呪術廻戦×ウルトラマン【連載(短編)版】 作:名無しのごんぎつね
おかあさん。おかあさん。ぼく、かならずなるからね。ウルトラマンみたいにでっかくなって、みんなをまもるヒーローになるんだ。
お母さん。まだまだ一人前には程遠いかもしれないし、ウルトラマンはこの世界にいないかもしれないけど、それでも、それでも俺は夢を諦められないよ。ヒーローにはなれなくても、この世界で人を助けることのできる、一人の立派な人間になるんだ。
ヒーローになりたかった。
あの美しい、光の巨人のようになりたかった。
今のはなんだ。
俺はこんなことを考えていない。
その瞬間、頭に電流が走ったような激しい衝撃を感じると同時に、脳内で処理できないほどの大量の情報が流れ込む。
いつも通りの自衛隊の演習の風景。初めて食べたアイスの味。目の前に迫りくるトラック。保育園に通っていた頃、テレビに夢中になって、アイスを溶かし、泣きながら新しいものを母から与えられた思い出。目の前で横断歩道を渡るランドセルを持った女の子。小学生になっても、たびたびアイスを溶かす俺に対して、かんかんに怒った父の顔。そう、俺の大好物はアイス。周囲から耳が痛くなるほどの怒号が巻き起こる。演習の中に混じる見たことのない隊員。その隊員とも楽しそうにおしゃべりする俺。目の前が真っ赤になり、だんだん体が冷たくなっていく。目の前に迫るトラック、トラック、とらっく。そうだ。お腹を壊すまでアイスを食べて、両親から笑われたこともあった。
脈絡のない脳内に映る映像はだんだんと秩序立ち、つい数日前に見た怪物と巨人の戦いの様子へと変わった。その様子はだんだんと遠ざかっていき、枠のようなものを通り過ぎて行ったと思ったら、なぜかテレビを見ており、そのテレビの中に先程の怪物と巨人が戦う様子が映っている。
「あら、また見てるの。ちゃんと宿題やったんでしょうね」
「うるっさいな、おかあさん。ちゃんとやったよ。そうしないと、かがくとくそうたいになれないからね」
もう成人しているはずなのに、俺の口からは子供のような言葉が出てくる。
理解が追い付かない。頭が割れるように痛い。だが、それでも頭の中に情報が流れ込むのは止まらない。
テレビに映る巨人が大人気テレビ番組シリ―ズのキャラクタ―だということ。そして、俺はそのキャラクタ―に憧れたということ。小学生のうちに昭和を含めた全シリ―ズを見ていたということ。一番好きな作品はメビウスとネクサスだということ。そして、現実にはウルトラマンがいないということを知って、絶望したということ。ならば、と「ULTRAMAN」を参考にして自衛隊に入ったこと。ヒ―ロ―になる夢を諦められず、無茶をしては上官に怒られたこと。もうすぐエヴァンゲリオンと呼ばれるアニメの監督が作ったウルトラマンのリメイク作品が公開されると知って、絶対に見に行ってやるとテンションが上がったこと。たまの休みにその映画を見に行こうと映画館へと向かい、ワクワクしていたこと。
そこから先はノイズがかかったように映像が乱れ、また脈絡のない情報が頭の中に流れ続けた。
批評や感想、誤字脱字の報告やアドバイスを頂けると作者が喜びます。