「先輩…!やっぱり変だよ!一体どうしちゃったの?!」
1ー8。あと1回斬られれば終わる。
ソロランク戦で俺たちは刃を交えている真っ最中だった。
めずらしく凛が誘ってくれ、戦ることにしたのだが…隠しきれなかった。
『凛ちゃんのATフィールドが壊れたり、傷ついたりするたびに寿命が削れるよ』
迅の言葉が脳裏をよぎる。凛はフィールドを防御、
行動制限などかなり多種多様に使ってくる。それらをよけ、トリオン体だけを斬る。
絶対に刃を当てないように最大限注意していると、どうしても隙が生まれてしまうが
ポイントなんてどうだっていい。とりあえずこのまま触れずに…と立ち回っていた。
(あと2本…もう少し…)
気のゆるみなんてなかった。
しかし、俺の孤月はフィールドを貫いてしまったのだ。
勢いを殺すためにギリギリのタイミングで展開されたそれを認識した時にはもう遅かった。
1枚破るとどれだけ寿命が縮まるのだろう。ぐるぐると罪悪感が頭を回る。
足の力が自然と抜け、俺はがっくりと膝をついた。
心の壁であるATフィールド。通常ならば心理的ダメージを受け止め、
他者と自分を隔てるものにすぎないもの。生命体なら必ず持っているあたりまえのもの。
それを強化する凛のサイドエフェクトは、非常に強力な人間離れしていた。
しかしそれゆえに反動もあることは知っていた。
疲労が溜まりやすかったり、何が起こるかわからなかったりといった不安定さ含めて。
それだけじゃなかったなんて、遠征での暴走以外知らなかった。
通常サイズの心の壁を広げ、体外に出して攻撃を防ぐ。
破壊された壁は数分で再生し、また使うことができる…
改めて考えると、これだけのことが代償なしでできるはずがなかったんだ。
「寿命の前借りって奴だね」
そう口に出した迅の顔は恐ろしく曇っていたっけ。
「…降参だ」ぼそりとつぶやき、気づいたらブースに戻されていた。
そんなシステムあるなんて、今まで知らなかったなぁ。
ぼんやりしているうちに、ドタドタと足音が聞こえ、ドアが勢いよく開かれる。
「先輩!なんで…」
焦燥感MAXの問いをあえて無視して、俺は笑顔を作る。
「今日はもう帰ろう。同居することにもなったんだ。色々考えることがある」
凛は猛烈に何か言いたげだったが、唇を固く結んで押し黙った。
こいつが何言いたいのかぐらいわかってる。ここで言うわけにはいかない。
さすがに俺だって事の重大さゆえに躊躇した。
不覚にも泣きそうだったのもある。それが8割だった。