呪術廻戦×ウルトラマン【連載(短編)版】 作:名無しのごんぎつね
そうだ。思い出した。思い出したぞ、と心の中が整理されていくにつれて幻覚の中の景色は移り変わっていく。
そう、あの日。
たまの休みに、あのウルトラマンのリメイク作品を見ようと映画館に行こうとした、あの日。映画館へ行く途中にある横断歩道を渡っていると横から明らかにおかしな音が聞こえきて、音のする方を見ると、居眠り運転でもしていたのだろうかと思うほどブレ―キもかけずに暴走するトラックが勢い良く突っ込んできているのが見えたのだ。急いで逃げなくては、と思うと同時に、前方で子供がいるのが見えた。ランドセルを持っている小学生くらいの女の子だった。その女の子は前方にいる友達と遊んでいるらしく、トラックに気付きそうな様子もない。声をかけても間に合わない、そう思った俺は咄嗟に子供に覆い被さった。
視界にスロ―モ―ションカメラで撮ったかのような景色が映る。ゆっくり、ゆっくりと、ゆっくりと、だんだん、だんだん、だんだん、トラックが近づいてくる。
ドンッ
という音とともに全身へ衝撃が走り、目の前が真っ暗になった。しばらくの間、静寂が場を支配していたが、しばらくすると野次馬たちのワイワイガヤガヤといった喧騒が聞こえるようになり、やがてそれも聞こえなくなった。
そうだ、思い出した。俺は一度死んだのだ。
では、今、この世界にいるこの俺は、誰だ?
意識が現実へと浮上する。
誰かが俺を読んでいる。さっきまで俺と話していた看護師だろうか。
「――――――。――――さん。ハヤタさん。ハヤタさん。ハヤタさん。早田さん」
現実世界への帰還を果たしながら、もう一つ思い出したことがある。なぜか、前の自分の名前は覚えていないが、少なくとも前の自分は早田なんて苗字じゃない。だが、今の名前は
なんということだ。俺は、………………俺はウルトラマン――ひょっとしたら、俺が死ぬ直前に見ようとしていた映画かもしれない――の世界に転生してしまったのだ。
「早田さん? 大丈夫ですか。意識ははっきりしていますか」
寝ぼけていてピントが合ってなかった目の焦点を目の前に合わせると、先程の看護師の顔がドアップで目に入った。しかも、頭の柔らかい感触。明らかに地面ではない。どうやら、幻覚を見ながら意識を失った際、倒れそうになったのを受け止めてもらったうえに、介抱までしていただいたらしい。
「すいません。ご迷惑をおかけしました。どれぐらいの間、気絶していましたか?」
体感は一瞬だったが、実際は数時間経ってましたなんてことになったら、申し訳なさすぎる。
「いえいえ、迷惑だなんて思ってはいません。ご質問にお答えすると、意識がなかったのは数分ぐらいです。こちらからも、よろしいでしょうか」
よかった。大して時間は経っていなかったらしい。いや、忙しい看護師さんにとっては数分も千金に値する貴重な時間だろう。それを使ってもらっただなんて、有り難いと思わなければ。それにしても、質問とはなんだろう。介抱していただいた感謝の分、誠実にお答えてしたいところだが、
「はい。なんでしょうか」
まあ、このように返すのが無難だろう。
「なぜ早田様はこんな所で散歩をしていたのでしょうか」
藪蛇だった。
でも、誠実に答えると決めたのだからと、しどろもどろになって、子供のような理由で、病室から脱走した経緯を正直に話す。
俺は再び看護師に叱られる羽目になった。
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