呪術廻戦×ウルトラマン【連載(短編)版】 作:名無しのごんぎつね
それからしばらく気絶していたらしい。
目が覚めると同時に――多少の擦り傷はあるものの――五体満足で生きているという現実に安堵した。しかし、今も戦闘機に乗っているという現状から考えて、今までのことがすべて夢だったということはありえない。少なくとも自分は墜落したはずで、しかもあの恐ろしい怪物は現実に存在しているということだ。
怖い。
目の前にいるであろう怪物と顔を合わせるのが怖い。先程の怪物は体調が数十メートルほどある巨体だった。たとえ、どんな奇跡が起ころうとも、この動かない戦闘機では一方的に蹂躙されるだけだ。いや、この戦闘機が飛ぶことができたとしても、勝負になるかもわからない。今、乗っているのは訓練機なのだ。武装はほとんどない。そんな状態の戦闘機で戦いになるとは到底思えない。そもそも目の前の怪物に現代兵器は効くのだろうか。あれほどの巨体を支えることができるのだ。人間なんかとは比べ物にならないほどの骨格や筋力を持っているのだろう。それは、生物としての強度、存在としての格が違うということだ。たとえ、この戦闘機に武装が付いていたとしても、パニック映画に出てくる怪物のように、一方的に叩き落されるだけかもしれない。ましてや、この状況。絶望するしかない。自然と顔が下に行き、蹲りたくなる。歯の根が合わない。カチカチ、カチカチ、と意識しても歯を鳴らすのが止められない。俺は食われるのだろうか。それとも踏み潰されるだろうか。自分の無残な最期が走馬灯のようにグルグルと頭の中を巡った。
ふと、目の前を見ると、写真が目に入った。一人暮らしをする前に両親に頼んで、焼き増ししてもらった家族写真だ。生まれたばっかりの赤ん坊だった頃の俺が、そこには映っている。班員から、縁起が悪いからそんなところに飾るな、と言われ続けても、コックピットの見える場所に置き続けていたものだった。ああ、このまま俺が動かなかったら、昔の俺のようにか弱い子供たちが死んでしまうだろうか。その子供たちが死んだら、その家族も悲しむだろうなあ。俺が死んだら、俺の親も悲しむように。今、俺が動いても、動かなくても、何も変わらないかもしれない。だが、動いても、動かなくても、死ぬのだ。それならば、このまま動かず、恐怖と後悔に満ちたまま死ぬのはやだなあ。
そう、思った。
そう思ったら、少なくともこのままじゃいけないとも思った。
「このまま怖がってままでいられるか」
歯が鳴らなくなる。
「そうだ。俺は自衛隊員だ」
だんだんと歯の根が合い始める。
「国民を守る義務がある」
目線も同じように前を向き始める。
「こんな怪物が日本に上陸したら、何千、いや何万人死ぬことになるだろう」
恐怖による震えが武者震いへと変わっていく。
「なんとかしなくては」
自分に声を掛ける。
「いや、何とかしてやる」
自分を勇気づける。
もう、恐怖はない。
やる気と勇気がぐんぐん湧いてくる。
まずは無線が使えるようになっているかの確認だ。怪獣が今どこにいるのかを伝えられれば、対策が早くなって、少しでも被害を抑えられるかもしれない。
そう思い前を向いた先には、意外な光景が広がっていた。
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