「何!?何が起こったの!?」
「あ〜…いつもの、ですかねぇ」
「いつもって…何回も起きていい火力じゃないよ!?あれ!」
急いで校舎の中に向かいながら、私はサイトに尋ねた。彼は冷静に「いつもの」と返すが───絶対にこれ、キヴォトスでも常識的じゃないよね!?───と心の中でツッコミを入れていると、
学園の入口と思しき場所───爆心地と思われる黒煙の中───から、所々煤で汚れたメイド服を身にまとった子が咳き込みながら出てきた。
「けほっけほっ…けっむいよっ、けほっけほっ」
「はっ、はっ、はっ…大丈夫?」
「ひっ…!?え、え、え、えっと、な、何!?へ、ヘンタイなの!?ち、ちかよらないで!!」
煙を吸ってしまったのかと心配になり息も整わないまま駆け寄ると、長い両袖と一緒に手を大きく振りながら怯えたように後ずさっていく。…とんでもない誤解をされてしまった…!速く誤解を解かないと…!そう思い口を開こうとしたところで、後ろからフォローが入る。
「メイナ、そんな警戒しなくていいぞ。ヘイロー無いんだし。」
…フォローなのかな、これ。いや、変態の部分をフォローしてほしかったな…?
「え、え?あぁ、ホントだ…」
サイトの言葉に一瞬顔を緩めた彼女──ここは男子高校なので恐らく彼──だったが、すぐに険しい…いや、怯えたような表情を浮かべる。そして深呼吸をしてから話し始めた。
「…で?…だ、誰なの? そのヘンタイ。不良って訳じゃ…ないみたいだけど…?」
「あ、自己紹介してなかったね。はじめまして。」
「シャーレの先生だよ。変態じゃなくて、気軽に先生って呼んでくれるとうれしいな。」
「へ、へぇ?…シャーレ、ね。ふーん…?」
そう呟くと、怯えていたのが嘘だったかのように目を輝かせた。唐突に明後日の方向を見たかと思えば、視線だけでこちらを追っているのがすぐに分かる───本人は気付かれていないつもりなんだろうなぁ───と、隠しきれていない視線を感じながら考えていると、どうやら自己紹介をしていないことに気づいたのか「名前名前…」と小声で呟いてから話し始めた。
「じ、自己紹介まだ、してなかったよね…ボクの名前は烏門 メイナ。こ、この学園でS.F.部の部長をしてるよ…」
口元を長い袖で隠し、目線を横にずらしてる…人見知りなのかな…? というか、さっきから気になっていたけど間違いない。この眼の前の気弱そうな少n…女装した(?)メイド服の少年こそ、ゲヘナ学園に侵入した生徒みたいだ。…しかし、本当にこの子が自治区に侵入? その割にはそれほど危険な風に思えないけど…
「…で、メイナ?お前またグラウンドで実験したのか?」
サイトが呆れたように尋ねると、メイナはおずおずと答えた。
「う、うん。アーマーの新しい武装を考えてたんだけど、ラボに設置して実験するスペース無かったから…」
「そうかぁ…んじゃ一緒に会長のとこ行くか?」
「え…?」
「いや、お前このまま放置したらアイツにまた同じ事されるぞ?」
サイトの言葉にメイナの顔がみるみる蒼白となり、小声で「えっ、あっ、どどど、どうしよう…」と呟き初めた。…そんな中、唐突にメイナの(恐らく)スマホからアラームが鳴り出すと今度はメイナの顔が「ぱあぁぁ!」と効果音がつきそうなほど明るくなり
「ボク用事できたから!」
と言い放って校舎の方へ走り去ってしまった。サイトは「…もうしーらね」と言って校舎へ歩を進め、私はその後を(大丈夫なのかなあの子…)と思いつつもついていった。
…要するに、私たちはようやく校舎内へ歩を進めたのだった。
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「メイナのことっすか?」
「うん」
校舎内の廊下を生徒会室へ向かいながら、サイトが口を開いた。イシノ学園の生徒会──通称
「メイナはああいう問題はよく起こすの?」
「そうっすね、あの規模のものはあんまり無いですけど。」
「じゃあ、ゲヘナの自治区にも侵入すると思う?」
サイトは少し考える仕草を見せたけど、そう間もなく口を開いた。
「なんの動機もなくはやらないですね。なにか…それなりの理由が無いと動きませんよ、アイツは。」
「…信頼してるんだね。」
もしかしたら、メイナが侵入した可能性から疑ってみたほうがいいのかもしれない。風紀委員会…引いてはヒナからの依頼で、書類を見た限り食い違う点はなかったから考え損ねてたけど…今回の事件はゲヘナ側で誤解があるか、メイナに何か理由があったから起こしたのか…そんな風に考えていると眼の前に他の物より大きい両開きの扉が現れた。
「つきましたよ、先生。イシノ学園(うち)の総本山です」
「重厚感と言うか何というか、雰囲気あるね…」
「ま、うちもそこそこ大っきい学校っすからね。」
「じゃあ、失礼するよ…!」
ドアをノックすると、中から気だるげな声で「どうぞー」と帰ってきた。ドアを開けると、来客用の机と椅子を挟んだ先にある大きなデスクに腰かける黒髪の少年がこっちを見て「え」と声を出して固まる。
「えちょ、まって?サイト。その人は?なぜここになんでwhy…?」
「あー…成り行き?」
動揺した様子の相手にその説明じゃわかんないんじゃないかな…
「いきなり押しかけてごめんね。シャーレの先生です。聞きたいことがあって来たんだけど…」
「あわわわわわわわわわ…!」
「どうしよう…」
「あ、まかせてくださーぃ」
そう言ってその人の前まで行って何言か呟くと、段々と落ち着いていった。…なんて言ったんだろう?まぁ、今それはいいや。置いておこう。
「大丈夫?原因の私が言うのも変だけど…」
「あ、えーと…はい。もう大丈夫です。…それで、ゲヘナ自治区侵入についてでしたか。」
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「改めまして、
「うん、よろしくね。それで早速なんだけど…」
(そういや、アバネしかいねぇな…ルリ先輩はいつもの事として、会長も出払ってんのかねぇ)
そんな事を思いつつ、二人の会話に耳を傾ける。今現在、俺にできることは特に無い。命令に従ってここまでは先生と行動してきたけど…正直これ以上隣りにいるのは先生の邪魔になりそうだし、問題の解決自体は俺の命令内容に入ってないから後ろからついていくだけでもいいかなぁ…なんて考えてたが、先生を一人で放っておいたら何か───さっきのメイナみたいな───別の問題が起きそうで怖えーなぁ…うちの連中は個性強めのやつ多いし、頭のネジ吹っ飛んでるのが通常運転なもんだから自分が異常だっていつまでも気付かねーんだよな。っとと、考えすぎた。眼の前の大人である先生はアバネと現在交渉中だ。どーやら、今回やらかしたのはメイナらしい。確かにメイナと会った時面識も無いだろうに変な反応してたし、さっきもなんか聞いてきたから察してはいたけどな。
「…うん、わかった。こっちでも動いてみるよ。」
「いやホント迷惑かけて申し訳ないです…うちの連中はどうにも血の気が多くてですね…」
「…まぁ、元気なのは良い事だと思うよ」
どうやら今回の件は生徒会である黎明会でも把握しきれていない…という事になっているようだ。先生はそれについて聞いたものの相手は知らないの一点張りだったしな。結局、アバネがイシノ学園の会長代理として先生に依頼する形で落ち着いた。依頼内容は「今事件の真相究明」と「ゲヘナ学園との仲介」。先生に頼らなければ今後ゲヘナとの外交で大きな確執となるのが避けられないからこその処置らしい…が、正直に言うと第三者を介入させるほうが事を大きくしてるような気がするのは俺だけだろうか。…ま、あの会長ならその辺含めて諸々計算ずくなんだろうけど。…ん?なんかアバネ、ジト目で俺の方見てない?
「つか、なんでお前は帰って来てんの…?」
「あー、それはまぁ、その、あれだ。先生を案内するためだよ。ねっ、先生?」
「…そうだったっけ」
「先生!?」
「はぁ…サイト?」
アバネの声に背筋が伸びる。その顔の表情は呆れ半分、怒り半分って感じだ。
「は、ハイなんでしょう…?」
「今の俺は書紀として言うことがあるんだが…でもそれは、先生が今回の事件をまとめるまで待っといてやる」
「おぉ…意外と寛大」
「意外と…?」
「さーせんした」
「…まぁいっか。とりあえず、サボった罰として先生に学校案内くらいはしてくれ。それ以降は任せるから。」
そのセリフに少し引っかかりを覚えるが…まぁ、そのくらいはお安い御用だ。そもそも、そうしなきゃならなかったっつーのもあるが。
「おう、了解。」
「うぃ、がんば。というわけで、こいつのことは顎で使ってやってください。そいつ、
「うん。了解。」
「ちょ、先生…?」
悪ノリっぽい空気に変な感じがしつつも、並んで部屋を出る。…もしかしてメイナに変態じゃないってフォローしなかった事、根に持ってるのか…?最後アバネには色々ふっかけられたが、まぁ気にしたら負けだろう。そんなこんなで歩きつつもどこに連れて行くか迷うが…メイナの所には結局行くことになるんだし、恐らく特殊ラボの中に引き籠もっているだろうから後回しでも大丈夫だろ。なら…メイナの事を知れる場所に行くか。
「先生、イシノ学園が誇る部室棟に行きましょう。其処でならメイナのことを少しは知れると思いますよ?」
「部室棟って…部室棟に何かあるの?」
「はい。なんてったってあそこはメイナの技術力をこれでもか!…と詰め込まれた現代の忍者屋敷みたいなもんです。」
「何にせよメイナのことは知れるはずです。技術者や科学者としての一面になるとは思いますけどね。」
ま、あそこなら先生に万が一も起こり得ないだろ。…あ、そうだ。まだ根に持ってるのか確認しとかねーと。こういうのって確認しないと後々めんどくさくなるしね。早めに聞かないとだよね?仕方ないもんね?(半愉悦顔)
「なら、案内してくれる?」
「もちろん。行きましょう、変態先生。」
「サイト…?」
「あ、根に持ってた。」
やっぱり頑張っても5000文字越えらんないョ…モウマジムリ。リリースカットピアノシヨ…