呪術廻戦×ウルトラマン【連載(短編)版】   作:名無しのごんぎつね

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第十二話「肝試し 後編」

 普段だったら絶対にしないような凡ミス。足元に有った枯れ枝に気付かず踏んでしまい、乾いた音が鳴る。

 

 グルッ。

 

 首が人間ではありえないような速度と曲がり方をする――そもそも、目の前にいる怪物は顔がたくさんあるので、こちらに向けている顔がこちらを見ているのかもわからないのだが。

 気づかれたっ、と思うと同時に、怪物二号はゆっくりとこちらに近づいてきた。近づいてくる速度がゆっくりなのは、こちらをなめているからなのか、それとも、今までの犠牲者が全員腰を抜かしていて、この速度でも十分捕まえられたからなのかはわからないが、チャンスだ。こちらが何もできないと思うなよ。俺だって無策で正体不明の怪物が居る場所には残らない。登山用ジャケットのたくさんあるポケットのうちの一つから、ベーターカプセルを取り出す。これを使って、ウルトラマンに変身できれば、この状況を打開できるはずだ。

 

 ガサッ、ガサッ、ガサッ

 

 怪物二号は、こちらを怖がらせるためか、あえて落ち葉を踏み鳴らし、大きな足音を立てて、向かってくる。その行為は俺に効果覿面で、ベーターカプセルを持っている手が恐怖で震え始めていた。ウルトラマンに変身できるといっても未知の存在は怖い、というわけではない。憧れのウルトラマンになったのなら、ヒーローらしく、恐怖を押し殺して戦う覚悟はある。俺にとっての懸念は全く別のところにあった。

 俺はベーターカプセルを使って変身したことが今まで一度もない。この山の中での土壇場での変身、これを使うのは初めてなうえに、使ってウルトラマンになれるかどうかもわからない。不安になるのは、俺にとって当然だった。だが、今までに見た前世の記憶から判断して、それなりに変身できる公算は高いはず。ただ、使っても変身できるかは五分と五分、使っても、このまま変身できずに怪物二号にやられるの可能性もあるのだ。なら今までに試しに使ってみたらよかったじゃないかという話もあるかもしれないが、「帰ってきたウルトラマン」や「ウルトラマンマックス」のように、緊急時でもないのにウルトラマンの力を試すために変身をしても、変身させてくれないかもしれないし、俺と同化してくれた存在にも失礼な気がしたからだ。おそらく、最初にウルトラマンと会って、気絶する直前に見た光景から考えて――ウルトラマンと呼ばれているかはわからないが――俺がウルトラマンに変身できるなら、この存在は俺と同化してくれているはず。それに試しに使ってみるにしても、変身するのに都合がいい場所がない。街中で変身するのは人目について悪目立ちする上に間違えて人を傷つけるかもしれないので論外だし、自衛隊用の滑走路のような開けた場所なら大丈夫かと言うと、そういうわけでもなく、他の隊員に気付かれて、場合によっては集中砲火を受けるかもしれない。

 そう考えながら、再び怪物二号の方を見ると、一つの藪を隔てた場所まで迫ってきていた。まだ、手の震えは止まらない。だが、このままでは終われない。どうか、俺と同化してくれた存在よ。力を貸してくれ。

 ベーターカプセルを再び見ると、ベーターカプセルは薄く光を放ち、熱を持っていた。おそらく、同化してくれた存在が俺の気持ちに応えてくれているのだろう。先程まで駄目で元々といった気分だったのが、これなら本当に変身できるかもしれないという気になり、勇気が湧いてくる。大丈夫、俺ならやれる。俺はこれから憧れていたヒーローそのものになるんだ。俺は急いでベーターカプセルを天高く上げ、付いている赤いボタンを押す。

 

 カッ

 

 辺り一面にまばゆい光が立ち込めると同時に、何も見えなくなる。

 周りを見渡すと、周りにあれだけたくさんあった木がなくなっていた。見下ろすと、地面が木の緑でブロッコリーのように覆われているのが見えた。視界が高くなっている。ウルトラマンの身長は四十メートル。こう見えるのも当たり前だ。だが、普通に生きていれば一生体験しないことの数々に俺は不謹慎だが少々ワクワクしていた。

 

シュアッ!

 

 そう声を上げながら、ファイティングポーズを取るが、目の前には何もいない。あれっ、と思いながら、下にいる生き物たちを踏み潰さないように、慎重に後ろを振り向くが、やはりいない。首だけを動かしながら、辺りを見回しても、怪物二号は見当たらなかった。四十メートルに巨大化したため、大体人間サイズだった怪物二号は探しにくいだけなのではないかと思い、棚の隙間に落ちたものを取ろうとするような体勢で探してみても見つからず、不思議に思いながらも変身を解く。

 

 どうなってやがるんだ、という声が出たのも仕方のないことだろう。ついさっきまで、すぐ近くにいたはずの怪物二号は最初からいなかったかのように消えてしまったのだ。もし、前世の記憶が正しいならば、先程の怪物は宇宙人か何かで透明になったり、もしくはテレポーテーションのような技術を持っているのかもしれない。だが、この場所は心霊スポットでもある。あの怪物は宇宙人や怪獣でもなく、幽霊や妖怪の類だったのかもしれない。たしか、ウルトラマンの世界にもそんな存在がいたような気がする。だが、何を考えたところで、実際、あの怪物がどのような存在だったかなどわかるはずがない。たった一つだけわかった事実を挙げるなら、どうやら怪物二号は空気のようにこの場から消えてしまったということだ。そう頭の中では納得したふりをしながら、なにか心にもやもやとしたものを抱えて、俺はその場を後にしたのだった。




 短編版はここで完結となります。
 書き溜めが尽きてしまったので、夏休みは執筆に注力し、9月あたりから投稿を再開しようと思います。
 ここまでお読みいただきありがとうございました。
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