 

 自責の念が強まる中、彼女からの返答は

 

 

 

 

 [大丈夫です。例の傭兵を…先程、捕縛しました]

 

 怒りでは無く、最良の結果の報告だった

 

「…えっ。それは、本当か?」

 

[はい…以前に言ったでしょう、貴方がACに専念できる様に私がサポートすると。

確かに、依頼は達成されました!素晴らしい手腕です]

 

 

ああ…ケイト、ケイトとは……

 

 

「はぁ〜〜っ……ありがとう、本当にありがとう、感謝してもしきれん……」

 

 

 依頼の確かな達成を告げられて様々な緊張が一気に解けた。思わず、コックピットの中で脱力してしまう

 

 [前回の失敗の責任を取ったまでです。取り敢えず指定する座標まで来てください、この傭兵の処遇は…貴方に任せますので]

 

 

 

 表示されたマーカーへと向かい始めた

 

ケイトとは最高のオペレーターである

 

 そんな、分かりきっていた筈の啓蒙を改めて思い知らされながら





ここまで読んで頂きありがとうございました

シャミアにボコボコにされて思いついた状況戦

戦友の情報を集めたら続き書きます
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