百合天使VTuberとなった転生天使の配信記録 作:嘘しか言わん狐
シエルちゃんは天使だけれど、バトスを任せるのに不足はない。信用における良い子だと思う。
短い付き合いだけれど、私はあの子を信用している。
天使として真っ当だ。約束を破るような子じゃない。
だから私は、安心してあの子の隣に帰れる。
「これより刑務作業を始めるが、何か希望はあるか?」
「ふーん、刑務作業の種類は木工、畜産、農業、警察犬の世話、衣類裁縫、金属加工、ポーション作成の7つなのね。どうしようかしら……」
「ポーション作成だけなんかおかしいだろ、刑務作業とかいうレベルじゃないぞ」
「アリスが思うに……木工と衣類裁縫は組み合わせれば強そうね……逆に警察犬の世話なんて無駄、それどころか敵を強くしかねない!ポーション作成もいくつかくすねれば脱出の手助けにっ」
「脱獄!許さない!捕まえる!」
「ぎぇっ!?痛い痛い死ぬぅ!!」
・ガーベラさんの前で脱出とかいうから
・見なよアリス、しょこ先とシェリーのこの冷ややかな立ち姿
・ぎぇっ!ぎぇっ!ぎぇっ!
・ぎぇっスタンプが多用される配信ってなんなんだよ
「ハート残ってないんだって!」
「まぁいいわ、全員で仲良く協力しましょう?」
「珍しいな……まぁ、あたしも別に何でもいいよ」
ぎぇっ!スタンプとは、アリスがダメージを負ったときの奇声を模したスタンプ。
ファンによる「ぎぇっ!」だけを使った音MAD『アリスは大変なぎぇ寸釘を打っていきました』が100万再生された事もあるくらい、この子はよく鳴いてるわ。
「じゃあ木工でお願いしまーす」
「ふふ、そうね……」
「まぁたまには仲良く協力してやったっていいぜ」
……悪いけど、仲良く協力なんてしないわ。
クソ喰らえよ、悪魔が協力だなんてバカじゃない?
徹頭徹尾、悪魔は悪魔らしく死ぬべきよ。
「……しょこら様、ピッケルの材料ありそうですか?」
「バトス。あいにく足りないわね。ここだけでは木のピッケルは作れないように調整されているみたいよ」
「そうですか……」
「でも木の棒は沢山あるわ、後で先端部の材料さえあればここで造れるでしょうね」
「ありがとうございます…しょこら様」
ダクトね、見つけるのが早いわね。
確かに、天井の隅、上手く乗れるような位置にダクトが付けられているみたいね。よく考えるわ。
それからしばらくは隙が出来るまで待機。
適当な作業とはいえシェリーのバカもよく飽きずにやるものね。
[Kanade Dream Fulfiller が焼け死んだ]
「なんだよ、奏先輩燃えてんじゃん。まぁいいや見ろよしょこら!アタシ頑張って椅子50個造ったぜ!」
「あらすごいわねー。規約違反のエロ売り止めて椅子系VTuberになったらどう?」
「椅子系VTuberってなんだよ、ニッチすぎんだろ!」
まだよ、まだ。
もう少し待つ。シエルちゃんが来るように……
今のでおそらく、ガーベラちゃんが向かわされたはず。
この付近にいたとして……まだ少し待つ。
6分……そろそろいいでしょ。
「シェリー、医務室でゆっくりやすみなさい」
「は、おまえ何言って……いててててっ!!うわやめろ痛い!ぁぁぁああ!ハメられっ…」
[Cherries は Cioccolato に貫通腹パンされた]
「はぁっ!?お前何してっ」
「おやすみなさい!」
「ぎぇっ!?」
[Alice in Wonderland は Cioccolato に首の骨を折られた]
「あら、たった一撃で死ぬほど弱ってたのねアリス」
・つっよ
・なんでマイメイの世界でこんなに強いんだよ
・パンチを見てから躱すな、そういうゲームじゃねぇから
・ショコラータ先生もそう言えばゴリラだったな……
「囚人同士の喧嘩発生!これより鎮圧する!あっ避けられた!」
[Gerbera-R は Cioccolato に消し炭にされた]
「……なぁんだ、シエルちゃんじゃなかった」
・何やってんだお前ェっ!!
・即処刑だろこんなん
・危険すぎるこの悪魔
・なんでこのゲームで死角をとって死ぬまで殴るとかいう東北の拳の七星点心みたいな動きが出来るんだ
ガーベラちゃんが来るとは思わなかったわ。
シエルちゃんが来ると思ったのに、アテが外れたわ。
ということは、バトスの方にはシエルちゃんが直接出向いたのかしら?
「はぁ……しょこらさん、動かないでくださいね。動くと撃ちますから。警告天使」
なんだ、遅れてきたのね。
安心したわ、待ってたのよ。
「そうね、シエルちゃん。
「話は後でゆっくりと!迎撃天使!」
ついでに久しぶりに天使と戦うのも悪くない。
この懲罰房に初日から人が入るとは思いませんでした。困惑天使。
しょこらさんの経歴から考えるとあれくらいのキャラコンの強さはあって当然としても、随分と暴れたものです。無双天使。
「……しょこらさん、やってくれましたね。殺戮天使」
「ふふふ……流石に、ブランクが多すぎたわね。負けたわ」
「まぁ……最初の天界戦争を引き起こした原初の悪魔ならば、これくらいはやれるでしょうね。当然天使。今は配信はミュートにしてますので、どうぞ話してください。秘密天使」
「じゃあ端的に言うわ。この私こそが天界の反乱の首謀者。これは
地球が産まれるよりも……いえ、この世界が創られるよりもずっと前の事です。悠久天使。
最初の悪魔ルシフェルが天界から追放されましたが、その際に悪魔が余計な力を持たぬよう天使に備わった
「天界の扉を開け放ち、外敵を侵入させた煽動者、それが私」
「教科書に書いてました。教育天使」
「なら授業のおさらいをしてあげる。私は当時まだ天使だった。天使であるままルシフェルちゃんに忠を尽くした。天界の門は鉄壁だもの、それを開く役割が私にはあった」
なんだか今物凄い貴重な体験談を聞いているのでは?興奮天使。
「当時すでに人の住む世界は200と12、今はもっとずっと多いんでしょ?……そのうち50の世界にまず数多の不幸を降らせたわ。誰もが絶望し、苦難に喘ぎ、怒りの声をあげた。……そこで天界の存在を示唆し、すべてをあの四柱の女神に擦り付けた」
四柱の女神。
私の仕える物語の女神サーガ様、時の女神クロノス様、空間の女神コーロス様、そして死の女神モルテ様ですね。尊敬天使。
「決行の日にはバルバトスとアモン、ベルゼビュートちゃんと協力して50の世界の人間を唆し、そして私が天界の門を開け放って40兆を超える人間達を悪魔に変えて天界に雪崩込ませた。その人の波に隠れてルシフェルちゃんを侵入させたわ。悪魔の主戦力をぶつけての全面戦争を仕掛けた」
「教科書に書いていた外患誘致、ですね。謀略天使」
ルシフェルとベルゼビュートは怒り等の負の感情を持つ者を悪魔に変えて支配下に置く能力があると聞きます。
天界への怒りを募らせる人間はさぞや操りやすかった事でしょう。変異天使。
「大勢天使を殺したわ。斬り刻んで内臓をぶち撒けながら……楽しかったわあの頃は。今は悪魔を殺す魔法だの、天使を殺す魔法だの、つまらなくなったわね」
「銃みたいなものです。おかげで直接戦闘はめっきり減りました。冷戦天使」
実際、お互いに簡単に殺せるようになってからは実戦経験のない天使も多いそうです。私は天界学校にいる間になんどか戦闘経験ありますけど。特殊天使。
「女神達も全員殺すつもりだったわ。そのつもりで私はルシフェルちゃんと女神の居城に乗り込んだ。……そして、敗けた」
そもそも女神を殺すなど、同じ女神にすら出来ない事です。無敵天使。
以前サーガ様とモルテ様の喧嘩を見た事がありますが、凄まじい物でした。頭が消し飛んだそばから再生したり、パンチがぶつかり合う衝撃の余波でビッグバンが起こってまた世界を7つほど創ってました。天災天使。
喧嘩の理由はおやつのプリンを勝手に食べたとか食べてないとかで……激闘天使。
「私はクロノスの心臓を貫いたつもりだった……空っぽだったわ……わけもわからず倒された私はベルゼビュートちゃんと共に戦線を離脱して、後からルシフェルちゃんが捕まったと知った」
「……」
「今でも夢に見るわ。私もあの日あの場所で捕まってればよかった。いっそ殺されたほうがよかったわ。ルシフェルちゃんに会いたい。だからシエル……あなた達の作った企画をめちゃくちゃにすれば私を悪として連れて行ってくれると思った。VTuberとしての生活は楽しかったけど……どう?捕まえてくれる?」
「いやですよ、あれ以降あなたは罪を犯してません。時効天使。悪事のハードルが随分落ちましたね。そんな牙の抜け落ちた悪魔なんかを入れてやる牢獄は天界にはないですし、この程度のトラブルは想定内です。腑抜天使」
「……牙の、抜けた……ね」
「そこで提案です。しょこらさん……提案天使」
私は今は天使ですがそれよりもVTuberです。
ライブライフの為に2期生の問題を取り除くのがこの大脱獄における私達看守のミッションです。使命天使。
であれば、前々から天界と魔界の間ではルシフェルを巡っていくらかの無益な争いがありましたが、うまく行けば天界も魔界も争う必要がなくなるかもしれません。秘策天使。
「……提案、ですって?」
「私と取引をしませんか?契約天使」
今回はしょこらさんと取引をする回です。契約天使。
しょこらさんの目論見は始めてコラボした時から始まっていますが、「企画潰したら天界の牢獄にいけるかしら?ルシフェルちゃんに会えるかしら?」とかいう大悪魔とは思えないほどの腑抜けた計画でした。疲弊天使。