和泉 凛side
すごくわちゃわちゃした顔合わせを終えて、
私は太刀川先輩、加古先輩、村上くんと共に訓練場へ来ていた。
目の前にあるのはかなりの数の武器。 太刀川くんが使っていた刀や、
銃火器などが並べてあった。 先輩たちは2人とも習うより慣れろ派らしく、
ポジションに関する説明は すごくあっさりだった。
「
いくらなんでもざっくりしすぎである。
昨日もらった資料がなければ 何もわからなかっただろう。
「和泉さんのサイドエフェクトについて、教えてもらってもいいかな」
見かねた村上くんが、遠慮がちにそうたずねてきた。
どこまで話したらいいかさっぱりわからなかったので、とりあえず全部話してみた。
どうやら私のサイドエフェクトは他とは全く違う系統らしい。
「オレは強化睡眠記憶、迅さんは未来視。
五感が変化したり、自分の体に作用するものが多いんだ。」
心の壁とはいえ、何かを生成できるという能力は聞いたことがない。
トリガーを決めるために、自分のA.Tフィールドについて実験することにした。
「加古先輩、ちょっといいですか?」 「もちろん!なんでもきいていいのよ。」
上品に微笑みながら、優雅にターンする先輩。
私は自分のサイドエフェクトについて深く知るため、
加古先輩には、いくつかの弾を撃ってもらうことにした。
私は手のひらを前にかざし、 「A.Tフィールド、展開」と呟いた。
即座に『ピィィニィォン』という 甲高い音と共に半透明の壁を作る。
加古先輩はそれに驚きながらも、 「アステロイド!」と光弾を発射した。
数十発直撃しても、壁はなかなか壊れず、しばらく状況はうごかなかった。
「それなら…ハウンド!」 不意に後ろから攻撃を受け、私はピチュってしまった。
「もう1回お願いします!」 再びフィールドを展開する。
直後にアステロイドの猛攻を受け、 それらとは違う軌道で飛んでくるハウンド。
私は振り向きざまにもう1枚展開してそれを防ぐ。
そうしている間に最初に張った1枚目が砕け、またピチュった。
その後もメテオラを使ってもらったり、
スコーピオンの刺突、 全方位からの飽和攻撃、
暇だと嘆く太刀川くんの旋空弧月を受けたりして、色々なことがわかった。
ひと段落ついたところで、一旦4人で情報を整理することにした。
「基本的には通常トリガーのシールドの強化版って感じよね。」
「最大10枚まで展開可能、
壊れたフィールドはしばらく使えなくなる。」
「俺の旋空2発耐えれるなら十分過ぎんだろ。」
「斬撃に弱くて衝撃に強い…ってわけでもないわよね。
集中攻撃しても破壊時間は変わらなかったもの。
でも、だんだん壊れやすくなってきてない?」
攻撃を受けるだけで精一杯な私より、やはり気づきが多い。
「昨日よりも若干もろくなってる気がするんだよなあ。」
太刀川先輩のぼやきに、村上くんが反応する。
先輩いわく、昨日のほうが固い感触がした。というのだ。
だからどうした、私はそう思ったが、村上くんは違った。
「もう1回、受けてもらえるか?」
言われた通りに展開すると、スラスター起動、という言葉とともに突撃してきた。
レイガストを4回食らった時点でヒビが入り、5回目で砕け散った。
「…何かわかった?」私の問いに彼は答えず、
そろそろ任務だからと、別れのあいさつをする。
「改めて、これからよろしくな」そう言ってほほ笑む村上くん。
「こちらこそ!きょうはありがとうね!」控えめに言ってカッコイイ。
その時、彼の持つレイガストが怪しく光った。
それを認識した直後、スラスターでの強襲をうけた。
私はすんでのところでフィールドを展開して身を守る。
咄嗟に受けたはいいものの、驚きと困惑で頭がいっぱいになった。
そうこうしているうちにフィールドは耐えきれずに砕けてしまった。
「…やっぱりな」 何が起きているのかイマイチつかみきれず、
3人の顔を順繰りに見る。
「凛ちゃん、落ち着いてきいてね。
今凛ちゃんが出したフィールドは、3度目・・・の斬撃で割れたの。
つまり、さっきより強度が下がっているのよ。」 にわかには信じがたい…
そう言いたげな顔で加古先輩が話す。
「A.Tフィールドは心の壁。和泉さんが教えてくれたよね。
さっきよりも簡単に割れたのは、
君がオレに少しでも心を許してくれたから、じゃないかな」
少々気恥ずかしそうに、
それでも私の顔をしっかり見て村上くんはそういった。
心の壁と言われるA.Tフィールド。
それは、他者からの接触を拒み、自身の精神状態に大きく影響を受け、
ひとたび暴走状態に陥れば、研究施設をすべて砂塵に変えてしまうほどの力。
私が持っているのは自分を守るためのタテであり、同時にホコでもあった。
恐怖を感じて考え込む私に、加古先輩が抱きついてきた。
「ってことは...私の弾に破壊されやすくなったのって、
凛ちゃんと仲良くなってきたってことかしら!」
加古先輩は、今日で一番の笑顔を見せた。