百合天使VTuberとなった転生天使の配信記録   作:嘘しか言わん狐

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開幕前夜:団結せよライブライフ

愛之歌にとって、流舞は大切な友達であり仲間だ。

いつも大変な時に何度も何度も助けられた。独りぼっちではないと教えてくれた。

 

その大切な友達を間接的にとはいえ傷つけられては、いくら普段温厚な歌といえども心中穏やかではいられない。

歌えども歌えども晴れないのなら、少しくらい落とし前を付けさせたいと思うのも当然のこと。

 

愛之歌はけっこうキレていた。

 

「……あ、もしもしシエルちゃん?」

 

『はい、百合天使です。応答天使』

 

「ちょっと……マイメイで大型企画を思いついたんだよね、手伝ってくれる?運営側として」

 

『あ〜……もしかしてすっごい怒ってます…?確認天使』

 

「それなりにね」

 

でもただ怒ったって反省もしなければ改善もしないだろう。

だからこれは2期生のためにもなる、そういう企画でなくてはならない。

 

「というわけでマインメイク特設サーバーに来てもらったわけだけど、今回はここに巨大な刑務所を作るよ!」

 

「刑務所!?囚人天使!」

 

「よし来た任せてくれ!」

 

集まったのは百合シエルとガーベラ・レッドウォード。

愛之歌を含めて百合建設のメンバーだ。

 

「2期生の皆には反省してもらわないといけないけど、ただいじめたいわけじゃないの。だから皆で結束して脱獄してもらう企画……題して『マインメイク大脱獄』!」

 

2期生の仲間意識は薄い。

それは舞への対応だけでなく、2期生同士でもそうだ。

2期生は同期に何かトラブルがあった場合基本的に見捨てるし、平然と裏切るし、自分優先だ。

2期生で僅かながら協調性があるのが白雲マユと甘城しょこら、それもしょこらの方はそもそも価値観がオールドタイプの悪魔なので人とズレている。

 

「皆が結束して、一致団結すること!それが私の望みだよ」

 

「なるほど、では私達3期生は2期生を阻む試練となる、と。看守天使」

 

「ううん、それだと難しすぎる。百合建設主導と言う形にして、あおいちゃんとバトスちゃんも囚人側にするよ。看守が多すぎたら逃げられないかもしれないし……あ、あと1期生だけど奏ちゃんも多分看守をまっとうできないから囚人にしておくよ」

 

「信用無いんすね奏先輩」

 

「確かに普段の奏さんの配信を見る限り……簡単に言いくるめられて脱獄幇助しそうですね。単純天使」

 

「奏ちゃんはまずルールを覚えられないと思うから、情報漏洩の心配はないけれど……」

 

難攻不落の監獄を建築しながら、同時になんとか逃げられるようにわずかに『攻略法』を隠しておく。

あくまでもこの企画、主役は囚人だ。ほとんどの視聴者も囚人側の視点で体験することになる。

だからこそいくつかのフェイクアイテムと囚人側はコメント欄を見ないということを徹底させる。

 

「リスナーさんの推理を外すためのフェイクアイテムにも意味が欲しいですね……正解の脱出ルート以外を踏んだ場合、自動的に私達が転送されて捕まえられるようにしましょう。招集天使」

 

「うむ、それとハルバードのデザインを……」

 

「犬舎も必要ですね。囚人の房のある居住スペースは地下に配置して、迂闊に穴を掘ったら水没して死ぬようにしましょう。戦略天使」

 

「夜に出歩いたらズドンしよう!」

 

「ああ、現代風の刑務所かぁ……」

 

「ガーベラちゃんのハルバードは射程が長くて一撃必殺にしよう」

 

「やったー!」

 

私怨が多分に含まれているが、それも後でバランス調整すればいいだけのこと。

 

「あおいさんのような良い子にキツくあたりたくないです。模範囚は優遇するシステムを導入しましょう。規律天使。この時に根っからの悪魔のしょこらさんはともかくとして……シェリーさんとアリスママなら『良い子にしていたら褒めてもらえる』成功体験を与えられるかもしれません。教育天使」

 

「それいいね!」

 

完全に子供扱いだが、それも仕方ないだろう。

ワガママで融通が利かず自分の利益を通そうとする、まさにデカい子供だ。あの奔放さで人気が出ているからたちが悪いのだが。

 

「舞ちゃんの肖像画をあちこちに設置してその権威とありがたさを分からせてやりたいね」

 

「歌さんやっぱりめちゃめちゃ怒ってますよね?怒気天使」

 

「それなりにね」

 

「否定しないのが逆に怖いんだが」

 

「まぁ……その怒りを元に企画を作ってくるとは、さすがにクリエイティブですね。感嘆天使」

 

「ありがとう、シエルちゃん。ガーベラちゃんも手伝ってもらってありがとう。でも私……さすがって言われるような事してないよ。私も、舞ちゃんにずっと甘えてた。ライブライフの始祖だなんて言われても……私は何もしてこなかったただのお飾り」

 

今までは舞がいたから、比較的大人しくしていた2期生達の暴走未遂は歌にとっては裏切りに等しい行為だった。恩には恩で返す、それは当然のことであり不義理は許されざる行いだ。

 

「でも今度は私が、舞ちゃんがしてきたように頑張る。私達はVTuberだけど、それ以前に企業の一員だもん。勝手な行動はライブライフに所属する全員を危険に晒すことになる。だから私が……」

 

「私達、ですよね?」

 

「そうですね、ガーベラさん。私達です。同調天使」

 

「……そうだね、私達皆が頑張って、帰ってきた舞ちゃんを安心させようね」

 

計画は秘密裏に行い、準備が整ったら手段を選ばず全員召集する。

真の目的は、協調性の無い面々の一致団結。

企業VTuberとしての責任を持たせるためだ。仲間を大切にすれば自ずと脱出できるだろう。

 

 

愛之歌 LL一期生

lllovesong

夏だ!絶海の孤島の刑務所から脱獄せよ!

                  

 

 

「……は?強制参加……?しょこら様助けてぇ…」

 

ある者は絶望し。

 

「シエルちゃんと一緒がよかったなぁ……」

 

ある者は落胆し。

 

「脱出ゲーム…興奮するね」

 

ある者は歓喜し。

 

「監獄ねぇ……会いたいわルシフェルちゃん」

 

ある者は過去(悲恋)に想いを馳せ。

 

「このアリス、あっさりと脱獄してやりますよ」

 

ある者は慢心し。

 

「うわぁぁぁぁあっ!!!もうやめてくれぇっ!!来る日も来る日もコンプライアンス研修!!うぅんざりっ!アタシはもう服を脱ぐぞォ!!」

 

ある者は発狂し。

 

「おう、なんかよくわかんねーけどこの奏さんが勝つよ」

 

ある者はなんかよく分かってないがやる気はある。

 

それぞれの思惑を胸に、七人の囚人が集められる。

彼女達は絶海の孤島から逃れることができるのか?

問題児の集まりを更生させられるのだろうか?

 

過酷な夏が始まろうとしていた。




次回から大型企画の脱獄ごっこを始めます。
今回は唐突な第三者視点で申し訳ない。反省天使。
しかし、配信外の話なのとどちらかといえば歌さんの描写に寄ってたので普通になってしまいました。謝罪天使。
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