「大丈夫ですか?マスター」
気絶した俺はあの後目が覚めると、またあの白い空間の中に居て、目の前にはあの時俺を蹴り飛ばした美少女が俺の顔を覗き込むようにして立っていた
「また、俺は此処にきたのか……?」
俺は独り言のように少女にそう確認するように問いかける
「はい、そうですよ」
俺の問いに少女は肯定で返す。
「……なあ、さっきは聞けなかったんだが、此処はどこなんだ?後、君はいったいなんだ?俺をマスターなんて呼ぶからには何かあるんだろう?」
少しの静寂の間、幸司は今この空間で何をするべきかを考え、ずっと気になっていた疑問をこの空間にいるうち聞くべきだと思い、少女にそう問う
「分かりました。今はもう大丈夫そうですから……順を追って話しますね」
「頼む」
俺は軽く頷き、少女にお願いする。
もう一度少女は「はい」と頷くと、口を開き話し始めた
「まず、この空間について説明しますと、此処はマスターの心の深層部で、今のところ唯一私がマスターと会える場所なんです」
「ん、と、つまりは此処は俺の心の中で、今の状態は夢に近いものを見ているって感じでいいのか?」
少女の少し小難しい感じのする説明を、足りない頭でどうにか自己解釈し、噛み砕いた感じの言葉でそう聞き返し確認する
「はい、そのような認識で間違ってはいません、少し違う所を上げるとするなら、此処は夢に近いだけで夢ではないので、ちゃんと両者共に記憶がしっかり残るって所位でしょうか」
どうやらその解釈で合っていたようだ。
少女は唇に人差し指を当て、思い出すような素振りを見せそう言う
「分かったみたいなので、マスターの次の質問に移っていいですか?」
「嫌、ちょっと待ってくれ」
俺の問いかけた、この空間の質問が終わり、次の俺の質問に答えようと少女がそう聞くが、もう一つ気になっている事があるので聞いておく事にし、次の俺の質問に答えようとする少女をそう呼び止めた
「なんですか?」
「ん、ただ気になっただけなんだが、俺はどうして此処に来ることができたんだ?」
「どうして…とは?」
俺の質問の意図が分からないのか、少女は可愛らしく首をコテンと傾げ、そう聞き返す
「心の深層部だっけ?そんな所今まで経験した中で行けた事は一度もないからさ、多分何か特殊な事があって、此処に来れたんじゃないのか?って思ってな」
「……なるほど、マスターは意外にも賢いのですね」
俺の答えに少女は、顎に手を当て「なるほど」と驚いたように呟く
「意外は余計だ」
「まあそれは置いといて、来ることが出来た理由ですよね」
幸司は「置いとくな!」と叫びそうになったが、声にして出してしまうと、話が進まなくなってしまうのでぐっとこらえ、心の中で叫んでおく
「…ああ、教えてもらえるか?」
「はい、教えない理由もないですし」
「ん、じゃあ頼むわ」
俺が手を軽く振って、早く説明してくれと促すと、少女はコクリと頷き、口を開く
「分かりました、えっとですね、来れた理由というのは、簡潔に言うと私が連れてきたからなんです」
「連れてきたぁ?」
「はい、あ、でも、いつでも連れてこれるという訳ではないですよ、ちゃんと条件があるんです。」
そこで少女は一度言葉を止め、乾いた唇を舐め、空気を吸いなおす
「その条件も簡単なもので、ただマスターが心の深層部に近づいてくればいいんです。そこで私が近くにいるマスターの意識を捕まえて、此処に引っ張ってくれば、マスターを此処に連れてくる事ができるんです」
「……えーと、それは…どゆこと……?」
何とか理解しようとしたつもりだが、この少女の言う条件とやらは全く理解できない。いや、ただ単に俺の頭が足りないだけかもしれないが、ここで少女に聞き返した俺は普通だと思う
「マスターにもわかるよう簡単に説明すれば、マスターの意識が失われる……つまりは気絶すれば心の深層部に近づく事ができるってことです」
「ああ、なるほど、俺が気絶すればお前が此処に連れてこれるってことだな?」
少女に簡単に説明してもらい、ようやくどういう事か理解する事ができたので、少女に一応確認し、それで合っていると言われたので次の質問へ移ってもらうよう促す
「では、次の質問ですが、私が何者かと言われると……一生を共にする仲……とでも言えばいいのでしょうか?」
「ファッ!?」
目の前の少女が、淡々と口にした言葉に思わず声が裏返る
「お、おいおいまてまて!!、俺はお前に会ったことなんかないし、人生の墓場に足を突っ込んだ覚えはないぞ!!?」
「は、はぁ!?な、何を勘違いしてるんですか!?私がマスターと結婚してるわけありません!!?」
俺が少女にどういう事か焦ってそう聞くと、少女は顔を赤くし、強く否定した
「いや、だ、だって一生を共にする仲って…?」
「そ、それは全然別の意味です!!それに、大体私のことはマスターが一番分かってるはずじゃないですか!?」
「だ!か!ら!俺は君に会ったことも無いって言ってるだろうがぁぁ!!」
俺が何度会ったことも無いといっても、少女は聞こえていないのか、自分のことは俺が一番知っていると言う。このまま口論を続けていても話しが進まないと感じた俺は、一度自分と少女を落ち着かせるため、話しをきる
「いい加減教えてくれ……君は……お前はいったいだれなんだ?」
数十秒経ち、落ち着いた所でもう一度少女にそう問う
「ホントに分からないんですか?」
少女の困ったような、哀しいような言葉に、なんだか悪い気がするが肯定の意として頷く
「えっと、私は……あなたのユニゾンデバイスなんですよ?」
「おう………へ?デバイス!?」
「はい、ていうかホントに知らなかったんですね」
マヌケな声で返事をする俺に対して、少女は呆れたような声色でそう言い、やれやれと首を横に振る
「え……いや、でも待ってくれ、俺は君みたいな形のデバイスは作ったことないぞ?それはどういう事だ?」
「…前言撤回、マスターはバカですか?」
「は!?バカってなんだよ!?」
少女のバカにした台詞に苛立ち、少し強めの声色でそう怒鳴り返す。
しかし、少女はその俺の台詞を聞くと、「はぁ~」と一つため息を吐き、額に手を添える
「マスター、ここはマスターの心の中ですよ?意識体なんですから形なんて想像通りに変えられますよ、ちなみにこの姿になったのは、マスターが人型の方が話しやすいと思ったからです」
少女の説明するような言葉に、なるほどと納得する。
確かに人型の方が話しやすいのも事実だし、意識体なんだから形も変えられるだろう、しかし、もう一つ気がかりな点があるので、自分の意識が戻ってしまう前に少女に新たに質問する
「じゃあ一つ質問追加だ。その姿については納得出来たけど、俺はユニゾンデバイスはユニコーンしか作ってないし、それに大体ユニコーンはまだ未完成だし、AIもまだ完成せたないんだが?それなのにどうしてこうやって対話できてるんだ?」
「その点についても、マスターがやったことが原因ですよ、私に自律思考型AIをプログラムしたのはどこの誰でしたっけ?」
少女は自分が組んだデバイスのAIすら忘れたんですかとジト目にらまれてしまった。
後、自律思考型AIというのは、自分で物事を考え、命令された事以外も自分で判断でき、その場その場に対応できるように俺がプログラムしたAI(人工知能)の事だ。
簡単かつ適当に言うなら、人間レベルの知能をもったAIって所でいいだろう
「えっと、それってまさか……?」
信じられないと言うような声色で、少女に確認するように問いかける
「はい、まだ完全には組まれていませんでしたが、大体の部分はできていたので、残ったAIのプログラムは私自身で完成させましたよ?」
「や、やっぱりか……」
つまり、ユニコーンはまだ未完成であったはずのAIの状態で、俺の協力無しで自分のAIのプログラムを完成させたという事だ。
自分で自分を組むデバイスなんて聞いたことはないけど、実際できているのだから仕方ない。
まあ、そのおかげであの時王牙に殺されずにすんだんだから礼を言っておこう
「そうか、助かったよあの時は、ありがとうユニコーン、お前がいないと俺、死んでたと思う」
「私は別にデバイスとして、当然のことをしただけですけど……一応受け取っておきますよ……どういたしまして、マスター」
ユニコーンはそう言い、ニコリと微笑んだ。始めたみた自分のデバイスの笑顔………あまりにも綺麗だったので思わず見惚れてしまった
「…ああ、じゃあ俺は聞きたいことは終わったからな、そろそろ起きるとするよ」
なんだか、今はユニコーンの顔を直視できそうにないので、ここから去るために、早々とそう告げる
「そうですね、なのは達も今心配しているみたいですし、早く起きて安心させてあげてください」
そう言い、ユニコーンが手を軽く振ると、俺の体が少しずつ光り、消えていく、どうやら意識が戻り始めているよう
「本当にありがとうユニコーン、早くデバイス完成されるから、その時に……また話そう」
「はい、待ってますよ……マスター」
消えていく視界の中、移ったユニコーンの顔はやはり綺麗だった