「ユニコーン……綺麗だったな…」
消えゆく視界の中、最後に移ったユニコーンの少し悲しそうに、それでいて嬉しそうな表情に未だに見惚れていた幸司は、ふとそうつぶやく。
そして視界が反転し、目を開けるとそこにはなのは、すずか、アリサ三人の顔があった
「「「幸司(君)!!」」」
「お前ら……どうし…たんだ……?」
幸司の目が覚めたと分かると、安堵して泣き出してしまった三人に、未だに状況が飲み込めていない幸司は困惑し、周りを見渡す
「此処は……病院……か?」
「そうだよ…気絶した幸司君を……救急車で此処まで運んだの」
「そっか……俺は……あの時……王牙を倒して…それで…」
漸く事態が飲み込めた幸司は納得するように、確認するようにそう呟く。
あの後、気絶した幸司をなのは達が救急車を電話で呼び、心臓マッサージ、体を暖めるなどして命をつなぎ止め、幸司をなんとか病院まで運んだのだ。
一応怪我をしていた王牙も一緒に運ばれたが、なのは達はいつ起きて幸司を襲おうとするか分からず、ずっと冷や冷していたが
「あり……がとう……皆」
幸司は全身を大怪我し、痛みに耐えながら笑ってなのは達に礼を言った。しかし、肺がやられていたため、うまく喋る事が出来ず、今はこのようにしか喋る事は出来ない
「っ…幸司君!!」
「幸司…!!」
「幸…司君!!」
なのは達も、目の前で友達が死にそうになって恐かったのだろう。しかし、その緊張も解け安心すると、涙をポロポロと零しながら、三人とも抱きついてきた
「……いっ……」
幸司も怪我をしているため、抱きつかれるのは痛いが、今は我慢しておくことにする。だってまだ三人は小学生位の少女だ。こんな事があって耐えられる筈がない
「…生きてる!!生きてるんだよね!」
「あぁ、心配…かけたな……大丈夫…俺は生きてるよ」
なのはは確認するように泣きながら幸司にそう問いかけ、体温で生きていると感じるため幸司の肌に触れる。
幸司はなのはをそっと抱きしめ返し、子供をあやすようにサラサラと髪をなでる
「っ!ホントに!!ホントに心配しんたんだからね!!このバカ!!!」
「ごめん………ごめんな……アリサ……」
俺の胸に顔を埋め、アリサは涙を流しながら、力いっぱい俺の胸を叩く。
アリサの頬を伝う涙は俺の服へと流れ落ち、俺の服を湿らせる。
アリサの頬を伝う涙を指で拭い、震えているアリサの背中へと手を回し、ポンポンと背中を叩く。
怪我をしているので胸を叩かれるのは傷に響くが、こんなに心配させた自分への罰として、受け取っておくことにする
「生きてて良かった……!!本当に生きててくれて良かったよぉ……!!」
「恐かったよな……ごめんな……ホントにごめんな……すずか」
すずかは俺の手を取り、顔を俯かせてそう言う。
すずかの顔から、ゆっくりと雫が零れ落ち、病院のベッドのシーツを濡らす。体を震わせ、嗚咽をもらすすずかの姿はあまりにも痛々しい。
俺は、すずかを安心させようと力いっぱいにすずかの手を握り、ちゃんと生きていると伝える。
すずかもそれで安心したのか、今度は顔を上げ、涙でぐしょぐしょになった顔で精一杯の笑顔を浮かべた
「大丈夫……俺は死なない……死なないから…」
俺はなのは達が落ち着くまで、ずっとなのは達を抱きしめていた。
◆ ◆
あの後、なのは達が落ち着き、泣き止んだ後、俺の手術を担当した病院の先生が俺の病室へと入ってきた。
先生は俺に何があったのかを聞くために、話しやすい場所へ行こうと、ある部屋へと移動した
「……それにしても君は、よくこれだけの傷を受けて生きているね、正直助かるとは思っていなかったよ」
部屋を移動し、数秒の沈黙の後、先生が俺の体を見てそう感心する。
何でも、俺の体は全身切り傷だらけで、一部では骨も切断されていたらしい。しかも、背中から胸にかけての傷は、数センチ横にずれていたら心臓に突き刺さっている所だったそうだ。
先程、鏡を見たら、俺の体は包帯でぐるぐる巻きにされており、顔だけでているミイラ男みたいな状態になっていた
「まあ、俺も……正直、何で…生きてるのか…分かりませんし」
「でも、助かってくれたことは医師としては嬉しいかぎりなんだがね……よく助かってくれた」
先生は穏やかな笑みを浮かべて、俺の頭をくしゃくしゃとなでる。
いつもは自分がなでる側ではあるが、人になでられるというのはなんとも新鮮な感じだ
「それじゃあ、本題に移ろうか………」
「本題……ですか?」
先生は渋い顔をしながらそう言うと、警察官と思われる人物が、三人、この部屋に入室してきた
「私は、これだけの怪我なのだから治ってからにしろと言ったのだが……此方の方は聞かなくてね………すまないと思っている。この部屋に移動したのは、この事情聴取をするためでもあったんだよ……」
先生は「申し訳ない」とだけ言うと、この部屋から退出し、俺への事情聴取が始まった。
……ていうかこんなボロボロの状態の子供に事情聴取なんて、この世界の警察官は鬼か何かか!?
◆ ◆
事情聴取は以外にも早く終わった。まあ、話は適当に流して魔法の事を隠蔽(いんぺい)したから捜査が何も進まなくて、俺への事情聴取では何も分からなかったから早く終わったんだけどな。
一応、王牙がやったという事は黙っていることにした。
また襲われたらたまったものではないが、それ以上に関係ない人達に魔法を知られて、平穏な人生を狂わせたくはない。だからこそ俺は、警察官達の記憶を魔法で改ざんしたんだけどな。
後、魔法を使う時に気がついたのだが、俺のリンカーコアは王牙の攻撃により大分損傷し、デバイス無しでは、強化などの簡単な魔法すら使うことができなくなった。
つまり、俺は魔法を使うにはデバイスがなければなにも出来ない魔力タンクとなった訳だ。その上、いきなりデバイスに魔力を通して魔法を使うことは出来ず、一度カートリッジに魔力を詰め、それを利用する事でしか、魔法を使うことが出来なくなってしまった。
まあ、別に元々デバイス頼りだったしな、そこまでの事じゃ無いだろう
「それよりも、なのは達……魔法…見ちまったんだよな………」
「はあ~」と一つため息を大きく吐く。
出来ることならなのは達には、魔法を知ることなく、平和的に生きてほしかったのだが……こうなってしまってはそれは少々難しいかもしれない。
もちろん、王牙が何もしなくてもなのは達は魔法を知る可能性だってあった訳ではある。
その時はその時で、俺自身は何も言わないが、俺達転生者の手によって勝手に魔法を知らされ、もしかしたら知らない方が良かった筈の魔法のせいで、危険な目に遭うというのは俺自身、なんだか申し訳ない……。
「つきましたよ、その年でこんな怪我をして大変だと思うけど、がんばってね」
ずっと考え事をしていた俺は、上から唐突に聞こえてきた声により、我に返る。
上を見ると、俺を車椅子で移動させてくれていた看護士さんが優しく微笑んでいた。
どうやら、俺の病室に着いたようで、看護士さんは俺をベッドへ寝かせ、頭を優しくなでるとどこかへ行ってしまった。
その後、俺は動くことも人の助けを借りなければ出来ない状態なので、ベッドに転がり先程まで考えていた事をもう一度考え直す事にした。
しばらく時間が経つと、部屋のドアがコンコンとノックされ、外からなのは達の声が聞こえる。
俺が入っていいと促すと、俺を気遣っての事か分からないが、丁寧にドアを開け俺のベッドに歩いてくる
「おう、なのは達どうしたんだ?」
真剣な顔つきで此方に歩いてくる三人に少し気圧され、なぜそんな顔をしているかは予想できるが、一応ショックで忘れていてくれたらいいという淡い期待を抱き。おどけた口調で笑ってそう言う
「どうしたの?じゃないの!!?幸司君達が使ってたあれは何なの!?」
「そうよ!あんなの見たこともないし!幸司があんな事出来るなんて聞いてないわよ!!?」
「それに、王牙君だって剣とか鎖とかいっぱい出してたし、どういう事か説明してよ!!」
俺の期待もむなしく、三人ともきっちり覚えていたようだ。
俺としてはショックで忘れていてくれれば面倒くさくないし、なのは達もそのまま平和な生活がおくれるのだからそちらの方がいいと思ったが、なのは達はそれでは納得しないらしく、俺に説明を求める
「……なあ、お前ら………魔法って…知ってるか?」
「魔法!?そんなモノで話しをそらさないで!!今私達が聞いてるのは、幸司君達がやってたことについてだよ!!」
「いいから!知ってるのか!」
多少強めの口調でなのはの言葉を遮り、もう一度強引にそう問う
「魔法って………アニメとかお話とかで出てくる炎とかだしたりするあれの事でしょ? それがどうしたのよ?」
俺の問いに、なのはの変わりにアリサが応える。
アリサはなぜ俺がこんな質問をしたのか不思議がっている
「もしかして……幸司君達は……魔法を使ってるっていうこと……?」
だが、すずかだけは何かを察したようで、恐る恐るといったようにそう問いかける
「はぁ? すずか、魔法なんてものがこの世にあるわけ無いじゃない、どうせあれは何かのエネルギーを使ってるに決まってるわ」
「アリサちゃんの言うとおりだよ、魔法なんてお話の中にしかある訳ないの、大体魔法なんてものがあるならもっと早く見つかってるはずだし」
すずかの答えをアリサとなのはは否定するが、それは残念ながらあっている。
一応答え合わせくらいしてあげてもいいだろう。ということで、俺はゆっくりと口を開く
「よくわかったな………正解だよ……すずか」
俺は後ろから、デバイスを一つ取り出すと、ベッドから降り、車椅子でなのは達の元へと向かう。
三人はすずかの答えがあっているのに驚いたのか、俺の告白に驚いたのか、それともその両方に驚いたのか………それはきっと一生分かることは無いだろう……。
「……ごめんな………皆…」
俺は一つそう呟くと、未だに驚いている三人の頭にデバイスをつけ……
「……『delete』……」
……魔法を発動させた